長かった妊娠、大変だった出産を乗り越えると、いよいよ授乳育児が始まります。母乳が安定して出るようになるまでは、泣いては繰り返し吸わせる頻回授乳をする必要があります。ちょこちょこ飲みとも言われる頻回授乳ですが、赤ちゃんの成長や母乳分泌にはとても大切なものです。ここでは頻回授乳はいつまで続くのか、どのように乗り越えればいいのかなどを助産師がお話します。
頻回授乳とは、どんな状況?

ここでは頻回授乳とはなにか、普通の授乳と頻回授乳の違い、頻回授乳の回数、自分が頻回授乳に当てはまるかどうかなどをお話します。ぜひ参考にしてみてください。
頻回授乳とは?
頻回授乳とは、赤ちゃんが欲しがるたびにこまめに授乳を行うことです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、個人差はあるものの胃がまだ小さく飲む力も弱いため、1〜3時間おきに起きてはおっぱいを飲むことを繰り返します。
母乳育児をしたいママは、生後すぐから頻回授乳をすることで、母乳分泌を促すことにつながります。
普通の授乳と頻回授乳の違い
頻回授乳と普通授乳の違いの明確な定義はありませんが、3時間と待たずに授乳をして
1日に10回以上授乳をしている場合は頻回授乳といえるでしょう。
胃の容量が大きくなってきて授乳間隔が3時間開くようになってきたら、普通の授乳間隔になってきたと考えられます。
頻回授乳になる理由、原因は?
赤ちゃんの授乳回数が多くなったり授乳時間が長かったりする原因とは何なのでしょうか。赤ちゃんの特徴と一緒にお話します。
【頻回授乳の原因】
・赤ちゃんの胃が小さく一度の授乳で少量しか飲めない
・赤ちゃんの吸う力がまだ弱い
・母乳の量が足りていない
・乳頭の形や硬さが赤ちゃんにとって吸うのが難しく、時間がかかる
・お母さんの水分摂取が少ない
・母乳を欲しいサインではないのに、母乳を与えている
・ミルクに比べ母乳の消化が早いため、母乳育児は頻回になりやすい
赤ちゃんによっては、生まれてすぐ上手に吸える子もいれば、不器用な子もいます。また赤ちゃんが食いしん坊で、母乳の分泌が追いつかない場合もあります。
赤ちゃんとママの数だけ吸い方にも違いがあるため、上の子と下の子で比べても全然授乳間隔が違う!ということもあります。
頻回授乳はいつまで続く?
終わりの見えない頻回授乳にぐったり…という方もいますよね。でもご安心ください。
必ず授乳の回数が減って落ち着いてくる時期が来ます。どのくらいの時期に落ち着いてくるのか、紹介していきます。

授乳回数は赤ちゃんによって大きく変動するため、上記の表は参考程度にしてください。
生後すぐから生後1ヶ月頃までは赤ちゃんもまだ未熟でママの母乳分泌も少ないため、頻回授乳になりやすいですが、生後2〜3ヶ月頃からは1回の授乳で多く飲めるようになるため、授乳回数も減ってきます。
また離乳食が始まると母乳の回数もグンと減り、楽に感じるママもいるでしょう。
*助産師からの一言アドバイス*
ここでお伝えしたいのは、絶対に完全母乳でないといけないというしがらみは捨てて、必要であればミルクを足してもよいということです。
ミルクは腹持ちが良く、赤ちゃんが長く寝てくれることに繋がりますし、なによりパートナーなど周りの人を巻き込んで育児ができます。
赤ちゃんと離れる時間を作ることは何も悪いことではありません。
母乳が良く出ている方はミルクを足すことで乳腺炎になることもあるので、混合授乳を希望する場合は、近くの助産師に相談するようにしましょう。
頻回授乳にはメリットがある
産院では、おっぱいをいっぱい吸わせるようにと言われることも多いですが、これは単純に赤ちゃんがおっぱいを欲しがっているからだけではないことをご存じでしょうか。
頻回授乳は大変ですが、新生児期には授乳の刺激によって母乳が生成されるなどメリットもあります。
ここでは頻回授乳の効果についてお話します。
【頻回授乳の効果】
・できるだけ早いタイミングで母乳をこまめに吸わせることで、母乳分泌ホルモンが出やすくなる
・母乳分泌が良くなると出生後すぐの赤ちゃんの体重減少を最小限に留めることができる
・頻回授乳した人の方が産後数ヶ月後の分泌量が多くなり、完全母乳育児をしやすい
・産後の子宮の回復が早まる
・赤ちゃんに対して愛情が育ちやすく、赤ちゃんもママに対して愛着がつきやすい
・ママと赤ちゃん共に精神安定しやすい
・母乳から赤ちゃんに良い免疫細胞を与えることができる
・赤ちゃんのあごの発達を促し脳にも良い影響がある
・乳幼児突然死症候群を予防できる
・産後ダイエットに効果的
頻回授乳は体力的にとても大変ですが、一方で赤ちゃんにもママにも良いことが多いのです。可能な限り新生児期はおっぱいを吸わせる方がいいと言われるのには、ちゃんとした理由があるのです。
「頻回授乳がつらい…」一方でデメリットも

頻回授乳の良さはあるものの、ママが睡眠不足になったり、そのせいで母乳の出が悪くなるなど、デメリットもあります。
【頻回授乳のデメリット】
・睡眠不足になりやすい
ただでさえ産後の身体は全治2ヶ月と例えられるほどの傷を抱えている状態です。その上で睡眠不足になると疲労が抜けきれず、治癒の遅延に繋がる可能性があります。
・腱鞘炎や腰痛、肩こりなどの原因に
赤ちゃんは生後まもなくでも3kgくらいあり、その重さを1日に何回も抱っこや授乳で支えるのは力が必要です。授乳の姿勢は猫背になりやすく、腰痛や肩こりを訴える方も少なくありません。
・ストレスが溜まる
頻回授乳は赤ちゃん中心の生活にならざるを得ないため、ストレスに感じる方もいます。授乳中は食べ物に気をつけたり禁酒をしたりと、妊娠前とは大きく違う生活スタイルが辛いと感じる方もいるでしょう。
・他の人に預けられない
母乳だけで育てていると休みたくても休めない状態になり、辛いと感じる方もいます。
*助産師からの一言アドバイス*
頻回授乳の良さはわかっていても、これだけ大変なことがあると続けるのが辛いという方ももちろんいらっしゃいます。そのような場合は混合授乳やミルク育児などの方法もあるため、無理をせず自分に合った育児を選択していきましょう。
頻回授乳をやめたい…やっぱりダメなの?
頻回授乳の良さはわかっていても辛いと感じているママもいますよね。ここでは頻回授乳を休んでもよいかどうか、赤ちゃんが泣けば必ず母乳を与えなければいけないのか、少し時間を空けてもよいのかなど、育児のアドバイスのご紹介をします。
頻回授乳は休んでもいいの?
頻回授乳は、完全母乳育児を希望する方は続けた方がよいでしょう。しかし、混合授乳を希望する方は、1日に数回ミルクを足しても問題ありません。
*助産師からの一言アドバイス*
最近ではミルクの質も格段に向上し、母乳育児とミルク育児による栄養的な違いはなくなってきました。
大事なことはママが笑顔になる選択をするということです。
母乳で頑張って育ててもママに笑顔がなくなるのであれば、ミルクに置き換えてもよいです。パートナーや家族、ベビーシッターなど周りの手を借りて、無理のない育児をして欲しいと思います。
赤ちゃんが泣けば必ず母乳を与えなければいけないの?
赤ちゃんが泣くのは母乳だけが原因ではありません。抱っこやオムツ、室温など泣く理由が他にもないかどうか探ってみるようにしましょう。
どうしても泣き止まない場合は、
ドライブをする、ベビーカーで外を散歩するなど気分転換をしてみるのもおすすめです。
頻回授乳が辛いときは、少し時間を空けてもよいの?
頻回授乳が辛い時、ミルクに置き換えてみるのはひとつの手なのですが、注意して欲しいことが、
急に授乳間隔を変えてしまうと乳腺炎になるリスクがあるということです。
母乳の仕組みとして、赤ちゃんが1日に飲んだ量を次の日も作るようになっています(※)。それを急に減らしてしまうと乳房に母乳が残ってしまい、乳腺炎を引き起こしてしまうのです。
そのため、
ミルクを併用する場合は、徐々にミルクの量を増やしていく必要があります。
出来るだけ毎日ミルクを足す時間帯を決めて、パートナーや家族に手伝ってもらうようにしましょう。
※参考資料
http://www.igaku.co.jp/pdf/bonyuikuji-01.pdf
授乳回数を減らして頻回授乳から抜け出す方法
ここでは頻回授乳が辛い時の対処法についてお話します。母乳が詰まるなどの問題がなければ、夜の授乳をミルクに置き換えるなど、ご自身にあった方法で母乳育児をしていくようにしましょう。
【頻回授乳が辛い時の対処法】
①赤ちゃんが泣く理由を探る
赤ちゃんが泣く理由はおっぱいを飲みたい時だけではありません。おっぱいをあげてもすぐに泣いてしまう場合は、以下のように他の理由で泣いている可能性があります。
☑オムツが濡れて気持ち悪くて泣いている
☑手足が冷たい場合は寒くて泣いている、逆に汗をかいている時は暑くて泣いている(かけ布団や室温を調整してあげましょう)
☑室内が明るすぎる、逆に暗すぎる(赤ちゃんによって明るい方が好きな子暗い方が好きな子がいます)
☑モロー反射で起きてしまう(おくるみでくるんであげるとよいです)
☑抱っこして欲しくて泣いている
など、環境を調整してあげるようにしましょう。
②母乳が十分出ているか体重チェックする
母乳の出る量が少ないと赤ちゃんはお腹がすいてしまい、頻繁に起きてしまいます。
新生児期の1日の体重増加量は約30gほどです。自宅にある大人用の体重計は100g単位でしか測れないため、1週間に1回測って、赤ちゃんの体重増加をチェックしてみましょう。
1週間で200gほど増えていれば問題ありません。
方法は、赤ちゃんを裸んぼで抱っこして体重計に乗ります。そのあとママの体重を引けばおおよその赤ちゃんの体重が算出されます。
自治体やデパートの赤ちゃん用体重計を使ったり、赤ちゃん用体重計をレンタルする方法もあります。
もし、体重増加が少ない場合は、③で紹介するミルクを併用する方法に変更しても良いと思います。
*助産師からの一言アドバイス*
体重増加に関しては、自分では判断しにくいこともあると思います。その場合は産院や助産院などで相談するのもおすすめです。
出産した産院でなくても近くの産院・助産院でも見てもらえます。最近ではオンラインや電話で相談に乗ってくれる産院も増えてきていますので、気軽に問い合わせてみてください。
③ミルクを併用する
頻回授乳で疲労が溜まってしまう場合は、ミルクを併用しパートナーや家族に手伝ってもらいましょう。私のおすすめは夜間の授乳を1回ミルクに置き換える方法です。
ミルクはパートナーにあげてもらい、ママはその間に休息をとるようにしてください。
夜間の睡眠が数時間伸びるだけでも疲労感はかなり回復します。
*助産師からの一言アドバイス*
パートナーも育児の役割を与えることで、父と赤ちゃんの距離もグッと近づき、愛着形成されやすいです。
育児はひとりでするものではありません。できるだけ沢山の人に手伝ってもらいながら楽しい育児をしていくようにしてくださいね。
頻回授乳が辛い時は助産師に相談してみよう
産後は出産したばかりで身体はクタクタ、心身共に回復しきっていない状態です。授乳以外にも赤ちゃんのお世話でわからないことも多く、不安に感じることも多いのではないでしょうか。
誰かに話したくても誰に話してよいかわからない。そんな時は近くの助産師に相談してみるようにしてみてください。
先輩ママに産後の辛かったこととお聞きすると、
「頻回授乳で眠れないこと」
「乳腺炎になった」
「誰ともしゃべれず子供とずっと2人きりだった」
「マタニティブルーになって不安だった」
などとおっしゃる方が多くいます。
赤ちゃんに1番良いことをしてあげたいと考えるママは、産後のバランスを崩しやすい時期であることも相まって、精神的に追い詰められやすいです。
自己判断で突然授乳を辞めたり、頻回授乳がつらいのに我慢し続けると、母体にも赤ちゃんにもよくありません。
赤ちゃんの成長や授乳の進め方に少しでも不安があるときは、助産師に相談してみましょう。助産師は女性のからだとこころ、赤ちゃんのプロです。あなたのお話は秘密厳守で聞いてもらえますし、必要な時にはアドバイスももらえます。
*助産師からの一言アドバイス*
どの助産師さんに相談していいかわからない場合は、出産した産院でも良いですし、家の近くの助産院、地域の保健所で働く助産師さんでも良いと思います。
人間同士相性があると思うので、話しやすいと感じる方に聞いてもらうようにしましょう。
産後ドゥーラや家事サポートも活用して乗り切ろう

授乳の回数や時間が長くて、家事ができない、ごはんが作れない、自分の時間が持てないというときには、
産後ドゥーラや
家事代行サービスを依頼するなどして、無理をしないようにしてください。生後0ヶ月から見られる
ベビーシッターに頼んで、リフレッシュするのもよいでしょう。あなたにあった方法で、育児をできるだけ楽しみながら、無理なく乗り切っていきましょう。
産後ドゥーラや家事代行を探す
キッズラインなら、産後ドゥーラやベビーシッターを探せる
ベビーシッターのマッチングプラットフォームであるキッズラインなら、産後の育児や家事をサポートしてくれる
産後ドゥーラや、0ヶ月の赤ちゃんを見られる
ベビーシッター、家事代行をお願いできる
家事サポーターを、スマホで気軽に探すことが出来ます。
初めて依頼する相手に子どもを預ける際には、必ず顔合わせ(オンライン)または事前面談(対面)が必要なので、まずは利用登録をして、検討している方に連絡を取ってみるのがオススメです。
産後の生活を支えてくれる心強いサポーターと“子育てのチーム”を作って、みんなで子育てする環境をつくっていきましょう。
産後ドゥーラや家事代行を探す
■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。
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