長かった妊娠、大変だった出産を終え、産後はいよいよ赤ちゃんとの生活が始まります。「産後は安静に」とよく言われますが、具体的に何をしてはいけないのか、いつまで安静にしなくてはいけないのでしょうか?そこで、助産師の資格を持つ著者が、母子ともに健康で楽しい毎日を過ごせるよう、気をつけてほしいことなどをお話させていただきます。
昔から「産後の肥立ちが悪くなるから、産後は安静にしましょう」と言われますが、現代においてもそれは変わらず、産後はとにかくゆっくり休養をとることが大切です。
体調が戻らないと育児も難しい状況になり、せっかくの育児も楽しめません。
産後は産褥期(さんじょくき)とも呼ばれます。産褥期とは身体が妊娠前の状態に戻るまでの期間のことをいいます。
産褥期は個人の回復力にもよりますが、おおよそ6〜8週間ほどかけてホルモンバランスや子宮など全身状態が妊娠前の状態に戻ると言われています。そのためこの期間は、入院中のような生活をすることが大切です。
骨盤やホルモン状態、血糖値、会陰の状態など全身が悲鳴をあげている時期なので、忙しく動き回ったりすると後々の体調不良に繋がることがあります。
赤ちゃんの育児だけでも忙しい時期です。家事や身の回りのことは、できるだけ家族や外部のサポートなどに頼るようにしましょう。
【助産師からの一言アドバイス】
過去に「安産だったし元気!家事も育児も頑張るぞ〜!」と退院後すぐにバリバリと働くママさんがいらっしゃいました。
しかし、そのママは産後3~4ヶ月頃から動機、息切れ、だるさなどの症状が出始め、甲状腺ホルモン異常となってしまい、入院が必要に……。
産後すぐはホルモンバランスの影響もあり、ハイの状態になって本来の疲れに気づけない人も少なくないのです。家でゆっくりしていることが辛い方もいますが、産後は未来の楽しい育児のために、ゆっくり休むことが大切です。
産後のママのダメージは全治2ヶ月の交通事故と同じと言われているのをご存知ですか?場合によっては全治2ヶ月ではなく、全治8ヶ月と言われることもあるくらい、出産とは心身共にダメージを与えるものなのです。
この時期に無理をしてしまうと産後の肥立ちが悪くなると言われており、今症状がない場合でも数十年後に影響が出ることもあります。
「お母さんになったからしっかりしないと」と頑張り屋のママこそ、産後は身体を休ませて、周囲の人に頼ることが必要です。どんなお産でも、身体には大きな負担がかかっていることを忘れずにいてくださいね。
昔から産後に無理をすると「産後の肥立ちが悪くなる」と言われてきました。
産後の肥立ちとは、出産後にママの身体が日に日に元気になっていく過程のことをいいます。そのため、出産後のママの回復が遅い場合は「産後の肥立ちが悪い」などと表現されます。産褥期の間は出来るだけ入院中のような生活をして、産後の肥立ちが良くなるようにしていく必要があります。
赤ちゃんが生まれた後は、胎盤が剥がれ落ちると同時に、体内のホルモンが妊娠維持から産後の母乳分泌や子宮を戻すという動きに大きく変化します。それに伴い、産後は身体の調子やメンタルが大きく変動する時期です。
それでは、具体的に産後はどのような体の変化や痛みが起こるのでしょうか?一つずつ見ていきます。
妊娠中、子宮の大きさは妊娠前の20〜30倍ほどまで大きくなり、産後にはそれが急激に収縮することで子宮からの出血を防いだり、ホルモンを分泌することに繋がります。急激に子宮が収縮することで起きる痛みを「後陣痛」といい、陣痛と似たような痛みを感じます。この痛みは、産後2〜3日でピークとなり、徐々に感じなくなります。
後陣痛は出産時と違い鎮痛剤を使用出来るため、我慢出来ないような痛みのときは鎮痛剤を処方してもらうようにしましょう。また子宮は温めると柔らかくなってしまうため、後陣痛が痛くてもお腹を温めないようにしましょう。
経膣分娩だった方は会陰裂傷や会陰切開の痛みがあるため、座るのも一苦労という方もいます。会陰に付着した血は、不潔になると菌の温床となり傷の回復を遅めてしまうため、トイレの度に温水洗浄便座などで血を洗い流すようにし、産後パッドは毎回交換するようにしてください。
帝王切開の方は、産後1週間ほどは寝返りや歩行などで激痛を感じやすく、鎮痛剤を使用しながら日常生活と育児を行うことになります。
しばらくは腹筋を使って起き上がるのを避け、横向きになって腕の力を使って起き上がるようにしたり、退院後はシャワーで傷口部分を丁寧に洗い流すようにし、清潔を保って傷の回復を早めるようにしましょう。
出産して胎盤が体外に出るとすぐに母乳分泌のホルモンが大量に分泌されます。さらに赤ちゃんがおっぱいを吸うことで、ホルモン分泌を活発にします。出産後できるだけ早く乳首の刺激を与えることによって母乳が出やすくなるため、赤ちゃんが直接吸えない場合には乳頭マッサージや搾乳を行うと良いでしょう。
分泌が増えるに伴い、乳房全体の張りが強くなっていきます。産後は締め付けないブラジャーを使用するようにし、母乳パッドはこまめに替えて、清潔に保つようにしましょう。
妊娠中にたくさん分泌されていた女性ホルモンは、赤ちゃんが生まれると急激に減ります。それによりメンタルが不安定になる、抜け毛が増える、肌が荒れるなど様々な不調を感じることがあります。母乳分泌を促すためのホルモンは増えるために、授乳中は生理の再開が遅れることもあります。
妊娠後期から出産に向けては、骨盤をゆるめるホルモンが分泌されます。そのため、産後は骨盤や恥骨はゆるゆるの状態です。そのため、少し小走りするだけでも腰に痛みが走ったり、腰痛で悩む方も少なくありません。
骨盤は、出産後すぐから締めることが大切です。骨盤ベルトやさらしなどを出産前から準備しておきましょう。産後すぐに締めて欲しいことをバースプランに記載したり、担当の助産師に伝えておくと安心です。
ポイントは、足の付け根と恥骨の上あたりで締めること。骨盤ベルトを締める位置を間違えると逆効果になることがあるため、位置の確認も助産師と一緒にすることをおすすめします。
産後数ヶ月は「なんだかずっとだるい」「原因不明の頭痛がある」「立ちくらみがする」「何もやる気が出ない」など、なんとなく体調が悪いと訴える方も少なくありません。貧血や産後うつ、産じょく熱など治療が必要なこともあるため、体調不良がある場合は医師に相談するようにしましょう。
産後はできるだけ休むようにと言われますが、具体的にはどのくらい安静にすればいいのでしょうか。ここでは産後のママに具体的に気をつけてほしいことなどをお話します。
床上げとは、産後体力が回復するまで布団を敷いたまま赤ちゃんのお世話をし、回復後に布団を畳んで普段の生活に戻ることをいいます。
産後3週間までは床上げをせずに、布団やベッド上で過ごすことが必要です。授乳やオムツ交換もベッド上で行うようにし、シャワーやトイレ、食事以外はベッド上で横になって過ごします。イメージは入院中と同じような生活と思っていただくとわかりやすいかと思います。
そのため食事の準備や洗濯、買い出しなどは他の人に頼る必要があります。家族に頼めない場合は外部のサービスを検討しましょう。
産後1ヶ月健診が終わるとお宮参りなどのイベントが始まりますが、「もう大丈夫!」と動き回るのは、注意が必要です。
久しぶりの外出で水分摂取が少なくなったり、気づかないうちに疲れが溜まってしまい、イベント後に乳腺炎や体調不良になってしまう方が多くいらっしゃいます。お宮参り後も体調が優れない場合も、無理をせずに育児以外は横になって過ごすようにしましょう。
家事を再開する場合でも、料理や洗濯など自身が負担に感じないものだけを行うようにして、食材の買い出しや掃除はパパに依頼するなど、数ヶ月かけて徐々に元の生活に戻していくようにしましょう。
【助産師からの一言アドバイス】
パパにも産後1ヶ月経てば急に元気になるわけではないことを説明しておきましょう。育児や家事はパパと協力して行っていけるとよいですね。
産後の回復力は人によって違います。人によっては、産後半年頃までなんだか体調が優れない方もいます。それもそのはず、赤ちゃんのお世話はとてもハードだからです。3時間の授乳やオムツ交換、夜泣きでママは疲労が溜まる一方です。
産後は誰でも大変な時期なので、実家に帰省したり、上の子は一時保育に預ける、ベビーシッターを利用するなど、いろんな人の手を借りて育児をするようにしましょう。
産後の休養の必要性はわかったけれど、具体的にどのようなことはしてよくて、してはいけない動きはなに?という方のために、ここでは助産師が具体的な行動の話をします。
産後は会陰の傷が回復していないため、湯船に入ると傷に雑菌が入り込み傷の治りを妨げる可能性があります。そのため、産後1ヶ月健診で医師から入浴の許可が出るまでは、シャワーのみにするようにしましょう。
重い物を持つと下半身から腹部に力が入り、回復途中の骨盤や子宮に負担をかけてしまいます。赤ちゃんより重いものは持たないように気をつけてください。産後すぐの引っ越しなどは避け、大きな荷物は家族に持ってもらうようにしましょう。
昔は、産後に目を使ってはいけないとよく言われていました。理由は、目の疲れによる頭痛や、情報過多がストレスになってしまうことなどが考えられます。
スマホやパソコン、テレビの見過ぎに気を付け、この時期は本など活字を見ない方がよいでしょう。暇な時は赤ちゃんと横になって出来るだけ休むことが大切です。
産後は、出産により骨盤周辺の靭帯が伸びている状態です。回復途中の筋肉や靭帯に負担をかけるような激しい運動は避けるようにしましょう。
ストレッチや産後ヨガのような息が上がらないゆるやかな運動は、産後1ヶ月頃から再開してもよいです。ただし、ランニングや筋トレなど激しい運動は、産後3〜4ヶ月以降で体調が完全に回復した場合に再開するようにしましょう。その場合もはじめは軽い運動から身体を慣らすようにしてください。
産後1ヶ月までは母子ともに外出は極力控えるようにします。通常は、お宮参りをきっかけに外出するようになる方が多いです。
長時間の外出は長時間立った状態であることが多く、骨盤に負担がかかってしまうため、できるだけ短時間で帰宅するようにしましょう。また、運転も産後すぐは集中力が散漫になっているので、できるだけ避けましょう。
タバコに含まれるニコチンは、母乳を介して赤ちゃんにも移行してしまいます。赤ちゃんがニコチン中毒になると、下痢、頻脈、興奮して眠れないなどの症状が出てしまうことがあります。妊娠中に引き続き、産後も禁煙するようにしましょう。
アルコールは母乳を介して赤ちゃんに移行するため、基本的には飲酒はやめておきましょう。どうしても飲酒をしたい場合は、母乳回数が減ってきたタイミングで5〜6時間ほど授乳間隔を空けられるようになってからなど、タイミングを工夫するようにします。
飲酒をした後6時間は母乳を休み、ミルクを与えるなど赤ちゃんを第一に考えましょう。
経膣分娩の方は1ヶ月健診で医師から許可が出れば、産後1ヶ月から性行為を再開出来ます。帝王切開の方は産後2ヶ月から再開出来ます。ただし注意してほしいのが、生理が再開していなくても、妊娠する可能性があるということです。パートナーと家族計画について話し合った上で、避妊もしっかり考慮しましょう。
「できるだけ休むように」と言われても、生活があると少しは家事をしたいと思う方もいますよね。特に上の子がいる方は、家事をしないのは現実的に難しいこともあります。
もし家事をする場合には、出来るだけ負担のないように工夫するようにしましょう。
どうしても家事をしなくてはならない場合には、出来るだけ身体の動きが少ない家事を選ぶようにしましょう。
身体を動かしたり、重い荷物を運ぶことになるような家事は、家族や家事代行サービスに依頼しましょう。
産後の安静の必要性は分かりましたが、産後すぐに動き過ぎると具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?
産後は将来の自分の健康のため、家族のためにも休養をとることがなにより大切です。育児はいろんな人の手を借りて行うようにしましょう。産後に休むためにはパパや家族だけでなく、地域のサービスや、民間のサービスを活用することが必要です。
家事代行サービスやベビーシッターの他、最近では産後ドゥーラといって産後のサポートを専門にしている方もいます。妊娠中からいろんな選択肢を試しておき、必要な時に気軽に利用できる体制を整えましょう。
ベビーシッターのマッチングプラットフォームであるキッズラインなら、産後の育児や家事をサポートしてくれる産後ドゥーラや、0ヶ月の赤ちゃんを見られるベビーシッターを、スマホで探すことが出来ます。初回の依頼前には必ず顔合わせ(オンライン)または事前面談(対面)が必要なので、まずは一度連絡を取ってみるのがオススメです。
また、キッズラインでは家事代行サービスも依頼することが出来ます。産後の生活を支えてくれるサポーターを見つけて、無理のない子育てをスタートさせましょう。
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