保育園に急いでお迎えに行ったのに、帰りたがらない子どもに困ったことはありませんか?抵抗が毎日続くと、ストレスを感じることもありますよね。この記事では、子どもが保育園から帰りたがらない理由と、叱ることなくスムーズに帰る方法を、現役保育士が解説します。

子どもが保育園から帰りたがらないのは、なぜ?


泣く子供
一日待たせていた子どもを一秒でも早く迎えに行ってあげたいと、急いで駆け付けたのに、「帰りたくない」と子どもが駄々をこねると、親としては「なんで……」と脱力してしまうものです。

そもそも、子どもはなぜ保育園から帰りたがらないのでしょうか。そこには子どもならではの理由があるのです。保育士が知っている、帰りたがらない理由を紹介します。

【帰りたがらない理由1】:遊びを中断したくないから

遊びを中断したくないがために「帰りたくない!」とぐずる場合があります。
夢中になっている遊びを止めることは、子どもにとって大きなストレスです。たとえば、積み木で町を作っていたり、ごっこ遊びでアイスクリーム屋さんになりきっていたり、頭の中で楽しいイメージを膨らませたりしているのに、急に「帰るよ」と言われたら、不快感を抱くのは当然です。
特に友だちと一緒に遊んでいるときは、相手がまだ遊び続けているので、なおさら「自分ももっと遊びたい」と感じてしまいます。子どもは、友だちとイメージを共有している時間はとても楽しく、いつまでも続けていたいと感じるのです。
子どもは保育園で楽しく過ごしているときほど、「帰りたくない」という気持ちになります。ママパパにとっては、嬉しいような、嬉しくないような、複雑な気持ちになる瞬間ですね。

【帰りたがらない理由2】疲れて機嫌が悪いから

疲れていると、機嫌を悪くして「帰りたくない」と言うことがあります。保育園では、身体を使って遊ぶのはもちろん、頭も使っています。
保育園は集団生活なので、自分で考えて行動したり、気持ちの折り合いをつけながら過ごしているのです。一日中保育園で過ごす子どもは、大人が想像する以上に疲れていることがあります。子どもは疲れていると機嫌が悪くなり、その結果「帰りたくない」と口にすることもあります。
また、親に「甘えたい」という気持ちから、ぐずってしまうこともあります。そのようなときは、少し寄り添ってあげるだけでも子どもは安心できるでしょう。

【帰りたがらない理由3】親の注目を集めたいから

子どもは親の注目を集めるために反抗的な態度を取ることがあります。保育園から帰りたがらない行動も、「ママパパに自分だけを見てもらいたい」という気持ちの現れかもしれません。
特にきょうだいがいる場合は、このパターンが目立ちます。帰るときに妹や弟が抱っこされていると、やきもちを焼いて「帰らない!」とアピールするわけです。
駄々をこねることで、ママパパがどういった反応を示してくれるか、確認しているのです。嫌そうな表情や、突き放すような態度をとられると、注目を集めるためにさらに激しくアピールすることもあります。

保育園から帰りたがらない子どもに帰宅を促すには?


保育士の先生とサヨナラ
保育園で楽しく遊んだ後、お迎えの時間に子どもが「帰りたくない」と言うことはよくあります。そのようなとき、どうすれば子どもが自然に帰りたくなるのでしょうか。ここでは、試してみたくなるような言葉かけをいくつかご紹介します。

【効果的な言葉かけ1】「楽しかったね。また明日、遊ぼうね」

子どもが感じている気持ちを言語化し、受け止めます。その上で、明日も保育園に行くのが楽しみになるような言葉をかけましょう。
「帰るよ」と突然言われると、子どもは自分の楽しい気持ちを無視されたように感じてしまいます。まずは「楽しかったね」などと、子どもの気持ちを言葉にすると「わかってもらえた」と感じ、次の言葉を受け止めやすくなります。
子どもの気持ちを受け止めた上で「また明日遊ぼうね」と声をかければ、「また明日、遊べるんだ」と前向きな感情を抱くことができます。

【効果的な言葉かけ2】「帰ったら〇〇しようね」

先の見通しを持たせることで、子どもは気持ちを切り替えやすくなります。帰宅後の楽しみを提示し、「帰りたい」という気持ちに変えていきましょう。
たとえば、「帰ったら、ママと一緒にカレーを作ろうか」「おうちで、パパとお風呂で遊ぼう」など、子どもの興味関心に添った提案を用意しておくとよいですね。
前日に子どもにとって楽しい時間があったのであれば、「帰ってから、昨日の続きをしようか」と誘えば、きっと喜んで応じてくれるでしょう。
帰ったら楽しいことが待っていると思えば、「早く帰りたい」と感じやすくなります。日頃から子どもの好きなことにアンテナを張っておきたいですね。

【効果的な言葉かけ3】「時計の針が◯になったら帰ろうね」

帰る前に子どもが気持ちの整理をつけられるよう、時計を利用して少しだけ待ってみるのもよいでしょう。
夢中になって遊んでいるのに、突然「帰るよ」と言われても気持ちが切り替えられません。時計をある程度理解している子であれば、「時計の針が6になったら帰ろうね」と約束して待つことも効果的です。子どもが時計を見ながら、心の準備をし、遊びを終わりに向かわせることができます。
このときに大切なのは、約束の時間が来たら必ず終わりにすることです。「あとちょっと」「あと5分」と時間を足していく習慣がついてしまうと、約束の効果がなくなってしまいます。大人が少しだけ待つことで、子ども自身が自分の活動に区切りをつけられるよう、経験を重ねていきたいですね。

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保育園からの帰宅を促す際のNGな対応


NGな行動
子どもに帰宅を促す言葉がある一方で、逆効果になる言葉も存在します。ここでは、なるべく避けたい言葉や対応を見ていきましょう。

【NGな対応1】怒る

子どもを怒ったり、脅したりするような言葉は、子どもの反発心を強めてしまう可能性があるので、避けましょう。
「早く帰らないと、置いて帰るからね」「今帰らないなら、おうちの玩具、全部捨てるから」など、子どもが嫌がることを言う方法は、一時的には効果があるかもしれません。
しかし、子どもは次第に「そうはならない」ことを学んでしまいます。やがて大人の言葉に反発や無視をするようになり、結果的に「なかなか帰らない」状況が続いてしまうことになります。
また、ママパパの怒りの感情に触れ、不安になる子どももいます。早く帰れたとしても、親子関係に悪影響を与える可能性があるため、怒ったり脅したりするような言葉は使わないように気をつけたいですね。

【NGな対応2】無視をする

子どもの気持ちや言葉を無視して、無言でその場を立ち去る姿勢を見せることは、子どもに「置いていかれる」といった恐怖心や、「何を言ってもわかってもらえない」という不満を与えることに繋がります。子どもの不安が高まることで、帰りたがらない状況が長引く可能性もあるでしょう。
保育士や他の保護者の前で怒りの感情があふれないように、無言になる方もいるかもしれませんね。車や自宅など人目につかないところで「お迎えに来たらすぐに帰る約束でしょ!」と感情が爆発してしまうこともあるのではないでしょうか。
いずれにしても無視をすることは、子どもを不安にさせてしまうので、言葉でのコミュニケーションを意識していきたいですね。

【NGな対応3】子どもに合わせて長時間保育園にとどまる

子どもが帰る気分になるまで待ったり、「もうちょっと」と言われるたびに滞在時間を伸ばしたりするのはおすすめしません。
子どもは「言えば自分の思い通りになる」「強く言えば、自分の言うことを聞いてくれる」という誤った学習をしてしまうからです。そのため、「なかなか帰らない」という問題の解決が、どんどん困難になります。
一度できてしまった習慣を変えることは難しいので、できるだけ早いうちから降園するリズムを作りたいですね。
子どもを大人の言いなりにするわけでもなく、大人が子どもの言いなりになるわけでもなく、お互いに気持ちの折り合いをつけながらスムーズに帰る方法が見つかるとよいですね。

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保育園からスムーズに帰るための親の接し方のコツ


子育て中の親子
毎日「帰りたくない」と言われると、対応が大変ですよね。そこで、ぐずられてから対応するのではなく、事前にできる工夫を取り入れてみましょう。

【親の接し方1】朝にシミュレーションをしておく

朝ごはんを食べているときや登園している途中などに、子どもとお迎えのシミュレーションをしておきましょう。
たとえば、次のような会話になります。
親:「ママ(パパ)、今日は5時にお迎えに行くからね」
子:「わかった」
親:「ママ(パパ)がお迎えに行ったら、どうするんだっけ?」
子:「すぐに帰る」
親:「遊びが楽しくてやめられないときは?」
子:「5分だけ待って、って言う」
親:「5分たったら、どうするんだっけ?」
子:「すぐに帰る。もう1回はなし」

このようなやりとりを毎日少しずつ繰り返すことで、子どもは親子のルールを覚え、守れるようになります。大切なのは、問いかけを通じて子ども自身に答えさせることです。「少しずつで大丈夫」と気楽に続けてみてくださいね。

【親の接し方2】お気に入りのものを準備しておく

子どもが好きなぬいぐるみや玩具、絵本などを、車やママパパのカバンに入れておきましょう。自分だけのお気に入りの玩具があることで、子どもの気持ちをスムーズに切り替えることができます。
たとえば、車で登降園している場合は、次のような会話で帰宅を促すことができます。
子:「帰りたくない!」
親:「車の中で、うさちゃん(ぬいぐるみ)が待ってるよ」
子:「うさちゃん?」
親:「うん。朝、車でうさちゃんに『バイバイ』ってしたでしょ。『早く来ないかなー』って、うさちゃん、車で待ってるよ」
子:「うさちゃん、待ってる!行こう!」


徒歩の場合は、このような会話はどうでしょうか?
子:「帰りたくない!」
親:「帰りたくないの?ママ(パパ)のカバンの中で、ミニカーが『早くおうちで遊びたいよー』って言ってるよ。」(ミニカーをチラッと見せる)
子:「僕のミニカー!ちょうだい!」
親:「靴、はいたらね。靴はけるまで、ママ(パパ)のカバンの中から応援してるって」
子:「靴、はく!」

お気に入りのアイテムを擬人化してセリフをつけると、子どもはますます興味を持ちやすくなります。お気に入りの玩具は、子どもの気持ちを自宅へと向けるきっかけとなります。でも、保育園の中で渡してしまうと、その場で遊び始めてしまうかもしれません。園外で渡す習慣をつけるとよいでしょう。

【親の接し方3】選択肢を準備しておく

子どもは自分で選択することにより、行動を起こしやすくなります。ママパパが困らない範囲で、子どもに選択してもらいましょう。
たとえば、このような風に声をかけてみてください。
子:「もっと遊びたいよー」
親:「5分だけならいいよ。」
子:「えー、短いよ。」
親:「あと5分か、今すぐ帰るか、どっちがいい?」
子:「じゃあ、あと5分」


帰りに買い物をする場合、次のようなやりとりもできます。
子:「まだ帰らない」
親:「今日おやつを買って帰ろうと思うんだけど、クッキーとおせんべい、どっちがいい?」
子:「クッキー!」
親:「よし、じゃあ、クッキー買いに行くか」
子:「うん!」

子どもが自分で決める感覚を持つことが大切です。どっちを選んでもママパパにとって不都合のない選択肢を準備しておきましょう。

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保育園から帰らないときは、保育士と連携するのも手


保育士の笑顔
ママパパとのやりとりだけではうまくいかないときは、保育士に手伝ってもらうのもよいでしょう。保育士は子どもの特徴を理解していることから、適切なサポートをしてくれます。次のような言葉がけを保育士にお願いしてみましょう。

●「もうすぐお迎えくるよ」

お迎えの時間を事前に保育士へ伝えておき、時間が近づいたら「もうすぐお迎えにくるよ」「お迎えが来たら、バイバイして帰るよ」などと声をかけてもらうようにします。子どもは「もうすぐお迎えに来るんだ」と帰宅に向けて心の準備をしやすくなります。
保育士に声かけをお願いするときは、「何分前から声をかけていただけると助かります」と具体的に依頼するとよいでしょう。どのような声かけがよいかがわからないときは、保育士へ相談してみましょう。ママパパと一緒に考えてくれます。

●「あと1回でおしまい」

お迎えに行ったとき、子どもが遊びに夢中でなかなか帰ろうとしない場合には、「あと1回でおしまいにしようね」と声をかけてもらうよう、保育士にお願いしてみましょう。
実は保育士もお迎えが来たときに「あと1回」と言っていいのか、迷っています。ママパパが「遊びを中断させられた」と思わないか、不安に感じているからです。
ママパパが同意のもと「あと1回」と言えることは、保育士にとっても心強いことです。双方の合意のもとで、子どもに降園を促せるとよいですね。

●「バイバイ、タッチ」

1〜2歳くらいの小さな子どもには、「バイバイ、タッチ」で帰る習慣を作るのがおすすめです。「タッチする」という行動と「帰る」という行動がセットになって子どもにインプットされます。
ママパパがお迎えに来たら、「A君、バイバイ、タッチしようね〜」と保育士に誘ってもらうことで、子どもは楽しい気分で帰ることができます。「タッチ」という手と手を合わせるだけの些細な動作ですが、子どもたちは大好きです。人との繋がりや温かさを感じられるからでしょうか。
1歳近くなって自ら手を伸ばすようになったら、保育士とタッチして帰る習慣をつけるとよいですね。

ベビーシッターにお迎えを頼む

育児のパートナーを見つけて相談できる体制を


ベビーシッター
毎回「帰らない」とぐずられると、お迎えに向かう足取りが重くなってしまうこともありますね。子どもの成長過程ではこうした行動が見られるのは自然なことですが、親としては対応に悩むことも少なくありません。一日離れて過ごしたわけですから、親子で楽しく帰りたいものです。
「帰らない」とごねるのは一時的な行動であることが多く、この時期を乗り越えるためには、声かけの工夫や楽しい帰宅のアイデアを試してみるのが有効です。「今日の楽しかったことを家で教えてね」や「お家に帰ったら〇〇しようね」といった声かけをして、子どもの気持ちを帰宅に向ける作戦を練りましょう。

自分たちだけで対応が難しいと感じたときには、まず保育士に相談してみるのも一つの方法です。保育士は日中の子どもの様子を把握しており、適切な声かけでサポートしてくれます。「もうすぐお迎えに来るね」などの一言で、子どもの気持ちを帰宅モードに切り替えてくれるでしょう。

しかし、保育士のサポートだけで対応が難しい場合や、ママパパが休息を取りたいと感じるときには、ベビーシッターへお迎えの依頼を検討してみてはいかがでしょうか。ベビーシッターは家庭保育の専門家なので、保育士とは異なる柔軟なサポートが受けられます。ママパパ以外の人が保育園にお迎えに行くことで、子どもにとって新鮮な体験となり、帰宅への流れがスムーズになる場合もあります。

「キッズライン」ならスマホでシッターを探せる

ベビーシッター・家事代行サービスを運営する「キッズライン」なら、パソコンやスマホで簡単にベビーシッターを見つけることができます。
「キッズライン」には、保育士などの資格を保有するシッターも多く在籍しています。子どもが毎日「帰りたくない」とごねるとママパパもお迎えがつらくなってしまうこともあります。そのようなときは、ベビーシッターに送迎を依頼してみましょう。
ベビーシッターは子どもの気持ちに寄り添いながら、スムーズに帰宅できるようサポートしてくれます。初めてのシッターに保育を依頼する際には、オンラインでの顔合わせまたは対面での事前面談が必要です。まずはよさそうだなと思った人に連絡を取ってみて、お互いの相性を確かめてみましょう。

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■保育士ライター 佐野希子
18年目の現役保育士。独学で認定試験に合格し、幼稚園教諭の資格も取得。他に社会福祉士の資格も保有。現在は副主任として保育現場の指導とサポートに努めている。

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