前編では、黒川さんの家事・育児に対する取り組みや、男性脳と女性脳の視点が垣間見えるユニークなアイデアについてインタビューしました。後編は黒川さんの研究分野でもある「男性脳」と「女性脳」、子育てにも活きる思いやりに満ちた家族を作る方法についてお話を伺いました!

男性脳と女性脳は違いを知ると分担が楽に!

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ーー家事・育児分担において、ご夫婦またはご家族で気をつけていることはありますか?

女性脳は家事育児用に脳が進化していて、男性脳は、とうてい追いつかない。つまり自分と同じようにできると思い込まないことが肝心です。

たとえば、テレビCMの合間に、トイレに行くとき。主婦なら「ついでに」テーブルの上の使用済みのコップを片づけ、帰りに子どもの傘が干してあるのに気づいて畳み、それをしまうときに消臭剤の残量を確認し、それでも、台所に寄って台拭きをとってきて、コップの跡を拭くことも忘れない。動線にある家事を「ついで、ついで」に済ませながら生きているんです。

ーーそうですね、私も似たような行動をとります。

ところが、男性は、トイレにいくために席を立つと、トイレしか見えない。

ーー我が家の男子もそうです!

息子に「お風呂」と声をかけたら、さっき脱いだトレーナーを跨ぎ越していく。それを拾って脱衣場に持っていけばいいのに。

ーー息子がまさに!

でもこれ、優秀な男性能である証なんですよ。

男性脳は狩りをしながら進化してきたので、「目標物」を決めたら、それ以外には意識がいかないよう、脳が制御しているんです。獲物を追っているときに、足元に野イチゴがあったって、気を取られているわけにはいかないでしょう?

ーーなるほど。

だけど、女にはその感覚がわからないから、男たちに「なんでいつもやりっぱなしで片付けないの?」と思うわけ。

ーー私も日々「片付けて!」て言ってる気が。。。

男子も年を重ねてくると、少しずつマシになりますが、一朝一夕では治らない。治らないものを、毎日怒っていたら、ただただストレスなだけ。ここはもう、あきらめたほうが、心の安寧を得られます
「ついで家事」は無理、「ぱなし(置きっぱなし、脱ぎっぱなし、飲みっぱなし)」は想定内。そこから、始めたほうが楽。

ーーとっても興味深いです!

できない家事は許してしまおう

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性格の違う夫婦や家族で家事・育児の分担をする時は、名のある家事と、名もなき「ついで家事」に分けて考えることをオススメします。

ーー例えばどんなことでしょうか?

料理、買い物、洗濯、植木の水やり、風呂掃除、トイレ掃除のような名のある家事は、男性でも認知しやすい。これにリーダーをつければ、総責任者に任命することもできるわけ。
これに対し、置きっぱなしのコップを片づける、シャンプーのボトルが空なのに気づいて補充する、鏡の汚れに気づいてさっと拭くなどは、名もなき「ついで家事」。

「ついで家事」には、明らかに、できる脳とできない脳があります。これは才能。女性の多くにはその才能が有りますが、女性でもできない人もいる。逆に男性でもできる人がいます。
できる人は、できない人を「家事意識が低い」「怠慢」と思いがちで、ついつい指摘して、反省させようとするのですが…。

ーーそうですね。自分ができることを相手ができないと、指摘したくなりますね。

けれど、誠意が足りないわけじゃないからどんなに小言を重ねて謝らせても、意味がないわけ。ならば、もう許してしまえばいい。分かりやすいタスクをあげて、「ついで家事」は引き受ければいいんです。

ーー確かに、「許す」方が穏やかな気持ちでいられそうですね。

プライベートな空間は個人の世界観を尊重

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あとは、「ぱなし対策」として、プライベート空間とパブリック空間を分けることでだいぶストレスが減りました。

ーーどんな対策ですか?

我が家は、昨年家を建て替えたんですが、一人一納戸(ウォークイン・クローゼット)にしました。それぞれが、自分に気持ちいいように片づければいい。息子のクローゼットは、足の踏み場もありませんが、見えないので気になりません。

一方、リビングは私物の置きっぱなしは禁止しています。それでも置きっぱしにするので、息子用に「ぱなし棚」を用意してます。置きっぱなしにした小物は、その棚に置いておく。
さらに、リビングからトイレに行く動線の途中に、息子のクローゼットを配したので、大物は私がトイレに行くついでにクローゼットに突っ込めばいい。

そうすることで、どこに置いたかわからなくなってしまったものも、「ぱなし棚」かクローゼットを探せば見つかるので家中を探す手間も省けますから。

ーー探し物をする時間が減るのは効率的ですね。

そうなんです。息子が小さかった頃は、テーブルに置き去りにされた学校のプリントなんかもこの方式で、彼専用のかごに入れておく。「片づけなさい」が少なくなって、親子でストレスが激減しました

ーー小さなお子様がいると、リビングはあっという間におもちゃだらけになりますよね。

「片づけなくていい場所」を作ることが大事

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片づけるのはいいんですが、大事なポイントがあるんですよ。

ーーどんなポイントですか?

小さなお子さんにもおもちゃを片づけないでいい場所、すなわち専用のプライベート空間を確保してあげてください。特に男の子。

ーー何故ですか?

たとえば、ブロックを組み立てたり、ミニカーを並べて遊ぶ男の子。毎日、片づけたら、毎日一から始まりますよね。けど、作った「基地」をそのままにしておけたら、眠るときも、保育園に行っている時も、自分の「基地」を思い浮かべて、「帰ったら、ああしよう、こうしよう」と想像して、そのとおりにします。これが、空間認知力と創造力を劇的に育てます。将来の理系の力や、ビジネス戦略力の源です。

毎日、「基地」をバラバラにして、おもちゃ箱に入れさせられたり、知らないうちに母親が動かしてしまうなんて、かなり酷なことなんです。
大人だって、自分の引き出しを誰かが触って、口紅が全然別のところに合ったら、かなり戸惑うし、ストレスでしょう?

ーーはい、戸惑います。

誰も触らない、その人だけの空間を、誰もが確保すべきです。たとえ、幼くても。畳一畳でもいいから。

ーー片付けたくなる気持ちを抑えることも必要なんですね。

世界観を尊重することは家族の幸せに繋がる

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「プライベートな空間」を持つことは、思いやりを育てることにもつながると思います。自分の世界観を尊重してもらえば、それがいかに安寧なことなのかを知り、他人の世界観を尊重することができるから。ヒトの空間を引っ掻き回さない、人の気持ちに土足で入らない。そんなセンスの第一歩ですよね。

家族それぞれの世界観を尊重して、家事・育児を楽みながら取り組んでいけば思いやりに満ちた家族になれると私は信じています。

とはいえ、我が家もまだまだ発展途上。洗濯リーダーが未熟すぎて、黒いワイシャツと白いニットを一緒に洗っちゃったりするので(黒シャツが真っ白!)、「口を出さない」だの言ってる場合じゃないってこともありますが、彼も一歩一歩成長しているので、それを共に喜ぼうと思います。

ーー貴重なお話ありがとうございました。男性脳と女性脳について知ることで、お互いがわかり合うのではなく「許し合う」という考えや、それぞれの世界観を尊重することで思いやりに満ちた家族になれるというお話がとても心に残りました。また、「好きなことをチョイスしてシェアしよう」という家族の分担が、結果的に「極めるきっかけになる」ということも参考になり面白かったです。今回は本当にありがとうございました!


■「息子のトリセツ」/発行:株式会社扶桑社
「母親が“男性脳学”を学ばずに、男の子を理解するのはなかなか難しい。もちろん、そんなこと知らなくたって、愛と相性の良さで、たぶん乗り切れる。けど、知っていれば、子育ての楽しさは、きっと倍増する。」著書本文より
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■「娘のトリセツ」/発行:株式会社小学館
「父の愛は、娘の一生を守る。けれど、娘を守るためには、その表現の仕方に少しコツがいるのである」著書本文より
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