「パタハラ」という言葉をご存知でしょうか。パタハラとはパタニティー(Paternity・父性)を発揮する権利や機会を阻む行為のことを指します。その原因の1つがアンコンシャス・バイアス(無自覚の固定観念・決めつけ)です。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という固定観念は、今、大きく変わろうとしています。ここでは、パタハラの意味や事例、事業主ができる対処法などをご紹介します。

「パタハラ」ってどういう意味?



パタニティー(Paternity)は、英語で「父性」のことで、「パタハラ」とはパタニティー・ハラスメントの略になります。そして、パタハラは男性社員が育児に参加することを阻む行為と言えます。「父性を発揮する権利や機会を侵害する言動や妨害行為」になるのです。ちなみに、女性社員の妊娠・出産の際に受けるハラスメントは、マタハラ(マタニティー・ハラスメント)と言います。


【パタハラが起こる4つの要因】
① 上司や同僚の理解不足
② 育休を当たり前に取得できる企業文化が醸成されていない
③ 育児休業に関する知識不足
④ 無意識な「性別役割分担意識」

パタハラが生まれた背景
かつての日本は、働いている父親が育児に参加するのは珍しいことでした。未だに「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という概念が完全になくなっているとは言い切れない状況です。しかし現代は、社会的にも育児中の女性の就業が推進されるようになってきました。その働きのお陰もあり、今では共働き世帯も増加しています。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」といった考え方を「性別役割分担意識」と言いますが、現代はこの考えに反対する人が男女とも増えています。


令和元年の調査では「性別役割分担意識」に反対する女性は63.4%、男性は55.7%という結果が報告されています(※1)。働くママの増加と性別役割分担意識の変化から、パパの育児参加を求める女性は増えています。そんな中「ワンオペ育児」という言葉も生まれました。これは、単身赴任や残業で、夫婦どちらか一方に家事や育児の負担がかかってしまっている状態のことです。そして、このワンオペ育児の背景から「仕事と家庭の両立に苦慮する女性をサポートすべきではないか」という声も高まっています。そういった背景からも、現在は男性のより積極的な育児参加が求められるようになりました。


このような背景から、男性の育児休業制度の整備も進んできています。しかし、職場内に根づいた性別役割分担の意識を変えることは容易ではないようです。そのため、男性の育児参加に対して、中々受け入れがたいという風潮がある職場もまだまだあるようです。こうした状況が、男性の育休取得や育児参加を阻害する「パタハラ」の要因となっているのです。


※1) 令和2年版男女共同参画白書から-内閣府男女共同参画局調査課


パタハラの具体的な事例について

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では実際に、どのような行動が「パタハラ」に該当するのでしょうか?育休を申請・取得した男性社員に対し、パタハラに当たる対応をまとめてみました。


① 男性社員が育休取得を申請したが、育休取得を認めない
② 「休まれると他の社員に迷惑がかかる」など伝え、育休取得を断念させる
③ 不快感や抵抗感を示すような発言をする
  「育児は女性がするのが当たり前だ」
  「男性社員が育休を取得したというケースはこれまでうちの会社ではない」……など。
④ 育休明けの男性社員に対し、人事権を不当に行使する


上記のような行動は、育児介護休業法で禁止されている「不利益な取り扱い」に該当する行為です。では、労働者に禁止されている不利益な取り扱いとはどんなものなのでしょうか?


・解雇
・雇い止め
・契約更新回数の引き下げ
・退職または、正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
・降格
・減給
・賞与などにおける不利益な算定
・不利益な配置変更
・不利益な自宅待機命令
・昇進や昇格の人事考課での不利益な評価の実施
・仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為 ……など。


※引用) 厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし

ハラスメント防止対策の意識はまだ低い

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「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止対策の取組内容」における調査では、7つの防止対策の質問のうち、6つが50%に満たないという結果が報告されています。なお、「相談・苦情対応窓口担当者が内容や状況に適切に対応できるよう必要な体勢を整備している」という項目に該当した企業・事業所は3割ほどでした。


さらに同調査では、10人以上を常用雇用している民営企業では、相談できる部署や窓口担当者がいない企業が約5割にのぼるという結果も報告されています。窓口担当者がいないことで、育休制度そのものを知らない男性社員もいることでしょう。


しかし今後は、「育児介護休業法」の改正(※3)により、子どもが産まれる従業員への個別周知などが義務付けられます。それによって男性社員が抱えるパタハラなどに対する問題が解決されることが期待されています。


※2 参照) 厚生労働省・令和元年度雇用均等基本調査
※3 参照) 厚生労働省 育児・介護休業法について

パタハラは違法になるの?


法律上、男性の育休取得を妨害するパタハラは違反になります。パタハラ(マタハラも含む)の行為について、育児介護休業法の第6条では「事業主は労働者からの育児休業申出があった時、当該育児休業申出を拒むことができない」と記されています。働きやすさなどを考慮すると、パタハラを受けても我慢をしたり放置してしまう場合もあるでしょう。しかし、法律的な観点から言うと相手を訴えることもできるのです。


※2参照) 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第6条


パタハラを防ぐために事業主がすべき対策



令和3年に「育児介護休業法」が改正され、令和4年10月から、男性社員 は「 出生直後の時期に柔軟に育児休業を取得」ができるようになり、事業主側は「雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が義務」になります。また、令和4年4月から法律上では、子どもが産まれる従業員への個別周知の義務が設けられましたが、それだけではパタハラを防ぐことはできません。そこで、パタハラの防止策として事業主側ができることはどんなことでしょうか。ここでは4つのポイントをご紹介します。


① インクルージョンを進める
事業主側は、多様な個性を認め合う企業文化を醸成することを促されています。そのため、さまざまなバックグラウンドの人材を迎え入れる必要があります。それぞれの意思や考えを尊重しやすい環境になれば、その結果パタハラが起きにくくなることが考えられます。


② イクメン企業アワードへ参加する
厚生労働省は「イクメン企業アワード」というものを実施しています。そのため、積極的にこのようなアワードに参加するのもオススメです。
この賞は、積極的に男性社員が育休を取得している企業を表彰するものです。この賞を受賞することで、企業側は良いイメージを社会にアピールすることができ、採用にもプラスの効果が期待できますまた、社員側はパタハラが減り、業務そのものへのモチベーションの向上に繋がるでしょう。


③ 育休を取得しやすい環境づくり
育休を取得した男性社員のロールモデルを増やしていくのはどうでしょうか。例えば、社内報などで育児と仕事を両立させている男性社員を取り上げるのも良いでしょう。それにより、男性社員の育児参画が定着しやすくなる社内カルチャーが醸成されます。また、育休取得をして夫婦で子育てをする場合でも、初めて育児につまづいてしまうこともあるでしょう。そんな時は育児書に頼るだけでなく、パパママの意向に沿った育児サポートをしてくれる産後ドゥーラベビーシッターに相談するのもオススメです。


④ 相談窓口の設置、育休の社内制度化と社員への周知
「育休を取得したいが上司の理解が得られそうもない」「パタハラと思われる言動を受けた」といった悩みを男性社員が抱えている場合があります。そんな時に気軽に相談できる窓口があれば、悩みが解消される可能性も高まります。男性社員の悩みを聞く相談窓口があれば、社内環境の面からも整えていくことに繋がるでしょう。

まとめ

育休を取得したら退職、降格、減給などの不利益な配置変更を強要されたという対応や「女性が子育てをすればいい、男性は働くべきだ」といった発言など、これらはすべてがパタハラに値する行為です。そういったことを防ぐためにも、少しずつ法整備もされていき、ジェンダーレスに子育てしやすい社会へと生まれ変わろうとしています。また、子どもが生まれた時のサポート体制やサービスも充実してきています。キッズラインのベビーシッターもその1つです。性別にかかわらず、これからは育児に積極的に参加できる世の中になっていくと良いですね。