保育士の仕事にやりがいを感じても、給料や職場環境に納得できず、退職や転職を考える人は少なくありません。本記事では、保育士の退職理由や現在の給料の実情、待遇改善の取り組みを解説し、収入アップのために役立つ資格取得や転職、副業の方法についてご紹介します。

保育士が退職をする主な理由


疲れた保育士
保育士は、子どもたちの成長を見守り、親の就業を支える重要な役割を担っています。ただ、その存在や役割の重要度に反して労働環境は快適とは言えず、賃金の低さもしばしば社会課題として論じられています。
現実に、保育士資格を持ちながら保育士として働かない潜在保育士は増加の一途をたどっており、2020年時点で約102万人(※1)に達しました。 また、現職で働く保育士の中にも離職を考えている人が少なくありません。保育士はどのような理由で退職を選択することが多いのか、改めて事例を交えながら解説します。

(※1)令和4年版厚生労働白書

【保育士の退職理由1】 給料の低さ

保育士が退職を考える大きな理由は、給料の低さです。東京都が行った調査(※2)によると、退職理由の1位として「給料が安い」が挙げられています。
厚生労働省が2024年3月に発表した「賃金構造基本統計調査」では、全業種の平均月収が31万8300円に対して、保育士の月収は27万1400円 と差があることが示されています。ただし、27万1400円という金額には管理職の収入も含まれているため、役職がない、経験年数の浅い保育士の月収はこれよりも低い水準となっています。
そのため、保育士はゆとりある暮らしを送りづらく、将来への備えをする余裕がありません。特に都市部では家賃や生活費が高く、給与の大半が生活費に充てられるため、経済的な余裕を持てないことが退職の引き金 となります。

(※2)令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」


【保育士の退職理由2】職場の人間関係

保育士は子どもたちや保護者とのコミュニケーションに加え、同僚や上司との連携が求められる仕事です。それだけに、周りとの意思疎通の負担が大きくなりがちです。園によっては、従来のやり方を尊重するあまり、新しい提案や改善案を受け入れられにくい雰囲気があることもあります。そのような職場で働く保育士は次第に「自分の意見が反映されにくい」といった閉塞感を感じ始め、結果的に離職につながってしまいます。

【保育士の退職理由3】業務量の多さ

保育士が退職を考える理由には、業務量の多さもあります。保育士は、日々の保育活動に加え、行事の準備や保護者対応、記録業務など多くの業務を同時にこなさなければならず、結果として労働時間が長くなりがちです。 東京都の「令和4年度保育士実態調査結果」では、長時間労働や仕事の持ち帰り、勤務時間の融通が効かないことへの不満の声が挙がっており、労働環境の改善が求められています。

参考:令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)

保育士の平均年収は、約396万円


お金
厚生労働省が2024年3月に発表した「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の全国平均年収は約396万9000円 でした。前年の約391万4000円からはわずかに上昇したものの、依然として他の職種に比べて低い水準です。収入に対する不満が離職や転職の大きな要因となる状況は、少しずつ改善されては来ているものの、まだ課題も残っています。保育士の年収は本当に上がっているのでしょうか?

保育士の年収は、全業種平均と比べて約60万円も低い

保育士の年収は、全業種の平均と比較すると低い水準にあります。国税庁が2024年9月に発表した「民間給与実態統計調査」では全業種の平均年収は約460万円でした。一方で保育士の平均年収は約396万円(※)であり、差は60万円近くに及びます。 これが保育士が経済的な不安を感じやすい理由の一つとなっています。

(※)厚労省「賃金構造基本調査」の結果から算出。保育士の「きまって支給する現金給与額」(27万1400円 ×12ヶ月)に「年間賞与 その他特別給与額」(71万2200円)を足して試算。

過去5年間の保育士の平均年収の状況

政府や自治体による処遇改善施策の影響で、保育士の平均年収は近年、徐々に上昇しています。 2023年には前年と比べて約1.4%上昇したものの、物価の上昇をカバーできるほどではありません。収入の伸びは依然として緩やかで、他職種と比べるとまだ低い水準です。
保育士年収推移
(厚生労働省「賃金構造基本調査」から編集部作成)

年収の低さだけでなく、長時間労働や職場の人間関係といった労働環境の課題も依然として残っています。これらの要因により、多くの保育士が「もっと自分のスキルを活かしながら、より良い収入と働きやすさを手に入れたい」 と考え、退職や転職を検討するに至ってしまうのです。

サポーターとして働く

保育士の退職を防ぐ待遇改善策とは?


笑顔の保育士
政府は処遇改善加算やキャリアアップ研修などを通じて、保育士の給料引き上げを図ってきましたが、十分とは言えません。これまでに実施された主な待遇改善策とその効果について解説します。

●保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業

保育士の給料改善に向けた第一の取り組みには、「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」が挙げられます。本事業は2022年2月から9月まで期間限定で行われ、毎月月額9000円が保育士の給料に上乗せされました。保育士の給与を少しでも補填するための緊急対策として実施されたものの、あくまで一時的な措置であり、長期的な給料の底上げには至っていません。

●保育士等処遇改善加算とキャリアアップ研修

保育士の給与を引き上げるための代表的な施策が「保育士等処遇改善加算」です。 この制度は、専門知識やスキルを高める目的で行われる研修制度である「キャリアアップ研修」を修了した保育士に対し、昇給や手当の加算を行い、給与を改善する仕組みです。具体的には、リーダーシップ研修や専門スキル向上のための研修を受講し、修了することで昇給のチャンスが広がります。

ただし、処遇改善加算は認可保育園のみに適用され、認可外保育園では適用されません。さらに、認可保育園であっても、施設が必要な基準を満たしていない場合や自治体への申請を行っていない場合には、加算を受けられないケースがあります。また、研修を受けるには時間と労力が必要なため、多忙で若手の保育士にとって学習時間や研修への参加が負担になることもあり、制度を活用しづらいと感じる人も少なくありません。
保育士のキャリアアップ
(こども家庭庁「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」より引用)

●保育士宿舎借り上げ支援事業

「保育士宿舎借り上げ支援事業」は、保育士の家賃負担を軽減するために自治体が家賃の一部を補助する制度です。特に家賃が高い都市部で働く保育士にとっては、大きな支援となり、経済的な負担を減らす効果があります。ただし、制度の利用には条件があるため、すべての保育士が対象ではありません。支援を受けるには、自治体が定めた条件を満たす必要があります。

●自治体独自の補助制度もある

保育士に対して引っ越し費用の補助や奨学金の返済支援を行っている自治体もあります。これらの支援は、保育士の経済的負担を軽減し、新卒者や若手保育士が働きやすい環境を整えることを目的としています。しかし、支援内容や補助金額は自治体ごとに大きく異なり、利用できる条件も地域によってさまざまです。また、予算の制約もあるため、全ての保育士が支援を受けられるわけではありません。

このように、さまざまな待遇改善策が講じられているものの、依然として多くの保育士が「給料が労力に見合わない」と感じています。給料が上がっても、現場の労働負担が軽減されなければ、仕事への不満解消にはつながりません。長時間労働や人手不足の問題が根本的に解決されない限り、処遇改善だけで退職を防ぐことは難しいのが現状です。こうした課題を解決するには、報酬の引き上げと同時に、働きやすい職場環境を整えることが求められています。

東京都の保育士退職防止策!地方との待遇差も


東京
東京都の保育士の平均年収は453万4700円(※3)と全国平均を上回りますが、地方では年収300万円台のケースもあり、地域によって保育士の待遇差が広がっています。たとえば、隣県の神奈川県は約416万円、埼玉県では約372万円にまで下がります。青森県と山形県は310万円台です。

(※3)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

東京都の保育士年収は453万円

前述の通り東京都の保育士の平均年収は約453万円で、全国平均(約396万円)よりも高い水準にあります。要因は、東京都による独自の待遇改善策です。たとえば、保育士の給与に対する加算や、保育士宿舎借り上げ支援事業による家賃補助などが積極的に行われており、保育士が働きやすい環境を整える取り組みが進められています。特に家賃補助は、家賃の高い都内において経済的負担を軽減する大きな助けとなり、東京都での保育士の離職率低下にも貢献しています。

自治体によって、待遇改善策にはばらつきがある

東京都のように待遇改善が進んでいる地域では保育士の年収が上がりやすいものの、自治体によって対応に差があり、全国的な改善には至っていません。また、財政的な制約があるため、どの自治体も同様の支援を行えるわけではなく、資金の限度があることが課題となっています。

保育士が退職せずに収入を上げる3つの方法


資格の勉強
保育士の待遇はエリアや園によっては改善されつつあるものの、保育士全体の収入アップの実現にまでは至っていません。個々の保育士が保育士を続けながら収入を上げるには、どうしたらよいのでしょうか?それにはいくつかの選択肢があります。保育士が保育という仕事を続けながら収入をアップさせるために取り組める具体的な3つの方法を紹介します。

【収入アップの方法1】昇進試験を受け、合格する

保育士が収入を上げるためには、実務経験を積むことが大切です。その後、主任保育士資格といった資格試験を受けて合格することで、保育士としてのスキルと収入アップが実現できます。主任保育士の平均年収は公立と私立で異なり、公立は約674万円、私立は約507万円です。
また、チャイルドマインダーやリトミック講師といった民間資格を取得することで、園独自の手当が支給されることがあります。勤務先に確認し、もし手当支給の対象であれば取得を目指すのもよいでしょう。

【収入アップの方法2】高収入の職場に転職する

「保育士を続けたい」場合、より良い待遇を求めて転職するのは、収入を上げるための効果的な方法です。給与の高い保育園へ転職することで、年収アップが期待できます。特に、保育需要が高い都市部では年収が高めに設定されているため、転職先を選ぶ際の重要な指標となります。ただし、収入よりも働きやすい環境整備に力を入れている園もあるので、収入だけを見ず、総合的に判断することが大切です。

【収入アップの方法3】副業をする

副業は収入アップに最も手早い方法ですが、公立の保育園では基本的に副業は禁止されているので注意が必要です。私立の保育園に勤務している場合は、職場の就業規則を見て副業が認められているかを必ず確認してから始めましょう。

副業として始めやすいのは、クラウドソーシングを介したライターやウェブデザインなど、自宅にいながら単発で受ける仕事です。また、保育士としての経験を活用して副業をしたいのであれば「ベビーシッター」が候補に挙がります。特に都市部においてはベビーシッターの需要が非常に高まっており、登録と同時にスケジュールが埋まることも。登録する会社によっては、時給を自分で設定できるケースがあるため、保育士の平均時給よりも高い時給で副業ができる可能性があります。

サポーターとして働く

保育士が副業でベビーシッターを始めるメリット


保育士の読み聞かせ
保育士として毎日園で働いていると、早番や遅番などのシフト調整や同僚や上司との人間関係など、心労が溜まることもあるかもしれません。その点、ベビーシッターは個別保育のため、園と比較するとストレス負荷が少ない仕事です。ここでは、副業でベビーシッターとして働く3つのメリットについてご紹介します。

【メリット1】自分の都合に合わせて仕事を入れられる

保育士の仕事はシフトや勤務時間が固定されていることが多く、家庭やプライベートとの両立が難しい場合があります。翌月のシフトが月末に決まることがあり、先の予定を立てづらいことに不満を抱く保育士も少なくありません。東京都の「令和4年度保育士実態調査結果」では、「現在の職場で働き続けるために充実を希望する」こととして、保育士から「勤務時間・交代制の融通がきく」が挙げられています。その点ベビーシッターは、自分のスケジュールに合わせて仕事を入れられるため、プライベートとのバランスを保ちやすいのが大きな魅力です。

【メリット2】自分で時給を決められる

保育士には、主任保育士や施設長といった役職に就いて収入を上げる機会があります。しかし、これは長期間にわたって保育士として働き続けることが前提です。東京都の調査では、保育士の平均就業年数は「3年以下」が全体の約5割を占めています。そのため、短期間で収入アップを実現できる方が、多くの保育士にとって魅力的に映ると言えます。

この点でもベビーシッターは、登録会社によっては自分で時給を設定することができるため、短時間での高収入も見込めます。保育士の給料は固定されていることが多く、昇給の機会が限られていますが、ベビーシッターは自分のスキルや経験に応じて収入を増やすことができるのが利点です。なお、自分で時給を設定できるのは、認可外保育施設設置届を自身で提出し、マッチングサービスに登録した場合に限られます。

【メリット3】人間関係のストレスが少ない

保育園では、同僚や上司、保護者など人との関わりが多く、人間関係のストレスを感じやすいことがあります。一方、ベビーシッターは基本的に子どもと一対一で向き合う仕事が多いため、職場の人間関係に悩むことが少ないのが特徴です。もちろん、子どもや保護者と信頼関係を築くことは大切ですが、同僚や上司とのやりとりがない分、精神的な負担は軽減されることが多いです。

【メリット4】子ども一人に向き合ってゆとりのある保育ができる

保育園の場合、一人で幼い子どもたちを複数見守る必要があり、成長段階の異なる子一人一人に合わせた保育ができないことにもどかしさを感じたこともあるかもしれません。その点ベビーシッターは、依頼先の子どもに向き合って、子どもがしたい遊びにとことん付き合ったり、子どものペースで食事をしたりと、ゆとりのある保育ができます。子どもに合わせた保育を行うことができないフラストレーションを抱えているなら、ベビーシッター=個別保育という仕事を検討してみてはどうでしょうか。

サポーターとして働く

保育士を退職してベビーシッターになる人も。本業にする魅力とは?


bebysitter
園勤務の保育士を続けながら、副業でベビーシッターをする人もいますが、ベビーシッターのマッチングプラットフォームである「キッズライン」では、より理想の働き方を目指して、保育園を退職してベビーシッターに絞る人も増えてきています。
そこで、「キッズライン」でベビーシッターを本業にすることの魅力を紹介します。

【魅力1】オンオフのメリハリがある生活が送れる

キッズラインでは、働く時間を自分で自由に決めることができ、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。たとえば、自身の子が学校に行っている時間帯のみ働いたり、家族が休みの土日に集中して依頼を受けたりしている方も。
園勤務ではシフトの調整に気を遣い、自由に有休を取りづらいこともありますが、キッズラインのベビーシッターなら、そうした心配が不要です。持ち帰りの仕事もなく、働くときには働き、休むときにはしっかりと休めるため、仕事とプライベートのメリハリがある生活が送れます。

【魅力2】時給アップで園勤務の収入を上回ることも可能

キッズラインでは、時給やシフトを自分で設定できるため、経験やスキルに応じて収入をアップできるのが特徴です。
2024年6月時点では、東京都で働くキッズラインのベビーシッターの平均時給は2422円。事業開始時2015年の平均時給1414円(東京都内)に比べて約1.7倍も高くなりました。東京だけでなく一都三県の平均時給も2308円と高水準で、全国平均でも2159円となっています。
キッズラインは東京都の「ベビーシッター利用支援事業・一時預かり事業」(1時間あたり最大2500円の補助)や「企業型ベビーシッター割引券」(1回あたり最大4400円の割引)といった助成制度の認定事業者です。これらの制度の認定シッターになることにより、依頼者の経済的な負担が軽減され、働く側のシッターも安定した仕事が入るという仕組みがあります。保育士からの転職を考えている方にとっては、こうした助成制度があることで安心してベビーシッターを始めることができます。また、スキルに見合った時給を設定できるので、場合によっては園勤務時の年収よりも高い収入を目指せます。

【魅力3】レビューが蓄積され、転居してもキャリアが持続できる

キッズラインでは、依頼者とサポーターの双方がレビューを記載するシステムがあります。レビューは複数集まってから表示されるため、個人が特定されることはありません。ベビーシッター(サポーター)としての評価は、個人の信頼として蓄積されるため、たとえ家庭の事情で遠方に転居してもキャリアを継続でき、仕事をスムーズに受注しやすくなっています。
実際に、家族の転勤に帯同して転居したベビーシッターが新たな地域で活動しているケースも多く、結婚・妊娠・出産・家族の転勤といったライフステージの変化があっても仕事を継続できることが魅力です。

サポーターとして働く

保育士資格を活かして、ベビーシッターを始めよう


sitter
保育士には「キャリアアップや収入アップ」のチャンスが用意されていますが、そのためには経験年数や資格取得が求められます。しかし、昇進や給与アップまでに時間がかかるため、「すぐに収入を増やしたい」と思ってもその機会が得られにくいのが現状です。

このような中、早期に収入アップを実現したいと考える方にとって、保育士のスキルを活かしながら働ける「キッズライン」のベビーシッターは魅力的な選択肢です。キッズラインでは、自分のペースで時給やシフトを設定できるため、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。また、企業型ベビーシッター割引券や東京都の助成制度の認定シッターになれるため、安定した収入を得る環境が整っています。
収入をすぐにでも上げたい、働き方を柔軟にしたいと感じている方は、ぜひキッズラインのベビーシッターとしての新しい働き方を検討してみてはいかがでしょうか。

エントリーボタン

▼あわせて読みたい
ベビーシッターになるために思い切って上京。踏み出した一歩から始まる新たな夢【キッズラインという働き方Vol.7】
「産後には自宅ケアが必要」助産院とベビーシッターの二刀流でママを笑顔に!【キッズラインという働き方Vol.11】
産後ケアって何をするの?自分に合った産後ケアを選ぶポイントを助産師が解説
▼記事一覧に戻る
KIDSLINE編集記事一覧
▼TOPページに戻る
KIDSLINE TOPページ
サポーターとして働く