妊娠中から、赤ちゃんを育てる上で「母乳で育てるか」「ミルクで育てるか」「もしくは混合で育てるか」ということを気にかけるママも多くいらっしゃることでしょう。それぞれ赤ちゃんやママにとってメリットがありますが、どのようなメリットがあるのかを知った上でより良い選択をしたいものですよね。そこで今回は管理栄養士が母乳とミルクの栄養素と、それぞれのメリットについてご紹介します!

母乳とミルクの栄養素の違い



●育児用ミルクはどのように作られている?
育児用ミルクは正式名称は『乳児用調整乳』と言われています。牛乳を原材料として使用しており、原材料の牛乳に必要な栄養素を添加したり、時には過剰な栄養素を除去したりと調整することによって、母乳の成分に近づけています。


●100mlあたりの母乳とミルクの3大栄養素の比較
育児用ミルクは母乳に成分をできるだけ近づけています。そこで、母乳とミルクの3大栄養素であるエネルギー・たんぱく質・脂質の数値を比較してみましょう。


【母乳】
  エネルギー  66kcal
  たんぱく質  1.7g
  脂質     5.4g


【ミルク】
エネルギー   66〜68kcal
  たんぱく質  2.2〜2.4g
  脂質     5.2〜5.4g


たんぱく質の含有量は育児用ミルクが母乳よりも100mlあたり0.5gほど多いのに対し、エネルギー量や脂質には特に大きな差はありません。


※参考)母乳及び乳児用調製粉乳の成分組成と表示の許可基準


3大栄養素以外の母乳とミルクの栄養素の比較


栄養成分のエネルギー・たんぱく質・脂質の比較は前述の通りですが、それ以外の栄養成分についてはどうでしょうか。ここでは母乳とミルクに含まれる3大栄養素以外の栄養についてみていきましょう。


【母乳】に含まれる3大栄養素以外の栄養
母乳には「IgGと呼ばれる免疫物質」「ラクトフェリン」「オリゴ糖」などの成分がミルクに比べて多く含まれています。特に分娩後数日以内に分泌される初乳には、免疫物質が多く含まれています。赤ちゃんを病原菌から守ってくれるので初乳はできるだけ飲ませることがオススメです。


母乳特有の栄養成分の1つである「ラクトフェリン」は、たんぱく質と鉄の混合物で免疫力に関わる重要な成分の1つであり、腸内環境の改善に良い成分とされています。さらに母乳特有の栄養成分である「オリゴ糖」は、腸内細菌の栄養源として善玉菌を増やす働きがあります。


【ミルク】に含まれる3大栄養素以外の栄養
母乳はミルクに比べて「ビタミンK」の含有量が少ないのに対し、ミルクはビタミン不足にならないよう成分が調整されています。またミネラルの1種である「鉄」も、ミルクの方が母乳に比べて多く含まれています。しかし、母乳に含まれる鉄とミルクに含まれる鉄では、赤ちゃんの吸収率が異なるため、一概にはミルクを飲ませる方が鉄がたくさん摂れると解釈するのは難しいでしょう。


母乳とミルクを混合するメリット【栄養面】
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●栄養が満遍なく取れる
3大栄養素であるエネルギー・たんぱく質・脂質やその他の栄養成分を比較してきましたが、ミルクは3大栄養素のみならず、ビタミンやミネラルのバランスがとれているため、安定した栄養素を赤ちゃんに与えることができます。


一方で母乳は、たんぱく質や一部のビタミン、ミネラルが不足してしまう場合があります。しかし、母乳にはミルクにない免疫物質などが含まれています。そのため赤ちゃんを感染症などから守ってくれる可能性もあり、消化しやすいのも特徴です。


栄養面の観点から言うと、母乳もミルクもどちらもそれぞれ良いメリットがあり、不足している栄養素もあります。ママの体調やご家庭の状況にもよりますが、栄養面の観点からはどちらかだけ与えるというより、母乳とミルクを混合することでそれぞれの良いところを取り入れることができるのでオススメです。


母乳とミルクを混合するメリット【物理面】


●ママの体を休めることができる
母乳とミルクの混合育児に対する物理面からのメリットは、体の回復がままならない新生児期の赤ちゃんのお世話は、体力的にも精神的にも大変です。ママ以外の人に赤ちゃんを預ける場合に、ミルクを飲んでくれる子どもであればママの体を休めることができます。


●プレッシャーにならない
また、母乳育児を周りから勧められ、母乳を与えることにプレッシャーを感じてしまうママも少なくありません。さらに母乳育児にこだわることで、ママ一人で育児を頑張らなくてはいけないと思い込む方も、中にはいらっしゃるでしょう。そこで、どちらかにこだわるというよりは母乳とミルクの混合育児にすることで、夜間や週末の授乳をパパをはじめ家族などにお願いすることができます。


●赤ちゃんを預けやすい
産後すぐに仕事復帰をするママは、保育園などに母乳を搾乳して持参することもできますが、赤ちゃんがミルクを飲めれば搾乳の手間がかからずに済みますよね。ママが体調を崩した際も、薬を飲まなくてはならない場合には母乳ではなくミルクの方が安心です。このような理由からも、母乳とミルクどちらも飲めるようにしておくと、赤ちゃんだけでなくママにとってもメリットがあります。


「ひとりで頑張らなくてはいけない」「絶対に母乳だけで育てなくてはいけない」と思い込まず、出来るだけママ自身の負担を減らせるように考えることも大切です。

産前産後に頼りたい「産後ドゥーラ」
産前産後のママが身体を休め、安心して赤ちゃんのお世話に専念できる環境をつくるお手伝いをしてくれる産後ドゥーラ。主に産褥期(出産後6週から8週)や妊娠中の家事や子育てを支援してくれます。また上の子どもがいる場合はベビーシッターとして子どものお世話を相談することができます。



妊娠中のつわりが辛い時期や、お腹が大きくなり身体が辛い時から、食事作りや掃除といった家事サポートをお願いすることができます。また安心して出産、育児に臨めるよう、一緒に産後の生活について相談することもできます。さらに、産後は赤ちゃんの沐浴、授乳のサポート、オムツ替え、上の子どものお世話などを依頼することができます。産後ドゥーラに赤ちゃんのお世話をお願いして睡眠を取ったり、母乳に良い食事を作り置きしてもらうのも良いですね。

生後6ヶ月まではミルクと混合でも母乳を続けると良い理由



前述では母乳とミルクの両方のメリットと、栄養面と物理面から母乳とミルクを混合することをオススメしました。ですが、混合育児をしていてミルクを与える割合が高く、かつ母乳の割合が低い場合でもぜひ生後6ヶ月までは母乳を続けることをオススメします。その理由は、母乳を飲んでいる赤ちゃんはママからもらった免疫物質によって、1歳未満で罹患することが多いとされる感染症から守ることができるからです。赤ちゃんの免疫力をつけるためにも、生後6ヶ月までは母乳を続けることをぜひ検討してみてください。

管理栄養士オススメ!母乳に良いママの「おやつ」

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授乳中はカロリー消費も高く食欲も出るもの。実は100mlの授乳で約70kcalも消費するのです。そこで、食事以外で効率的に栄養をとるために、ぜひ授乳中のママに食べてもらいたいおやつををご紹介します!


① たんぱく質が多く含まれているプロテインバー
母乳の原料は血液です。血液はたんぱく質から作られてるため、たんぱく質が多く含まれたおやつがオススメです。手軽にたんぱく質と必要なビタミンが摂れて、食べ応えのあるのはずばり「プロテインバー」です。最近では市販のプロテインバー は種類も豊富で、カカオ味やチーズケーキ味などさまざまなものがあります。様々な味のテイストでその日の気分で楽しむこともできますね。


また、粉末タイプのプロテインも甘いものが飲みたい時に代用すれば、たんぱく質を摂ることができて一石二鳥です。


② 小豆のお菓子
小豆を食べると母乳がよく出ると昔からの言い伝えがあります。そこで小豆を使ったよもぎ餅、おはぎ、ぜんざいなどはいかがでしょうか。洋風のお菓子と違って和のお菓子は、母乳に影響の出る脂質も少ないのでオススメです。


③ もち米のお菓子
もち米も小豆と同様に母乳がよく出るようになると言われています。そこでお煎餅などのお餅のお菓子もオススメです。これらのおやつは効率的に栄養を取れる上、母乳の出を良くしてくれるものです。しかし母乳がきちんと出ているのに、赤ちゃんがあまり飲んでくれない場合は、適切な母乳の消化ができなくなってしまうので、食べる量を控えるようにしましょう。

まとめ

母乳もミルクもどちらが正解ということはありません。どちらにもそれぞれのメリットがあり、混合することでママと赤ちゃん両方にとって良い影響があることもわかりました。ただし、母乳にしかない免疫物質が赤ちゃんを感染症などから守ってくれるため、生後6ヶ月までは母乳をあげることも視野に入れてみてください。ただし、母乳にこだわり過ぎてしまうとママしか授乳の対応ができず育児が大変になってしまう可能性もあります。早い段階からミルクに慣れてもらい、家族やベビーシッターなど他の人でも授乳ができるようにしておくと、ママの体を休めることができてオススメです。




■管理栄養士・高岡 由貴
2011年管理栄養士免許取得。大学卒業後、保育園•病院•食品メーカーに勤務し、献立作成•栄養管理•食育講師などを担当。現在はフリーランスとしてコラム執筆•食事相談•レシピ開発などをしている。プライベートでは一児の母。




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