授乳中のママは赤ちゃんに自分の栄養を分け与えるため、同年代の授乳をしていない女性よりもエネルギー・たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素を多く摂る必要があります。ですが、育児や職場復帰などで忙しいこの時期に、栄養面を気にしながら食事を摂るのは大変なこと。そこで今回は、授乳の時期に心がけたい食事法について管理栄養士が解説します!

授乳期は栄養不足になりがちなのは何故?



授乳期は赤ちゃんに母乳を与えるために、ママは一般的な食事に比べて多くの栄養が必要です。たんぱく質や脂質、糖質などが必要なのはもちろんですが、ビタミンやミネラルも同様に多く必要になります。


厚生労働省の調べによると『妊娠中や授乳中の女性は、特に多くのビタミン・ミネラルについて、摂取量が十分ではない』ということが報告されています。特に摂取量が不足しがちなビタミン・ミネラルとして「葉酸」と「鉄」の不足が挙げられます。(※1)


① 葉酸の必要量と目安
葉酸は妊娠前から女性にとっては必要な栄養素として注目されていますが、授乳期にも必要な栄養素です。18〜49歳の女性の必要な量は授乳中の場合1日当たり約80g分(ブロッコリー1/5個分)です(※2)。葉酸は
水溶性ビタミンの1種なので、一度にたくさん摂っても体に貯蔵することができません。そのため、こまめに毎食摂ることがオススメです。
② 鉄の必要量と目安
鉄は、酸素の運搬に必須のミネラルです。鉄には2種類あり、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄は主に動物性食品に含まれており、比較的吸収率が高い鉄と言われています。


一方で非ヘム鉄は主に植物性食品に含まれていて、ヘム鉄と比べると吸収率は下がります。鉄は特にレバー類に多く含まれています。授乳中に必要な鉄の量は1日当たり13mgで、豚レバー65g分、小松菜だと460g分(大きめのサイズのもので3株分)に値します(※2)。


野菜類や海藻類は、葉酸や鉄を含めたビタミン・ミネラルの摂取源としては欠かせない食材の1つですが、日本人の女性の野菜類の摂取量は、一般的な目標値である1日350gに達していないことが多く、全体的に野菜不足の方が多いと言われています。それに伴いビタミンやミネラルも不足している人が多いため、妊娠期から授乳期は通常の必要量に加えてなおさら多く摂る必要があります。


※1) 令和3年3月 厚生労働省 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~


※2) 日本人の食事摂取基準2020 妊婦における付加量設定に当たっての留意点

栄養不足と気付いていないママも?!

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授乳期は、同年代の授乳していない女性に比べて赤ちゃんに母乳を通じて栄養を与えるため、特に多く摂るべき栄養素があります。主にたんぱく質、ビタミン類ではビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン・ビタミンB6・ビタミンB12・葉酸・ビタミンCです。ミネラル類では鉄・亜鉛・銅などになります(※3)。


※3) 日本人の食事摂取基準2020 授乳

栄養不足にならないためにオススメの食材



産後は積極的に摂りたい栄養素を知ることで、栄養不足を解消できます。主に摂取したい食材をみていきましょう。


① 授乳期に必要な栄養「葉酸」
葉酸は枝豆・ブロッコリー・モロヘイヤ・ほうれん草などの主に緑の野菜や、海苔、レバーなどに多く含まれています。葉酸は水溶性ビタミンの1つなので、ある程度の時間が経過すると尿などで排出されてしまいます。一度にたくさん食べても体の中に貯蔵しておくことができないため、できれば毎食意識して食べることがオススメです。


② 授乳期に必要な栄養「鉄」
前述の通り、鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は主に動物性食品のレバー・赤身の肉・魚の血合いなどに多く含まれています。非ヘム鉄は主に植物性食品に含まれておりほうれん草や小松菜などの野菜・ひじきなどの海藻類・卵・牛乳などに多く含まれています。


「ヘム鉄」は吸収率が高いのに対して「非ヘム鉄」は吸収率が低いのが特徴ですが、非ヘム鉄でもビタミンCと一緒に食べると吸収率が上がると言われています。

鉄の吸収力を高める栄養「ビタミンC」が含まれる食材
『鉄』の吸収を高める働きがある栄養素はビタミンCです。ビタミンCが多い食品には黄ピーマンや赤ピーマン、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、レモン・イチゴ・キウイ・柿などの果物が挙げられます。これらを鉄と一緒に摂るとビタミンCの働きによって鉄の吸収率を高めてくれます。



③ 母乳の基本「たんぱく質」が含まれる食材
母乳といえばママの血液が重要になります。その血液の原料は主にたんぱく質です。授乳期では1日で計70g分のたんぱく質が必要になり、肉や魚に換算すると350g分です。1日の必要なたんぱく質を肉や魚で摂ろうと思うと、手の平4つ分を目安に食べていただくと良いでしょう。


また、たんぱく質の働きを活発にするためには、ビタミンB6を一緒に摂るのがオススメです。ビタミンB6はカツオやサバなどの魚類、モロヘイヤやブロッコリーなどの野菜類に多く含まれているので、たんぱく質を食べるときは一緒に摂ると良いでしょう。ただし、ビタミンB6も水溶性ビタミンで体に貯蔵しておけない栄養素です。毎食意識して、こまめに食べることが大切です。

栄養不足を招くNGな食べ物



意外と知られていない栄養不足を招きかねない食べ合わせ。せっかく栄養を意識して食べたとしても、きちんと吸収できなければ意味がありません。大事な栄養素を阻害しないためにも食べ合わせについて理解しておきましょう。


① 鉄の吸収を阻害する食べ物には気を付ける
せっかく必要な栄養素を食事から摂っても、食べ合わせによっては栄養の吸収を阻害してしまう場合があります。例えば、不足しがちでたくさん摂りたいミネラルの1つである鉄は、タンニンと一緒に摂ることで吸収が妨げられてしまいます。


タンニンはコーヒーや緑茶、紅茶などに多く含まれます。鉄を含む食材を食べる時はタンニンが含まれていない飲み物を一緒に飲むと良いでしょう。体温程度に温めた白湯は、タンニンも含まれずに体を冷さないのでオススメです。また玄米などに多いぬかや食物繊維、加工食品に多く含まれるリン酸も鉄の吸収を妨げるので、鉄の入った食材と一緒に食べないように心がけましょう。


② 葉酸・ビタミンB類は食べ方に気を付ける
葉酸は長時間煮ると水の中に溶けだしてしまうので、丸ごと煮汁まで食べられる食べ方がオススメです。例えば、葉酸の多いブロッコリーはシチューの具材としてそのまま食べる、ほうれん草は味噌汁に入れる、または鍋料理に入れるなど汁ごと食べられる料理に使うとあますことなく葉酸を摂取できます。葉酸もビタミンBなどと同じく体に貯蔵しておけないので毎食意識して食べましょう。

栄養不足にならないための食事の考え方

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栄養不足にならないようにするためには、自分に必要な栄養素が摂れる食材を知ることが大切です。そして、食材の吸収率がより上がる食べ方と、逆に吸収を阻害する食べ方を知ることです。どのような組み合わせで食材を食べると良いのか、どのような調理法が向いているのかを知ることによって、効率的に必要な栄養素を摂取することができます。


授乳期のママは夜間の授乳で睡眠不足になりやすく、おむつ交換や沐浴、散歩など赤ちゃんのお世話で日々忙しいので、時短でできる料理法や作り置きがオススメです。肉や魚の缶詰や冷凍のカット野菜を使って、カレーやシチューや鍋料理などの1品でいろいろな栄養が摂れる食事にすると時短でできて良いですね。冷凍できるおかずを作って冷凍しておくのも良いでしょう。

料理は 家事サポーターに任せて赤ちゃんのお世話を!
日々の育児や家事で手が回らない時は、家事サポーターにお願いして作り置きをしてもらったり、栄養面を考えられているレシピのアドバイスをしてもらうのもオススメです。キッズラインでは管理栄養士の資格をもつ家事サポーターも在籍しています。料理が得意な方も多くいるので、ご自宅の近くやご家庭にあった方にお願いしてみましょう!


産後の栄養が摂れる簡単食材&ストックリスト

産後は十分な休養が必要な中、赤ちゃんのお世話や家事をしなくてはならない場合、料理は時短で栄養が手軽に取れるのが理想ですよね。そこで、ここでは必要な栄養を摂取できる食べ物や食べ方、ストック方法をご紹介します!


・たんぱく質(魚) →  ツナ缶、サバ缶などの缶詰を利用すると手軽です。生野菜に添えても良いですし、スープに入れるなど万能です。
・たんぱく質(肉) → 効果的にたんぱく質が取れるのはラム肉と豚肉です。できるだけ脂身の少ない赤みを選ぶことがポイントです。また、赤みには鉄分も豊富です。細切れや食べる分だけ冷凍しておけば、いつでも手軽に食べることができます。
・たんぱく質(卵) → 茹で卵をまとめて作っておいて殻をむいてジップロックの中で出汁醤油漬けにするとそれだけで保存食&おかずになります!
・野菜類 → 小松菜やほうれん草は小分けにして冷凍すればいつでも食べられます。市販の冷凍カット野菜やミックスベジタブルを使うのも時短で便利です。

まとめ

いかがでしたか?授乳期は赤ちゃんに母乳を通じて栄養を与えるため、多くの栄養が必要になることがわかりました。しかし、頭では『授乳期には栄養をしっかり摂ることが大切』とわかっていても、夜間の頻回な授乳やおむつの交換、沐浴などの赤ちゃんのお世話でママはとても忙しく疲れ切ってしまうこともありますよね。今回は、時短調理につながる缶詰や冷凍野菜の簡単食材やストックリストもご紹介しましたが、それでもなかなかきちんと食事を作ることが難しいという場合もあります。そんな時は家事サポーター ベビーシッターなどをお願いして、ママが休む時間を作ることも検討してみてくださいね。




■管理栄養士・高岡 由貴
2011年管理栄養士免許取得。大学卒業後、保育園•病院•食品メーカーに勤務し、献立作成•栄養管理•食育講師などを担当。現在はフリーランスとしてコラム執筆•食事相談•レシピ開発などをしている。プライベートでは一児の母。




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