生まれて間もない赤ちゃんは、母乳やミルクを吐き戻しをすることがよくあります。「1日に何回も吐くけれどこんなに吐いて大丈夫?」「何か対策はないの?」と心配になるかもしれません。そこでこの記事では、吐き戻しが心配で理由と対処法を知りたいママパパに向けて、助産師がその原因と対処法をお伝えします。

新生児が吐き戻しするのはなぜ?


吐き戻し
そもそも赤ちゃんはなぜ吐き戻しをするのでしょうか。原因についてお話します。

吐き戻しとは


吐き戻しとは、赤ちゃんがミルクや母乳を飲んだ後に吐いてしまうことをいいます。吐き戻しと似ている言葉で「溢乳(いつにゅう)」という言葉がありますが、吐き戻しはゲフッと飲んだばかりのミルクを多く吐くのに比べて、溢乳は口の端からダラダラと少量出します。どちらも授乳直後に吐くという点では同じです。

吐き戻しの原因は?


吐き戻しは、次のことが原因で起こります。
①赤ちゃんの胃が未熟である
②胃の形が吐きやすい形をしている
③ゲップができていない
④飲むスピードが早い
⑤飲み過ぎている


赤ちゃんの胃の入り口は大人のように閉じた作りになっておらず、またカーブが少ない形のため、勢いよくミルクや母乳を飲んでしまうと逆流しやすい構造です。
勢いよく飲む際に空気を一緒に飲み込んでしまうため、授乳後やミルクを与えた後にはゲップをさせることが大切になります。ゲップが出ていなかったり不充分だと、横に寝かしたときにゲップと一緒にミルクが出てきてしまいます。
あごを使いながら飲むとゆっくり飲めるようになるため、哺乳瓶の角度や授乳の姿勢を整えることも大切なポイントです。

*助産師からの一言コメント*
どちらかというと、母乳よりも哺乳瓶の方が空気を一緒に飲み込みやすいです。母乳の時はゲップしなくても大丈夫だったけど、ミルクだとゲップしないと毎回吐くということもあります。
ミルクをあげるときは、哺乳瓶を赤ちゃんの背中に対して90度くらいの角度にキープして与えると空気を飲み込みにくいです。正しい姿勢を保ちやすいよう赤ちゃんの背中にタオルやクッションを入れて支えてあげると飲ませやすくなります。


吐き戻ししても大丈夫なの?


吐き戻しは、どの赤ちゃんにもみられる生理的なことなので、特に問題ありません。母乳やミルクを多く飲み過ぎた赤ちゃんは、吐き戻しをして調整し、吐き戻しを何度も繰り返しているうちに成長していきます。そのうち胃が発達するに伴い徐々に飲むスピードや量を調整できるようになり、吐き戻しをすることも減ってきます。
赤ちゃんは、少量をこまめに飲みたい子、1回量が多い分飲む回数が少ない子、飲みムラがある子などそれぞれです。排泄がしっかり出ていて、機嫌がよく、睡眠もしっかり取れている場合は、心配し過ぎなくて大丈夫です。その子のペースを尊重してあげてくださいね。
ただし、時には注意したい吐き戻しもあるので、赤ちゃんの様子を確認するようにしましょう。注意したい吐きもどしについては後述します。

赤ちゃんの吐き戻しはいつ頃治まる?


赤ちゃんの吐き戻しはそこまで心配する必要はないですが、いつ頃には治まるのか気になるママパパも多いかもしれません。ここではおおよその吐き戻しが治る時期の目安をお話します。

赤ちゃんの吐き戻しはいつまで?


赤ちゃんが成長するにつれて、吐き戻しは徐々に減っていきます。成長のスピードは個人差があるため確実にこの時期には治まるとは言えませんが、おおよそ3〜6ヶ月頃には治まることが多いようです。
離乳食が始まるのがちょうど5〜6ヶ月なので、胃の発達が進んだこの頃には吐き戻しも減り、固形物を食べる練習にステップアップすることができます。

吐き戻しの量が増えた!?


「3〜4ヶ月になって吐き戻しが減っていたのに、また最近吐き戻しが増えた」など、吐き戻しのぶり返しの相談を受けることが時々あります。これは、赤ちゃんが1回に飲める量が増えてたくさん飲むものの、まだ胃の消化が追い付いていないことなどが原因で起こります。
吐き戻しのぶり返しがあっても機嫌がよく、排泄もいつも通り出ていて、体重も順調に増えているようであればそこまで心配しなくても大丈夫でしょう。

赤ちゃんが吐き戻しをしたときの対処法


だっこ
吐き戻しが心配いらないとは言っても、何度も着替えや洗濯を繰り返すのは大変なものです。赤ちゃんが吐き戻しをした時には、焦らずに対処することが大切。ではどのような対処を取ればいいのでしょうか。

授乳やミルクの後の対応の仕方


赤ちゃんがミルク(母乳)を飲んだら、まずはゲップをさせます。ゲップは毎回出るわけではないので、3分ほど優しくさするようにして出なければベッドに寝かせます。
ベッドに寝かした後は、機嫌良く過ごしているのか、吐き戻しがないかなど数分間は様子をみてあげてください。その間は声かけをして赤ちゃんとのコミュニケーションの時間にしてください。

吐き戻しをした時の対処法


①吐き戻したら、首を支えながら頭を高くし、縦抱きにして様子をみる。
(もしくは赤ちゃんの顔を横に向けるでもよい)
※吐いたものはガーゼハンカチなどで拭いて、衣服が汚れていたら着替えさせましょう。スタイをさせておけば、洋服を着替えずにスタイの交換だけで済むのでおすすめです。
②数分は背中をトントンと優しくさすってあげる。
③赤ちゃんの顔色が青白くなっていないか、呼吸が苦しそうではないかを確認し、吐く様子がなければベッドに寝かせてOK。


*助産師からの一言コメント*
吐き戻しで注意が必要なのは、吐いたものをそのまま飲み込んで誤嚥(ごえん)してしまうことです。吐いた時は縦抱きをする、もしくは顔を横に向けることで気管に入ることを防ぐことができるので、突如の吐き戻しにはその点だけでも必ず対処してあげてください。


吐き戻しを減らすにはどうすればよい?


ミルク
それでは、吐き戻しを少しでも減らすためにはどのようなことをすればいいのでしょうか。ここでは吐き戻しの予防法をご紹介します。

【予防法1】ゲップをさせる


赤ちゃんの胃の形は大人のようにカーブしておらずまっすぐに近いので、縦向きにしないとうまくゲップができません。ゲップをさせるときは、背中と首を起こして縦抱きにし、優しく背中をさすってあげましょう。この時の注意点は、まだ首が据わっていない子は首を手で支えてあげることと、強く叩き過ぎないことです。

*助産師からの一言コメント*
赤ちゃんの胃には小さな空気が沢山入っている状態です。ペットボトルをイメージすると良いです。ペットボトルに小さい空気が入っている時に優しくトントン叩くと空気は上に上がってきますよね。その要領で、赤ちゃんの背中も優しくこまめにトントンとさするようにしてください。


【予防法2】ミルク(母乳)の飲むスピードを調整する


ミルク(母乳)を勢い良く飲んでしまうと、空気をたくさん飲み込んでしまい、吐き戻しの原因になります。ミルクを飲むスピードの目安は一回10〜15分(母乳は肩胸10〜15分)ほどです。これより早く飲む場合は以下の方法で調整しましょう。

・ミルクの場合:
哺乳瓶は母乳よりも空気を一緒に飲み込みやすいです。背中に対して90度の角度で哺乳瓶をキープして飲ませます。
それでも勢い良く飲んでしまう場合は、哺乳瓶の乳首を替えると良いです。穴がより小さくて少しずつしか出ないものや、あごをしっかり使わないと出ないタイプのものもあります。その子に合わせて適切な乳首を選んであげましょう。


・母乳の場合:
おっぱいがよく出るママは、5分に1回おっぱいを交互に変えてあげるようにします。また、片側のおっぱいをあげる度にゲップをさせるようにしましょう。浅飲みをすると空気を一緒に飲む原因になるので、乳首を大きな口で咥えさせることも大切です。


*助産師からの一言コメント*
正しい抱きかたやその子に合った哺乳瓶がわからない場合は、お近くの助産師に相談するとよいですよ。その子に合わせて一番よい選択をサポートしてくれるはずです。


【予防法3】飲ませ過ぎない


赤ちゃんは満腹中枢がまだ未発達であり、お腹いっぱいだと自分で飲むのを止めるということができません。そのため飲ませ過ぎないことも大事です。

・ミルクの場合:授乳時間を2〜3時間空けるようにします。泣く度にミルクを与えるのではなく、おむつが汚れていないか確認し、抱っこであやしたり、赤ちゃんが過ごしやすい環境に整えてあげるなどして様子をみましょう。


・母乳の場合:1回の授乳で飲ませている時間を短くする、または赤ちゃんが乳首を舌で遊ぶような素振りがある、機嫌が良くなるなど、満腹な様子であれば途中でも授乳を止めます。


*助産師からの一言コメント*
母乳の場合、1回に飲んだ量がわかりにくいので、定期的に母乳量測定をするのもよいです。保健センターやデパートには赤ちゃん用の体重計が置いてあることも多いので、そういう施設で母乳量測定をし、飲み過ぎていないか確認するのもおすすめです。


注意したい新生児の吐き戻しの症状


吐き戻しとは別に注意すべき吐き方もあります。異常な吐き方の特徴とはどのようなものでしょうか。飲み過ぎてしまっただけの吐き戻しなのか、具合が悪いための吐き戻しなのか、見分けるポイントを紹介します。

注意すべき吐き方の特徴


基本的に、繰り返し吐き戻す場合や大量の吐き戻しでなければ、様子見をして大丈夫です。ただし異常な吐き方もあります。異常な吐き方の特徴は次のようなものが挙げられます。

・噴水のように何度も吐く(ピューっと勢いよく吐く)
・吐いた後にぐったりしていて元気がない
・吐しゃ物に血が混じっている(茶色いものを吐いた)
・赤ちゃんの顔色が悪い、呼吸がいつもと違う
・緑色や黄色のものを吐いた
・便やおしっこが出ていない(明らかにいつもより減っている)
・嘔吐だけでなく下痢も繰り返している


これらの症状が見られた場合は、吐き戻しではなく何かしらの異常が体の中で起きている可能性があるため、医師の診察を受けましょう。いつもと違うものを吐いたなどの場合は、吐いたものを持参するもしくはスマホで写真を撮って、受診した際に医師に見せるとより診断がしやすいです。他にも発熱があったり、「いつもと何か違う」「何かおかしい」というような親の感が働いた時は、ちゅうちょせず受診してください。

新生児の吐き戻しは冷静に対処を


吐き戻しについてここまでお話をしてきましたが、吐き戻しは多くの赤ちゃんにみられるものであり、正しい対処をすれば問題ないです。
それでも「心配で……」という方もいるかもしれません。この症状が大丈夫なのかどうか自分で判断できない時には、小児救急電話相談(#8000)を利用するのもよいでしょう。一人で悩まず、周りの人の手を借りながら育児をしていってくださいね。

育児の不安や睡眠不足は、プロの助けを借りて


ベビーシッター
吐き戻しをする時期は、赤ちゃんがまだまとまって寝てくれない時期でもあり、吐き戻しが多いと洗濯などの家事に追われ、親の方も体調を崩しがちです。そんなときは、産後ドゥーラベビーシッターなど、育児のプロの手を借りて上手に乗り切りましょう。赤ちゃんばかりでなく、ママパパもお互いに労わる時間を作って、長く続く育児を楽しめるようにしていきたいですね。

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■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。


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