■この記事の目次■


東京大学卒業後、マサチューセッツ工科大学博士号を取得。実業家、経済学者、コメンテーターなど多彩な活躍をされている成田悠輔さん。経沢との対談後編では、インターネット社会がもたらす子供や未来への影響や、成田さんが考える子育て論や社会の在り方についてお話を伺いました!



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ネットとの付き合い方を、どう子供に教えるべきでしょうか?

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経沢:親御さんからよく寄せられる悩みなのですが、今の子供たちにとってスマホやネットがいつもそばにあり、それが当たり前になっています。私たちの想像を越えるネット社会の現在について親自身もキャッチアップできてない。そんな中で、子供に、ネットリテラシーについてどのように指導すればいいのかというものがありますが、成田先生はどう思いますか?


成田さん:親がどう介入しても、子供たちはゲームやSNSをやりたければやると思いますよ(笑)規制するのは難しいでしょうし、何が良くて何が悪いというのも正直、誰にもわからないですよね。仮にゲーム時間を制限したとしても、それが正解かはわかりません。

ゲームにも良いところがたくさんあって、目標を決め、チームを組み、戦略を練って資源を配分する。子供たちも私たちもゲームの世界で事業の訓練をしていると捉えることもできます。「勉強ばかりしてないでちゃんとゲームしなさい」っていう方針もありえるかと。



経沢:確かに...。



成田さん:ただ、ここまでネットが浸透し、僕たち人間のアイデンティティも政治も揺るがすようになったのは、作った人も想定外だったんじゃないかな。このままソーシャルメディアを放置していくと、人間や社会にどんな影響を及ぼすか未知すぎて恐ろしくもあります。



経沢:ソーシャルメディアにはチャンスもありますが、ネガティブな側面もありますね。
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成田さん:はい、おっしゃる通りポジティブとネガティブの両方があります。数十億人が使うソーシャルメディアで個人が歌ったりパフォーマンスをしたりして、数年で1億人のフォロワーを得てしまう。
10代で突然世界の大スターになる、アメリカンドリームならぬワールドドリームみたいなことだとも言えます。

そんな存在が生まれてしまうのは超常現象だし、ソーシャルメディアを創設した人たちも予想外な展開だったと思います。その反面、影響力や知名度の爆発で心身を壊す人も多いし、同じ技術を悪用する人もいる。


経沢:身近で気軽であればあるほど、人に与える影響は大きいということですね。



成田さん:そもそも、ソーシャルメディアのように無数の人が同時に双方向でコミュニケーションを取るような環境に人間の体と頭は慣れていない。人の処理能力を超えた量と質のコミュニケーションが常に起こり続ける社会になってしまった、という風にも捉えられます。



生まれた時からこのような環境だった子ども達が40歳50歳になった時に、社会にどのような影響を与えるのかと思うと、全く想像がつきませんね。



経沢:ネットと上手に付き合う方法はないのでしょうか?



成田さん:例えば、生まれた時から、常に手の届く範囲にポテトチップスがあったとします。そんな子どもに「ポテトチップスは体に良くない」と言ってもたぶん伝わらないですよね。ポテチがない世界を想像できないわけなので。ゲームやSNSの現状はそれと似ています。仮に本当に規制したいならば、人間の意思に頼るのではなく外的に制御するしかないと思います。



例えば、薬や食べ物もかつてはなんでもありで、万能薬だと称する毒物が市場に出回っていたりした時期がありますね。そういう痛い目にあって人類は反省し、どんな薬や食べ物は市場に出回ってもいいかを慎重にデザインするようになり、税金や規制がかかるようになりました。薬の治験制度や酒税がいい例です。それと同じように、情報やコミュニケーションを規制したり課税したりするようになる可能性は高いと思います。実際に議論している国もありますし。



成田さんだったら、どんな子育てをしますか?


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経沢:では今のような世の中、成田さんにお子様がいたらどんな子育てをしますか?


成田さん:日本に留まらず、できるだけ色んな場所で過ごしたいですね。日本は、みんな似たような風貌や言葉や習慣を持っていて安心感がある環境です。良く言えば調和が取れている、悪く言えば同調圧力がある、といった感じでしょうか。



それに比べて、たとえばアメリカの都市部の街中は調和が取れていなくて、日本のように公共の乗り物が時間通りに来ることはないし、街も清潔ではない。街中で絶叫してる人やゲロを吐いてる人もそこらじゅうにいる。だから気が楽とも言えます。そう思うと、どんな豊かな国でも一長一短で、良いところも悪いところもあるという気がします。



そういう意味で色んな国で生活することで「色々な一長一短に気づく力」というのを育んでほしいですね。僕は20代になっていろんな海外生活の経験をしたので、幼少期からそのような体験をしたかったな、と思います。



経沢:なるほど、では、成田さんだったらどんな父親になると思いますか?



成田さん:僕は、途中で一家離散するような家庭に生まれ、不登校っぽかったことから家庭からも社会からもネグレクト気味でした。そしてそれはそれで個人的には良かったと思っているんです。他人から愛されたり興味を持ってもらうことには、良い側面と悪い側面があると思うんですよね。人と繋がりができ過ぎちゃうと、人の目を気にし過ぎるようになるし、人のために生きてしまいがちだと思うのです。



でも僕の場合は、家族も友達もあってないようなものだし、しがらみもないので、人のために何かをしなくてはならない、という観念がないのでとても楽なんです。だから親になったら、しがらみを子供に押し付けたくないと思います。



成田さんがシングルマザーだったらどうしますか?


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経沢:少し話は飛びますが、例えば日本社会には「ワーキングマザーは働きながら子育てもしっかりしなくてはいけない」という概念が強くあるように思いますが、その点についてはどう思われますか?


成田さん:確かに、その点では執拗な思い込みやプレッシャーが世の中を支配していますよね。なので、それを打ち消すようなインセンティブを政府が取り入れることは、十分にありえると思います。



経沢:例えばどういうものでしょうか?



成田さん:「仕事と育児のように完全には両立できない物をしなくちゃいけない」と思い込んでいることで「世の中の効率が下がっている」や「ワーキングマザーだけがやたら辛い状況に追い込まれてる」という事実があるならば、それを緩和するような補助金だったり支援制度があっても良いはずです。



経沢:以前は専業主婦世帯がメインでしたが、近年は共働き世帯数の方がマジョリティーになりました。どちらを選んでも幸せであってほしいと思いますが、新しい社会構造に世の中が追いついてない。例えば、女性が子育てしながら活躍できる社会には、まだほど遠いのかと思います。実際に賃金の差もありますし、女性リーダー比率についても、日本は世界に比べて遅れています。



成田さん:確かに、女性リーダーや女性の活躍を掲げる企業や政党も多くなりました。ただ、今のところ焼石に水な感じは否めないですよね。日本はなぜ女性リーダーを作り出せなかったのでしょうか。



経沢:悲しいことに、じわじわ差し迫ってきて、気づくと、地味に我慢できる現実だったのかもしれません。そして、喉元すぎると熱さを忘れてしまい、世代の風潮が一気には変わらない。今の流れを壊すより、我慢するという概念も、長年の日本が作り出してきた風潮なのかもしれません。

では、もしも成田先生がシングルマザーだったらどうしますか?



成田さん:うーーん。すごく難しい。簡単な答えがあるわけもないですね。助け合うためのシングルマザーの村とか作って村への寄付者を募るかもしれません!



経沢:「若者よ独立国を作れ」の発想ですね(笑)では、シングルファザーだったらどうしますか?



成田さん:今の私の仕事の環境だったらできると思いますが、仕事も含めて何でも子供と一緒に行動すると思いますね。人の目は気にならない人間ですし、どこにでも子供を連れて行けばそれだけでフィールドワークや教育や実験になりますし。



子育てで「一番」大切なこと

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経沢:成田さんが思う「子育てに大切なこと」はどんなことですか?


成田さん:子育てだけではないですが、まずは「諦めてみる」ということですかね。ほとんどの人は無責任な発言はしてはならないし、体裁を整えなくてはならないと頑張っていますよね。でも、それが一番の苦しみを生み出しているんじゃないかな。



経沢:なるほどですね…もちろん本当に子育てが好きで夢中で取り組んでいる方もいらっしゃるとは思いますが、子育てが大変だということを口に出せない方もいらっしゃると思うのです。



成田さん:最近わかってきたのですが、色々と物事を諦めていて、かつ周囲や社会とコミュニケーション不足な僕でも、自分の天然な部分をありのままさらけ出すこと、思ったことをそのまま出すことで、世の中の人が意外にもそれに応じてくれるものだと最近わかってきました(笑)。



無理なポジションに就こうと思わずに、今置かれている状況をきちんと把握してそのまま世の中とうまく付き合っていく方が楽だと思うんです。



経沢:私は常に「良くしたい」と必死にもがくタイプなので、ある意味羨ましいです!



成田さん:それは全然良いことで、必死になる時があったり、必死になれる人はやれば良いと思います。でも、家族の事情や体力的な問題を抱えていて頑張ることができない人に「頑張らなきゃいけない」という状況を周りが強要し、本人すらそう思ってしまうことが良くないんじゃないかな。



経沢:ありがとうございます。素敵な考え方ですね。最後に、頑張ってるワーキングマザーにメッセージいただければ嬉しいです。



成田さん:また無責任なことを言わせていただくと、全力で脱力すれば良いんじゃないかな、と思います。家族や親族の目をあまり気にせず、使えるものはなんでも使って助けてもらって良いじゃないでしょうか。もし問題が起きたら自分ではなく状況が悪かったと思えるくらい、気楽な気持ちで子育てしてほしいです!



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成田さん、今回はたくさんの興味深いお話ありがとうございました!進化するネット社会への捉え方や、成田さんならではの子育てに関する考え、日本社会の課題についても貴重なご意見をお伺いすることができました。子育てしやすい世の中、女性が活躍しやすい社会にになるよう、これからもキッズラインは精進して参ります。ありがとうございました!



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【成田悠輔さんのプロフィール】


東京大学を卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)にて博士号を取得。夜はイェール大学助教授、昼は半熟仮想株式会社代表取締役として研究や事業に従事。専門はデータ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスや政策の想像とデザイン。スタンフォード大学客員助教授、一橋大学や東京大学の特任准教授・講師なども兼歴任。報道ステーション、クローズアップ現代+、アベマプライム、日経テレ東大学Re:Hackなどの司会やコメンテーターも務める。



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