保育園を探す活動、略して「保活」。待機児童問題で保育園に入れなくて「大変!」とは聞くけれども、実際のところどう大変なのでしょう?このたびその実態を調査すべく、キッズライン登録者に向けてアンケート調査を行いました。
【目次】
1. 申込をした認可保育園に落ちた人は3人に1人
2. 保活が「大変」と思う人は80%
3. 保活が大変な理由は「キャリア継続の不安」と「情報収集」
4. 「保育園に入れない」だけではない
5. 政治家に言いたいことは「一度、やってみてほしい」「保育士の給与アップを」
6. 保活にかけたお金、中には100万以上の人も!
7. 「復帰したかった」しぶしぶ育休延長、収入面の不安も
8. 保活離婚は都市伝説ではなかった?「実際にやった人を知っている人」の声
自治体が定める認可保育園に入るための保活のおおまかな流れは、
1. 保育園利用方法の仕組みの理解や情報収集
2. 見学に伴う予約および見学
3. 申込、結果待ち
と、実はシンプルです。しかし、認可保育園の倍率は非常に高く、0歳児は2倍〜5倍、1歳児に至っては倍率10倍以上の園もあるのが現状です。数ヶ月に渡って保育園に問い合わせをしたり、認可保育園に落ちた保険としての無認可保育園も並行して探しまわったり、と非常に地道で根気のいる活動なのです。
【調査概要】
《対象者》保活経験があるキッズライン登録ユーザー
《期間》2017年1月26日〜2017年1月31日
《性別》女性:346名 男性:0名
《年代》20代:24名 30代:242名 40代以上:80名
《世帯》共働き:302名 片親のみ就業:23名 ひとり親:21名
申込をした認可保育園に落ちた人は3人に1人
過去に保活をしたことがある人のうち、初年度の保活で「申し込みをしたすべての認可保育園に落ちた」と回答した人は全体の26.4%と最多、「結果待ち」を除くと約3人に1人は認可保育園に入れなかったことがわかりました。また「認可園には申し込まなかった」の回答は14.2%あり、認可保育園が激戦ゆえか、申込をせず無認可一本で保活をする人が少なくないことが推測できます。
保活が「大変」と思った人は80%
保活が「非常に大変」「まあまあ大変」と回答した人は80.0%、「大変ではなかった」「まったく大変ではなかった」と回答した人はわずか7.2%と、保活経験者のほとんどは「大変」と感じていました。
保活が大変な理由は「キャリア継続の不安」と「情報収集」
大変だったこととしては、「保育園に入れなかった場合のキャリア継続の不安(63.9%)」が最も多く、次いで僅差で「情報収集(63.3%)」との回答が得られました。
キャリア継続の不安
「入れなかったら会社を辞めなければならない不安との戦い」
「共働きフルタイム勤務でも入れるかわからなかったので、精神的に非常に不安だった」
「保育園に入れない不安と戦うのは想像以上に辛かった」
「職場に状況報告や育休延長を申請する際に、会社が納得してくれるまで何度も話した」
情報収集
「情報収集が一元化されておらず、時間がかかる」
「アナログで非効率で、罰ゲームのよう」
「十分な情報がWEBから得られない」
「認可には入れない前提で、100件以上の認可外・認証保育園を調べ、50以上にウェイティングをかけた。でも入れなかった。」
保活で理不尽と感じるのは「保育園に入れない」だけではない
保活を大変と感じた背景には、仕事復帰をかけて必死なママに対する、周囲の無理解もあるようでした。ムッとした経験についても数多くの声が寄せられました。
保活でムッとした経験について
「区の担当者から、認可にいれたいなら、籍を抜けと言われた」
「母親が働くからいけないんだ、専業主婦になるか、子どもを育てられないなら産むなと言われた」
「役所の担当窓口で「フルタイムで育休明けなら入れますよー」と言われていたが、実際は無理だった。 」
「区役所に相談に行ったら「自営はまぁ無理ですね」とサラッと言われた。 」
「えーこんなに小さいのにもう預けるの?かわいそう!という、無関係の他人からの何気ない一言。 」
夫は戦力外?夫婦で分担して保活した世帯はわずか6%
保活をしたのは「自分」が92.5%、夫婦で分担して保活をした人は6.1%となりました。保活の負担は女性にかかっているのが現状です。
会社の理解を得るのが難しい人も
「職場に状況報告や育休延長を申請する際に、会社が納得してくれるまで何度も話した」
「職場に事情説明のために何度か出向いて理解を求めた。申し訳ない気持ちになったり、やりきれない気持ちになった。」
政治家に言いたいことは「一度、やってみてほしい」「保育士の給与アップを」が多数
「保活の現状は、母親に対するハラスメントのようなもの。」と保活に怒りを覚える声が寄せられる中、特に多かったのは「一度やってみてほしい」という声。大変さをわかってほしい、という切実な声が多い中、保育士の労働環境改善が根本原因と考える方も多く「保育士の給与アップ・環境改善を」という声も寄せられました。
ほかにも「保育の受け皿を増やしてほしい」「会社など周囲の理解を得られるような環境整備をしてほしい」「再就職・社会復帰への支援が乏しい」といった内容の意見も寄せられました。
保育の受け皿を増やしてほしい
「待機児童の定義がおかしいと思う。もっと保育園の場所を増やしてほしいです。」
「女性活躍推進と認可保育所の指数がマッチしていない。」
「収入が多い人のほうがキャリアを真剣に考えていると思うが、多ければ多いほど選考では不利になるのも現状とは一致していない。女性活躍推進を掲げるならばキャリアを目指す人を優先するなどのルールも必要なのでは 」
会社など周囲の理解を得られるような環境整備をしてほしい
「保育園を増やすこともそうですが、会社や社会の対応をもっと柔軟にすること、多様性を持つこと、を薦めて欲しい。」
「保活も大変だけど、時短への職場・社会の理解がない。」
「保活を含め、ワーキングマザーに対する周囲の理解が根強くには、当人だけでは力不足だと痛感しています。」
再就職・社会復帰への支援が乏しい
「専業主婦の再就職・社会復帰の道はないんだなと悲しくなった。」
「内定もらっていた会社を断らざるを得なかった」
保活にかけたお金、中には100万以上の人も!
保活にかけたお金の総額は「〜1万円(56%)」と回答した人が最も多く、内訳としては役所や保育園見学のための「交通費」「保活本」などが挙げられました。
他方、保育園激戦区では、「50〜100万円(4.7%)」「100万円以上(5%)」と、保活に50万円以上ものお金をかけた人は約10%を占め、費用の内訳としては「認可外保育園の入園金」「ベビーシッター代」「引っ越し費用」などが挙げられました。認可保育園の入園に有利になるよう、認可外保育園やベビーシッターを戦略的に利用した人もいれば、待機児童が少ない地域に引っ越しをして確実に保育園に入園できるよう準備した人もいました。
育休延長については最終手段。「復帰したかった」は過半数超え、経済面への不安も
「保育園に入れなかったら、どうなるのか?(どうなったのか?)」の問いの回答(自由記述)には、「育休延長をする」や「仕事を辞める・辞めなければいけない・辞めた」といった意見が寄せられました。
育休延長については、「給付金がもらえて休めるのなら、別に良いと思う(17.8%)」「給付金が途中でもらえなくなるので不安に思う(15.5%)」収入面の保証があれば良いと思う人が一定数いる一方、「復帰したかった」の声が過半数以上となりました。
保活離婚は都市伝説ではなかった?「実際にやった人を知っている人」が多数存在
ひとり親だと保育園に入りやすくなるという入園基準の裏をかき、一時的に籍を抜くという「保活離婚」。都市伝説的に語られていますが、保活経験者はこの保活離婚についてどう思っているのでしょうか?
保活で苦労した人が多いからか「実際にやる人はいると思う(72.3%)」と多くの回答を得ました。また「実際にやった人を知っている(6.5%)」「自分がした(0.3%)」の回答も寄せられました。
「”保活のためにここまでする?”と思えるような手段について」を聞いたところ、
「(保活離婚を)実際にやった人が近くにいたが、本末転倒だと思った。」
「そういう(保活離婚を行った)家庭を通報できる行政システムが必要」
と批判的な意見も寄せられました。また「保活離婚」のほかにも、保育園に入るために「親と同居しているが、一時的に親に遠方に引っ越してもらう」や「夫と別居をする」といった、保育園に入るための苦肉の手段も寄せられました。
離婚まではいかなくとも、保育園に入りやすい地域への引っ越しや、ポイント稼ぎのための無認可保育園の席確保など、ここまでさせる保活って・・・。女性活躍推進と少子化、両方を達成できるような環境とは言い難いものです。
いかがでしたでしょうか?
今回の保活アンケート調査では「保育園に入れない」という悲痛の声が多く寄せられました。国や自治体も、少子化への影響を危惧し、保育士の給与アップなど、待機児童対策の具体的な解決方法を模索しているところだと思います。私たちキッズラインも、自治体に対してベビーシッター助成の提案を地道に続け、保育の受け皿を提供できるよう努めています。日本から「保活」という言葉がなくなる日が来ることを願い、今後も活動を続けてまいります。
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