子どもが偏食をすると、栄養面から食事に気を使わなくてはならず、頭を悩ます方も多いのではないでしょうか。今回は、保育園での勤務経験があり偏食相談にも乗ってきた管理栄養士が、「偏食する子どもができるだけ食わず嫌いをなくすためにできること」をご紹介します。おすすめのオリジナル時短レシピもありますのでぜひ参考にしてみてください!

子どもの偏食は放っておいて平気なの?

まずは「偏食」とはどんなことを表すのでしょうか?それは、その日の気分によって食べない食材があるというよりは、味覚が定着しはじめる幼児期以降に、断固拒否して食べない状況のことをいいます。一度も食べたことがないのに嫌い、などの食わず嫌いも偏食に含まれます。


偏食をする子どもをもつ親御様は「偏食を放っておいても問題ないか?」ということが気になる方も多いと思いますが、子どもの性格や個性も様々ですが、やはりできるだけ偏食は直した方が良いでしょう。しかし、無理をして食べさせることで、食事そのものがトラウマになる状況は避けた方が良いでしょう。目安の1つとしては、食べた時にあまりにも泣きわめいたり、吐いてしまったりする場合は要注意です。その場合は、無理に食べさせることはオススメできません。

子どもの偏食が引き起こすデメリット

image


偏食があると、ない場合に比べて摂れる栄養素が減り、栄養バランスが崩れてしまいます。特に成長期の子どもの場合は、心身ともに大きく成長する時期です。成長に必要な栄養素が足りないと、虚弱体質になりやすく、疲れやすい、風邪をひきやすい、便秘になりやすいといった症状にも繋がりやすいでしょう。そのため、成長期に十分な栄養が足りていないと、平均身長や平均体重に届かない場合も出てきます。また、精神面や社会生活にも影響が出る場合もあります。子どもが偏食傾向だとママやパパは子どもが食べてくれるからと、必然的に好きなものばかりを与えることになってしまいます。


そのような環境になると、子どもは嫌いなものを一切食べなくて済み、代わりに好きなものばかり食べさせてもらえると認識してしまいます。そうなると、保育園や幼稚園、小学校といった協調性を必要とする社会生活において、うまく対応できなくなる場合もある様です(※1)。このように、偏食のデメリットは成長段階に大きく影響します。偏食を直すことであらゆる面で健康的な生活が送れるといえるでしょう。


※1) 公益社団法人日本WHO協会 健康の定義

偏食を直すには就学前がオススメ



偏食を直す時期としては、味覚の観点からみて就学前がオススメです。一般的に生後5〜6ヶ月で離乳食を始めますが、この頃から2歳になる手前までは色々な味覚を体験させてあげましょう。なぜなら、2歳を過ぎるとイヤイヤ期も始まり、徐々に食べ物に対する好き嫌いが出る子どもが多いようです。今まですんなりと食べられていた食べ物を「イヤ」と言って拒否する場合もあります。


また、兄弟でも食べ物の好き嫌いは全く異なる場合も多く「上の子どもは食べたのに下の子どもはまったく手をつけない」と、悩むママ・パパも少なくありません。偏食がピークを迎えるのは自我が強くなり、しっかりと会話ができるようになる4〜5歳頃と言われています。言葉が達者になり、大人の言うことが理解できるようになるので、ママやパパも、子どもが言うことを聞かなかったり、言い訳をするようになっるので、苦手なものを食べさせるのも一苦労です。


このように、年齢が大きくなればなるほど、好き嫌いがはっきりしてきます。小学生になれば尚更です。そのため、できるだけ就学前までに偏食を改善することが大切です。

離乳食期からできる具体的な偏食への対策

image


●5種類の味を離乳食期から経験させる
「旨味」「塩味」「酸味」「甘味」「苦味」の5種類を離乳食期からまんべんなく食べさせてみましょう。味付けをせずに野菜などの素材そのものの味を多く経験させることで、5種類の味を早期から慣れさせましょう。


●例え食べない食材があっても食卓から消さない
すでに離乳食期が過ぎてしまった子どもの場合でも、子どもが嫌いな食べ物だからという理由で食卓から消してしまうのではなく、形や調理法、味付けなどを変えて少しでも出すようにしましょう。食卓からなくさないことで、食べるきっかけを作っておけば、いつか食べてくれるかもしれません。


●ミネラル補給も偏食対策に試してみて
ミネラルの一種である亜鉛が不足すると、正しく味が認識しづらくなる場合があります。亜鉛は牡蠣、レバー、鶏卵、海苔などに含まれています。これらを離乳食時期からこまめに食べさせましょう。薄味のものを食べなかったり、ママやパパと同じような濃い味を好む場合は、亜鉛が不足している可能性があるので要注意です。

偏食が直るとママとパパはとても楽!



偏食があると、健康面での心配だけではなく、保育園や幼稚園、学校の給食時に子どもが食べるものがなくて給食を楽しめなかったり、家庭での食事のメニューがマンネリ化したり、外食時にも選べるお店が少なくなったりと、様々な場面で不便を感じることが多いでしょう。


そのため、偏食が直れば給食を沢山食べることができますし、家庭で出せるメニューも増えます。また、偏食する子どものために別メニューを作っている場合は、偏食が直れば家族みんなと同じものが食べれて手間も省けます。さらに、食べられるものが増えれば外食もしやすくなるので、ママやパパの心理的な負担も軽くなりますよね。祖父母などに預けるときも、好き嫌いがない方が預けやすいでしょう。

食わず嫌いを改善するおすすめ時短レシピ!



今回は食わず嫌いを改善するために、時短でできるオススメのレシピをご紹介します。レシピは離乳食期が終わった頃から就学前の子どもが対象ですが、大人が一緒に食べてもおいしいですよ!


■栄養たっぷり!チーズとしらすとねぎのおにぎり


《材料》2個
・4Pチーズ 3個
・しらす 大さじ2
・ねぎ 刻んで 大さじ1
・ご飯 150g〜180g(パックご飯が1つ180g)


《作り方》
① チーズはさいの目切りにしておきます。
② しらすはそのまま使用すると塩分が濃いので湯通しして塩抜きをしておきます。
③ ねぎを輪切りにします。生のまま使用すると辛味が強いと感じる場合は、予め水に数分さらして辛味を抜いておくと食べやすいです。
④ ご飯に①、②、③の材料をすべて入れてよく混ぜ合わせます。この時ご飯は温かい方がチーズなどの材料が混ざりやすく握りやすいですが、冷やご飯でも代用可能です。
⑤ ④をラップに取り分けて適度な大きさににぎれば完成です!素手でにぎってもよいですが、具材がまとまりづらいのでラップでに包む方が簡単にできます。


《調理ポイント》
チーズはプロセルチーズを使用しましたが、ナチュラルチーズを選ぶとより添加物が少なくて子どもには安心です。※妊娠中はナチュラルチーズを食べるのは控えましょう(※2)。通常おにぎりを握る時に塩を手につける場合もありますが、今回は使用しません。しらすやチーズの旨味や塩味がごはんに合うので、塩などの調味料を入れずに食材の味でいただきます。


※2) 厚生労働省 リステリアによる食中毒


《栄養ポイント》
たんぱく質とカルシウムが豊富なチーズ、骨まで丸ごと食べられてチーズと同様にカルシウムやたんぱく質が豊富なしらす、子どもが苦手な食材の1つである「ねぎ」を食べてもらうレシピです。子どもが大好きなおにぎりの具材にすることでパクパクと食べてもらうことができます。


おにぎりをそのまま食べても良いですが、焼き海苔を巻いて食べるのもオススメです。焼き海苔はミネラルの一種であり、味覚を正常に保つ亜鉛が豊富です。また、おにぎりをフライパンで焼いて、焼きおにぎりにしても香ばしくておいしくいただけます。


■グルテンフリーで腸に優しい!ベジタブル米粉パンケーキ


《材料》パンケーキ 2種類 計6枚分
・米粉 160g(半分の80gずつ使います)
・卵 2個(半分の1個ずつ使います)
・砂糖 大さじ2(半分の大さじ1ずつ使います)
(はちみつを甘味として使ってもミネラルが摂れるのでオススメです。※1歳未満の子どもにははちみつは厳禁なのでご注意ください)
・豆乳 100cc(半分の50ccずつ使います)
・ベーキングパウダー 小さじ1(半分の小さじ½ずつ使います)
・野菜 計100g (ほうれん草 50g、にんじん 50g)
・油もしくはバター(焼くときに使用)


《作り方》
① ほうれん草は刻んで2分茹でて水を切ります
② にんじんは薄切りにして5分茹でます
③ フードプロセッサーに茹でたほうれん草と米粉、豆乳、卵、ベーキングパウダー、砂糖を入れてしっかりと混ぜ合わせます
④ フライパンやホットプレートに油(バター)を敷いて焼いて完成です。


にんじんの場合も、③と④の同じ手順を行います。


《調理ポイント》
混ぜる手間を減らすためと均一に混ぜるために1種類ずつの野菜で作りましたが、先に野菜以外を混ぜてから生地を2等分して、その後フードプロセッサーにかけた野菜を混ぜても良いでしょう。豆乳は調整豆乳でも無調整豆乳でもどちらでも良いですが、無調整豆乳の方が添加物がより少ないので子どもにはオススメです。フライパンの代わりに、たこ焼き器で焼くと丸い形のケーキになって見た目もかわいいですよ!


《栄養ポイント》
子どもの苦手な野菜として良く言われるにんじんやほうれん草をおいしく食べてもらうレシピです。ほうれん草の裏ごしをせずにあえてフードプロセッサーでそのまま細かくするので、食物繊維もそのまま食べられて栄養価の高いレシピです。


また、小麦粉の代わりに米粉を使用することでグルテンフリーのパンケーキになり、腸にも優しいです。さらに、牛乳の代わりに豆乳を使用することで、普段から大豆製品を食べない子どもにも、気づかないうちに食べてもらうことができます。


どちらのレシピもお子様と一緒にお料理することができる簡単なレシピなので、是非一緒に作ってみてくださいね!

まとめ

いかがでしたか?子供の偏食はできるだけ早くに直すことで、お子様自身の成長の足かせを防ぐこともできますし、何より偏食の対応をするママやパパの負担が軽減されます。できるだけ早い段階から多くの味を経験させ、嫌いなものがあっても形や味付けを変えて食卓に出すようにしてみましょう!それでも、偏食に対応するレシピやアイデアがマンネリしてしまった時は、料理が得意な家事サポーターに相談したり、作ってもらうことで新たな食べ方を発見できるかもしれません。また親御様のリフレッシュにも繋がりますので困った時はぜひ頼ってみましょう!




■管理栄養士・高岡 由貴
2011年管理栄養士免許取得。大学卒業後、保育園•病院•食品メーカーに勤務し、献立作成•栄養管理•食育講師などを担当。現在はフリーランスとしてコラム執筆•食事相談•レシピ開発などをしている。プライベートでは一児の母。