キッズラインで活き活きとお仕事をされているサポーターの方に、働き方の工夫ややりがいについてお伺いする新企画。やりがいの一部として切り離せない収入面についても掘り下げます。第1回目は、4年半でサポート回数1150回以上の人気ベビーシッター・澤田まりあさんにインタビュー。依頼する側とされる側、双方が納得できるコミュニケーションの仕方を教えていただきました。
変則勤務に限界を感じ、保育士からベビーシッターに転身
――保育士の資格をお持ちですが、昔から保育士を目指されていたんですか?
保育園の担任の先生のことが大好きで、先生のようになりたいと幼いながらに感じた事が最初のきっかけです。その後、将来携わりたい仕事を考えた時、子どもと関わる仕事がしたいと思い、本格的に幼児教育の道に進みました。
――ご卒業されて、まずは保育園に3年間お勤めになったんですね。憧れていた保育園の先生は、いかがでしたか?
職場に恵まれており、理解のある保護者と子どもの成長を見守ること、経験豊富な仲間との集団保育の楽しさなどを学ぶことができ、今の私の保育観の基礎となった時間でした。しかし、その思いだけでは続けられないという事も感じ始めました。
――どんな面で保育園の先生に限界を感じられたんですか?
変則勤務、休日保育、年末年始保育など体力的に厳しく、長くは続けられないと思い始めたことがきっかけで、保育業界全体の問題でもありますが、給与面においても将来への不安を感じました。
初めてのシッティングは「どれだけ気持ちを通じ合わせることができるか」
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――ベビーシッターになろうと思われたのは?
保育園で働く中で「自分が今後はどんな保育をしたいのか?」「保護者とどのようなコミュニケーションを取りたいのか?」と考えた時、子ども達の家庭での姿を知りたい、保護者が普段はどんなことに悩んでいるのか知りたいと思い始め、ベビーシッターという道も選択肢に入ってきたことがきっかけです。
また、調べる中で海外では保育士と並びベビーシッターという働き方も一般的ということを知り、私も挑戦してみたいと思いキッズラインへ登録をして、活動を始めました。
――初めてのシッティングの時はいかがでしたか?
初めてお会いする保護者と子どもと短時間で気持ちを通じ合わせる必要がある為、保育園で培ったスキルをフルに活用し挑みました。
また、私が活動を始めた頃は、事前面談が保護者の任意でしたので、10回、20回と回数を重ねても初めてお伺いするご家庭では緊張していました。更に回数を重ね、レビューも増え、自信が付いてくるとその気持ちも次第に落ち着いたことを覚えています。
ベビーシッターを始めて~保護者の方々から思わぬ提案が
――ベビーシッターのお仕事は順調でしたか?
ありがたいことに、リピーターの方からも新規の方からも予約が入り、スケジュールがすぐに埋まるという状態になりました。
そのうち、リピーターの方から「予約が取りづらいのですが、時給を上げるお考えはありますか?」と言って頂くことが増えました。別のベビーシッターさんに依頼した際は、相性があるようで、子どもからも「まりあ先生はいつ来るの?」と聞かれることが多かったようです。
――そこからすぐに時給を上げられたんですか?
たくさんのお声を頂いたからといきなり時給を一方的にあげるというのは違うかなと思い、しばらくは悩んでいました。しかし、それからも多くのご家庭から同じ声が届くようになり、真摯に時給と向き合わなければと考えるようになりました。
「どんなベビーシッターに預けたいか」たどり着いた答えは、正直な保育、誠実な会計
――時給を上げる前に考えられたこととは?
「私が保護者だったら、どんなベビーシッターに預けたいか」ということを考えました。子どもが好き、保育技術や知識が豊富は大前提で「このお金を払うに値するベビーシッターかどうか」が重要だと思いました。
しかし、ベビーシッターはお店とは違い、目に見えないサービスを提供しなければなりません。子どもの成長、発達を促すことに賃金を頂いているので、サービスに値段をつけることはとても難しかったです。
――そこから、どのようにされたんですか?
保育においても時給を上げることで私が提供できる遊びの幅がどのくらい広がるかということを保護者に提示しました。
例えば、〇〇円上げると持参できる保育中の遊びの種類がこれくらい増やせるなど、保護者に分かりやすいメリットを提示し、実際にはどのくらいの時給ならよいかと各ご家庭にヒアリングをしました。失礼のないよう、お引き渡しの際に直接お話をするようにしました。
その結果、保護者の方々から提案頂いた中央値を取って800円上げることにしました。
――時給をあげることをお伝えした際の各ご家庭の反応はいかがでしたか?
事前にヒアリングしていたこともあり、好意的に受け止めて頂き「これからの遊びの幅が広がるのが楽しみです」などのポジティブな意見が多かったです。
ネットにある遊びは保育園で体験済み。自分が提供できる遊びを発案
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――保護者からすると、不在時に子どもがどんな体験をしているのか気になります。遊びの幅が広がるとは?
ご家庭にあるおもちゃで一緒に遊び、新しい遊び方を発見したり、散歩へ出かけることももちろん行います。
しかし、長時間になると、私も子どもも新しい刺激が欲しくなります。
そのため、子どもの集中力に合わせて1時間〜1時間半を目安に活動の切り替えが行えるよう、おもちゃ、絵本、実験材料など持参するようにしています。
また、時給を上げたことにより、遊びの種類を増やせるようになりました。例えば、小麦粘土や入浴剤作り、ボディペインティングなどその都度、材料費が必要となる遊びも提供できるようになりました。
――遊びのアイデアは、何を参考にされるんですか?
YouTubeやSNSで配信されている遊びは、すでに保育園で体験済みのことが多いです。私自身もそうだったのですが、日々保育内容を考えている保育現場ではネットの情報からもヒントを得ることが多いからです。なので、シッティングではその一歩先を踏み込んでみたりしています。
例えば小麦粘土作りでは、【混ぜる→こねる→遊ぶ】までは一般的ですが、【破壊する→溶かす】という過程も加えることで、新しい感覚や発見を得られる機会を作っています。
子どもが小学生ならば、太陽光で走る車を作ったり、安全な範囲で熱や電気を用いて年齢や発達に合わせたサポートを提供できるように心がけています。また、ネットを参考にする際には、作り方や過程のみを参考にするようにし、年齢発達を考慮したうえで必要に応じて扱いやすい材料を代用しています。
▼澤田さんが実際のシッティング中に子どもと制作した作品の数々
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――ご自身では、保護者からどんな評価をいただいていると感じていらっしゃいますか?
私はせっかくの時間なので「子どもがやりたいこと」「その時に興味のあること」に重きを置くようにしており、当日「今日はこれじゃなくて、こっちがいい、前の〇〇がいい!」と言われた時にもできるだけ対応ができるよう、持参するおもちゃや実験道具の組み合わせを考えるようにしています。
そのような面で子どもの気持ちが満たされ、良い笑顔を見せてくれた時に、初めて保護者からの高評価に繋がるのかなと感じています。
レビューでは「普段はここまで熱中する時間を取れないのでありがたい」という声を頂いたり、引き渡し後の子どもの様子を書いて下さるので、次回へのヒントにもなるので助かっています。
ベビーシッターと保育士の違いは「一人一人の興味に合わせた遊びをすぐに提供できること」
――ベビーシッターと保育士には、違いはありますか?
少人数を見るか、集団を見るかという違いはありますが、本質的には「子どもの心の芯を突いてどれだけ関わることができるか」「保護者の気持ちをいかに受け取りお話しできるか」など大切なことは何も変わらないです。
ただ、ベビーシッターの方がご家庭というプライベートな空間の中に入らせてもらっている分、お子様の生活環境がよく理解できるので、子どもの興味に合わせた遊びを提供できたり、保護者の方ともより深いお話をすることができていると思います。
――お仕事としては収入も大事だと思いますが、そのあたりはどうですか?
私の場合は、ベビーシッターとして働いている今の方が収入は確実に上がっています。
――依頼が立て込むと、お休みを取りにくいことはありませんか?
子どもの安全を考えた時に、自分自身の体調にも配慮しなければなりませんので、週休2日を目安にしています。自分で働く日を決められるので、研修を受けたい時に調整しやすいこともメリットだと感じています。
お引き渡しの中でいただく保護者からの言葉が、ベビーシッターのやりがい
――個人事業主として働くことをどう感じていますか?
個人事業主は、厚生年金に加入できないなど、将来への保障が薄いですが、iDeCoなど様々な制度を利用することでカバーしています。
――ベビーシッターのやりがいはどういった時に感じられますか?
保護者の方々から「日常生活の中で周囲の環境に対する興味が広がった」「自分の苦手な事でもチャレンジするようになった」「気持ちの切り替えがスムーズになった」などの声を頂くと、私が保育をする中で大切にしていることが子どもに伝わっているのだなと改めて感じることができ、嬉しくなります。
そして、良いことも悪いことも日々のお引き渡しの中で話す内容はとても心に残ります。
――そのような気持ちは保育園の時にはあまりなかったのですか?
保育園は集団を見ているので、安全確保の観点からも日々の引継ぎでの長話はできません。たくさん話したい事があっても要点をまとめてお伝えするので、経緯や保育士がどう感じたかなどゆっくりとお話する機会は個人面談などを除くとほぼないのが現状です。
その点、ベビーシッターはご家庭に入らせてもらっている分、時間の許す限りお伝えすることが可能です。サポート中の出来事を嬉しそうに聞いてくれている子もいます。
――今後はどのように活動されていく予定ですか?
これからもベビーシッターとして活動していく予定です。今まで通り丁寧な保育を心掛け、日々の悩みやちょっとした相談など保護者の方にとって気軽に話せる存在でありたいと思っています。
――インタビューを終えて――
ベビーシッターのお仕事を始めてから、パソコンにすべてのシッティングの記録をしているという澤田さん。その記録をたどりながら、的確にお話してくださる真摯な姿勢に、感銘を受けました。また、ご家庭での細やかで創造的なシッティングのお話をお聞きし、ベビーシッターというお仕事のすばらしさを改めて教えていただきました。多くのご家庭で「まりあ先生」を待っているお子様が目に浮かびます。澤田さん、貴重なお話をありがとうございました!
澤田まりあさんのプロフィールページはこちら
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