花粉症は植物の花粉に対してアレルギー症状が生じる病気です。日本人の国民病ともいわれており、3人に1人が発症すると言われています。花粉症は大人の病気と思われがちですが、赤ちゃんが発症することも少なくありません。しかも赤ちゃんの花粉症はひどくなると中耳炎を併発することもあり、適切な治療と対策が必要です。そこで今回は、赤ちゃんの花粉症で注意すべきことについて医師が解説します。
花粉症はアレルギーの一種。樹木や草などの花粉にアレルギーを起こすことで発症する病気です。花粉が飛散していない時期は症状が現れることはありませんが、飛散時期になると毎年つらい症状に悩まされるようになります。
現在、赤ちゃんや小さな子どもが花粉症になるケースが増えています。まずは、赤ちゃんの花粉症の特徴について詳しくみていきましょう。
花粉による鼻水やくしゃみなどのアレルギー反応は、「免疫」が過剰に働くことによって引き起こされます。
免疫とは身体に侵入した病原体などの異物から身体を守るための仕組みです。身体の中に害となる異物が入り込むと、その異物を攻撃するための抗体と呼ばれるタンパク質が作られるようになります。
そして、その異物が再び身体に入り込むと抗体が素早く反応して身体を守ってくれるのです。
本来、植物の花粉は私たちの身体に害を与えることはありません。しかし、花粉に対する抗体が一定量以上作られてしまうと、鼻や目の粘膜に花粉が付着したときに抗体が攻撃を開始してさまざまなアレルギー症状を引き起こすようになります。
つまり、花粉症は原因となる植物の花粉にさらされ続けることで発症するのです。
そのため、基本的に初めて花粉にさらされる生後間もない赤ちゃんが花粉症を発症することは珍しいとされています。一方で、花粉の2回目の花粉飛散シーズンを経験する1歳以降になると花粉症を発症する子どもが徐々に増えていきます。
近年では、小さな子どもたちが花粉症を発症するケースが増えています。鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)によれば、0~4歳の子どものスギによる花粉症の有病率は3.8%、スギ以外の植物による花粉症は2.6%と報告されています。
それに比べ、ハウスダストなどによる年間を通して発症するアレルギー性鼻炎の有病率は5.1%です。このことから花粉症に悩まされている赤ちゃんや小さな子どもも比較的多いことが分かります。
一方で、スギ花粉症の症状が出始める春先は、風邪をひく子どもも多いため、症状の見分けがつかずに適切な治療を受けられていないケースも多いでしょう。
「まだ赤ちゃんだから花粉症のはずがない」と決めつけず、鼻水や鼻づまりなどの症状が続くときは、かかりつけ医に相談しましょう。
赤ちゃんは自分で症状や不快さを訴えることができません。また、花粉症は風邪と似たような症状が現れるため「熱がない軽い風邪」と勘違いされてしまうこともあります。
しかし、鼻や耳の構造が未熟な赤ちゃんの場合、花粉症を放っておくと別の病気を併発することもあります。そこで、どのようなことに注意すべきか詳しくみていきましょう。
赤ちゃんは鼻と耳をつなぐ「耳管」という構造が未熟です。そのため、鼻の中の病原体が耳の中に入り込んで中耳炎を引き起こすことが多々あります。
花粉症によって鼻の粘膜に炎症が生じるとそこで病原体が繁殖しやすくなり、中耳炎に進行するケースは少なくありません。中耳炎は適切な治療をしないと炎症が慢性化し、耳の中に水が溜まる「滲出性中耳炎」に進行します。
そうなると聴力が低下するため赤ちゃんの言葉の発達に影響が出ることも。耳の違和感で不機嫌な状態が続くこともあるでしょう。
花粉症は強い鼻づまりが生じることが多く、口呼吸になりやすくなります。その結果、喉や鼻の粘膜は乾燥し、侵入した病原体を追い出す働きを担う「線毛」の作用が弱くなるため風邪をひきやすくなります。
花粉症の症状は夜間にも現れるため、良質な睡眠ができなくなることも少なくありません。せっかく整いだした赤ちゃんの睡眠リズムが乱れたり、夜泣きが多くなったりすることも。
また、慢性的な睡眠不足で日中ぼ~っとしていることが増えるなど活動性が低下する子どももいます。
このように赤ちゃんの花粉症の症状は大人と変わりません。しかし、大人よりも深刻な合併症を引き起こしたり、健康的な発育に影響を及ぼしたりすることがありますので注意が必要です。
花粉症は赤ちゃんでも発症する病気です。近年では赤ちゃんの花粉症も増えていると言われています。赤ちゃんが花粉症になると中耳炎などを併発したり、睡眠リズムが乱れたりするなど健やかな成長に支障をきたすことも少なくありません。
鼻水、鼻づまり、くしゃみなど花粉症の時期に疑わしい症状が続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう!
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