保育士資格を持ちながら保育士として働いていない「潜在保育士」が増えています。この記事では、増加の背景や復職支援制度でもらえる補助金などについてご紹介します。

Summary

⚫︎潜在保育士の数は、約107万人。給与や労働環境の課題で増加
⚫︎復帰支援策の一つが「無利子の貸付」。最大40万円、2年勤務で返還免除も
⚫︎柔軟な働き方が可能なベビーシッターも選択肢に


潜在保育士とは?


保育士
潜在保育士とは、保育士資格を持っていても、現在は社会福祉施設等で保育士として働いていない人のことを指します。保育施設を離職した人だけでなく、資格取得後に一度も保育士として働いたことがない人も含まれます。

潜在保育士の人数は、どれくらい?

厚生労働省の調査によると、「潜在保育士」の人数は増加を続けています。2010年には約61万人でしたが、2021年には約107万人に達しました。保育士資格の取得者は毎年増えているものの、潜在保育士の数も増加しており、保育士の確保という面で大きな課題となっています。
潜在保育士グラフ
参考:保育士の登録者数と従事者数の推移|こども家庭庁
潜在保育士が生まれる背景には、給与や労働条件への不満が大きく影響しています。一度職を離れた保育士が「また働きたい」と思わないこともあって、年々その数が増えています。

潜在保育士が復職しない理由


悩む保育士

一度は保育士を志したにもかかわらず、保育現場で働くことを選ばない背景には何があるのでしょうか?潜在保育士が復職に消極的な理由について詳しく解説します。

【復職しない理由1】年収が低い

大きな要因は、保育士の収入が低いことです。厚生労働省が発表した2023年の「賃金構造基本調査」によると保育士の全国平均年収は約396万円(※)でした。国税庁が発表した2023年の「民間給与実態統計調査」によれば、全業種の平均年収は約460万円で、保育士の年収との差は約60万円に及びます。全業種と比較すると、低い水準であることがわかります。両調査は調査対象や方法が異なるため単純に比較できるものではありませんが、保育士は経済的な不安を抱えやすい職業であるといえます。

これでは、保育士はゆとりある暮らしが難しく、将来の備えをする余裕がありません。特に都市部では家賃や生活費が高く、給与の大半が生活費に充てられるため、経済的な余裕を持てないことが退職の引き金となります。

(※)厚労省「賃金構造基本調査」の結果から算出。保育士の「きまって支給する現金給与額」(27万1400円 ×12ヶ月)に「年間賞与その他特別給与額」(71万2200円)を足して試算。

【復職しない理由2】人間関係の悩みと業務量の多さ

職場の人間関係や業務量の多さも離職につながります。保育士はお子様や保護者とのコミュニケーションだけでなく、同僚や園長との連携が求められ、日々大きな負担を感じています。東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査」によれば、過去に保育士として働いた人の退職理由の1位は「職場の人間関係」でした。

保育士の業務量の多さも課題です。保育に加え、行事の準備、保護者対応、連絡帳への記入などを担う必要があり、長時間労働や仕事の持ち帰りにつながっています。保育現場でのICT化やイベント削減といった動きが見られる一方で、園の方針によっては新しい提案が受け入れられにくく、労働環境の改善が進まないケースもあります。東京都の「令和4年度保育士実態調査結果」でも、勤務時間の融通が効かないことへの不満が報告されており、労働環境の改善が求められています。

参考:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査」

【復職しない理由3】子育てとの両立が難しい

勤務時間の融通が効かないことや業務量の多さは、家庭との両立の障壁となります。たとえば、小学校低学年の子どもを持つ保育士が、早朝や夕方のシフト勤務を担当するのは難しい場合があります。そのため、子育てを優先して正社員からパート勤務に切り替える保育士もいますが、待遇が変わることで収入が減少し、働く意欲や満足度が下がる可能性もあります。

サポーターとして働く

潜在保育士向けの復職支援策や補助金


笑顔の保育士

近年現役の保育士に対しては、待遇改善の対策が講じられてきました。潜在保育士についても復職を促す支援策が設けられています。どのようなものがあるのでしょうか。

●政府による潜在保育士の再就職支援

政府が進めている「新子育て安心プラン」では、2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を増やすとしています。これを実現するには、保育士の存在が欠かせません。政府は受け皿拡充と並行し、新たに約2万5000人の保育人材の確保に努め、その一環として、潜在保育士の再就職支援を打ち出しました。支援策の内容は、大きく2つに分けられます。

参考:新子育て安心プランの概要|こども家庭庁

【1】保育士・保育所支援センターの機能強化

保育士・保育所支援センターとは、保育士が再就職しやすい環境を整えるための施設
を指します。実施主体は都道府県、指定都市及び中核市で、2023年6月時点で46都道府県に72か所あります。同センターでは、潜在保育士の掘り起こしを行い、保育園とのマッチングを支援しています。
たとえば、東京都保育人材・保育所支援センターでは、保育士向けの就職支援や研修、相談を実施しています。マッチングシステムを導入し、勤務条件などのニーズに合わせて再就職先を提案するといったサポートを提供しています。

参考:東京都保育人材・保育所支援センター

【2】就職準備金貸付事業

復職が決定した保育士に対して、引越し費用や通勤用自転車購入など、復職に向けた準備に必要なお金を「再就職支援資金」として、無利子で貸し付ける制度です。貸付額は最大40万円で、保育士として一定期間勤務をすれば返還は免除されます。言い換えれば、一定期間未満で離職した場合には返還する必要がある点には、注意が必要です。
ただし、同事業は各自治体が運営しているため、貸付額は全国一律ではありません。東京都における貸付額は最大40万円ですが、神奈川県や千葉県では最大で20万円です。

参考:東京都社会福祉協議会「潜在保育士の再就職支援事業」
参考:神奈川県社会福祉協議会
参考:千葉県福祉人材センター


●2025年度に予定されている追加策

こども家庭庁は、2025年度予算案において、潜在保育士の再就職を促進するための新たな支援策を導入する予定です。
◆保育士・保育所支援センターの機能拡充

全国72か所に設置されている支援センターの役割を強化し、求人情報の提供、研修案内、キャリア相談の充実を図ります。センターの運営を円滑にするため、運営費の一部を助成。新たなセンターの設置に関しても、国が部分的に費用を負担します。また、復職を希望する保育士がスムーズに就職できるよう、施設見学のサポートや面談の機会を提供し、マッチングの精度を高めるとしています。

◆職場環境改善のための新たな支援

保育士の働きやすい職場環境づくりを支援するため、「保育士支援アドバイザー」を保育施設に派遣。スキルアップ研修の実施や職場内の業務改善をサポートし、職員の負担軽減や職場定着率の向上を目指します。加えて、労働環境の見直しに関する助言を行い、保育士が長く働き続けられる環境づくりを促進していきます。

参考:令和7年度こども家庭庁当初予算案


●現役保育士向けの支援策もある

保育士の給与引き上げを目的とした「保育士等処遇改善加算」や家賃負担軽減のための「保育士宿舎借り上げ支援事業」といった待遇改善施策もあります。自治体によっては、引っ越し費用の補助や奨学金の返済支援を行う自治体もあります。
支援策はいずれも自治体によって大きく異なるため、復職を考えている自治体のホームページなどで調べたり自治体窓口に問い合わせてみることをお勧めします。

復帰先としてベビーシッターがおすすめな理由


ベビーシッターと子ども
国の支援策は心強いですが、保育士資格を持つ方自身が、プライベートと仕事を両立して不安なく保育の仕事を続けられることも大切です。そこで潜在保育士が復職に際して重視する条件を整理し、ベビーシッターという働き方のメリットについても紹介します。

潜在保育士が復職に求める条件とは

東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査」によると、潜在保育士が復職を考える際に最も重視するのは「勤務時間」(73.8%)で、「給与等」(69%)、「通勤時間」(61.6%)が続きました。自分のライフスタイルに合わせて働きたいとの気持ちが強いことがわかります。さらに、潜在保育士の約6割が「雇用の条件さえ合えば、保育の仕事に就きたい」と回答しており、条件を満たせば復職につながる可能性が高いことも示されています。

参考:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査」

ベビーシッターとして働くメリット

潜在保育士が復職を考える際、ベビーシッターが条件に合った働き方になるかもしれません。ここでは、ベビーシッターとして働く3つのメリットをご紹介します。


【メリット1】自分の都合に合わせて仕事を入れられる
保育士の仕事はシフトや勤務時間が固定されていることが多く、家庭やプライベートとの両立が難しい場合があります。翌月のシフトが月末に決まることがあり、先の予定を立てづらいことに不満を抱く保育士も少なくありません。その点ベビーシッターは、自分のスケジュールに合わせて仕事を入れられるため、プライベートとのバランスを保ちやすいのが大きな魅力です。

【メリット2】自分で時給を設定できる
保育士には、主任保育士や施設長といった役職に就いて収入を上げる機会があります。しかし、これは長期間にわたって保育士として働き続けることが前提です。東京都の調査では、保育士の平均就業年数は「3年以下」が全体の約5割を占めています。短期間で収入アップを実現することは難しいのが実情となっています。

ベビーシッターは、運営会社に登録をして仕事を受けるのが一般的です。運営会社によっては自分で時給を設定できるため、短時間での高収入も見込めます。保育士の給与は固定されていることが多く、昇給の機会が限られていますが、ベビーシッターは自分のスキルや経験に応じて収入を増やすことができるのが利点です。なお、自分で時給を設定できるのは、認可外保育施設設置届を自身で提出し、マッチングサービスに登録した場合に限られます。

【メリット3】人間関係のストレスが少ない
保育園では、同僚や上司、保護者など人との関わりが多く、人間関係のストレスを感じやすい環境にあります。一方、ベビーシッターは基本的にお子様と一対一で向き合う仕事が多いため、職場の人間関係に悩むことが少ないのが特徴です。もちろん、お子様や保護者と信頼関係を築くことは大切ですが、同僚や上司とのやりとりがない分、精神的な負担は軽減されることが多いです。

サポーターとして働く

ベビーシッター登録先としてキッズラインを選ぶ利点


子どもへ微笑む女性
ベビーシッターのマッチングプラットフォームである「キッズライン」では、理想の働き方を目指して、ベビーシッターとして活動する保育士資格保有者が増えています。その中には、しばらく保育の仕事から離れていた方も少なくありません。そこで、潜在保育士が「キッズライン」でベビーシッターを本業にすることの魅力を紹介します。

【魅力1】メリハリがある生活が送れる

キッズラインでは、働く時間を自分で自由に決めることができ、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。たとえば、お子様が学校に行っている時間帯のみ働いたり、家族が休みの土日に集中して依頼を受けたりしている方も。
園勤務ではシフトの調整に気を遣い、自由に有休を取りづらいこともありますが、キッズラインのベビーシッターなら、そうした心配が不要です。持ち帰りの仕事もなく、働くときには働き、休むときにはしっかりと休めるため、仕事とプライベートのメリハリがある生活が送れます。

【魅力2】時給アップで園勤務の収入を上回ることも可能

キッズラインでは、時給やシフトを自分で設定できるため、経験やスキルに応じて収入をアップできるのが特徴です。
2024年6月時点では、東京都で働くキッズラインのベビーシッターの平均時給は2422円です。事業開始時2015年の平均時給1414円(東京都内)に比べて約1.7倍も高くなりました。東京だけでなく一都三県の平均時給も2308円と高水準で、全国平均でも2159円となっています。スキルに見合った時給を設定できるので、場合によっては保育士時代よりも高い収入を目指せます。

【魅力3】認定シッターになることで、安定した依頼が見込める

キッズラインは東京都の「ベビーシッター利用支援事業・一時預かり事業」(1時間あたり最大2500円の補助)や「企業型ベビーシッター割引券」(1回あたり最大4400円の割引)といった助成制度の認定事業者です。これらの制度の認定シッターになることにより、依頼者の経済的な負担が軽減され、働く側のベビーシッターも安定した仕事が入るという仕組みがあります。保育士からの転職を考えている方にとっては、こうした助成制度があることで安心してベビーシッターを始めることができます。
サポーターとして働く

保育士資格を活かして、ベビーシッターとして活躍しよう


ベビーシッターとスマホ
保育士として復職を考える際には、通勤や勤務時間、家庭との両立、収入面の問題など、さまざまな課題があります。こうした悩みの解決手段の一つに、ベビーシッターという働き方があります。
特に「キッズライン」のベビーシッターは、柔軟に働ける環境が整っています。自分のスケジュールに合わせて働けるため、家庭との両立がしやすいほか、スキルに応じて時給を設定することも可能です。保育士資格を活かしながら、ベビーシッターとして働くことを検討してみてはいかがでしょうか。

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