キッズラインでお仕事をされているサポーターの方々に、働き方の工夫ややりがいについてお伺いする企画。今回は、助産師として約20年のキャリアを持ち、産後ケア&0歳児ベビーシッターとして活躍する坂田陽子さんにインタビュー。産婦人科病院で師長を務め、5000人以上のママをサポートした経験を持つ坂田さんに、産後ケアの重要性や、キッズラインと助産院の二刀流の働き方の魅力についてお伺いしました。

看護師勤務時代に、産後ケアの必要性を感じて助産師へ




ー現在の働き方を教えてください。

都内で出張型の助産院を運営し、授乳相談や沐浴レッスンなどを行っています。助産院をメインの仕事としながら、キッズラインでも新生児を対象としてベビーシッターをしています。

ー助産師になろうと思ったきっかけは?

赤ちゃんや子どもに関わる仕事がしたいと思い、看護師として産婦人科やNICU(新生児集中治療室)で勤務しました。多くのママと接するうちに、赤ちゃんだけでなく、産後のママや家族への包括的なケアが必要だと考えるようになり、もっと専門的な知識を身につけるため、助産師学校に通って資格を取りました。

ーどういった理由で産後のママや家族へのケアが必要と思うようになったのですか?

産科に入院したママが母乳トラブルを抱えたり、産後にメンタルケアが必要だと思われる状態になっていたりする様子を見て、看護師ではできることが限られていると感じました。このことが、助産師へのスキルアップを決意した大きな理由です。看護師からの転身に迷いはありましたが、「やるしかない」と思い勉強に励みました。

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「産後ケア」の助産院を開業したものの収入面に不安


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ーその後助産院を開業されたんですね。

産科勤務時代に病院公認で助産院を開業し、元々副業として産後ケアをしていました。ただ、私の副業は珍しいケースで、一般的ではないかもしれません。副業では、主に日本に住む外国人ママの産後ケアを担当しました。
助産院は産科とは違ったケアができる良さはあったものの、受注と収入が安定しづらいことに不安も感じていました。予約が集中するときと、そうでないときの差があったからです。なので、副業の助産院を本業にするためには別の収入も必要だと感じていました。

ーそれでキッズラインに登録されたんですね。
はい、助産院のスケジュールが空いている際に仕事をしたいと思い、2020年にキッズラインへ登録しました。以前、勉強会でお会いした助産師さんがキッズラインに登録していたことから「私も」と思ったことがきっかけです。
しかしちょうどコロナ禍の始まりと時期が重なってしまい、すぐには活動ができませんでした。本格的にキッズラインでのサポートを始めたのは、2023年でした。

サポーターとして働く

夜勤がなく、スキルに見合った働き方にやりがいを実感


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ーキッズラインで働く良さはどこにあると思いますか?

一つは自分のスケジュールに合わせて働ける点です。助産師勤務時代には、月に5日ほど夜勤があり、不規則な勤務で体調を崩すことがありました。助産師は病院勤務でシフト制が多いため、子育てをしながら働きづらい職場環境で、子育てを機に辞めてしまった同僚もいました。
キッズラインでは働く時間やサポート内容を自分で選べるので、労働時間の問題で辞めてしまった助産師でも、専門知識や経験を活かしながら家庭との両立ができるのではないでしょうか。

キッズラインでは自分が提供するサービス内容を設定できるので、自分が得意なサポートができるのもメリットです。私の場合は助産師の経験から、体重の変化から授乳が上手くいっているかどうかやミルクの補足量の分析をしたり、お子さまの様子をチェックしたり、生後間もないお子さまのおへその状況を見て必要に応じて医療機関への受診を勧めることもあります。

ー時給を自由に設定できることについて、どのように感じていますか?

自分の経験やスキルに見合った報酬を得られるとやりがいを感じますし、仕事に対するモチベーションが高まります。また、キッズラインでは東京都が提供するベビーシッターの助成制度(※1)があるので、ご依頼が安定しているのも魅力です。

(※1)東京都ベビーシッター利用支援事業(一時預かり事業)は、ベビーシッターによる保育を希望する子育て世帯に対して、利用費用の一部を東京都が助成する事業のこと。1時間あたり最大2500円(22時〜朝7時までは最大3500円)が助成されます。
東京都ベビーシッター利用支援事業|一時預かりについて

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産後のママと信頼関係を築くために大切にしている3つのこと


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ー新生児のサポートで、印象に残っているエピソードはありますか?

とにかく毎回のサポートがとても楽しいですね!どのお客様も優しく、いつも感謝の言葉をたくさんいただいています。特に印象に残っているのは、赤ちゃんの沐浴サポートをしたときですね。初めて赤ちゃんを沐浴させるママとパパがとても不安そうだったので、沐浴の手順を丁寧に説明しながら実演しました。その際、ママパパがやり方のメモを取ったり、スマホで動画を撮影したりしていて。「きっと、ご夫婦で動画を見て、赤ちゃんの沐浴をするのだろうな」と考えると、穏やかな気持ちになりました。

ーお客様との信頼関係を築く際に心がけていることはありますか?

心がけていることは3つあります。まず、ご家族の価値観や育児の方針を尊重し、私の考えを押し付けないようにしています。
次に、サポート中には言葉に気をつけることです。助産師が来ると、「怒られるのではないか」と身構えるママは少なくありません。何気なく発した私の言葉に傷つき、ママが心を閉ざしてしまうかもしれません。
たとえば、あるご家庭では「最近、母乳に加えてミルクを足しています」と遠慮をしながらおっしゃるママがいました。おそらく、助産師は母乳育児を勧めると思われたのでしょうね。このとき、私は「ミルクにも良い点がありますよね。楽になりましたか?」と返すようにしています。
最後に大事なのは、私自身がいつも元気でいることです。サポート中の私の状態が、そのままママに伝わると思うからです。

サポーターとして働く

「産後ママには自宅ケアが必要」との認識が広がってほしい


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ーキッズラインの調査では、産後ママの78%が「精神的につらい」と回答(※2)しました。現在の日本における産後サポートで課題に感じる点はありますか?

病院での産後ケアは充実している一方で、ご家庭でのサポートが不十分だと感じます。一般的に、出産後のママの入院期間は5日、帝王切開を行った場合でも7日です。退院して自宅に戻ったママが、上手に赤ちゃんのお世話をできないのは当たり前です。

特に私が疑問に思うのは、退院してから1ヶ月健診までの1ヶ月間のサポートがとても不足している点です。この間のママは外出が難しく、赤ちゃんのことでわからないことがあっても、受診するハードルはとても高いです。私が出張型の助産院を開業したのは、産後のママを助産師が訪問すれば、受診を待たずに助けになれるためです。産後1ヶ月のママにとって、困りごとを相談できる相手がいることがママと赤ちゃんの命を守るうえで非常に大切です。

(※2)2024年9月27日~10月1日の期間で「産後のメンタルヘルスに関するアンケート調査」実施。
産後のメンタルヘルスケア調査|キッズライン

ー海外と日本で、産後の過ごし方は違うのでしょうか?

以前、台湾での研修に参加したことがありますが、産後ケアが充実していたことに驚きました。台湾では産後ケア文化が浸透しており、国内には多くの産後ケア施設があります。赤ちゃんを出産したママは、赤ちゃんとともに施設で1ヶ月ほど過ごし、心身の回復のために休養します。施設では、助産師や看護師、栄養士といった専門職によるケアを受けます。日本でも、産後にこういった習慣が根付いたらいいのになと思いますね。

ー日本で産後ケアが普及するためには、どのような取り組みが必要だと思いますか?

産後ケアがいかに重要かをより多くの人に知ってほしいと思っています。産後のママが退院後もサポートが必要との認識を社会全体で共有し、行政と民間が連携して、訪問型の助産師ケアや産後ケア施設を広めていきたいですね。

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チームで産後ケアを広めて、もっと多くのママを笑顔に!


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ー今後の夢や目標を教えてください。

助産院運営の立場としても、0歳児ベビーシッターとしても、産後ケアについての学びをもっと深めていきたいです。低月齢のお子さんがいるママからは、授乳や寝かしつけに関するお悩みを多く伺います。それらの分野の知識をさらに身につけ、質の高いサポートを提供できるようになりたいですね。寝かしつけの勉強を個人でしていたので、その経験をサポートで活かしたいと思っています。

また、助産院、キッズラインを問わず、私は助産師として個人で仕事をしています。そのため、ご依頼が重なるとお断りしないといけないので、心苦しいです。これからは、私が一人で対応するのではなく、他の助産師や育児サポートに携わる方々とチームを組んで活動できたらいいなと考えています。私と同じような志を持つ方と知り合い、人材を育てる活動に興味があります。

ー最後に、助産師の経験を活かしてキッズラインで働きたいと考えている方に、メッセージをお願いします。

キッズラインの魅力は、自分の得意分野を活かして働けることです。私の場合は、授乳と育児相談が得意分野。自分が自信が持てることからサポートを始めて、段階を踏んで経験を積めば大丈夫です。助産師は新生児が専門なので、ベビーシッターというと「保育には自信がない」と思われるかもしれません。
でもプロフィールに「新生児〜乳児優先!」と書いていると、0~1歳くらいのサポート依頼がほとんどなので、特別な保育スキルがなくても心配いりません。働き方を変えてみたい、産後のママの手助けをしたいという方はぜひチャレンジしてみてください。

――インタビューを終えて――
坂田さんのお話から、助産師としての豊富な経験と、産後ケアに対する強い熱意が伝わってきました。特に働き方の変化が、坂田さんにとって大きな転機となったことが印象的です。夜勤で体調を崩した経験があるだけに、キッズラインの柔軟な働き方で、助産師としての経験を活かしながら、楽しくサポートできている様子がよく伝わってきました。


▼坂田陽子さんのプロフィールページはこちら
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