赤ちゃんの成長に必要な栄養を与えるだけでなく、母子の愛着形成にもつながる授乳。授乳をしながらウトウト眠る赤ちゃんの姿は、ママに幸せの時間をもたらしますよね。しかし、赤ちゃんが成長して離乳食が進んでいくと少しずつ卒乳について考え始めるご家庭も多いことでしょう。そこで今回は、母乳を与えるべき時期や卒乳の目安について医師が詳しく解説します。
まずは、母乳が赤ちゃんにとってどのようなメリットがあるのか詳しくみていきましょう。
母乳はママの血液から作られることから、粉ミルクには含まれない多くの成分が含まれています。特に 産後数日以内に分泌される初乳には、病原体から身体を守るための「IgA」と呼ばれる免疫物質が多く含まれている ことが分かっています。免疫力が未熟な新生児は、初乳から免疫物質を摂取して身体を守ることができるのです。
また、母乳には病原体を攻撃する白血球、身体を守るための善玉菌、消化をサポートする酵素やホルモンなども含まれていることが分かっています。「栄養」という観点だけで見れば、さまざまな開発を重ねられてきた現代において、母乳もミルクも大きな差はありませんが、 ママの血液から作られているからこそ、母乳には人工的に作ることができない成分が多く含まれている のです。
授乳は赤ちゃんとママのスキンシップの1つです。赤ちゃんはママのぬくもりやにおい、鼓動を感じながら優しく抱きしめられてお腹を満たすことができます。ママも小さな赤ちゃんの様子に愛情を感じることができ、愛着形成における最良の手段ともいえます。
また、 授乳をするとママの身体の中ではオキシトシンと呼ばれるホルモンの分泌が盛んに なります。オキシトシンは幸福ホルモンとも呼ばれ、精神を安定させてくれる効果があります。産後に起こるホルモンバランスの変化による、 気持ちの落ち込みなどを改善してくれる効果 もあるため、授乳はママにとっても大きなメリットです。
赤ちゃんにとって授乳とは、乳首を吸うために舌やあごの力を使わなければなりません。軽い力で吸うだけでどんどん口の中へ流れていく哺乳瓶とは使う筋肉も異なります。そのため、 母乳で育つことであごの発達が促され、歯並びなどにも影響を与える との報告もあります。
ここからは、授乳を終える「卒乳」に適した時期について詳しくみていきましょう。
厚生労働省による「授乳・離乳の支援ガイド(2019年版)」によると、生後1歳6ヶ月頃までに卒乳することが推奨されています。一方で、WHOは2歳までの卒乳推奨を謳っており、医学的に明確な卒乳時期は決まっていないのが現状です。
同上のガイドによれば、離乳食を始めて卒乳を視野にいれながら徐々に授乳回数などを減らしていくのは生後6ヶ月が最も多く、約半数に上るとのこと。また、実際に卒乳が完了するのは13~15ヶ月が最多であり、年々卒乳時期は遅くなっていることが分かっています。過去には1歳までに卒乳するのが一般的という時期もあったようですが、今では1歳を過ぎても母乳を飲んでいる子どもが多いようです。
日本では生後1歳6ヶ月頃までに卒乳することが推奨されているとはいえ、実際に卒乳の時期は子どもの成長によってそれぞれです。離乳食の進み方にも個人差はありますが、多くの量を食べられる子どもは、自然に母乳から離れていくことも珍しくありません。一方で、母乳が大好きな子どもは離乳食が進まず、月齢に問わず母乳を欲しがるケースもあります。
授乳の存在は赤ちゃんの心の安らぎにもつながるもの 。「いつまでに卒乳!」と決めずに赤ちゃんのペースに合わせることが理想です。健診で発達の遅れや体重増加不良などを指摘されなければ、卒乳時期が遅れても大きな問題はありません。
妊娠中に授乳を続けても大丈夫?
赤ちゃんが1歳を過ぎても授乳を続ける人が多い今、授乳中に次の子どもを妊娠するというケースも少なくないでしょう。ただし、 授乳は子宮収縮を促します 。
順調な妊娠経過であれば特に問題となることはありませんが、出血が見られるなどの異常がある場合には、医師から授乳の中断を指示される場合もあります。妊娠中に、上の子の卒乳が完了していない場合などは、一度主治医に相談してみましょう。
厚生労働省は、卒乳に適した時期を1歳6ヶ月としていますが、 母乳は赤ちゃんに栄養を与えるだけでなく、ママとの大切なスキンシップ です。順調に成長しているのであれば無理に卒乳を急ぐ必要はありません。特に、職場復帰をして昼間保育園に預けている場合は、安心したい気持ちから授乳を続けたがるケースもあります。
離乳食や幼児食を進めながら、焦らずにご家庭や赤ちゃんのペースに合わせて卒乳を目指しましょう。
■監修ライター:成田亜希子
2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行う。行政機関に勤務経験もあり母子保健分野も担当。育児に悩むママたちに医師という立場から様々なアドバイスを助言。プライベートでは二児の母。自身の悩みからも育児の情報発信している。
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