キッズラインで活き活きとお仕事をされているサポーターの方々に、働き方の工夫ややりがいについてお伺いする企画。今回は、助産師資格を持つ佐藤千恵さんにインタビュー。2023年春からキッズラインで産後ケアを中心に育児支援を行っている佐藤さん。10年以上の助産師経験を活かし、産後のママとパパの不安や悩みに寄り添い、安心感を与えるケアが多くの家庭で高く評価されています。これまでの仕事に対する思いや、開業助産師とベビーシッターを両立するまでの経緯を伺いました。
助産師勤務経験で感じた「産後ケア」の重要性
ー現在の働き方を教えてください。
2023年春から、都内で開業助産師として活動しながら、キッズラインのベビーシッターとしても仕事をしています。助産師の経験を生かし、特に低月齢のお子さまのサポートや産前産後のサポートを通じて、地域のママパパのフォローを行っています。助産師を目指した頃から、 分娩時のサポートにとどまらず、産後のご家庭のケアにも深く関われる「開業助産師」に憧れていて、さまざまな経験を積んで今の働き方に至りました。
ー助産師時代にはどのような経験をされましたか?
大学卒業後、大阪府内の総合周産期医療センターで助産師として働き始め、6年間勤務しました。リスクの高い出産にも対応する中で、緊急時にチーム全体で命を守ることができたのは、得難い経験でしたね。その後、助産師としてさらにスキルを磨きたくて、離島の医療機関に転職し、少人数体制の中で何でも自分で判断していく必要がある環境で働きました。地域医療を経て、離島での周産期の臨床にやりがいを深く感じる一方で、 産後のママの多くが育児の不安を抱えながらどうにか乗り切っている現実に「自分の力を活かせないか」と思う日々を送りました。
産後ケアに役立つアロマセラピーや周産期メンタルヘルスケアを学んだのもこの頃です。 日本では産後うつの発症やママの自殺率が高いという実態があるんですね。それを知った時は「医療が発達していても、救えない命がある」ことに大きなショックを受けました。アロマセラピーによって、産後のママたちがリラックスできるのではないかと思い、本格的に勉強しようと思い始めました。「退院後のママたちにもっと地域で持続的にサポートできる体制を作りたい」との気持ちから、アロマセラピーの勉強に加え、産後ケア事業が比較的充実している環境で経験を積みたいと思い、東京で働くことにしました。
ー東京に来て、すぐに独立されたんですか?
東京に来てまもなくアロマセラピーのスクールに通い、約1年で資格を取得しました。その間、 地域医療センターの産科で夜勤パートとして働き、主に産後のママへのメンタルヘルスケアを担当しました。資格取得後はクリニックに就職し、アロマケアを導入したいと考えていた矢先、コロナ禍に……。
この頃から産後のメンタルヘルスケアの需要が高まり、ママたちに寄り添ってきました。コロナの影響がおさまってきたことやクリニックで働いて3年の節目を迎えたことから、2023年に独立を決意し、開業助産師として活動を始めました。
※キッズラインでは、「産後ケア」におけるハンドケア・ボディケアの一環としてのアロマセラピーのみ提供可能です。「ベビーシッター」サービスにおいて親御様・お子様への提供はNGとしております。
新生児ベビーシッターを頼んでみる
自分のスキルに見合った働き方ができるキッズラインに転向
ーキッズラインに登録されたきっかけを教えてください。
独立当初は、自分を必要とするママをどう見つければいいかがわかりませんでした。口コミを広げるにも、知名度もありません。知り合いの助産師が登録していたこともあり、まずは他社のプラットフォームに登録しました。しかし、時給が固定されており、報酬が働きに見合わないと感じていました。
そんな時、あるお客様から 「自分の価値をもっと自分で決められるプラットフォームがあるんだよ」と教えてもらいました。
当初は、時給を自分で決められることに対する責任も感じてしまい、ためらってしまいましたが 「佐藤さんならいけると思う」というお客様の一言で背中を押されて、キッズラインに登録することを決めました。
ー他社から転向してみていかがでしたか?
キッズラインでは、報酬やサービス内容を自分で設定できるため、自由に働ける点がやる気につながりますね。個別のニーズに応じたサポートができるので、病院勤務時代よりもママとパパに寄り添った支援を提供できると実感しています。
登録してすぐの頃はこの時給で依頼をいただけるか不安でした。でも、以前サポートをしたお客様から「佐藤さんがこちらでサポートをされていると聞いて、ぜひお願いしたいと思いました」と連絡を頂いた際は、嬉しかったですね。
やがて口コミで「産後ケアでしっかり寄り添ってくれる」といった評価をいただけるようになり、依頼が増えていきました。
ー活動の中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
お客様からは「助けてください」と緊急性の高い依頼を受けることもあります。たとえば、急に家族のサポートが受けられなくなったり、予想外の出来事で困っていたりするといったケースです。依頼時にはママが緊張していることもありますが、お話を重ねるうちに表情が和らぎ、最後には柔らかい笑顔を見せてくださいます。
「安心しました」「気持ちがすごくすっきりしました」と言っていただけたときは、私自身も嬉しく、やりがいを感じます。中には涙を浮かべて感謝の言葉を伝えてくださる方もいて、「大変な中、私を頼ってくださって本当にありがとうございます」と感謝の気持ちでいっぱいになります。
ーキッズラインで、佐藤さんの働き方はどのように変わりましたか?
キッズラインでは、病院勤務時代とは違い、各家庭の事情に合わせてサポートができるようになりました。その中でも 最も大きな変化は、夜勤をしなくてよくなったことです。病院勤務時代は不規則な夜勤が続き、常に体力的・精神的な負担を感じていました。
しかし、キッズラインでは自分でスケジュールを組めるため、夜勤を完全に無くすことができました。夜勤による疲労感から解放され、体調を整えながら無理なく働けるようになったことは大きなメリットです。
育児サポートだけじゃない。産後のママに寄り添う助産師シッターの役割
ーサポートの中で助産師のスキルが活かされるのはどのようなときですか?
助産師としての経験は、育児サポートや授乳指導、新生児ケアなど、サポートでも大いに役立っています。特に産後間もないご家庭から依頼を受けた際には、必要に応じて妊娠中の状況や分娩の経過、出産時の赤ちゃんの体調、ママの母乳の状況などをヒアリングさせていただいています。ママと赤ちゃんの状態をできる限り正確に把握することで、ご本人も気づかれていないケアの必要性がある場合があるからです。
赤ちゃんだけでなく、ママの体調や気持ち、家庭環境を鑑みながら、目の前のママと赤ちゃんに本当に必要なケアを提供できるよう、勤務時代の知識をフル稼働して対応しています。
ーお仕事をする中で気をつけていることを教えてください。
常に自分が 「産後のママやパパのサポーター」であることを意識しています。特に初産のママは「何がわからないのか自分でもわからない」と不安を抱えることが多いため、こちらから積極的に「困っていることはありませんか?」や「◯◯の具合はいかがですか?」とお声がけしています。授乳がうまくいかないと感じる場合や、赤ちゃんの発達について不安を抱えているときは、じっくりと話を伺い、気持ちを受け止めるようにしています。
私はわらべうたを使った成長発達を促す遊びに関する資格を取得しており、赤ちゃんの発達に役立つ遊び方の助言もできます。そのため、「この月齢ではどのような遊びが良いのか?」といった相談にも応じ、赤ちゃんの成長段階に合った遊び方を提案しています。
さらに、産後のママのメンタルヘルスケアや心のサポートを意識しています。 「母親になった実感が湧かない」「毎日がつらい」と感じるママには、焦らずゆっくりと話を聞き、気持ちを整理するお手伝いをするようにしています。「何に困っているのか分からない」「どう伝えればいいかわからない」とおっしゃることも多いので、どんな些細なことでもお話いただけるよう、寄り添いながらサポートしていきたいと思っています。
ーご依頼者のご自宅へ伺う際、服装や身だしなみで特に意識していることはありますか?
清潔感をとても大切にしており、自分の中で決めている服装を着用しています。どこかに出かけたついでにふらっと寄った軽い感じを出さないように心がけています。
新生児ベビーシッターを頼んでみる
一見すると困っていない家庭も、課題を抱えている場合がある
ー産後ケアなど行政の支援について、課題に感じていることはありますか?
産後ケアの対象ではありませんが、通常のベビーシッターの利用の場合、キッズラインでは「東京都ベビーシッター利用支援事業・一時預かり事業」が利用できます。
ただ、日々のサポートの中で感じるのは、これらの助成制度を使うハードルの高さです。 利用したくても「どこで手続きすればいいのかわからない」や「そもそも、こうしたサービスの存在を知らなかった」という声をよく聞きます。
妊娠から出産、新生児の育児までを助産師がすべてを一人でフォローすることはできないので、さまざまな助成制度を活用したり、他の専門家に支援のバトンを渡していくことが大切だと思っています。
「どんな支援があるのか」「自分はどんな助成制度が使えるのか」をたくさんの人に知ってもらえたら、悩みが膨らむ前に適切なサポートが受けられるのではないかと思います。
ーどのような家庭が特にサポートを必要としていると感じますか?
一見すると問題がなさそうに映っても、実際には心身ともに疲れ果てているママたちがいることに心を痛めています。
現在、特別な支援が必要と認識されているハイリスク妊産婦には比較的行政のサポートが届いてはいますが、行政の緊急的な支援の対象とならないローリスク・ミドルリスクと分類されるママであっても、産後に孤独感にさいなまれたり、メンタルヘルスに不調をきたす方がいらっしゃる現状があります。
このような方々は家族以外に頼る先が限られていて、助成制度も十分ではありません。自分で積極的に産後ケアを受けるには、金銭的な余裕がいりますし、民間サービスがあること自体を知らないと「産後ケア」にアクセスすること自体も困難です。
そのため、表面的には問題がないように見えても、実際には非常に大きな精神的・身体的な負担を抱えているご家庭が少なくありません。
ベビーシッターと言うと、かつては贅沢なものというイメージがありました。しかし、現在はキッズラインのようなプラットフォームのおかげで誰でも依頼をしやすい環境が整っています。 新生児のうちから誰かに頼って子育てをすることは、決して甘えではありません。むしろ頼る習慣を身につけることは、その後のご家族の安心や家庭円満を育む上でとても大切なので、私たちに頼る一歩を踏み出してほしいですね。
地域に根差した産後ケアを広めて、安心して子育てできる環境を整えたい
ー今後の展望を教えてください
今後も地域に根ざした産後ケアを続けていきたいと思っています。 産後間もないママや赤ちゃんに寄り添い、家族全体の成長を見守りながら、安心して育児ができる環境を整えていきたいですね。また、これまでの経験を活かし、他の助産師や看護師にも地域での産後ケア活動の魅力を伝えていきたいと考えています。
助産院としての具体的な展望はまだ模索中ですが、産後すぐの時期からサポートできるサービスを目指しています。私自身が「こんな存在がいたら子育てが楽になる」と思うような、シッティングや育児相談、授乳相談、成長のフォローなど、すべてをまとめてサポートできるサービスを提供したいと考えています。
――インタビューを終えて――
佐藤さんの産後ケアにかける情熱と強い信念が、言葉や表情の端々から感じられました。お話を伺う中で特に心に響いたのは「産後のママとパパの状況をありのまま受け止める」「子育てのスタートラインで誰かに頼ろう」という言葉でした。
新生児期はママやパパの体力・精神面ともに大きな負担がかかり、特にサポートが求められる時期です。そのため、助産師経験を持つサポーターさんの力は非常に貴重で、適切なケアがあることで救われる家庭は多いはずです。
実は筆者も一人目誕生後に孤独や不安を感じ、悩んだ経験があります。インタビュー中に過去を思い出し、感情がたかぶって泣きそうになりました。産後ケアの需要がますます高まる中で、佐藤さんのようなシッターさんの存在が、これからも多くのママ・パパを支えていくと思っています。
佐藤さんの産後ケアにかける情熱と強い信念が、言葉や表情の端々から感じられました。お話を伺う中で特に心に響いたのは「産後のママとパパの状況をありのまま受け止める」「子育てのスタートラインで誰かに頼ろう」という言葉でした。
新生児期はママやパパの体力・精神面ともに大きな負担がかかり、特にサポートが求められる時期です。そのため、助産師経験を持つサポーターさんの力は非常に貴重で、適切なケアがあることで救われる家庭は多いはずです。
実は筆者も一人目誕生後に孤独や不安を感じ、悩んだ経験があります。インタビュー中に過去を思い出し、感情がたかぶって泣きそうになりました。産後ケアの需要がますます高まる中で、佐藤さんのようなシッターさんの存在が、これからも多くのママ・パパを支えていくと思っています。
▼佐藤千恵さんのプロフィールページはこちら
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