20代ビジネスマンのためのWebメディア『新R25』の編集長であり、敏腕インタビュアーとしてもご活躍されている渡辺将基さん。プライベートでは3児のパパであり、土日はフルタイムでお子さんと関わっているといいます。
子育ての取材はことごとく断ってきたという渡辺さんですが、今回はそんな渡辺さんの子育て論を無理やり聞いていきたいと思います。
取材前
渡辺:はあ……帰りたい……
ーさっきから顔色が悪いですが、どうされました?
渡辺:僕、ホントに父親としてクズなんです。子育てインタビューとか受けていい人間じゃないんですよ。なんで受けちゃったんだろう。猛烈に後悔しています。
ーいつも大物に切り込んでいる渡辺さんとは思えないほど弱気ですね。
渡辺:というか、ドヤ顔で子育て論を語ってる記事を奥さんに見られるのが一番やばい。やっぱり帰っていいですか?
ーそこをなんとか……新R25編集長の子育て論、みんな聞きたいと思いますよ。
渡辺:うーん……じゃあもうこうするしかないな。
ー!?
渡辺:奥さんへ。今からエラそうに子育てを語るワタシをお許しくださいっ!!!
ーあの……普通にカフェの中だし、恥ずかしいのでやめてください。
渡辺:すみません。土下座したらすっきりしました。これで語れそうです。
ーさすが編集長!ありがとうございます。
子育ての物理的コミットと、精神的コミットは違う
ーさきほど「父親としてクズ」とおっしゃっていましたが……渡辺さんってお仕事が忙しい中、子育てを頑張っている方だと思うんです。
週末は奥様に休んでもらうために、お子さん3人の面倒をフルで見ていると伺っています。
渡辺:確かに土日は子どもたちとフルで関わっています。周りからも「育児頑張っているね」と言われることは多いです。
でも、「子育てにどれだけ物理的な時間を割いているか」と、「子育てがどれだけ自分の頭の中を占めているか」は全く別物だと思うんです。つまり僕の場合は、まだ育児のマインドシェアがそこまで高くない。
ー「物理的コミット」と「精神的コミット」は違う、と。
渡辺:はい。どうしても仕事に意識が向いてしまって……その罪滅しのように土日を子育てに費やしている感じです。僕が子育てに関して周りから評価されていることって、そういった罪悪感で動いていることや、奥さんに言われたからやっていることばっかりなんです。
時間は多少費やしているのかもしれないけれど、「自発的に動いてるのか?」と言われたらイエスではなくて……だから、こうして自分がインタビューを受けるのも負い目を感じてしまうし、申し訳ない気持ちになります。
だから、今日ここではっきりと主張させてください。僕は決して、良いパパなんかじゃないんです。
ーそんな宣言しなくても(笑)でも、「時間は費やしているけれど子育てマインドは足りていない」と感じるお父さんも多いのかもしれないですね。
渡辺:逆に物理的な時間を割けていなくても、ちゃんと子育てのことを考えて、奥さんと対話できているお父さんもいると思います。
自分もそうなれたらいいと思うんですけど……ダメな父親ですよ、ホントに。
ーそんなことないと思いますが……
渡辺:でもそんな僕でも、ひとつだけ子育てに関して語れることがあるかもしれないです。
ーお、なんでしょうか?
渡辺:子どもの自己肯定感を高めることだけはめちゃくちゃ大切にしていますね。
これは仕事を通じて気づいたのですが、ビジネスにおける自分の強みって「タフであること」に尽きるんじゃないかなと。要は、窮地に追い込まれても「なんとかなる」と思える精神的強さです。
ーたしかに、メンタルが相当強くないと堀江さんや藤田さんにあんな取材できないでしょうね(笑)
渡辺:まぁ、でもいつも取材のあとは疲労で気力がゼロになりますけど(笑)
「タフな人」って自分も含めたくさんいるけど、タフになれるきっかけは何なのかなと考えたときに、僕は勉強でも運動でも「はじめはできなかったけど、努力してあとからできるようになった経験」がすごく多いことに気付きました。
だから子どもたちにも、「はじめはできなくても、自分の努力や創意工夫で目標を達成することができた」という経験を積んでもらいたいと思っています。
“根拠のない自信”なんて存在しない
渡辺:よく「根拠のない自信」って言うじゃないですか。でも僕は、「根拠のない自信」なんて本当は存在しないと思っていて。
ー「根拠のない自信」には、実は「根拠がある」ということですか?
渡辺:はい。成功する合理的な理由がないときでも自信を持って諦めずに取り組めるのは、「最終的にはなんとかなる」という希望があるからですよ。
で、どうして希望を持てるのかというと、過去に何かしらの成功体験を積んでいるからなんじゃないかと思うんです。
それまでできなかったことが、自分の努力によってできるようになった経験。それがあれば、「今回だってやれるはずだ」と思えるんです。そういう原体験が自信の根拠なんじゃないですかね。
ーたしかに。過去の成功体験は「自分を信じる根拠」になりますね。
渡辺:似ている話になりますが、「コンプレックスが原動力」というのも半分正しくないと思っています。
ーそうなんですか?コンプレックスをばねにして頑張っている人もたくさんいると思いますが……
渡辺:だって自分のことが嫌いなだけだったら、そんなに頑張れないじゃないですか。コンプレックスだけだったら潰れちゃいますよ。
「今の自分は嫌いだけど、きっと良い方に変えられる!」という希望、自己肯定感があるから努力できるんです。
だから正しく言えば、「コンプレックスを乗り越えて変われるはずだという期待感こそが原動力」ってことだと思ってます。
はあちゅうさんも「コンプレックスを原動力にしている」ってよく言っていますが、同時に自分へのポジティブな期待感を持っているはずです。
ーコンプレックスと希望は両輪でないと走れない……盲点でした。
渡辺:そうそう。なので子どもたちにはそういった自己肯定感を持ってもらえるよう、小さなことでも「できなかったことができるようになる」という体験を積み重ねてほしいと思っています。
ーはじめからいろいろできてしまうお子さんの場合は、どうしたらいいですか?
渡辺:そういう場合は親がさらに上のハードルを設定してあげて、それを自分の力で乗り越えられるサポートをしてあげるべきだと思います。そうじゃないと、そこから挫折したときにポキっと折れてしまう。
ーなるほど。ちなみに渡辺さんのお子さんはいかがですか?
渡辺:最近は息子が運動会の徒競走で2位から1位になったり、ちょっと苦手な算数の点数が上がったりと、息子自身が「こうなりたい!」という目標を立てて、それを達成できて喜んでいる姿をよく見ますね。そういう時は「いいぞ」と全力で褒めるようにしています。
ー子どもに「できなかったことができるようになる」という経験を積ませるために、意識していることはありますか?
渡辺:幼少期の子どもってまだまだ視野が狭いので、「友だちがやってるから」みたいな理由でやりたいと申し出てくることも多いじゃないですか。だけど、本当は他にも興味を持てることや、向いていることがあるかもしれない。
だから、単に好きなことをやらせるだけではなくて、大人の方から「これ向いてると思うので挑戦してみたら?」と提案したり、自己肯定感を養える方向に誘導してあげたりすることが必要なのかなと思います。
ーたしかに。苦手な分野を頑張って、トラウマになってしまってもかわいそうですね。
渡辺:そうなんですよ。例えばスポーツでも、「手先の器用さが必要なもの」と「基礎体力が必要なもの」がありますけど、そのどちらが向いているのかを親が見極めてあげないと。もちろん、無理強いはよくないですが。
僕は小学校から陸上競技をやっていたんですけど、中高時代は中距離で静岡県の代表になることができて、それが自分のアイデンティティや支えになっていました。
もともと基礎体力系のスポーツが向いていたので、今思えば努力の方向が間違っていなかったなと思います。これが明らかに向いてないサッカーとか野球をやってたと思うと恐ろしいです(笑)
「成功体験」と「コンプレックス」があれば最強
ー渡辺さんは数々の著名人にインタビューをされていますが、やはり成功者の方の自己肯定感は高いと感じますか?
渡辺:絶対高いと思いますね。皆さん自分では語らないですけど、ビジネスで成功する前に何かしら土台となる成功体験を積んでいるはずです。だからこそ厳しい状況でも諦めずに努力することができる。
個人的に、「成功体験」と「不遇な環境やコンプレックス」の両方があれば最強だと思っています。成功している人はその2つの掛け算がうまくできているような気がしますね。
経沢香保子さんも絶対に自己肯定感が強いタイプだと思いますが、女性社長をやりながらひとりで子育てをするのがすごく大変だったという原体験があってキッズラインを創業してるじゃないですか。その2つがかけ合わさったときのパワーはすごいと思います。
ー渡辺さん自身、コンプレックスや辛い経験を原動力にしていることはありますか?
渡辺:僕は結構平凡な人生を生きてきたので、そういう経験があまり無くて……。
そこが自分に足りないところかなと思っています。まぁ、そんなこといってもしょうがないんですけどね(笑)
ーでも子育てや家庭のことになると、自己肯定感が低いですよね?
渡辺:え、はい、そうですね……僕、家庭に関しては成功体験が少ないから、仕事よりすぐ心が折れそうになるんです……そこだけは自信が持てないです……。
根っこはやっぱり、僕の家庭に対するマインドが足りてないことが問題だと思います。仕事が好きすぎるんですよね。子どもができてもまだまだ自分本位な部分があって、自己嫌悪に陥ります。
ー本気でそれを改善しようと思っていますか?
渡辺:うっ……自分はまだその質問に心からイエスと答えられないのかもしれません。
でもこんなダメな父親に対して、子どもが「将来はパパみたいな仕事をしたい」って言ってくれたりするんですよ……ホントに泣きそうになりますね……。
ーその自分本位な姿勢が奥さんから見透かされているのかもしれませんね。
渡辺:恐らくそうだと思います。もう、これ以上僕を追い込まないでください……。
ー逆に、奥さんから褒められることってあるんですか?
渡辺:うーん……強いて言えば、僕の「子どもたちをのびのび育てるところ」ぐらいですかね。ホント強いて言えば、ですよ。
奥さんはすごくしっかり者なので、礼儀作法や気遣い、自己管理を子どもに教えるのが上手なんですが、僕はその逆で。人に気を遣えない分、自分も嫌なことがほとんどなくて、よくいえばおおらかな性格というか(笑)
奥さんも自分のそういうところを見て、子どもたちに向かって「パパみたいな性格になりなよ」と言ってくれたりしていたような……? いや、ウソだったらすみません。
夫婦で性格が正反対なので、お互いのいいところを子育てに活かして、補完し合えればいいなと思います。いや、これも自分の立場から勝手に言っているだけかも……。
ー今は自信なさげですが、お子さんがもう少し大きくなったら、勉強を教えるなどでもっと関われるかもしれないですね。
渡辺:そうですね。勉強が難しくなってからこそが自分の出番だと思うので、そこで子育てに関する自己肯定感を高めようとは思っています(笑)自分にも子育てでリードできる分野が欲しい!
ー最後に、「仕事と子育ての両立」に悩むビジネスマンにひと言お願いします。
渡辺:アドバイスか。なんだろうな……
渡辺:うん、ないわ。この質問に関してはビックリするくらい何も出てこない。むしろ僕がアドバイスほしいです(泣)
僕みたいなタイプの人で、仕事と家庭を両立させて奥さんも満足させている人がいれば、本気でその秘訣を知りたいです。ぜひ僕のツイッターにアドバイスください。
ーじゃあ、「我こそは仕事で成果を出しつつ、家庭も満足させられている」という方はぜひ、渡辺さんに教えてあげてください!今日はありがとうございました。
渡辺:語りつくしましたよ……。子育てインタビューはもう二度と受けないと思います。
今回、命がけで取材に挑んでくださった渡辺さん。渡辺さんのように、仕事での成功体験はたくさん積んでいるのに、家庭での成功体験はなぜか少ない……というビジネスマンの方も多いのではないでしょうか。
家庭での自己肯定感を高めたくなった時は、子育て経験豊富なシッターさんにコツを聞いてみるのもいいかもしれませんね!
そしてぜひ、「仕事を本気でやりながら家庭も成功させるコツ」を持っている方がいれば渡辺さんのツイッターまで連絡してあげてください。
(取材・執筆:あつたゆか)
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