相手が「おはよう」と挨拶してくれているのに、わが子が挨拶を返せず、気まずい雰囲気になってしまった……ということはありませんか?おしゃべりならできるのに、挨拶だけはなぜかできない、と悩んでいるママパパは少なくありません。今回は、子供が挨拶をできない理由と対処法について、現役保育士が解説します。

子供が挨拶できないのはどうして?


恥ずかしがる子供
筆者の勤める保育園でも挨拶する子としない子がいます。挨拶をする子はほとんど反射的に「おはよう」と返します。挨拶する理由を考えて言葉を発する子はほとんどいません。
逆に挨拶しない子には、挨拶できない理由が必ず存在します。子供が気持ちの良い挨拶をできるようになるために、まずは理由を知るところからスタートしましょう。

【理由1】恥ずかしいから


挨拶できない理由として多いのが「恥ずかしい」です。目があったり、声をかけられたりすると、緊張して挨拶ができなくなってしまう子がいます。相手が慣れている人であっても、挨拶の言葉を口にすること自体に気恥ずかしさを感じる子供もいます。

【理由2】タイミングがわからないから


いつ「おはよう」と言えばいいのか、タイミングがわからず挨拶できない子もいます。「おはようって言われたら、おはようって返せばいいだけでしょ?」と大人は考えがちですが、子供にはまだ、そのやりとりのリズムが身についていません。突然「おはよう」と言われても、すぐに「おはよう」と返すことが難しいのです。

【理由3】親に見られたくないから


実は挨拶できるけれど、できる姿をママパパに見られたくない、と感じている子供もいます。子供にとってママパパは、赤ちゃんの頃から本能のままに甘えてきた存在です。「できる自分」を見せることに恥ずかしさを感じたり、無意識のうちに「できない自分」を演じてしまったりすることもあるのです。
保育園で朝の挨拶ができなくても、ママパパがいないところでは挨拶ができる子もたくさんいます。

【理由4】相手が知らない人だから


幼い子供にとっては、心を許していない相手には挨拶どころか、近づいたり、目を見たりすることも難しいでしょう。小学生くらいになれば、状況に応じて知らない人でも挨拶できるようになりますが、まだ人見知りをする幼児期であれば、よく知らない相手に挨拶をすることは困難です。

【理由5】相手に気がついていないから


周囲に気を取られていたり、目が合わなかったりすると、相手の存在に気がついていない場合もあります。特に相手が大人の場合は目線を合わせることが難しいので、挨拶が自分に向けられていると気がついていない可能性もあります。

【理由6】新しい環境に慣れていないから


新しい環境では誰しもが緊張している状態です。そのような場合、普段は挨拶ができる子でも、できなくなることがあります。保育園に入園したばかりのときや普段あまり会わない親戚の家へ遊びに行ったときなど、慣れていない場所では挨拶をすることが難しいでしょう。

【理由7】挨拶をする習慣がないから


挨拶は習慣です。人と挨拶をする機会が少なかったり、他の人が挨拶を交わしている姿を見る機会が少なかったりするとなかなか身につきません。習慣として反射的に挨拶できるようになるまでは、子供にとって挨拶はハードルが高い問題なのです。

【理由8】機嫌が悪いから・体調が悪いから


子供の行動は、気分や機嫌に大きく左右されます。いつもは挨拶していても、機嫌が悪いとできない場合も。叱られた後や自分の思い通りにならなかった後などは、挨拶にまで気持ちが向きません。体調が悪い場合も同様で、まずは心身の状態が安定しないと挨拶は難しいでしょう。

子供がすすんで挨拶をするようになるのは4歳以上


あいさつ
子供の性格や発達、生活する環境によって、挨拶できるようになる時期には差があります。保育士である著者の経験だと、挨拶ができるようになるのはおおむね4歳頃だと言えます。その理由を4歳児の発達をもとに解説します。

相手に注意を向けられるようになる


4歳頃になると、意識的に他者へ注意を向けられるようになります。別の場所を見ていたとしても「おはよう」と声をかけられれば、相手が自分に対して挨拶をしていると理解できるようになります。

社会的ルールが身に付いてくる


4歳頃になると、自分が大勢の中の1人であることや、他者と生活する上でルールが必要なことに気付けるようになってきます。他者から見た自分を意識できるようになるので、ルールを守ろうとする姿も見られるようになってきます。挨拶も同様に、いつも同じタイミングで「おはよう」と言うことがわかり、また他者にも求められていることが理解できるようになります。

コミュニケーション能力がついてくる


4歳頃になると語彙(ごい)が増え、言葉でのやりとりが多くなってきます。自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを聞いたりする機会も増え、ますますコミュニケーション能力が高まっていく時期です。人との関わりが増えると、挨拶を交わす機会も増えます。日々のやりとりを通じて、挨拶をする習慣が身についていきます。

子供が挨拶をしないときにやってはいけないこと


叱られた子
「挨拶をしてほしい」と願えば願うほど、親は子供をコントロールしてしまいがちです。子供が嫌がる方法は、即効性があっても持続性はありません。
また、子供の成長に悪影響を与えないためにも、ママパパの関わり方は重要になってきます。ここからは、挨拶をしない子供に対してママパパがやってはいけない行動について解説します。

【NG行動1】強要する


子供が挨拶しない場合でも、無理に挨拶させることは避けましょう。強制することで抵抗感を覚え、挨拶だけでなく人との関わり自体も嫌になってしまう可能性があります。言葉や視線で圧力をかけたり、無理に頭を押さえてお辞儀をさせたりするような行動は控えましょう。

【NG行動2】叱る


子供は大好きなママパパに嫌われたくないので、叱られると思えば挨拶をするかもしれません。しかし、ママパパが不在のときには怒られる心配がないので挨拶をしない、という可能性も。また、怒られる不安があると、本当の気持ちを伝えられなくなってしまいます。挨拶ができないときには、叱るよりも挨拶できない理由を聞くことの方が大切です。

【NG行動3】他の子と比べる


「他の子はできるのに」というようなネガティブな発言は避けましょう。子供の自尊心を傷つけたり、友達への敵対心を助長させたりしてしまいます。また「できないのは悪いことだ」という意識を根付かせてしまう危険性も。できることよりできないことに視点を当ててしまうと、自己肯定感が下がってしまいます。

【NG行動4】否定的な態度で理由を聞く


子供が挨拶をしないのには理由があります。子供を理解するために理由を尋ねるのは間違いではありません。
しかし怒り口調で「なんで挨拶しなかったの?」と聞けば、それは質問ではなく、叱責になってしまいます。子供は否定されていることに気づき、本音が話しづらくなってしまうことでしょう。

【NG行動5】恥をかかせる


子供に恥をかかせるような行動は避けましょう。挨拶をしないからといって人前で叱ったり、見下した言葉をかけたりすれば、子供の自尊心が傷つきます。「子供なんだから、恥ずかしくないでしょ」ということはありません。大人に対してしないことは、子供にもしないようにしましょう。

子供が挨拶をしないときの声がけの仕方


声かけの仕方
ママパパは子供の気持ちや発達段階を理解し、自発的に挨拶する意欲を育むことが大切です。ポジティブなコミュニケーションを通じて、子供の​​良き理解者となりましょう。
ここからは、子供が挨拶をしないときの声がけの仕方を紹介します。

【ステップ1】「おはようって言えるかな?」


相手が目の前にいるときには「おはようって言えるかな?」と軽く促します。このとき、「言えるかな?」と聞くことで決定権を子供に委ねます。「言えない」と答えるのであれば、「うん、わかった。じゃあ、今日はママ(パパ)が代わりにご挨拶するね。(相手に向かって)おはようございます」と挨拶の見本を見せましょう。

【ステップ2】「恥ずかしかったんだね」


相手がいなくなってから、挨拶できなかった理由を聞いてみても良いでしょう。「挨拶できなかったね。どうしたの?」と、あくまでもフラットな態度で質問します。
「だって恥ずかしいんだもん」と答えるのであれば「そっか。恥ずかしかったんだね」とそのまま受け入れます。「知らない人だと緊張しちゃうよね。ママ(パパ)も子供のとき、そうだったな」と共感しても良いでしょう。自分の気持ちを「わかってもらえた」と感じることが大切です。

【ステップ3】「次は一緒におはようって言ってみようか」


自分の意見を受け入れてもらった後は、ママパパの言葉にも耳を傾けられるようになります。「次はおはようって言ってみようか。恥ずかしかったらママ(パパ)と一緒に言う?」と提案してみても良いでしょう。
もちろん、すぐできるようになる訳ではありませんが、繰り返していくことで挨拶の仕方やタイミングを覚えていきます。少しずつイメージを積み重ねていくことが大切です。


親が自ら挨拶をする姿を見せよう


子供が自らすすんで挨拶できるようになるためには、モデルが必要です。まずは身近にいるママパパが普段から挨拶をしているか、振り返ってみましょう。他者との関わりが希薄になった現代では、子供だけでなく大人も挨拶をする機会が減っています。つまり、子供が見本を見る機会が減少している、とも言えます。
外で難しければ、まずは家の中で家族同士が挨拶を交わす姿を見せるところから始めてみると良いでしょう。子供は大好きなママやパパをよく見ているので、真似しながら成長していきます。ぜひお家の中で、素敵なモデルになってみてくださいね。

子供のペースを大切に成長を見守って


保育園でのあいさつ
人間関係を育む上で挨拶はとても大切です。だからこそ子供にも挨拶をできるようになってほしいと願ってしまいますよね。
しかし、挨拶に対してネガティブな感情を抱いてしまうと、なかなかできるようにはなりません。今は挨拶できなくても、決して叱ったりしないようにしましょう。
挨拶できない理由を把握し、今の姿を受け入れることが大切です。その上でサポートしつつ、子供なりの成長を見守っていきましょう。

「家族に対しては挨拶できるけど、他者にはなかなか心を開いてくれない」とお悩みの方は、自宅で保育をしてくれるベビーシッターを依頼してみるという手もあります。自宅という安心できる空間にいることで、子供は徐々に他者に心を開いていくことができるようになります。
ベビーシッターは育児のプロなので、挨拶やコミュニケーションの悩みについても相談できます。ママパパだけでは解決が難しいときには、専門家の力を借りてみてください。

キッズラインには、家庭保育のプロが在籍


ベビーシッター・家事代行サービスを展開するキッズラインでは、ベビーシッターとして、保育士や看護師など保育の専門資格や研修を完了した家庭保育のプロフェッショナルが多数在籍しています。
初めてのシッターに保育を依頼する際には、顔合わせまたは事前面談が必要なので、まずはよさそうな人に連絡を取ってみましょう。「他者に挨拶ができない」状況などを相談してみて、保育への姿勢を聞いてみるのがオススメです。

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■保育士ライター 佐野希子
18年目の現役保育士。独学で認定試験に合格し、幼稚園教諭の資格も取得。他に社会福祉士の資格も保有。現在は副主任として保育現場の指導とサポートに努めている。


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