3人の子育てをしながらケーキデザイナー、芸術教育士として活動されている太田さちかさん。独身時代は、パリ サンジェルマン・デ・プレで過ごし、ホテルリッツにある料理学校「エコール・ド・リッツ・エスコフィエ」で製菓を学ばれています。ご結婚後、お仕事と育児・家事の両立をしながら京都芸術大学大学院で学び、現在は、芸術教育士として子どもとママのための製菓クラスやワークショップ「My little days」を主宰。そんな太田さんにお仕事と子育ての両立、子供の世界観を大切に思うきっかけやクリエイティブな視点の引き出し方についても伺いました。

子育ては助け合いが大事

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ーー子育てとお仕事の両立はどのようにされていますか?

出産後、はじめて職場復帰した時に思ったのが、「1人で全部やろう」という考えを取り払う必要があるということでした。1人で全て抱えず、家族や家族以外の人に頼りながら子育てしていくことで、両立に繋がると思ったんです。

ーーアウトソースすることに前向きな姿勢だったんですね。

両親が遠方だったのと、早朝の地方出張や休日出勤もあり、保育園に預けられない時間帯や休園の日はベビーシッターさんに協力いただいてたんです。

2番目の長女の時は保育園に入れなくて苦労しましたが、幸い3人とも保育園に入り、その頃には終日子供をベビーシッターさんに預けることもなくなりました。

子供たちは小学生になりましたが、フリーランスになった今も長年お付き合いがあるベビーシッターさんに来てもらっています。

ーーどんな方にお願いしていますか?

ベビーシッターさんは生活の一部に入ってきてもらう方なので、「信頼性がある」というのが大きなポイントだと考えています。我が家では母親世代で、保育士や子供に関わる資格を持ってる方にお願いしています。

子供たちもシッターさんの名前を覚えていて、「折り紙を教えてくれる」「輪投げを一緒にやった」など、楽しそうに話してくれるんですよ!

海外から学んだ自由自在な発想力

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ーーなぜ子供向けのワークショップを始めようと思ったんですか?

きっかけは中学生の時に遡るんですが、初めて海外へホームステイに行ったことなんです。ホームステイ先で、同じ学校の生徒たちが美術の時間に、さまざまな発想で表現していたことに衝撃を受けました。

ーーどんな衝撃ですか?

私は太陽の色は赤や朱色と思っていたのに対し、ホームステイ先の生徒たちは紫、青、金色と、太陽を自由自在な色で表現をしていて「どうしてこんな色で塗ろうと思ったんだろう」と驚いてしまったんです。

ーーおもしろい体験ですね!

それから大人になって、様々な国の美術館へ行くようになったんですが、パリのルーブル美術館など、海外には美術館に子供向けのワークショップがあるんです。すごく素敵じゃないですか?

ーー幼い頃から芸術に触れるのはとても良いですね。

はい。また、美術館が子供たちを歓迎しているし、町中が子供たちのアートを喜んでいます。そういうのを見ているうちに、発想力、想像力、クリエイティブというのは環境が作っている部分もあるのではないか、そしてそれを育むための発信をする人も必要なんだと思ったんです。

使命感に導かれた進むべき道

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そんな体験があったからか、長男が生まれて児童館へ行ってみたら、折り紙教室などやや古典的な遊びが多い印象をうけたんです。

ーー確かにそういう印象もありますね。

そこで初めて、海外の子供向けワークショップみたいなことを自分でやれないかな?と意識するようになったんです。

まだ、その頃はママサークルという場がない頃でしたので、会社員をしながら、週末は自宅でワークショップを開催するようなスタイルで取り組みました。

ーーなるほど。

何度か開催するうちにホームステイ先の衝撃や海外で見聞きしてきた体験をもっと再現したい、と思うようになりました。自分がやるべきことの使命感が湧いてきたんです。そんな時「子供芸術」という学問に出会い、勉強したいと思って大学院に入学しました。

子供の思いをもっと引き出したい

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ーー大学院ではどんな研究をされたんですか?

以前より疑問に思っていた「子供の評価軸」について研究しました。

ーーどんなことでしょう?

子供に「今日どうだった?」と聞けば「楽しかった」と答えます。でも、何がどう楽しかったのかはわかりませんよね。

このやり取りで、「楽しかった」という一言で終わりにしてしまって良いのかな?ということが以前より気になっていたんです。

どんなことが楽しくて、どんなところが工夫できたのか。そういったことを振り返りながら次につなげていけるように大人が導いていくことが大切だと思いますし、子供が本当のところどう思っているのか、それをどうやって大人が見つけていくのか、ということを掘り下げてみたかったんです。

アウトプットは表現の豊かさに繋がる

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ーー実際に生活やお仕事ではどうでしょうか?

子供が遊びや習いごとから帰ってきたら、具体性のある質問を投げかけてるよう心がけています

「今日どうだった」ではなく、「今日の算数の1問目は何が出題された?」「公園で何をしたのが1番楽しかった?」と聞けば会話も広がりますし、子供も答えやすくなります。

ーーなるほど。

また、ワークショップの最後では「今日どうだった」とはあまり聞きません。「今日1番面白かった、または笑ったところはどこ?」「1番お母さんにお話したいのはどんな場面?」といった対話をします。

あとは、匂いや味を表現してもらうとすごくおもしろいですよ!
例えばカップケーキを焼いている時にどんな匂いをしているか聞くと「アイスクリームかな」といった可愛い答えがかえってきます。目に見えない物を表現することって、とてもクリエイティブだと思うんです。

ーーとても参考になります。

子供の感じてることを頭や心の中で終わらせるのではなく、声に出してアプトプットすることで、表現がより豊かになっていくのではないでしょうか。これからも、子供の目線を一緒に楽しむことで、自由に表現する喜びを伝えていきたいです!

ーー貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。働きながら子育てをする中で、「両立のために1人で全て抱えず、頼りながら子育てしていく」ということが印象的でした。また、海外と日本の子供教育に向けた考え方の違いは興味深く、子供の感性を育む取り組みをされていることも素晴らしい活動だと感じました。子供にも大人にも大人気の「サイエンススイーツ」の世界は必見ですね!これからもご活躍を応援しております。


【My Little Days】

https://www.mylittledays.info/


『メレンゲのお菓子 パブロバ』(立東舎)

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『不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ』(マイルスタッフ)

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『魔法のおやつをめしあがれ 太田さちかのサイエンススイーツ』(文化出版局)

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