多くのママは、妊娠中から食事に気をつけていたと思います。出産後、久しぶりに好きなものを食べたいけれど、母乳に影響はないか、心配になる人も多いのではないでしょうか?ここでは、授乳中に食べてはいけないものを知りたい人や我慢している食品や飲み物をいつになったら口にできるのかを知りたい人に向けて、助産師がお話します。

授乳中に食べてはいけないものがある理由


授乳
授乳中は食事により一層気をつけるように言われていますが、それはなぜでしょうか。
ママが食べたものは消化吸収され、その一部が母乳となり赤ちゃんの栄養源になります。質のよい母乳を出すためには、ママの食生活が整っている必要があります。

母乳は何からできているの?


母乳は、ママの血液からできています。ママが口にしたものは、ママの消化管で消化・吸収し、分解された後に血液として全身に運ばれて、その後乳房に取り込まれて母乳となり、赤ちゃんの食事になります。
授乳中のママの食事について「あれを食べてはだめだ」「これを食べてはだめだ」と言われることもありますが、実は食事と母乳の関係性は明確な根拠はなく、最近では母乳の質とママの食事は大きく関係しないとも言われています。
ただし、薬やアルコール、カフェインなど赤ちゃんが口にすると悪影響を及ぼしうる成分は、摂らないようにしなければいけないので注意しましょう。

*助産師からの一言コメント*
母乳の分泌には食事以外にホルモンも影響しています。
ホルモンは生涯でティースプーン1杯ほどの量しか分泌されないのですが、ほんの微量でも母乳の出に影響しますし、子宮の戻り、生理の再開、心理的状態など女性の全身に影響します。ホルモンの分泌を良くするにはストレスを出来るだけ避けること、規則正しい生活をすることなどが重要です。


食べたものはどのくらいで母乳になる?


ママが食べたものがどのくらいで母乳になるかは、その食品の種類や個人の体質、食べ合わせによって変化します。例えば、消化吸収されやすい飲物(例えばコーヒー)を摂取した場合、母乳に含まれる血液中のカフェイン濃度は15分〜30分ほどでピークに達します。動物性タンパク質(例えば卵)などの比較的緩やかに消化吸収される食品の場合、母乳に移行するのは2〜3時間ほどかかります。
このように食事は大人のママが消化吸収するスピードによって赤ちゃんへの母乳へどのくらいで移行するか変化するのです。

ママが食べたものによって母乳の味が変化するって本当?


「ママが塩辛いものを食べれば赤ちゃんの母乳も塩辛くなる」「甘いものを食べれば母乳も甘くなる」などと言われることもありますが、ママが食べたものは消化吸収され、血液になって母乳へ変化するので、ママの食べたものが母乳の味に直接影響することはありません。ママの体は「食べた物が母乳になる」というような、簡単な作りにはなっていないのです。
ただし、ママが健康的な食事をしていれば、血液自体が健康的なので赤ちゃんにも健康的な母乳を与えることは間違いありません。できるだけ、母子ともに健康的な食生活になるよう気をつけるに越したことはないでしょう。

授乳中に食べてはいけないもの一覧


ネットで検索をすれば「授乳中あれはダメ」「これもダメ」と根拠がない間違った情報が多く出回っています。母乳の出を良くするためや、赤ちゃんにより良い母乳を与えるためには、よくない成分は避けつつ安心して食べられる食品をとっていく必要がありますが、絶対にこれはダメ!というものは実は意外と少ないです。
ここでは「絶対NG」なもの、「量を控える」必要があるもの、「意識して食べた方がいい」ものをご説明します。

授乳中に絶対NGなものは?


☑ アルコール(時間を開ければ少量はOK)
☑ タバコ
☑ 薬
(医師の許可があれば内服可能な薬あり)

アルコールについては詳しく後述しますが、母乳の分泌を抑制する働きがあり、母乳中にも少量のアルコールが移行してしまいます。ただし、授乳時間を十分に空けて工夫をすれば、少量に限り飲むことはできます。
タバコに関しては、喫煙者の母乳にはニコチンが移行することが分かっています。つまりタバコを吸うと血液を通して赤ちゃんがニコチンを飲み込み、受動喫煙することになります。
赤ちゃんがニコチン中毒症状を引き起こす可能性もあるため、妊娠中に引き続き授乳中も禁煙するようにしましょう。

「子どもたちをタバコから守るために」|母子健康協会

薬に関しては、最近の研究では授乳中も多くの薬は内服できると言われています。ただし薬の成分は微量ではありますが母乳に移行してしまうため、その薬が赤ちゃんに影響のないものなのかどうか、必ず医師や薬剤師に確認してから内服するようにしましょう。

授乳中に量を控える必要があるものは?

☑ カフェイン

カフェインは、以前は授乳中に摂取を避けるよう多くの産院で指導されていました。しかし近年では、量に気をつければ授乳中に摂取してもよいとされています。カフェインについても詳しく後述します。

積極的に摂取してほしい食べ物は?


☑ 水分を1日2L以上飲む
☑ 魚を積極的に摂る
☑ バランスの良い食事が一番


ママが栄養不足や水分不足になるとママの血液自体が減り、体内のバランスが崩れてしまうため、結果的に母乳の量が減ることにつながります。また偏った食事で食生活が乱れるとホルモンバランスも崩れるため、母乳の分泌に影響します。血液の大部分は水分です。水分摂取が足りないと母乳を作り出すことができません。産後、授乳のたびにのどが渇くのは、体が水分を欲しているからです。しっかりと水分を摂取していきましょう。
魚はEPAやDHAといった赤ちゃんの成長にかかせない栄養素を多く含んでおり、良質なタンパク質も摂れるため、是非積極的に摂ってほしい食品です。
バランスのとれた食事が母子ともに健康でいるためには不可欠です。野菜、肉、魚、ごはんと、栄養バランスのとれた食事を意識して摂っていきましょう。

【授乳中に食べてはいけないもの①】アルコール類


ビール
アルコールは、基本は授乳中摂取するのは避けた方がよいですが、どうしても飲みたい時もありますよね。そんなときの対処法をご説明します。

アルコールはなぜNGなの?


アルコールは、母乳の分泌を抑制する働きがあることと、母乳中にも少量のアルコールが移行してしまうため、授乳中は基本的に禁酒する必要があるとされています。アルコール摂取後、血中アルコール濃度は30分〜1時間ほどでピークに達します。
アルコール耐性は人それぞれなので、アルコールに弱い人が授乳中に飲酒すると、アルコールを代謝しきれず血中アルコール濃度が高くなってしまい、母乳にも多くのアルコールが移行してしまいます。
そのため、自分の体質をよく鑑みて、お酒が飲めるタイプの人はタイミングを見計らって少量だけ楽しむというのがポイントになります。

時間が空けば飲んでも大丈夫?


どうしても飲みたい場合は、授乳間隔を空ければ、少量飲んでも問題はありません。アメリカ小児科学会によると、飲酒後2時間は授乳をしてはならないとされています。どうしても飲酒をしたい場合は、一工夫が必要です。飲酒直前に母乳をあげて、飲酒後2〜3時間以上間隔を空けてから、次の授乳をするようにします。
また、飲酒の量にも注意が必要です。体重50kgの女性だと1日350mlのビール1本もしくはグラスワイン1杯までにしましょう。ウイスキーロックや泡盛などアルコール濃度の高いものは、血中にアルコールが残留する時間が長くなるので、授乳中に飲むのは避けた方がよいです。

「母乳と母乳育児に関する方針宣言」2005年改訂版|アメリカ小児科学会

調味料やアルコール入りのお菓子、ノンアルなど注意することは?


アルコールの入った調味料やアルコール入りのお菓子、ノンアルコール飲料は工夫は必要なものの、授乳中も摂取して問題ありません。
調味料は、本みりんなどアルコールが含まれているものは、1〜2分煮立たせることでアルコールが飛ぶので、使用して大丈夫です。
ブランデーなどアルコールが入ったお菓子は、焼き菓子であればアルコールは飛んでいるため食べても問題ないです。ただし、洋酒漬けのレーズンなどを食べたい場合は、飲酒時と同じように、食べた後は2〜3時間空けてから授乳をするようにしましょう。
ノンアルコール飲料は、アルコール度数が0.00〜0.99%未満の飲料のことを言います。授乳中なのであれば、ノンアルコール飲料の中でも0.00%と表示されているものを選んで飲むことをオススメします。

【授乳中に食べてはいけないもの②】カフェイン


カフェラテ
カフェインは、最近まで妊娠中に引き続き授乳中も避けるように言われていました。しかし最近では、授乳中は量に気をつければ摂取してもよいとされています。
ただし、カフェインはコーヒーなどの飲料以外にも、チョコレートなどさまざまな食品に含まれています。そのため、自分で思っているよりも多く摂取している可能性がある点にも、注意が必要です。

どのくらいならカフェインを摂ってもよいの?


厚生労働省では授乳中のカフェイン摂取量に関して、摂取許容量の基準は示されていませんが、欧州食品安全機関(EFSA)では、授乳中200mg/日であれば摂取可能としています。

*カフェイン含有量 参考値*

・エスプレッソ 212mg/100ml
・ドリップコーヒー 60mg/100ml
・紅茶  30mg/100ml
・煎茶  20mg/100ml
・ココア  15mg/150ml
・チョコレート 30mg/100g
・レッドブル 40mg/100ml


上記は、それぞれの食品や飲物に含まれるカフェインの含有量の参考値です。こちらを参考にして、摂取量を調整してみてください。ただし、カフェインは感受性が人によって違い、少量でも摂取すると夜眠れないという人もいます。そのような体質の人は、授乳中も引き続きカフェイン摂取は控えた方がよいでしょう。

食品中のカフェイン|食品安全委員会

他にもある!授乳中に気を付けたいもの


授乳中は、ママが体調を崩すと授乳ができなくなる=赤ちゃんが困るということになります。ママの健康は赤ちゃんのためでもあるのです。ここでは授乳中に気をつけたい食品をいくつか紹介します。

なま物に注意しよう


健康な状態のとき、私たちは免疫機能が十分働いているため、感染症にかかりにくくなっています。しかし、寝不足やストレス、過労、日光に長時間当たった後など、心身が疲れているときには免疫力が低下し、普段口にしているものでも食中毒になることがあります。
☑ 生肉(腸管出血性大腸菌、カンピロバクターなど)
☑ 刺身(アニサキス、腸炎ビブリオなど)
これらを食べるときには、できるだけ新鮮なものを選ぶようにし、少しでも不安要素がある場合には火を通してから食べるようにしましょう。

バランスのよい食事をとろう


☑ 水分不足
☑ 栄養不足
(必要な栄養素など)
☑ 塩分の摂り過ぎ
☑ 偏った食生活


母乳はママの健康状態がそのまま反映されるものだと思ってください。栄養不足や水分不足では、そもそもの母乳を作り出すことができないため、十分な母乳分泌を望めなくなってしまいます。上記のことに注意し、母子ともに健康的でいられるよう意識して生活しましょう。

食べてはいけないものはいつになったら解禁OK?


これまでお話してきた授乳中に注意してほしいものに関してですが、いつになったら解禁できるのか気になりますよね。授乳中の食事制限に関して助産師の視点でお話します。

実は、授乳中に食事制限は必要ない


え?食事制限はいらないの?とびっくりされそうですが、そうなんです。最近の研究を調べている医療者であれば、食事制限は不必要であることを知っているはずです。
「〇〇を食べると母乳がよく出るよ」「〇〇は乳腺が詰まるから食べちゃだめ」など信憑性のない情報に振り回されないようにしましょう。
また、アルコールやカフェインに関しては、授乳時間や摂取量に注意しながら少量たしなむのは問題ないです。とはいえ、「気兼ねなく沢山飲みたい!」という場合は、卒乳してから飲むことをおすすめします。混合授乳の場合は12時間以上空けてから、母乳をあげるという方法もあります。

*助産師からの一言コメント*
助産師によっては、授乳中も食事制限を指導する人もいますが、近年では食事と母乳は関係ないと言われるようになってきました。
妊娠中からたくさん注意して生活してきた頑張り屋のママたちには、出来るだけストレスなく育児をしてほしいです。
なので、今日ご説明した注意点を守りながら、好きなものを摂るようにしてほしいです。
ただし、何事もバランスよくが基本!食べ過ぎ、飲み過ぎには注意しましょう。


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授乳中は赤ちゃんと離れられずストレスが溜まりがち


育児ストレス
どんな時も赤ちゃんのことを気にしながら生活している授乳中という状況は、ストレスが溜まりがちです。そんなときは食事や飲酒以外でどのようにストレス解消を図ればよいのでしょうか?

赤ちゃんと少し離れる時間を作るのもよい


育児には休息がないので、可愛いわが子も時にはしんどく感じるもの。「お酒が飲みたい」「暴飲暴食したい」という気持ちがあるならば、それはストレスの現れです。好きな食事で発散できないときは、ベビーシッターに頼るなどして、少しの間赤ちゃんと離れる時間をつくることで、精神面の落ち着きを取り戻しましょう。

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授乳中は食事に注意。ストレス発散は食事以外で


授乳中は、注意することもありますが、基本的にはストレスなく楽しみながら生活することが一番です。育児をしていると少しずつストレスが溜まりがちです。そんなときは、赤ちゃんを預けてひとり時間を作ったり、夫婦でデートする時間をつくったり、映画館や美容院へ出かけたり、友だちとショッピングに行ったり…食事以外の方法でストレス発散できるとよいなと思います。
誰にも預けられないとお困りのときは、ベビーシッターなどを活用するのもおすすめです。

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キッズラインなら、産後ドゥーラやベビーシッターを探せる


ベビーシッターのマッチングプラットフォームであるキッズラインなら、産後の育児や家事をサポートしてくれる産後ドゥーラや、0ヶ月の赤ちゃんを見られるベビーシッター、家事代行をお願いできる家事代行サポーターを、スマホで気軽に探すことが出来ます。
初めて依頼する相手に子どもを預ける際には、必ず顔合わせまたは事前面談が必要なので、まずは利用登録をして、検討している方に連絡を取ってみるのがオススメです。
赤ちゃんとの生活を支えてくれる心強いサポーターと“子育てのチーム”を作って、みんなで子育てする環境をつくっていきましょう。

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■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。


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