早朝に「少し熱っぽいかも」と思ったら、あっという間に高熱。子どもは、いつだって急に熱を出すものです。
でも仕事は休めず、頼れる人もいない。いざ「病児保育」を利用しようとしても、満員で予約もできない。制度はあっても使いたいときに使えない。そんな経験はありませんか?
そういった現実を踏まえ、この記事では病児保育の仕組みや課題を整理したうえで、いざというときに頼れる選択肢と、今できる備えをお伝えします。
病児保育の仕組みを正しく理解しよう
働く親にとって、子どもの発熱や体調不良は緊急事態。大事な仕事の日に限って、熱を出すこともあります。どんなに気をつけていても、子どもは体調を崩すものです。特に保育園や幼稚園に通っていると、集団生活のなかで感染症をもらう機会も増えます。
そんなときに頼りになるのが病児保育です。共働き家庭の増加に伴い、利用希望者も年々増えていますが、
仕組みを正しく理解していないと「登録していなかった」「書類が間に合わなかった」といった理由で、いざというときに利用できないことがあります。
病児保育と病後児保育の違い
病児保育と病後児保育は似ていますが、対象となる子どもの状態が異なります。
【病児保育】
発熱や感染症など
病気の最中にある子どもを一時的に預かります。医師の診察を受けたうえで、看護師や保育士が配置された施設で体調を見守りながら、ケアを行ってくれます。
【病後児保育】
回復期の子どもが対象です。熱は下がったものの「登園の再開にはまだ不安がある」という時期に利用されます。
病児保育は発症中、病後児保育は回復期と覚えておくと分かりやすいでしょう。
参考:厚生労働省「病児・病後児保育について」
病児保育の運営主体の種類と利用条件
病児保育の運営主体は大きく二つに分けられます。
【医療機関併設型】
小児科などの医療機関に付設され、医療と連携しやすく、看護師が配置された体制が整っている場合が多いため、比較的病状のある子どもも預けやすいのが特徴です。
ただし、施設ごとに医師の常駐状況・受け入れ可能な病状範囲が異なるため、利用前に「どのような病状まで預かれるか」「医師・看護師の体制はどうか」を確認する必要があります。
【保育園併設型】
自宅の近くで利用しやすい一方、医師が常駐しない場合や医療連携が限定的な施設も多く、預かれる病状に制限があるケースがあります。
なお、単独施設型や訪問型などの類型もあり、施設ごとに体制・預かり範囲に違いがあります。利用には事前登録、医師連絡票や当日診察など、いくつかの条件が設けられています。
初回利用時は書類準備や面談に時間がかかるため、事前の手続きが済んでいないと、当日に利用できないケースもあります。
また、最近は
体調不良児対応型保育という仕組みも広がっています。これは、登園中に体調を崩した子どもを一時的に別室で預かる制度で、急な発熱にも柔軟に対応できる体制として注目されています。
参考:厚生労働省「病児保育事業の運営状況に関する調査報告書」
病児保育が「使いづらい」と苦悩する親たち

「登録しているのに、当日は予約が取れない」
「診断書が間に合わず利用できなかった」
ママパパからは、そのような声が後を絶ちません。病児保育は制度として存在していても、いざというときに使いづらいという現実があります。
フルタイム共働き世帯ほど「利用したいのに使えない」
三菱UFJ リサーチ&コンサルティングが実施し、2024年3月に発表した「令和5年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業 病児保育事業の運営状況に関する調査研究 報告書」によると、
利用者が困ったこととして最も多かったのは「予約が埋まっていて、利用したいときに使えない」で、「個別に施設へ連絡しないと空き状況が分からない」「事前登録の手続きが煩雑」が続きました。
また、病児保育に対する要望としては、 「施設数や定員を増やしてほしい」「緊急時でも利用できるようにしてほしい」「利用時間を延ばしてほしい」などに加え、 「オンラインで予約や空き状況の確認ができるようにしてほしい」という声も多く寄せられています。 スマホを通じて簡単に空き情報を確認・予約できる仕組みを望む親は多く、
デジタル化の遅れが使いづらさの一因となっていることもうかがえます。
さらに同調査では、病児保育の利用意向についても掲載されています。「利用したいと思う」と回答した人は35.8%で、「利用したいと思わない」(28.1%)を上回りました。特に、「女性でフルタイム勤務の会社員・職員」や「夫婦ともに正社員」の家庭、また「末子が0歳」の家庭で利用意向が高い傾向が見られました。
こうした結果から、制度自体は整っているものの、利用のしやすさや情報の分かりやすさには依然として課題があることが明らかです。多くの保護者が「使いたいのに使えない」状況に直面しており、仕事と育児の両立を難しくしているのが現状です。
参考:三菱UFJ リサーチ&コンサルティング「病児保育事業の運営状況に関する調査研究報告書」
病児保育はなぜ「使いづらい」のか? 制度・運用面の課題

病児保育が使いづらい理由は、単に予約枠が少ないという問題だけではありません。制度や運用の仕組みに、いくつかの構造的な課題が潜んでいます。
医師・看護師の配置基準による制限
病児保育施設では、看護師などの配置が義務づけられており、利用児童おおむね10人につき1人以上という基準も設けられています。医師が常駐する施設もありますが、地域や施設によって医師常駐の有無や定員数に差があります。特に人員確保が難しい地域では定員を小規模にして運営している施設もあります。需要のピークである冬場には、予約が殺到し「朝7時に満員」ということも珍しくありません。
感染症ごとの受け入れ制限
感染力の強い病気(インフルエンザ・新型コロナウイルス等)については、受け入れについて「発症後◯日」「解熱後◯時間」など施設独自の条件を設けているケースが多く、別室での対応または受け入れ停止となる場合もあります。なお受け入れ条件は、自治体・施設で差が大きいため、必ず事前に最新のルールを確認しましょう。
自治体ごとのルールの違い
また、各自治体・施設で「発熱は何度まで」「診断書は何日以内」という運用ルールに差があり、登録を済ませていても利用をためらう原因になっています。このように、制度設計と現場運用の間にすき間があるため、急な発熱に対応しづらいという構造的な課題が生まれています。
病児保育が使えないときに備えて、今できること

それでも、子どもの発熱は待ってくれません。「病児保育が使えない」と諦める前に、家庭でできる工夫や他の選択肢を知っておくことが大切です。以下、保護者が事前にできることをまとめてみました。
かかりつけ医と連携しておく
診断書や医師連絡票の発行ルールを事前に確認しておきましょう。「当日発行は可能か」「何時までに受診すればいいか」など、具体的に聞いておくと安心です。いざというときに慌てずに済みます。
相談先を確保しておく
かかりつけ医や保育園、勤務先への相談が第一歩です。保育園では他の家庭の利用状況や、地域の支援制度を教えてくれることがあります。勤務先でも、育児に理解のある上司や同僚に日頃から相談しておくことで、いざというときのサポートが得やすくなります。
職場で信頼関係を築いておく
「子どもが急に熱を出しても、すぐに相談できる関係を作っておく」ことが、共働き家庭の大きな備えになります。普段からコミュニケーションをとり、状況を共有しておくことで、急な休みの際にも周囲の理解を得やすくなります。また、連絡の仕方の工夫も大切です。たとえば、「子どもが発熱し、午前中は受診予定です。午後は在宅勤務に切り替えます」など、簡潔に伝えることで職場の負担を減らせます。
家族や地域の支援を頼る
祖父母や親戚に頼れない場合でも、地域にはさまざまな支援制度があります。ファミリー・サポート・センターでは、登録しておけば体調不良時の送迎や一時預かりをお願いできるケースもあります。また、地域によってはNPOや民間団体が病児預かりを行うケースがあります。
国や自治体の制度を活用する
育児・介護休業法による「子の看護等休暇」は、子どもが病気やけがをした際に取得できる休暇制度です。対象となる子どもの範囲は、小学校3年生修了までに広がっています。取得可能日数は、1人の場合5日、2人以上なら10日です。多くの場合は無給ですが、企業によっては有給扱いの例もあります。また、短時間勤務制度や在宅勤務制度を併用すれば、急な子どもの発熱にも柔軟に対応できます。2025年4月の改正により、企業に対し両立支援のための制度整備を義務づけるなど、働く親が利用しやすい環境づくりが進められています。
参考:看護休暇は無給!? 2025年4月の法改正で対象年齢や取得条件はどう変わる?
ベビーシッターサービスに登録する
病児保育施設の予約が取れなかったときの「第二の選択肢」として、ベビーシッターを確保しておくと安心です。後述するキッズラインなどのベビーシッターサービスに事前登録し、いざというときにすぐ依頼できる状態にしておきましょう。
ベビーシッターを探してみる
病児保育が使えないときには、ベビーシッターを頼ろう

近年、病児対応ができるベビーシッターに注目が集まっています。自宅で対応してもらえるため、
移動の負担を抑えやすく、きょうだいのいる家庭でも段取りが取りやすいという声が増えています。
一方で、病児保育は自治体の事業として基準に沿って運営される施設型、自宅でのベビーシッターは事業者ごとのサービスである点に根本的な違いがあります。選ぶ前に、仕組みと条件を確認しておきましょう。
ベビーシッターと病児保育の比較
| 項目 |
病児保育施設 |
ベビーシッター(病児対応) |
| 依頼について |
定員制・先着。事前登録と医師の連絡票などがあることが前提。当日利用は、空きがある場合のみ。 |
民間事業者が提供するサービスに空きがあれば当日依頼も可能。初回は面談が必要なことが多い。ベビーシッターにより対応可否が異なる場合がある。 |
| 事業形態 |
自治体の事業として基準に沿って運営される施設型。区市町村が設置または委託。医療機関併設型や保育所併設型がある。 |
民間事業者による在宅の訪問型サービス。事業者ごとの利用規約と体制に基づき提供する。空き状況などにより、当日依頼が可能な場合あり(初回利用の場合、事前面談などが必要なケースも) |
| 利用時間 |
開所時間内(おおむね8:00〜18:00前後) |
早朝・夜間・休日など柔軟に対応可能(ベビーシッターにより異なる) |
| 場所 |
区市町村が委託する指定施設での預かり |
基本的に保護者の自宅での預かり |
| 個別対応 |
少人数または集団保育 |
原則として、1対1の個別ケア |
| 費用 |
1日あたり2000円〜3000円ほど。(区市町村によって変動。条件によって減免措置もある) |
1時間あたり3000円以上(サービス・時間帯により異なるが、通常のサポートに比べると割高となる。病児対応のベビーシッターへの依頼が必要) |
当日依頼や夜間対応が可能な場合も
ベビーシッターの大きな特徴は、家庭ごとの事情に合わせた柔軟な対応ができることです。
病児保育のように施設の定員や受付時間に左右されず、当日の急な依頼や夜間のサポートにも対応できる場合があります。
また、ベビーシッターは家庭を訪問してケアを行うため、子どもは自宅で安心して過ごせます。
一人一人の体調や性格に合わせた個別対応が可能で、静かな環境で休ませたり、食事や服薬をサポート※したりと、きめ細やかなケアを受けられるのも魅力です。勤務時間や兄弟の送迎など、家庭ごとのスケジュールに合わせて依頼時間を自由に設定できる点も、共働き世帯にとって大きな利点です。
※詳細は
こちらをご確認ください。
ベビーシッターを依頼してみる
ベビーシッター費用の補助制度を活用すれば、金銭的負担を軽減できる
ベビーシッターの利用には一定の費用がかかりますが、病児対応のベビーシッターに公的助成を使える場合があります。東京都の一時預かり利用支援は、区市町村が実施し、都の認定事業者を利用した時間に応じて補助されます。ただし病児に適用できるか、上限時間や対象年齢は区の要綱で異なります。
勤務先が企業主導型ベビーシッター利用支援事業を導入している場合は、割引券を使えることがあります。いずれも病児対応に使えるかは、事業者の受け入れ基準と自治体や企業の運用で決まるため、事前に確認することをおすすめします。
キッズラインならスマホでベビーシッターを探せる
キッズラインは、
ベビーシッターのマッチングプラットフォームとして、全国47都道府県にサポーターが登録しています。スマートフォンから24時間いつでも検索・依頼ができ、
急な発熱や予定変更にも柔軟に対応できます。
病児や病後児のケアに対応できるサポーターを選んで依頼することができ、対応可能なサポーターが所定の研修と審査を通過しています。予約前にプロフィールで「病児・病後児対応可」と表示されているかを確認しておくと安心です。
対象となるのは、医療機関で診察を受けて診断が確定しており、症状が安定している子どもです。たとえば、発熱(37.5度以上)や胃腸炎、喘息、皮疹、インフルエンザ、水ぼうそうなど、病児または病後児であっても、診断済みで急変リスクが低いなど一定の条件を満たす場合が対象となります。一方で、麻しんや百日咳、髄膜炎菌性髄膜炎など、重篤または感染力の強い病気は対応外です。
サポーターは自宅を訪問してケアを行うため、子どもは慣れた環境で安心して過ごせます。鼻水吸引などの医療行為は行えませんが、与薬は「病児サポート」の場合に限り対応可能です※。
初回利用時には面談(オンラインも可)があり、ベビーシッターの人柄やスキルを確認してから依頼できます。また、レビュー機能を通じて他の利用者の評価を確認できるため、初めてベビーシッターサービスを利用する方でも安心です。
※詳細は
こちらをご確認ください。
今すぐベビーシッターを依頼してみる
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