生後2ヶ月をすぎると怒涛の予防接種ラッシュが始まります。現在、1歳までの赤ちゃんの定期接種回数は15回以上です。予防接種は一度打つと次の接種までに時間を空けなければならないため同時に複数の接種を行う「同時接種」が推奨されています。しかし、同時接種に不安を持つママパパも多いことでしょう。そこで今回は、同時接種の安全性やメリットなどについて、医師が詳しく解説します。
同時接種が勧められているのはどうして?
日本では乳児期に多くの予防接種が定期化されています。そのため、滞りなく全ての接種を完了させるために日本小児科学会でも同時接種を推奨しています。まずは、同時接種のメリットなどについて詳しくみていきましょう。
同時接種とは?混合ワクチンとどう違うの?
同時接種とは、2種類以上の予防接種を同じ日に接種する方法のこと。一方、混合ワクチンとは四種混合ワクチンやMRワクチン(麻しん·風しん)などのように複数のワクチンが同じ薬液の中に混ぜられているものを指します。同時接種は、二の腕か太ももに少なくとも2.5cm以上の間隔をあけて接種することが定められています。一日に接種するワクチンを混ぜ合わせて一回で接種することはありません。
同時接種にはどんなメリットがあるの?
日本小児科学会の見解によれば、ワクチンの同時接種には次のようなメリットがあると考えられています。
·ワクチンの接種率が上がり、打ち忘れを防ぐことができる。
·赤ちゃんを早い時期に感染症から守ることができる。
·保護者の経済的、時間的な負担を減らすことができる。
·医療機関の時間的な負担を減らすことができる。
接種率の向上と赤ちゃんに早期から感染症の免疫をつけられることは非常に大きなメリットです。生後2ヶ月を迎えると、1歳までに7種類ものワクチンを15回以上接種する必要があります。回数が多いため、同時接種をしないと打ち忘れのリスクが高まります。また、ヒブや肺炎球菌、ロタウイルスなど重症な感染症を予防できるものは可能な限り早めに接種することが大切です。同時接種は赤ちゃんを守るために必要な手段と言えます。
日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点
予防接種はどれくらい間隔をあける必要があるの?
乳幼児期に接種するワクチンは「生ワクチン」と「不活性化ワクチン」の2種類があります。生ワクチンは、弱毒化した病原体を使用したものでMRワクチン、BCG、水ぼうそう、ロタウイルスなどが挙げられます。生ワクチンの中でも注射で接種するタイプのワクチンは、次の接種までに27日以上の間隔をあけなければならないことが定められています。
なお、ロタウイルスのような飲むタイプの生ワクチンや不活性化ワクチンは接種間隔に制限はありません。しかし、それぞれのワクチンには推奨される間隔がありますので、推奨間隔に合わせて接種を進めていく必要があります。基本的に、生後2ヶ月から5ヶ月までは毎月数種類のワクチンを接種する必要がありますので、スケジュール管理をしっかりして打ち忘れがないようにしましょう。
同時接種は赤ちゃんの身体に負担にならないの?
ワクチンの同時接種は赤ちゃんを守る手段とわかっていても「小さな身体に何か所も注射をするのは心配」という方も少なくないはずです。では同時接種にデメリットはないのか、みていきましょう。
副反応が出やすくならない?
予防接種によって生じる発熱、発疹、注射部位の腫れや痛みなどの症状のことを「副反応」と呼びます。副反応は一定の割合で出ることがあり、事前に発症を予測することは困難です。ママパパにとっても予防接種をする上で一番心配な点でしょう。同時接種は副反応の出現確率を上げるのでは?との心配をなさる方も多いです。しかし、日本小児科学会の見解では、同時接種で副反応の頻度が上がることはないとされています。
ワクチンの効果は低くならない?
同時に複数の種類のワクチンを接種することで「それぞれのワクチンの効果が低くなるのでは?」とご心配なさる方もいらっしゃいます。しかし、ワクチンはそれぞれ別のメカニズムで免疫を形成するため、同時に接種することで効果が低くなるということはありません。
ただし、日本では定期接種に定められていませんが、髄膜炎ワクチンと肺炎球菌ワクチンを同時に接種すると、肺炎球菌の免疫がつきにくくなるという報告もあります。海外渡航などで髄膜炎菌ワクチンの接種が必要な場合は、かかりつけ医に接種時期などについて相談しましょう。
赤ちゃんは苦しくない?
「一度に何度も注射をすると、痛みなどで赤ちゃんが苦しんでしまわないか?」と心配される方も多いでしょう。確かに、一度にたくさんの注射をすると赤ちゃんはそのたびに泣き声を上げるものです。しかし、一回ずつの接種にした場合、所定の接種回数を完了させるには生後2ヶ月を過ぎてから、ほぼ毎週注射を打つことに。毎週痛い思いをするのは赤ちゃんに大きな負担になります。同時接種で可能な限りコンパクトにまとめてあげた方が良いでしょう。
産後頼れる「産後ドゥーラ」
産前産後のママが身体を休め、安心して赤ちゃんのお世話に専念できる環境をつくるお手伝いをしてくれる産後ドゥーラ。主に産褥期(出産後6週から8週)や妊娠中の家事や子育てを支援してくれます。また上の子どもがいる場合はベビーシッターとして子どものお世話を相談することができます。
●どんなことをお願いできるの?
妊娠中のつわりが辛い時期や、お腹が大きくなり身体が辛い時から、食事作りや掃除といった家事サポートをお願いすることができます。また安心して出産、育児に臨めるよう、ママと一緒に産後の生活について相談することもできます。
さらに、産後は赤ちゃんの沐浴、授乳のサポート、オムツ替え、上の子どものお世話などを依頼することができます。産後ドゥーラに赤ちゃんのお世話をお願いして睡眠を取ったり、母乳に良い食事を作り置きしてもらうのも良いですね。
まとめ
生後2ヶ月を迎えると、1歳までに15回以上の予防接種が定期化されています。打ち忘れを防ぎ、早い段階から感染症に対する免疫をつけるために現在では同時接種が勧められています。同時接種に大きなデメリットはありませんので、かかりつけ医と相談しながら確実なスケジュールを立てて接種を完了させましょう!
■監修ライター:成田亜希子
2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行う。行政機関に勤務経験もあり母子保健分野も担当。育児に悩むママたちに医師という立場から様々なアドバイスを助言。プライベートでは二児の母。自身の悩みからも育児の情報発信している。