おたふく風邪はウイルスによる感染症の一つです。頬が腫れる症状が見られることから、一般的には「おたふく風邪」と呼ばれていますが、正式には「流行性耳下腺炎」と呼びます。未就学児がかかりやすい感染症ですが、大人にうつると重症化することも少なくありません。そこで今回は、おたふく風邪の注意すべきことについて医師が詳しく解説します。

おたふく風邪はどんな症状が出るの?



おたふく風邪は、ムンプスウイルスに感染することによって発症する病気です。どのような症状が出る病気なのか詳しくみていきましょう。


おたふく風邪の症状
おたふく風邪はムンプスウイルスに感染後2~3週間ほどで、発熱と頬の腫れや痛みが起こるのが特徴です。頬の症状は「耳下腺」と呼ばれる唾液腺(唾液を分泌する器官)に炎症が生じることによって引き起こされます。左右両方の耳下腺が腫れることもあれば、片方のみが腫れることもあります。また、まれに「顎下腺」や「舌下腺」など他の唾液腺が腫れることもあります。


一般的には、発症後2日程度で症状の強さはピークになり、1~2週間ほどで自然に改善していきます。

後遺症が出ることも?
おたふく風邪は自然に回復していくことがほとんどですが、髄膜炎を併発して入院が必要になることもあります。頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が続くときは病院に相談しましょう。また、おたふく風邪は2万人に1人程度の割合で、内耳と呼ばれる耳の中の器官に炎症が波及して、聴力の低下を引き起こすことが知られています。発症すると聴力が元に戻らない可能性が高いとされており、様々な感染症の中でも注意すべき副作用の一つです。

おたふく風邪は大人もかかる!

おたふく風邪は3~6歳くらいの子どもによく見られる感染症です。しかし、大人になって感染するケースも少なくありません。しかも、重症化しやすいため注意が必要です。特に男性は思春期以降に感染すると3割程度の方が精巣炎を起こすと報告されています。両方の精巣に炎症が起きると精子を作る能力が低下して、将来的に不妊に悩まされるケースも少なくありません。

おたふく風邪の子どもを看病するポイントは?


おたふく風邪は確立した治療法がありません。解熱剤や痛み止めなどを用いながら症状が自然に回復していくのを待つことになります。ほとんどの子どもは1~2週間ほどで完全に回復しますが、看病をする際には「痛み」に注意してあげましょう。


おたふく風邪は耳下腺などに炎症が起こるため、耳の下に強い痛みが生じます。特に口を大きく開けたり、物を噛んだりするときに痛みが強くなります。痛みがある間は柔らかくのど越しのよい食べ物を与えるようにしましょう。また、唾液の分泌も刺激になるため柑橘類など唾液分泌が促される食べ物や飲み物は控えることも大切です。


なお、おたふく風邪にかかっている時は、物を飲み込むだけで痛みが生じることもあります。水分や食事量が減ることで脱水になるケースもあるため、少量ずつでも小まめな水分補給を忘れずに行いましょう。


おたふく風邪は予防できる?

おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスは非常に感染力が強く、飛沫感染や接触感染で拡がっていく性質があります。保育園などの集団生活の場で流行している時はどんなに感染対策を徹底していても、完全に予防するのは困難でしょう。


現在、ムンプスウイルスのワクチンは開発されていますが、残念ながら日本では定期接種の対象にはなっていません。しかし、おたふく風邪は上述したように深刻な後遺症を残すこともあります。集団生活を送る場合は、可能な限り接種しておくことをオススメします。おたふく風邪の予防接種は1歳を過ぎてから打つことができます。MRワクチンや水痘ワクチンと同時接種をするのがオススメです。

病児・病後児の保育も依頼可能

感染症に関わらず、子どもは急に発熱したり、体調を崩してしまうものです。そんな時に限って大事な会議やキャンセルできない用事がある場合は、病児や病後児の預け先としてベビーシッターという選択肢があります。キッズラインでは小児病棟で働いた経験がある看護士の方など、看護師資格を保有しているサポーターも在籍しております。病児または病後児、感染症の保育に対応しているかどうかはサポータープロフィールからご覧になれます。


急な預け先として必要になった場合に、スムーズに依頼できるよう、依頼したいサポーターを数名候補にあげておく、事前面談を済ませておくことをオススメします。



まとめ

おたふく風邪は未就学児によくみられる感染症の一つです。多くは自然に回復していきますが、髄膜炎を併発したり、難聴などの後遺症を残したりするケースも。大人になってかかると重症化しやすいのも特徴です。おたふく風邪の原因ウイルスは感染力が非常に高いとされています。徹底した感染対策も大切ですが、1歳を過ぎたら予防接種を受けることもぜひ検討しましょう。




■監修ライター:成田亜希子
2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行う。行政機関に勤務経験もあり母子保健分野も担当。育児に悩むママたちに医師という立場から様々なアドバイスを助言。プライベートでは二児の母。自身の悩みからも育児の情報発信している。