育児と仕事の両立を頑張る女性が最初に職場復帰時にぶつかる問題、それは「授乳はどうするのか」という点ではないでしょうか。この記事では、これから職場復帰をする予定の人やまだ授乳中で、職場復帰後の搾乳について不安を抱えている人、現在搾乳しながら仕事をしている人に向けて、搾乳の正しい方法などを助産師が解説します。
産後の職場復帰で困るのが「搾乳問題」。授乳はいつまで行う?
産後1歳になるのを待たずに職場復帰する人も増えている中、よく困っていると耳にするのが授乳に関してです。まずは平均的な「授乳期間」について、助産師の立場から解説します。
卒乳はいつから?
職場復帰をする際に卒乳するべきかどうか、悩む方も多いのではないでしょうか?
卒乳とは、母乳を与えるのを卒業して、他の食べ物やミルクで栄養を補うことを言います。
卒乳の時期は人それぞれであり、必ずこの時期までにとは決まっていません。
目安は離乳食が完了する1歳半頃ですが、これも離乳食の進み具合やお子さんの性格などによるため、3歳頃まで授乳をしている子もいます。
保育園から卒乳を勧められることもあるようですが、助産師としては、
ママとお子さん両方が卒乳したいというタイミングまでは、無理に止める必要はないと考えます。大事なのは、ママとお子さん両方が精神的に安定していることだと思います。
*助産師からの一言アドバイス*
母乳を吸うことは、お子さんの精神状態が安定する、ママも嬉しい気持ちになるなど良い面もあります。離乳食が進み食べ物を摂る量が増えると、自然に授乳回数は減ってきますし、お子さんの自立心が芽生えた時に自然と授乳しなくなる時がきます。その時まで待つという方法も1つだと思います。
ただし、授乳に追われてママが逆にストレスを感じている場合は断乳なども検討して行きましょう。
仕事復帰しながら搾乳することも多い!?
キッズラインでは、「保育園入園時のタイミングで卒乳していたかどうか」について、保育園に子供を通わせている親249人にアンケート調査を行いました。結果を見てみましょう。
保育園入園時に授乳中だった人は41%
アンケート結果からは、
保育園入園時に授乳中だった人は41%いることがわかりました。保育園に預けている間は、母乳を与えられないので、その間の乳房の張りや乳腺炎が気になるところです。
授乳が滞ると乳腺炎は誰にでも起こりうるため、長時間お子さんと離れる場合には正しい搾乳方法などを知っておく必要があります。
職場で搾乳をしながら仕事をする人の割合は!?
保育園入園時に授乳をしていたと答えた人に、職場復帰後に搾乳していたかどうかについても聞いてみました。結果を見てみましょう。
職場復帰後に搾乳していた人は、35.3%
職場復帰後に仕事の合間や自宅で搾乳していた人は、35.3%いることがわかりました。職場に授乳室などの個室が準備されている場合はよいのですが、ない場合はどのように搾乳をしているか気になるところです。
また、搾乳は出来ても保存場所がなくて母乳をその場で廃棄する場合もあると聞きます。清潔に保ちながら搾乳し、保存して自宅まで持ち帰るには、職場で搾乳することはハードルが高いと言えます。
会社での搾乳、何が大変だった?
アンケートに寄せられたコメントでは、職場での搾乳の苦労が多く語られていました。ここでは実際の経験談を課題別にご紹介します。
【課題1】搾乳する適切な場所がない
・こっそり授乳していたので、トイレでサボっている人と思われた。(東京都/30代/女性)
・トイレで搾乳していて、本当に清潔なのか毎回ヒヤヒヤしていました。また時間も不定期にしか取れず、頻繁に乳腺炎になって辛かったです。(大阪府/40代/女性)
・トイレやシャワー室を使っていたが、他のスタッフが使用したいのではと、搾乳中にも気を使った。(大阪府/40代/女性)
・職場の理解があり、昼休みにゆっくりトイレで搾乳、冷凍庫も使わせてもらいました。ただ毎日自宅へ搾乳機を持って帰って消毒する必要があり、また部品を一部忘れてしまって搾乳できない日もあり、面倒でした。(東京都/30代/女性)
【課題2】搾乳をする時間がない
・お昼休憩まで搾乳できず、胸が痛くて苦しかった(北海道/20代/女性)
・職場ではトイレしか場所がなかったので、トイレで搾乳。登園時は保育園についた時に空き部屋を借りて搾乳。通勤などの移動時間が2時間以上かかったので、途中下車しなければならないこともあり、初めて行く場所では搾乳場所の確保に困った。(愛知県/40代/女性)
・営業職だったため、上司が同行した日は搾乳できませんでした。また、トイレを使用したりして辛かったです。(埼玉県/30代/女性)
【課題3】搾乳した母乳の保管に困る
・トイレで搾乳するしかなかったので、トイレで搾乳してその場で捨てていました。(東京都/30代/女性)
・搾乳後の母乳の保管場所に困った。職場の冷凍庫はいっぱいで入らず…。(広島県/30代/女性)
・入園を機に断乳を試みました。仕事中もおっぱいが張って、職場のトイレで搾乳し捨てていました。手での搾乳は時間もかかり、大変でした。(長崎県/30代/女性)
職場での授乳の問題点とアドバイス
アンケート結果からは、職場内だけでなく外回りのお仕事や通勤中も搾乳のことを考えて行動しなくてはならず、搾乳の時間を割くことができない時には乳腺炎にもなってしまうなど、ママたちにとっては過酷な状況であることがわかりました。
乳腺炎はできるだけ早く適切な対応をしなければ、更に悪化してしまいます。
そこでここでは、
仕事をしながら母乳育児をする際のポイントをお伝えします。
●職場復帰しても母乳育児する方法はあるの?
実際に職場復帰しても授乳を続けることは可能です。しかし、母乳は吸わせるもしくは搾乳をしないと徐々に出なくなってしまいます。そのため、母乳育児を続けたい方は以下の方法をとることをオススメします。
*仕事場と保育園が近い場合*
仕事場と保育園が近い場合は、職場と保育園に相談して1日に数回仕事の合間に保育園に授乳に通います。月齢が進むにつれて授乳回数は減って行くため、通う回数は徐々に減っていくでしょう。
*仕事場と保育園が遠い場合*
①仕事に行く前と帰ってすぐ自宅で授乳をします。その場合はいつもよりしっかり飲んでもらいましょう。
②保育園では事前に預けていた搾乳を与えてもらうようにします。
※保育園によっては搾乳対応していない場合もあるので確認が必要です
③職場で胸が張ってきたら搾乳を行います。
※搾乳を保存できる冷凍庫があるか、搾乳するスペースがあるかなど確認が必要です。
※完全母乳で育てている場合、哺乳瓶拒否をすることがあります。早めの職場復帰を検討している場合はその旨を産院に伝え、早期から哺乳瓶を使った育児方法を選択するようにしましょう。
*助産師からの一言アドバイス*
アンケート結果では、搾乳の場所がなく、トイレで搾乳をしていたというコメントが多く胸が痛みました。
清潔にすべき授乳を不潔な場所で行うことに戸惑うのも無理もありません。職場の理解なしには適切な場所の提供は難しいと思います。
搾乳をすることは恥ずかしいことではないです。職場復帰の際には搾乳をする必要があることを早めに上司に相談するようにしましょう。
●哺乳瓶拒否の対処法ってあるの?
搾乳をして母乳を与える際には、赤ちゃんが哺乳瓶を拒否してしまい、困るママも多いです。
対策としては、哺乳瓶に生後すぐから慣れさせることが大切です。早めの職場復帰を検討している場合はその旨を産院に伝え、哺乳瓶を1日1回以上使用する方法を選択しましょう。具体的な方法としては、
1日1回搾乳した母乳を哺乳瓶で与える、もしくは1日1回ミルクを哺乳瓶で与えることで哺乳瓶嫌いを防げることが多いです。
*助産師からの一言アドバイス*
母乳育児には色々な考え方がありますが、私はこの1日1回はミルクをあげる方法をおすすめしています。なぜなら、1日1回でもパートナーなど自分以外の人に預けることができるようになれば、ママの休息時間を作ることができるからです。
自分しかいない状況は時にキツイこともあります。周りの手をできるだけ借りる育児をしていってほしいです。哺乳瓶も飲める子だとベビーシッターなどにも預けやすく、体調不良時や休息を取りたい時にも役立ちます。
●搾乳する場所はどうしたらよい?
仕事中に搾乳する場合、いくつか注意点があります。
①出来るだけ清潔に保てる場所で搾乳をする
仕事中に搾乳する場合は、
搾乳をする必要があること、個室が必要であることなどを上司に伝え対応してもらうこと一番よいと思います。医務室や面談室などを借りる方法もあります。それも難しい場合は、パーテーションで区切る、のれんなど部屋の角で目隠しできるスペースを作るなど、雇用主と相談してお互いに歩み寄ってアイデアを出すようにしてほしいです。
②トイレで搾乳する場合は清潔な搾乳器を使って
それでも、上司に相談することができない!という方もいますよね。トイレで搾乳をする場合は、以下のことに気をつけましょう。
・必ず手洗いをしてから搾乳を行う
・授乳服などできるだけ搾乳しやすい格好で通勤する
・手で搾乳するのではなく、殺菌した搾乳器を持ち込み、搾乳が終わったら搾乳器のボトルの蓋を閉めて持ち出せるように工夫する。
(トイレの個室内で搾乳を母乳パックに移すのは、清潔を保てないためやめましょう。)
・給湯室など土台が安定した場所で母乳パックに搾乳を移し、冷凍保存する。
・持ち帰る時は保冷バックに保冷剤を入れて、解凍しないように持ち帰る。
ママにはいろんな状況があると思います。可能な限りでよいので周りの人に相談しながら最善の策を見つけることが大切です。
*助産師からの一言アドバイス*
子どもを保育園に預けて仕事をすると、毎日の送迎だけでなく、子どもの病気で急に仕事を休まなければならなかったりと、大変なことも多々あります。
それに加えて、仕事の合間に搾乳をしたり保存して持ち帰るなどの母乳に関する問題は、ママ特有の問題であるために、この大変さに気付いていないパートナーも多くいます。
もしよければこの記事をパートナーにも読んでいただき、ママの大変さを理解してもらってください。パパも大変なのはお互い様ですが、まずはママの身体の状況を知ってもらうことから始めましょう。
今すぐベビーシッターを依頼してみる
哺乳瓶を使えるように工夫して、育児サポートの手も借りよう
育児は、日々大変だと感じることも多くあると思います。そんな時は、一人で抱え込まずにパートナーをはじめ周りの人に相談したり、助産師など専門職のサポートを受けるようにしてください。
搾乳した母乳やミルクを飲めるお子さんだと、仕事でどうしても預けなければならないときやママの体調不良時などには、
ベビーシッターなど子育てサポートを頼る選択肢も増えます。
子育ては問題が起きた後に対処方法を探すのでは間に合いません。
自分が授乳できない場合を考えて、事前に子育てサポートを探しておくことも、大切なことです。
今すぐベビーシッターを依頼してみる
キッズラインなら、スマホからベビーシッターを探せる
ベビーシッターのマッチングプラットフォームであるキッズラインなら、生後0ヶ月の赤ちゃんから預けることができる
ベビーシッターを、スマホで探すことが出来ます。初回の依頼前には必ず顔合わせ(オンライン)または事前面談(対面)が必要なので、まずは会員登録をして、メッセージで連絡を取ってみるのがオススメです。
また、キッズラインでは家事代行サービスも依頼することができます。育休復帰後の育児生活を支えてくれる心強いサポーターを見つけて、仕事と育児の両立を図りましょう。
今すぐベビーシッターを依頼してみる
■ 調査概要
・調査期間:2022年9月9日(金)〜9月12日(月)
・調査対象:キッズライン会員249名
・調査方法:インターネット調査
■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。
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