植物の花粉に対してさまざまなアレルギー症状が生じる花粉症。花粉症は前触れなく突然発症する病気の一つです。また、大人の病気と思われがちですが、実は子どもが発症することも少なくありません。風邪などと間違われて適切な治療を受けていない子どももいると考えられます。そこで今回は、花粉症はどのように発症するのか、対策法や治療法を医師が詳しく解説します。
花粉症は鼻やのどの粘膜に付着した植物の花粉に対してアレルギー反応が生じることで発症する病気です。春先に全国的に広く飛散するスギ花粉による花粉症がよく知られていますが、スギ以外の植物の花粉が原因で発症することもあります。
まずは、花粉症がどのようなメカニズムで発症するかを詳しくみていきましょう。
花粉症は、私たちの身体に備わっている「免疫」という仕組みが過剰に働くことによって発症します。
免疫は、体内に侵入した病原体などの異物を排除して、身体を守ってくれる仕組みです。鼻や口から病原体などの異物が入り込むと、身体の中では異物を攻撃するための「抗体」と呼ばれるタンパク質が作られます。
通常、植物の花粉は私たちの身体に害を及ぼすことはありませんが、花粉に対する抗体が作られていく人もいます。作られる抗体の量が少ない場合は症状が現れることはありません。
しかし、一定量以上の抗体が作られるようになると、体内に侵入した花粉に対して過剰な免疫が働き、アレルギー症状を引き起こす物質が放出されます。その結果、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、充血などの症状が引き起こされることになります。
つまり、花粉症は抗体量が一定以上作られるまでは発症しませんが、ある日を境に一定量以上の抗体が作られるようになると突然発症するのです。
近年では赤ちゃんや子どもの花粉症が増えており、0~4歳でのスギ花粉症の発症率は3.8%、5~9歳では30.1%にも上ります。一方、スギ以外が原因の花粉症の発症率は0~4歳で2.6%、5~9歳で17.4%です。スギ以外の花粉で花粉症を発症する子どもも多いことが分かります。
スギ花粉は例年3月中旬から4月中旬頃に最も飛散量が多くなります。飛散量が多いほど症状は強くなり、花粉症に悩まされる方が続出します。
しかし、花粉症は5~9月にかけて花粉が飛散するイネ科の植物や8~9月にかけて飛散するブタクサなどのキク科の植物が原因で発症することもあります。
花粉症は春だけではなく、他の季節に発症することもあることを念頭に入れておきましょう。
ある日突然、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が現れ、数日経っても改善しない場合は花粉症の可能性が考えられます。症状が長引くと、鼻づまりなどの影響で頭がぼーっとする、よく眠れないといった症状が現れることも。できるだけ早めにかかりつけ医に相談して花粉症かどうか検査をしましょう。
症状が現れると辛い花粉症。ここからは子どもを花粉症から守るための対策や治療について詳しくご紹介します。
花粉症を予防するための対策は「原因となる花粉を吸い込まない」ことに尽きます。対策方法は大人も子どもも変わらず、以下のような対策が必要です。
樹木の花粉と草の花粉:症状の現れ方はどう違う?
花粉症はさまざまな樹木や草の花粉によって引き起こされます。一般的に、樹木の花粉は風に乗って広い範囲に飛散するため、飛散する時期には近くに原因となる樹木がなくても症状が現れます。
一方、イネ科やキク科などの草の花粉は広い範囲に飛散することはないため、近くに原因となる草が生えていないと発症することはありません。そのため、草の花粉が原因の場合は、原因となる草が生えている公園などへの出入りを避けるようにしましょう。
適切な予防策を講じても症状が治まらない場合は、大人と同じように薬物治療が行われます。一般的には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などが使用されますが、年齢によって使用できる薬は異なります。自己判断で市販薬などを飲ませず、かかりつけ医の指示に従って治療を行いましょう。
また、小学生頃になると鼻の粘膜にレーザーを照射することで鼻水や鼻づまりを改善する治療が行われることもあります。
さらに、5歳からは少量ずつ花粉から抽出した成分を含む薬を飲んで身体を慣らしていく「舌下免疫療法」を行うことができます。舌下免疫療法は花粉症を根本的に治すことができる可能性を持つ治療法です。毎年強い症状に悩まされている方は医師に相談してみるのもよいでしょう。
花粉症は身体が限界に達するとある日突然発症する病気です。小さな子どもでも発症することがあります。また、春先だけでなく、夏や秋に発症することも。不快な症状から子どもを守るためにも、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状が続くときは早めにかかりつけ医に相談しましょう!
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