講談社で「ドラゴン桜」(三田紀房)、「働きマン」(安野モヨコ)、「宇宙兄弟」(小山宙哉)などのヒット作を担当した後、株式会社コルクを立ち上げた佐渡島庸平さん。

実は、3人の息子さんのパパでもあります。多くの作家の才能を引き出した佐渡島さんは、どのようにお子さまの教育に向き合っているのでしょうか?佐渡島さんの教育論について、お話を伺いました。

「こんなに動物的だと思わなかった」

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ー佐渡島さんは、現在7歳・5歳・2歳の息子さんがいらっしゃるんですよね。男の子3人の子育てって大変じゃないですか?

佐渡島:いや、こんなに大変だなんて思わなかったですよ。子育てをすると、「子どもってこんなに動物的なのか!」ということの連続で。

子どもの面倒を見ていると「こんなに鼻水を出してあげなきゃいけないのか」「こんなに食べ方って汚いものなのか」と驚くのですが、僕自身、小さい頃母親に鼻水をすわれた記憶や食べ方が汚かった記憶はひとつもないですからね。

自分が動物的だった時の記憶って、自分ではほとんど覚えていないものなんだなあと。

子どもの才能を引き出すために大切なのは「深掘経験」

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ードラゴン桜の編集をされていた佐渡島さんですが、ドラゴン桜で書かれていた教育法を実践されていたりするのでしょうか?

佐渡島:「ドラゴン桜」の編集をしている時、教育に詳しい方のお話を色々聞いたので、子育てに関しては頭でっかちかもしれません(笑)

我が家の教育方針はシンプルで、「好きなことの博士になるようにサポートする」。これだけです。

ー「好きなことの博士になるようにサポートする」と言うと?

佐渡島:子どもが好きなことに熱中できるような環境を作ることですね。これも「ドラゴン桜」から学んだことです。

「ドラゴン桜」には大沢君という、東大理科III類合格確実の成績を誇る秀才が出てくるのですが、彼の家庭は特に教育熱心だったわけではないんですね。
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©︎三田紀房/コルク

佐渡島:成績優秀な大沢君が勉強を好きになったきっかけは「ウルトラマン」でした。幼稚園の頃ウルトラマンを好きになった大沢君を見て、大沢君の母親がウルトラマンの図鑑を買ってくれたんです。

彼は嬉しくてその図鑑を朝から晩まで読んで、ウルトラマンに関することを全部覚えました。それから彼は次々とその興味を車、ロケット、宇宙、ビックバン…と広げていき、新しいことを学ぶのが好きになった。それが今の大沢君につながっているんです。
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佐渡島:要は「一つのことを深堀するスキル」を習得するのが一番難しくて。たくさんのことを知っていても、ただ横に増えていくだけでは意味がない。

例えば一度ウルトラマン博士になっておけば、数年後に歴史の授業で豊臣秀吉のことを調べる時も、ウルトラマン博士になったときの深掘りスキルをそのまま利用できます。

子どもには早いうちに深堀経験をさせることが大切で、そのために一番いい方法が、子どもが好きなことを探求できるようサポートすることです。

もし大沢君のお母さんが「ウルトラマンの知識なんて役に立たないだろう」と言ってウルトラマンの図鑑を買っていなかったら、大沢君という天才は生まれなかったかもしれませんよね。だから子どもが好きなことを見つけた時は、分野問わず熱中できるよう手助けしたいと思っています。
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ーなるほど。佐渡島さんのお子さんは、もうすでに深掘スキルを身につけているのですか?

佐渡島:うちの長男はフグについてすごく詳しいですよ。どのフグはどこからきて、子供の時は何センチでこれはだれだれと一緒に飼うことができて、これは淡水でこれは海水で…とか。やたら詳しいですね(笑)

あと彼は文鳥にもハマっているのですが、文鳥の本だと漢字を気にせず読みます。漢字を覚えてから読むのではなく、文鳥のことをもっと知りたいから、その手段として漢字を学ぼうとするんです。

ーすごいですね。本以外にも子どもに深掘経験をさせる方法はありますか?

佐渡島:「Youtubeやテレビは良くない」という家庭もあると思うのですが、うちはYoutubeやテレビをたくさん見せています。深堀するのにすごく便利ですよ。

Youtubeだったら関連動画でどんどん深く知れますし、NHKだったら「地球ドラマチック」にハマると、全部録画して定期的にみるようになったりとか。最近は文鳥やフグの延長で、ロボットの特集を見ていたりしますね。

好きなことを樹形図的に広げていく

ーフグからどんどん興味が広がっているんですね!”子どもが好きなこと” は、どうやって見つけていくのが理想なのでしょうか?

佐渡島:「ハマるかな?」と思った時でも、夢中になる時とそうでない時があるので、たくさん試さないとわからないですよね。

うちの息子ははじめ、新幹線・仮面ライダー・ウルトラマンが好きで、そこらへんを深堀させようとしたんですけど、あまり深くハマらなくて。結局文鳥とフグになりました。
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佐渡島:子どもに限らず、自分の好きなことが分からない人って多いと思うんです。

例えば、子供に好きな食べ物を聞くと「寿司」とか「カレー」って返ってくるじゃないですか。でもそれは本当に寿司とカレーが好きなわけではなくて、寿司とカレーしか知らないからそう答えるんですよね。

あと、子供になりたい職業を聞くと、「医者」「サッカー選手」とかって言うけれど、それもテレビで見る職業しか知らないからだったりします。

人は自分が知っているものからしか選択ができません。潜在的にはすごく好きになる可能性があるけど、本人がその分野をまだ知らないが故にその可能性に気づいてないことは多々ありますね。

ーでは、「知っていること」のジャンルを色々増やすことが、子どもの才能を引き出すために大切になるのでしょうか?
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佐渡島:それは少し違います。知っているジャンルを増やそうとすると知識が浅くなってしまうので。

無理に色々増やすという考え方ではなく、好きで魚を調べていたら鳥やロボットにも興味を持つようになったとか、一つのことを深堀していく中で樹形図のように広がっていく形が理想ではないでしょうか。

子どもに本を読ませるコツとは?

ーなるほど。そんな佐渡島さん自身も、小さいころから深掘経験をされていたのでしょうか?

佐渡島:そうですね。小学校3年生の時の先生が読み聞かせをする人だったので、それがきっかけで小説をたくさん読むようになりました。ズッコケ三人組から始まって、はれときどきぶたや指輪物語なども大好きになりましたね。

ー子どもに読書の習慣づけをさせたい方も多くいらっしゃると思うのですが、子どもに本を読ませるコツはあるのでしょうか?

佐渡島:教育の研究によると、「親が子供に本を読ませようとするか」は子供の読書量にはあまり関係がなくて、「親が身の回りに本を置いているかどうか」が子供の読書量に影響を与えるらしいです。

思い返してみれば、僕の両親も本を読む人だったので、家にいろいろな本がありました。結局子どもは、親の行為をまねるのだと思います。

ーそれは目からウロコですね。後編でも引き続き、佐渡島さんに子育てのお話を伺っていきたいと思います!ありがとうございました。

子どもの才能を引き出すためには、分野問わず好きなことに熱中できる環境を作ることが大切だそう。お子さんに深掘経験をさせてあげられているか、一度振り返ってみてもいいのかもしれません。

後編でも引き続き、佐渡島さんに経営と育児の共通点やベビーシッター活用についてお伺いします!

[取材・文:あつたゆか]