スマホの写真を簡単に販売できるサービス「Snapmart(スナップマート)」を発案し、現在スナップマート株式会社の代表取締役を務めている江藤美帆さん。経営やSNSマーケティングに関するツイートで有名なえとみほさんを、ツイッターでフォローしている方も多いのではないでしょうか。
今回はそんなえとみほさんに、「働き方の変化」をテーマに取材をさせていただきました。
若い人のモチベーションは「お金」でも「社会的ステータス」でもない
ー今回はえとみほさんの数ある人気ツイートの中から、「働き方/生き方の変化」について探っていきたいと思います。先日えとみほさんがつぶやかれていた、若い人のモチベーションに関するツイートが面白いなと感じました。
えとみほ:これは本当にそう思いますね。今の若い人は「何をしたいか」よりも「どんなライフスタイルを送りたいか」が先にあって、会社を選んでるところがあるなと感じます。
私なんかはどちらかといえば仕事人間なので、仕事のために私生活を犠牲にするということを普通にしてきたのですが、若い人からすると、出世のために転勤するとか深夜残業するとかってありえないんでしょうね。
ーそういう傾向は強くなってきている気がします。なぜ、そのような変化が起きていると思いますか?
えとみほ:これは私のツイートに寄せられた意見なのですが…。
私たちの世代は「この職業に就いて一生を過ごす」という価値観があったけど、今の時代は変化が激しいので、その職業に就いても一生安泰か分からないし、会社だっていつまであるか分からないじゃないですか。
「いろいろなものが不確実な時代だからこそ、若い人は"暮らし方"や"働き方"に夢を置くのではないか」というリプライをいただいて、たしかにそうかもしれないなと思いました。
ーなるほど。えとみほさんから見て、若くて優秀な人は何を求めていると思いますか?
えとみほ:話していてなんとなくわかってきたのが、「お金」がモチベーションなわけではないということです。そして、昔の人みたいに「社会的ステータス」がほしいわけではない。
ーたしかにそういう人は少なくなっている気がしますね。
えとみほ:彼らは、「好きなことができるか」「柔軟な働き方ができるか」を見るようになってきているんですよね。
スナップマートでは副業をOKにしているのですが、若い社員たちを見ていると、彼女たちは本業以外にもやりたいことがあって、私生活ではインスタグラマーやパーティコーディネーター、サロンをやったりしているんですよ。
いかにそういった社外活動を認められるかが、これから優秀な人を採用するにあたって大切になってくるのではないでしょうか。
優秀な人は仕事がつまらなくなったら辞める
ーただ、経営者から見て副業というと、本当は禁止したい人が多いイメージがあります。実際のところ、いかがですか?
えとみほ: 正直いうと、「本当はフルコミットしてほしい」というのが経営者の本音だと思います(笑)でも、それだともうやっていけない時代になってきているのも事実で。
個人的に、副業を許容することは会社にとって良いことだと感じます。なぜかというと、やっぱり会社って常に刺激的な面白い仕事をすべての社員に与えられるわけじゃないんですよね。で、優秀な人って、仕事がつまんなくなると辞めてしまうんです。
今振り返ってみると、自分もそうでした。仕事がしんどい時に辞めようと思うのではなくて、ある程度落ち着いてきて、自分がいなくてもいいなと思った瞬間に辞めたくなるというか(笑)
特にエンジニアの方などはその傾向が顕著なのですが、「週1回別のスタートアップを手伝ってきなよ」とかって言うと、辞めずに続けてくれるんです。副業を許すことで、優秀な人は外で刺激を求められるメリットがあると感じますね。
ー副業を解禁にするだけで、辞めないでもらえるならありがたいですね。
えとみほ:そうですね。今は人手不足なのもありますし、正直経営者より労働者のほうが立場が強いと思っています。
私たちが選ぶというよりは、「選ばれている」という感覚のほうが強い。企業規模に関わらず、どの企業も「優秀な人にどう選んでもらえるか」にすごい苦心しているんです。
そういう意味では、優秀な人たちが何求めてるのかをよく見極めて、それを提供できるようにしていきたいです。
働き方を柔軟にすると、優秀な人からの応募が増える
ーそういう意味では、これから柔軟な働き方に対するニーズも強くなっているのではないでしょうか?
えとみほ:そうですね。以前、時短フルリモートOKのディレクター職を募集したら優秀な女性からの応募がたくさん来てびっくりしました。
えとみほ:面白かったのは、男性は「あまり働きたくない人」からの応募がきて、女性は「すごく働きたい人」からの応募がきたということです。
お子さんがいる女性だと、どんなに優秀でも「夕方までに迎えに行かなきゃいけない」とか、「朝は何時以上じゃないと出れない」などの制約があって、その制約をクリアする職場がものすごく少ないんでしょうね。
それだけ優秀な人が溢れている、働きたいけど働けない人がたくさんいるんだなと思いました。
待機児童になったから辞められてしまうのは経営者としても辛い
ー子育てのために、働きたいのに働けない女性が多くいるのは問題ですよね。
先日、「知り合いが保育園に落ちている」とつぶやかれていたのですが、えとみほさんから見て待機児童ってどういう問題がありますか?
えとみほ:かなり大変というか、深刻な問題だと受け止めています。急に社員から「保育園落ちたから辞めます」と言われたらびっくりしますし、経営者としては「何とかして続けてほしい」と思ってしまいますね。
ースナップマートだとそういう子育て社員はまだいないんですよね。
えとみほ:はい。でも若い女性はいるので、これから待機児童問題にぶちあたる可能性はあって、そうなったら結構つらいな、と…。
何が問題なのかというと、保育園に入れないために辞められてしまう状況が続くと、女性を採用するのに少し躊躇するようになってしまうんですよね。
大企業はある程度そういうバッファを見て採用しているのでいいと思うのですが、うちのようなベンチャーだと1人、2人抜けるのでも大きな痛手になります。
やはり男性の経営者に聞くと、20代後半の女の子を雇う時はちょっと慎重になってしまうといいますね。決してみなさん、表立っては言いませんが。
ーなるほど。でもスナップマートの場合だと、女性の感性も必要なので採用しないわけにはいけないですよね。
えとみほ:そうなんですよね。スナップマートの場合は「女性を雇わない」という選択肢はなくて。だからこそ余計、待機児童問題は早く解決してほしいですね。
ー今後、どのように解決されるのが望ましいとお考えですか?
えとみほ:待機児童問題に関しては、保育園という箱作るのはもう合理的じゃないなと思っています。保育園を作るとなるとまず場所を作らなければいけない。周辺住民の反対もあるだろうし、お金もかかるし維持も大変じゃないですか。
そうなるとやはりベビーシッターが解決の手立てになるのではと思います。突発的な事態のときも人のリソースでカバーできる。しかも、子育ての経験があって、手が空いてる人なんて山ほどいるわけで、すごい良いリソースマッチングだと思うんですよね。
ーキッズラインも待機児童解決につながるよう頑張ります!最後に、これから働きやすい社会にしていくために、どのようなことが必要だと思いますか?
えとみほ:働き手が減っていく中で、柔軟な働き方を許容していかなければいけないと同時に、労働の生産性を上げることが重要だと思っています。
日本の会社って無駄なことを結構たくさんしているので、その無駄をなくすだけでも生産性はかなり上がると思うんですよね。
会議に出る人数は最小限にするとか、資料はオンラインで共有して印刷しないとか、訪問営業をやめてオンライン会議にするとか、そういうところを変えるだけでもだいぶ変わると思います。
「生産性をあげた分で定時に帰って副業していいよ」という感じにすると、若い人も女性もみんなハッピーになれるんじゃないかな。
ーありがとうございました!
まだまだ課題の多い、日本の働き方。若い人も、子育てなどの制限がある人も、働きやすい社会にしていきたいですね。
来週公開予定の後編では、えとみほさんのツイッターから見る「投資」の考え方についてお伺いします。
(取材・文:あつたゆか)