親の多くが「たくさん食べて元気に育ってほしい」と願うものです。あまり食べないわが子を目の当たりにすれば不安になってしまうこともあります。子どもの少食・偏食の原因はどこにあるのでしょうか?この記事では、子どもが食べない理由と対処法について、現役保育士が解説。不安を解消して、楽しい食事の時間を取り戻しましょう。

「子どもがごはんを食べてくれない」には理由がある


あかちゃんのごはん
子どもがごはんを食べないのには、理由があります。理由は単純で「食べたくない」と思うからです。食べたくないと感じる原因は多岐にわたります。その原因についてみていきましょう。

子どもがごはんを食べたくない原因


ごはんを食べないのには、以下のような原因があります。

便秘
眠い
体調不良
味や香りが苦手
お腹が空いていない



子どもに限らず、大人でも上記のような原因があれば食欲は落ちますよね。逆に原因が取り除かれれば、子どもが食べるようになる可能性も大きいです。子どもの場合、月齢や年齢に応じて食べない理由に特徴があるので、詳しく解説していきます。

子どもの食欲には波がある


子どもはいつも同じようにお腹がすく訳ではありません。

☑朝は食べなかったけれど、昼はよく食べる
☑昨日は食べなかったけれど、今日はよく食べる
☑3歳のときはあまり食べなかったけど、5歳の今はよく食べる



著者は18年間、保育士としてたくさんの子どもを見てきましたが、上記のような子どもはたくさんいました。子どもの食欲には波があるので「今は食欲が少ない時期」という可能性もあります。そこで、食べない理由と対処法を年齢別に説明していきます。

【離乳食期】ごはんを食べない理由と対処法


離乳食期の赤ちゃんは、まだ食材に慣れていません。母乳やミルクの方が慣れ親しんだ味ですし、喉を通りやすいのです。

《食べない理由》
母乳やミルクがいい
味・香り・食感が嫌
食器や食具の質感が嫌
眠たい
鼻が詰まっている
自分で食べたい
上手に食べられなくてイライラしている


ザラザラした食感も、ひんやりしたスプーンの感触も、赤ちゃんにとってはすべて新たな刺激となります。少しずつ慣れていくための工夫が必要です。また、赤ちゃんは眠いと食事が進みません。離乳食期は時間にこだわらず、赤ちゃんのリズムに合わせた生活をしましょう。

《対処法》
シリコーン製や木製の食器・食具を使う
柔らかく煮たり、味付けを変える
食事の前に昼寝をする
手づかみ食べを促す


9ヶ月くらいになってくると、自ら手にとって食べようとする姿がみられるようになります。食べる意欲が育っている証拠です。主体性を大切にすることで、意欲は育っていきます。こぼす量は増えますが、多めに作って「自分で食べたい気持ち」を満たしていきましょう。

《言葉かけの例》
あ〜ん
もぐもぐ
ごっくん
おいしいね


赤ちゃんには、言葉かけ以上にママパパの表情が重要です。一緒に食べたり「おいしいね」と微笑みかけたりすることで、赤ちゃんの食べる意欲が増します。

【1歳半~3歳】ごはんを食べない理由と対処法


イヤイヤ期のごはん
1歳半〜3歳の子どもは自我が芽生え、自己主張を始めます。イヤイヤ期にあたる時期です。そのため「自分で食べたい」「今は食べたくない」などの主張が強くなります。

《食べない理由》
噛めない
食わず嫌い
集中できない
食べるより遊びたい
お腹が空いていない
ママパパの促しに反発したい
テーブルとイスが合っていない


味覚の発達に伴い、嫌いな食べ物ができてきます。食わず嫌いの場合も多いので、食べなくてもテーブルに出しておくことが大切です。ママパパがおいしそうに食べていたら「食べてみよう」となることも多いです。そして「食べてみたらおいしかった」という経験を重ねていきます。

《対処法》
食べやすい大きさに切る
おいしそうに食べる姿を見せる
テレビを消して、おもちゃは片付ける
日中にたくさん身体を動かす
身体に合った椅子を用意する


食べたくても「食べない」と反発する時期です。気にしないフリをして、ママパパは先に食べ始めます。「おいしいね」と楽しそうに食べていれば、お腹の空いている子どもは自然と食卓へ向かってきます。喜んで迎え入れ、一緒に食べる楽しさを感じられるようにしましょう。

《言葉かけの例》
お野菜、食べられたね
食べてくれて嬉しいな
お皿ピカピカになったね
フォーク使うの上手だね
一緒に食べるとおいしいね


子どもはできたことを大人に認めてもらうと喜びます。大人にとっては些細なことでよいのです。野菜をほんの一口食べたとか、自分で食べたとか、当たり前にできることから「できたね」と一緒に喜んでいきましょう。自己肯定感が高まり、食べる意欲も高まっていきます。

【4~5歳】ごはんを食べない理由と対処法


4〜5歳になると、脳の発達に伴い、好き嫌いがはっきりしてきます。以前食べて「嫌い」だと感じた食べ物を覚えていて「食べたくない」と主張するようになります。

《食べない理由》
食が細い
好き嫌いがある
量が多すぎる
おやつを食べ過ぎている
気持ちが遊びに向いている


おやつをたくさん食べ過ぎてしまって食事の時間にお腹が空かない、ということも考えられます。大人が量を調節して、食事に響かないようにしましょう。おやつの時間にたくさん食べるようなら、お菓子ではなく、おにぎりや芋などの軽食を用意しておきます。夜は少なめにして、食べる量を調整していきましょう。

《対処法》
盛りつける量を選んでもらう
苦手な食材を取り除く
おやつの量を調整する
日中にたくさん身体を動かす


食べない野菜は小さく切ってカレーなどに入れてみましょう。「苦手な野菜でも食べられた」という自信が次へと繋がっていきます。時には「お弁当箱へ詰める」というのも1つの手です。遠足の気分を思い出しながら、喜んで食べてくれます。

《ごはんを食べないときの会話例1》
親「ごはん、できたよ」
子「今、ブロックしてるから食べたくない」
親「ブロックしてたのね。何作ってるの?」
子「基地」
親「基地作りしてたんだ。このままとっておいていいよ。食べたら続きやろう」
子「片付けなくていいの?」
親「いいよ」
子「じゃあ、食べる」


《ごはんを食べないときの会話例2》
親「豚の生姜焼きなんだけど、どれくらい食べる?」
子「ちょっとがいい」
親「半分くらい?それともその半分かな?」(切ったものを見せる)
子「こっちがいい」(食べられる方が指差す)
親「こっちね。おかわりしたかったら、あるから言ってね」
子「うん」


子どもには子どもの事情があり、そこから生じるさまざまな思いが存在します。会話を通して子どもの気持ちを知り、1人の人間として意思を尊重しましょう。

【小学生】ごはんを食べない理由と対処法


小学生ごはん
小学生になると、親から離れて過ごす時間が増えます。生活環境や生活リズムが変化し、ごはんを食べなくなることがあります。

《食べない理由》
孤食
偏食
ストレス
おやつの食べ過ぎ


親が働いていても学童に預けない場合は、子どもだけで放課後の時間を過ごすことになります。お菓子を食べ過ぎたり、ストレスが重なっていたりすると、食欲が落ちてしまいます。

《対処法》
家族で食卓を囲む
メニューを決めてもらう
一緒に買い物へ行く
味見をしてもらう


親と過ごす時間の減少に伴い、会話も減ってしまいます。子どもの不安やストレスをキャッチするためにも、意識的に会話をする機会を作っていきましょう。平日は難しくても、休日に楽しい家族の時間が過ごせれば、子どもの安定につながります。食べるときだけでなく、買い物や調理などの過程でコミュニケーションを意識しましょう。

《ごはんを食べないときの会話例1》
親「今日の夕飯、何がいい?」
子「なんでもいい」
親「親子丼とカツ丼、どっちがいい?」
子「カツ丼」
親「よし、じゃあカツ丼にしよう!」


《ごはんを食べないときの会話例2》
親「ねぇ、ちょっとコレ味見してくれる?」
子(味見して)「もうちょっと食べたい」
親「いいよ。さっきより多めに盛ってもいい?」
子「うん。でも、あんまり多くしないでね」
親「了解。ごはんと一緒に食べてもおいしいよ〜」


子どもは頼られると張り切ります。メニューを決めてもらったり、味見をしてもらったりして食欲を引き出しましょう。「今日の夕飯、何がいい?」というような漠然とした質問だと答えにつまってしまいますが、「親子丼とカツ丼、どっちがいい?」のように選択肢をしぼることでイメージしやすく、答えやすくなるはずです。

無理に食べさせなくても大丈夫。少食や偏食の向き合い方


ここまで子どもが少しでも食べるための対処法を解説してきました。しかし、食べない子に食べさせようとするのは、やり方を間違えれば逆効果になります。子どもはママパパの「食べさせたい」という気持ちを察します。「食べなきゃ」と思えば思うほど、食欲は減退していきます。
子どもが自ら「食べたい」と思う気持ちを引き出すことが大切です。そのために効果的なのは、食事を楽しい時間にし、ママパパがおいしそうに食べている姿を見せることです。

食欲は、生きていくために不可欠な欲求です。生まれたときから生理的欲求として、子どもの中に存在しています。ママパパの前ではあまり食べなくても、保育園では食べているかもしれません。今は食べなくても、大きくなってからたくさん食べるようになるかもしれません。「食べさせなければ」と焦るのは禁物です。「お腹が空けば食べるよね」くらいの軽い気持ちで、子どもの食事を見守っていきましょう。

子どもがごはんを食べないときの親の心構え


食卓
あまり食べない子どもを目の前に、親ができることは何もないのでしょうか。子どもの食欲を直接引っ張り出すことはできません。しかし継続的に食べる楽しさや満足感を伝えていけば、「今すぐに」は難しいですが「可能な限り早く」子どもの食べる意欲を引き出すことができます。子どもの「食べたい」という気持ちを引き出すための親の心構えを3つ、ご紹介します。

【心構え①】親も一緒に食事を楽しむ


親も一緒に食事を楽しみましょう。1人で食べるより誰かと食べる方が、食欲が湧いてきます。ママパパがおいしそうに食べている姿を見れば「そんなにおいしいのなら、私もちょっと食べてみようかな」という気持ちになります。忙しいとつい、子どもを先に食べさせて親はあとから…となりがちですが、可能な限り一緒に食事をとるようにしましょう。楽しい会話が食事をより魅力的な時間にしてくれます。

【心構え②】無理に食べさせようとしない


「早く食べなさい」と急がせたり「ひとつだけ食べなさい」と無理に食べさせようとするのは逆効果です。「食べたくないならしょうがない」と諦めの心をもつことも肝心です。嫌がるものは無理に食べさせない方が賢明です。無理した挙句、嘔吐することもありますし、「実はアレルギーだった」ということもあります。
苦手な食材で摂れなかった栄養は、別の野菜から摂ればいいのです。嫌がるものを無理に食べさせるのではなく、食べられる食材を少しずつ増やしていきましょう。

【心構え③】時間を決めて片付ける


食事の時間はある程度決めておきましょう。年齢にもよりますが、20〜30分くらいが目安です。時間は、子どもの集中力に合わせて設定します。時計がわかる子であれば「時計の針が6になったらごちそうさましようね」と声をかけてもよいでしょう。
途中で遊び始めたら、食事の時間は終わりにします。繰り返していくと、食べる時間と遊ぶ時間を区別できるようになります。子どもが集中して食べられるようになるためにも、終わりの時間は決めておきましょう。

食べないことで悩んだら、食事の介助を他の人に頼んでみる


食べないこと自体がママパパの悩みになっているのなら、食事の介助をベビーシッターなど他の人に頼んでみるのも1つの方法です。もし家では食べなくても保育園で食べているのなら、ママパパ以外の人が介助すれば食べる可能性もあります。
食べないことを深刻に悩んでいる場合、知らず知らずのうちにママパパの表情が暗くなったり、強い口調になったりしているのかもしれません。ベビーシッターにお願いすることで、子どもが楽しく食事できる姿がみられる可能性もあります。しんどいときは無理をせず、他者に頼りましょう。

今すぐベビーシッターを依頼してみる

ごはんを食べなくてもちゃんと成長する!長い目で見守って


著者は18年の保育経験の中で、たくさんの少食・偏食の子どもを見てきました。しかしどの子も例外なく、身長が伸び、体重が増えています。脳や心の発達も問題ありませんでした。自らの意志で食べない場合、成長には影響しないのです。少食・偏食はあっても大丈夫です。「今は食べない時期なんだ」と割り切りましょう。
食べないわが子を目の前にして「やはり不安を感じてしまう」という場合は、一度保育のプロであるベビーシッターに食事環境の作り方や声のかけ方を見てもらうのもオススメです。不安は1人で抱え込まず、プロに相談しましょう。

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キッズラインには、食事の介助を頼めるシッターも在籍


ベビーシッター・家事代行サービスのマッチングプラットフォームであるキッズラインでは、シッターとして、保育士や看護師など保育の専門資格や研修を完了した家庭保育のプロフェッショナルが多数在籍しています。
初めてのシッターに保育を依頼する際には、オンラインでの顔合わせまたは対面での事前面談が必要なので、まずはよさそうだなと思う人に連絡を取ってみましょう。
子どもの食事の介助に悩むときには、一度ママパパ以外の人に頼んでみると、客観的に子どもの様子を見ることができます。子育ては一人ではできません。保育のプロのスキルを借りて、無理なく楽しく子育てを進めていきましょう。

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■保育士ライター 佐野希子
18年目の現役保育士。独学で認定試験に合格し、幼稚園教諭の資格も取得。他に社会福祉士の資格も保有。現在は副主任として保育現場の指導とサポートに努めている。


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