出産後、女性の再就職が難しいという社会の厚い壁を打破すべく、自宅からパソコン1台で起業した文美月さん。その後も働く女性の家事・育児と仕事の両立が難しいことを痛感しながら奮闘し、現在は株式会社ビューティフルスマイル代表取締役、食品ロス削減事業通販サイト「ロスゼロ」代表責任者、リトルムーンインターナショナル株式会社創業者、取締役副社長としてご活躍されています。そんな文美月さんに、子育てや仕事で大切にしてきたこと、これからの社会における女性の活躍についてお話を伺いました。
会社も子供も一緒に成長した繁忙期
ーー起業されたのはお子様がまだ小さい頃だと伺いましたが、ご自身でビジネスをはじめるきっかけはどんなことだったのでしょうか。
子供たちもまだ幼かったので、自分の裁量で仕事を創り、出来るだけ子供と一緒にいられる職は何かと考えた時に、起業して自分が好きだった雑貨をインターネット販売してみようと思ったんです。
それが今のヘアアクセサリー販売サイト「リトルムーン」の原点です。
ーー家事・育児はどのように両立されていましたか?
自宅の近くに義母が住んでいたので、保育園のお迎えやちょっとした家事は手伝ってもらいました。
しかし、事業が波に乗ってからの数年は記憶が飛ぶほどの忙しさで、週に2回、身の回り以外のお掃除を家事代行の方にお願いしていました。
ーー家族以外の方に家事をお願いされてどうでしたか?
ものすごく助かりました!小さい子供がいると料理やお風呂といった最低限の家事をするだけでも手一杯でしたから。
だから、家の中を綺麗に保つために手伝ってくれる方がいることは、体力的にも気持ち的にも楽になりますし、イライラも減りました(笑)。子供との時間も捻出したかったので、家事をお願いすることはむしろ自然なことでした。
やらないことを決める
ーーお子様との時間を捻出するために心がけてたことはありますか?
自分の中で「やらないこと」を決めていましたね。
私が一番優先したかったのが「仕事と子育て」だったので、それ以外は「やらないリスト」に。
ーーどんなことでしょうか?
例えば、夜更かしはしない。絵本の読み聞かせをしながら子供と早寝し、朝は子供が起きる3時間ぐらい前に起きていました。静かに仕事に集中できますし、1人でゆっくりお風呂に入ったり、時々散歩もできました。
ーーまさに朝の自分時間はリセットタイムですね。
あとは、ママ友や昔の友達とも会うのを一切やめて、誘いを全て断ってました。
付き合いが悪いとは思いましたが、当時の私は「今が頑張り時だ」と気を引き締めていたので、勉強や仕事のほうが重要だったんです。
日々の生活は、自宅で仕事して、誰にも会わず、保育園の送迎かスーパーに行くだけ。もちろん、洋服も靴も買い足す必要もないし、お化粧もしませんでした(笑)。
リフレッシュも子育ても合理的に
ーーお仕事に忙しい中、どのように子育てと向き合われたんですか?
子育てで大切にしていたのが受動ではなく能動的であるということです。
ーー例えばどんなことですか?
テレビなどは考えなくても情報を受け取れますよね。そうではなく、自分で考えて行動する力を身につけてもらいたかったんです。
ーーなるほど。
だから幼少期は図書館で本をたくさん借りてきて、疲れていても本を毎晩読み、一緒にイメージを膨らませました。
電車移動などの時も子供が退屈しないよう本を何冊も携帯しました。大人になった今でも、本を一緒に読む時間が好きだったと言ってくれます。
ーー徹底してますね。
あとは、私の体力がなくなるまで山登りなどのスポーツは全部子供とやると決めてました。スポーツが好きな私にとってはいい気分転換にもなりますし。
そこで、上の息子が3年生、下の息子が1年生の時から3年連続で、3人で100キロウォーキングに挑戦したんです。
ーー小学生が100キロ歩くんですか?!
完走するまでに27時間かかりましたが、諦めずに完走した子供の姿を見たときは、子供には計り知れない可能性があるんだ、ということを大人の私が子供から学びました。
ーー27時間!すごいエピソードですね!
親子で乗り越えていく体験を通して、毎日細やかなことはできないママだけど、自分たちのことを大事に思ってくれてるんだな、というのを子供たちに伝えたかったんです。
また、仕事にしろ趣味にしろ、大人が一生懸命取り組んでいる姿勢を子供にみて欲しかったんですよね。言葉では伝わらない、親の姿勢から学ぶことがあると思うんです。今は家族4人でテコンドーを習っていますよ。50代で頑張る私を褒めてくれています(笑)。
世界の子供たちに目を向けて
ーーお仕事では国内にとどまらず、途上国への貢献もされていますね?
はい。2010年から、使わなくなったヘアアクセサリーを日本で回収させていただき、10ケ国の途上国に4万点を寄贈しています。
その中で、長年の経験からヘアアクセサリーの寄贈だけでなく、教育や雇用の機会を増やす必要もあると気づきました。
ーー素晴らしい活動ですね。
そこで、別の方法で貢献できないか考えていたところ、カンボジアで活躍する起業家たちの協力を得て、職業訓練中の若者とヘアアクセサリーの販売会を企画したんです。
ーーなるほど。
そうすることで、カンボジアの若者が販売という「スキル」を得ることができます。そして、売上は奨学金の創出、若者の職業プログラムの支援に充当しています。
ーーなぜ、途上国の子供たちに目を向けようと思ったんですか?
日本はモノで溢れている一方、世界にはそれが十分でない国があります。
ヘアアクセサリーで何ができるか考えたときに、軽くてかさばらないなら海外への寄贈に向いていると思いました。可愛くなって嬉しい気持ちは世界共通ですから、その気持ちを届けたいと思ったんです。
ーー素敵ですね。
また世の中的にも事業を通して社会貢献する企業が出てきて、社会が変わる時なのではないかと思ったんですよね。
「もったいない」を新しい価値に繋ぐ
ーーロスゼロはどのようにして生まれたんですか?
「インターネットを使ってもったいないものを集め、次の人につなげよう」というヘアアクセサリーの支援活動を続ける中、次は世の中で一番もったいないものを救いたい、と思ったんです。
それで行き着いたのが「食べ物」でした。
ーー食べ物、確かに。
実は、賞味期限が長いのに、販路を失っている食品って日本にはいっぱいあるんです。
食べ物こそ生きていくために必要なのに、それを無駄にするのは本当にもったいないこと。そこで食品のロスをなくす活動の一貫として「ロスゼロ」を立ち上げたんです。
ーー他にも「もったいない」ものに注目しているものはありますか?
それは、日本女性の能力です。
ーーなぜですか?
結婚、パートナーの転勤、復職、何らかのマイノリティーなど事情があってやりたいことを諦めたり、諦めていることが当たり前だと思っている女性がまだまだ存在しています。
そんな人の中には、光が当たれば輝く人、誰かに必要とされる人がたくさんいると思うんですよ。
ーー確かに、そうですね。
自分の中で輝く可能性があれば、仕事だけでなく、趣味、家事、育児といった得意な分野にチャレンジして、輝く存在になって欲しいと思います。
そうすれば、日本の女性にももっと笑顔が増えて、より明るい社会になっていくんじゃないかな。
ーー「もったいない」ものに焦点を当て、笑顔のリレーとして次の人につなげる活動は、本当に素晴らしいことですね。使わなくなったヘアアクセサリーが、途上国の教育や設備に貢献できること、廃棄される食品を救い消費できることなど、身の回りから私たちができることを痛感したインタビューになりました。また、子育てをしながら起業し、事業を大きくするだけでなく社会貢献される姿勢に、働く女性として勇気をもらいました。今回は貴重なお話ありがとうございました!
【リトルムーン】
https://shopping.littlemoon.co.jp/
【Little ECO プロジェクト 】
https://shopping.littlemoon.co.jp/csr/index.html
【ロスゼロ】
https://www.losszero.jp/