親が一生懸命作った食事で子どもが遊んだり、食べてもらえなかったりするのはつらいですよね。苛立ちを感じ、怒りたくなることもあるでしょう。遊び食べをする子どもには、どのようなサポートをしたらよいのでしょうか。今回は子どもの遊び食べの対策について、ベテラン保育士が解説します。

子どもが遊び食べをするのはいつから?いつまで続く?


手づかみ食べ
子どもは自分で食べられるようになると、遊び食べをするようになります。生後9ヶ月頃から手づかみ食べが始まるので、その頃から遊び食べが始まることが多いでしょう。
3歳くらいになると、食事を食べ終わるまでの時間が短くなったり、自分で食事を終了するタイミングを決められるようになったりします。食事と遊びを分けて考えられるようになるため、徐々に遊び食べをしなくなってきます。

子どもが遊び食べをする理由


子どもが遊び食べをする理由に、以下の3つが挙げられます。

☑ お腹がすいていない
☑ 実験をしている
☑ 大人の反応を見ている



1つずつ解説します。

【理由①】お腹がすいていない


遊び食べの理由の1つに「お腹がすいていない」ことが挙げられます。子どもは欲求に正直です。食べたければ食べるし、食べたくなければ食べません。お腹がすいていなくても、好きなものだったら食べます。お腹がすいていないときには食べないものでも、すいていたら食べる場合もあります。
まだ小さな子どもは「今食べておかないと、後でお腹がすいちゃうかも」と先を見通して行動することは困難です。食事のときにお腹がすいていなければ食べません。すると、することは1つ「遊ぶこと」です。

【理由②】実験をしている


大人にとっては遊んでいるように見えるので「遊び食べ」という名前がついていますが、子どもにとっては「実験」です。目の前にあるものの性質を知ろうとして実験をしているのです。

・0歳児の場合
9ヶ月頃になると手づかみ食べが始まります。自分で食べ物をつかめるようになると、潰したり、投げたりします。潰すのも投げるのも、赤ちゃんにとっては実験です。「手にぎゅっと力を入れてみたら潰れた」「投げたら、飛んでいって落ちた」大人にとっては当たり前のことでも、赤ちゃんにとってはすごい発見なのです。


・1歳児の場合
1歳くらいになると、スプーンやフォークを使い始めます。スプーンやフォークでお皿をたたけば、音が出ます。落とすと、音を立てて転げます。落とすたびに音が違ったり、向きが違ったりして、子どもにとっては新発見の連続です。「次、落としたらどうなるんだろう」と好奇心が湧いて出てくるのです。


このように、子どもにとっての食事タイムは、さまざまな性質のものが目の前に並び、好奇心がくすぐられる時間なのです。

【理由③】大人の反応を見ている


子どもはママパパの反応を得るために、遊び食べをする場合があります。子どもが偶然スプーンでお皿を「カンッ」と鳴らしたときに、ママパパが振り返って笑ってくれたら、うれしくて何回も鳴らすようになるでしょう。
1人で寂しく食事をしているときに食べ物を落としたらママパパが来てくれた、という体験をした子は、たとえ怒られるとわかっていても、また食べ物を落とすでしょう。大人が喜ぶ顔や困った顔、怒った顔、驚いた顔。自分の行動に対して「ママパパがどのような反応をするのか見たい」といった気持ちが子どもの中には存在します。

保育士が実践する遊び食べ対策【0歳児】


赤ちゃんの食事
ここからは保育士が実践する遊び食べ対策をご紹介します。0歳児は手づかみ食べが始まるので、以下のような対策をします。

【0歳児の遊び食べ対策】
☑ 掃除しやすい場所で食事をする
☑ 手づかみ用と食べさせる用に分けて準備をする
☑ 赤ちゃんの遊び食べに大きなリアクションをとらない


1つずつ解説します。

掃除しやすい場所で食事をする


掃除しやすい場所で食事をしましょう。絨毯や畳より、フローリングの方が食事に適しています。
なぜなら、赤ちゃんはたくさんこぼすからです。9ヶ月くらいになると手づかみ食べが始まりますが、当然上手には食べられません。食べ物を赤ちゃんに近づけなければ汚される心配はありませんが、赤ちゃんにとって大切な体験ができなくなってしまいます。
赤ちゃんは自分で食べたがるようになります。そうしたら掃除しやすい環境の中で、十分に手づかみ食べをさせてあげたいですね。

手づかみ用と食べさせる用に分けて準備をする


食事を2つに分けて準備しましょう。1つは手づかみ用で、もう1つは食べさせる用です。
手づかみの機会は大切ですが、すべてこぼされてしまったら食べる分がなくなってしまいます。まだ上手に食べることが難しいうちは、食べる分のごはんもきちんと確保しておきましょう。
手づかみ用は赤ちゃんの前に置き、食べさせる用は大人の前に置きます。赤ちゃんのお腹も満たしつつ「自分で食べたい気持ち」にも応えていきたいですね。

赤ちゃんの遊び食べに大きなリアクションをとらない


赤ちゃんの遊び食べに大きなリアクションをとらないようにしましょう。赤ちゃんはママパパの反応が大好きです。
食べ物を投げて「あっ!」と反応すれば、その反応が見たくてもう1度同じことをします。自分の行動とママパパの言動がリンクしていることがうれしいのです。
怒った表情も、赤ちゃんにとっては1つの反応です。「怒られたから止めよう」と感じるのは、もっと先の話です。してほしくない行動にはリアクションをとらないようにしましょう。

保育士が実践する遊び食べ対策【1歳児】


1歳児はスプーンやフォークなどの食器具を使って自分で食べるようになります。一方で、集中力を保てる時間がまだ短いので、意識が食べることから遊ぶことへと向いてしまいがちです。1歳児には、食事に集中できるような対策が必要になってきます。

【1歳児の遊び食べ対策】
☑ お腹をすかせる
☑ 一緒に食べる
☑ 食事に集中できる空間を作る


1つずつ解説します。

お腹をすかせる


食事に集中させるためには、お腹がすいていることが重要です。「食べたい」という欲求があれば、自然と食べることに夢中になります。
お腹をすかせるために大切なことは2つあります。「生活リズムを整えること」と「身体を動かして遊ぶこと」です。十分に睡眠をとり、毎日同じようなリズムで生活すれば、食事の時間にお腹がすくようになります。身体を動かすことが好きな時期なので、夢中になって遊ぶ時間が持てれば、さらに食欲が増してくるでしょう。

一緒に食べる


ママパパも子どもと一緒に食事を楽しみましょう。1人で食べる食事は味気なく、すぐに飽きてしまいます。お腹も心も満たされません。
「家ではあまり食べないけど、保育園ではよく食べる」という言葉をよく聞きますが、それは一緒に食べる友だちの存在があるからです。楽しいと食が進みます。家族で食卓を囲み、楽しい時間を共有できれば、遊び食べも減ってくるでしょう。

食事に集中できる空間を作る


食事に集中できる空間を作りましょう。1歳児は興味が移り変わりやすく、気になるおもちゃが視界に入ると食事への関心が薄れてしまいます。
保育園でも食事の前には部屋の片付けをしたり、遊びと食事の場を分けたりして、子どもの意識が散漫にならないよう配慮しています。またテレビは聴覚も視覚も刺激するため、子どもは食事中であることを忘れてしまいます。家庭ではテレビを消して、子どもが食事に集中できる環境に整えるとよいでしょう。

保育士が実践する遊び食べ対策【2歳児】


2歳の食事
2歳児は上手に自分で食事ができるようになりますが、同時に好き嫌いや食べムラがでてくる時期です。食事に興味が持てるような働きかけをすることで、遊び食べを防ぐことができます。

【2歳児の遊び食べ対策】
☑ 野菜を育てる
☑ クッキングをする
☑ 遊び始めたらごちそうさまをする


1つずつ解説します。

野菜を育てる


子どもと一緒に野菜を育ててみましょう。タネから育てるのが難しければ、苗から始めてみてもいいですね。プランターに苗を植えて、子どもと水やりをしながら生長の過程を楽しみます。そうしてできた野菜は子どもにとって特別なもので「食べたい」という気持ちの原動力になります。
採れたてをすぐに調理して、子どもと収穫の喜びを共有すれば、少しずつ食事に興味をもつことができます。

クッキングをする


子どもと一緒に調理をしてみましょう。調理に関わることで、自然と食への関心が高まります。
白菜をちぎってもらったり、きのこをほぐしてもらうのがおすすめです。その程度であれば、子どもも安全に楽しく行えます。そして、鍋やフライパンにちぎった野菜を入れてもらってもよいですね。自分が調理に関わったという意識があるだけで、子どもの「食べてみよう」という気持ちが高まり、遊び食べの防止にもつながっていきます。

遊び始めたらごちそうさまをする


どんな工夫をしても遊び食べが収まらないのであれば、思いきって食事を終わりにしてみましょう。
遊び始めたら「食べないのなら、ごちそうさまだね」と声をかけます。「食べる」と言って食べ始める子が大半ですが、すぐに遊び始めて同じやりとりが何度も繰り返されるようであれば、「次は本当におしまい」と子どもに伝え、実行します。
2歳児は大人の言葉も理解できるようになってくるので「遊んだら終わり」という経験を重ねていくことで、少しずつ遊びと食事を分けて考えられるようになっていきます。

遊び食べをする子、しない子には何の違いがある?


多くの子どもは遊び食べをしながら育ちます。小さな子どもにとって遊ぶことは、学ぶことでもあるからです。食事の場においても、さまざまな食材や物に触れ、実験しながら食べ方を学んでいきます。小さい頃にはそうした試行錯誤の機会を保証して、食べる意欲を育てることが大切です。

親が食べさせれば、遊び食べはしないでしょう。食べ物にも食器にも触れることがないからです。服や場を汚すことなく食事ができるかもしれません。しかし、子どもにとって食事は「待っていればやってくるもの」となり、食べる意欲は育ちにくくなってしまいます。
「食べたい」という意欲をもつことと、その意欲を自分の手で満たしていく習慣をつけるためにも、遊び食べをある程度認めることも必要です。その上で、少しでも大人の大変さが軽減される対策をとっていきたいですね。

今すぐベビーシッターを依頼してみる

自宅での遊び食べに困ったら、プロにサポートを頼むのも手


食事のサポート
遊び食べの大切さがわかっていたとしても、一生懸命準備したものを、頻繁に投げたり、こぼしたりされてはママパパも傷つきますよね。「食べ物を粗末にしないでほしい」「部屋を汚さないでほしい」など、さまざまな思いが渦巻くことでしょう。苛立ったり、大きな声をあげて子どもを叱ったりして、後から自己嫌悪に陥ってしまうこともあるのではないでしょうか。
本来、食事は楽しい時間のはずです。子どもの遊び食べが原因でつらい時間となっているのなら改善が必要です。心の余裕がなくなり、ママパパがつらくなってしまうのなら、食事の補助をベビーシッターに依頼するのも1つの手です。保育のプロに手伝ってもらいながら、楽しい食事の時間を取り戻しましょう。

今すぐベビーシッターを依頼してみる

遊び食べは成長過程。冷静に対応を


「遊び食べ」は子ども特有のかわいい姿だと周囲の人には思われがちです。しかし、毎回遊び食べをする子どもと向き合うのは、しんどいことですよね。
子どもにたくさん食べてほしいと願い、一生懸命に作った料理が雑な扱いを受けるのは精神的につらいものです。遊び食べは3歳くらいで収まるとわかっていたとしても、なかなか冷静に対応することは難しいでしょう。
子どもの遊び食べに対して「どうしたらよいのかわからない」と悩んでいる方は、一度ベビーシッターの手を借りてみてはいかがでしょうか。食事をしている子どもの姿を客観的に見ることができます。また保育のプロが子どもにどのような声がけをしているのか、知ることもできます。「かわいいな」「子どもと一緒に食事がしたい」という気持ちが湧いてくれば、再び笑顔で食卓を囲むことができるようになりますよ。

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■保育士ライター 佐野希子
18年目の現役保育士。独学で認定試験に合格し、幼稚園教諭の資格も取得。他に社会福祉士の資格も保有。現在は副主任として保育現場の指導とサポートに努めている。


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