妊娠・出産は女性にとって大仕事です。心身ともに全力を出し切った出産後は、ママの身体を回復することがとても大切。以前は実家でしばらく休むことが通例でしたが、最近では「実家に頼れない」「周囲に頼る人がいない」人も多くいます。そのため、産後ケアが十分に受けられていないママも少なくはありません。
そこで今回は産後のママの回復を目的とした、産褥期の「実家に頼らない産後の過ごし方」について、詳しく紹介します。
妊娠・出産は、母体に大きな負荷がかかります。そのため産後6~8週間程度の「産褥期(さんじょくき)」は安静が大切です。この時期には食事作りや洗濯などは自分で行わず、授乳と赤ちゃんのお世話以外は横になってゆっくり過ごすことが良いとされています。
家事や仕事のことは考えずにしっかり休んで、その後の育児を乗り切る英気を養いましょう。
出産によりダメージを受けた母体は、思った以上に大変な状態になっています。授乳などで実際に身体に傷みを感じることはもちろん、ホルモンバランスの乱れによって感情のコントロールが難しくなることもあります。
◇産褥期ママのよくある悩み
・食事作りや洗濯などの家事に加え、育児で睡眠不足
・身体の痛みや悪露が続いているので、赤ちゃんのお世話をするのが難しい
・思うように育児や家事ができなくて、気持ちが落ち込む
このように心身が辛い状況にあっても、赤ちゃんのお世話は休憩することができません。頼れる家族が近くにいれば安心ですが、近年ではさまざまな理由から実家や周囲の人に頼れない方も多いようです。
・実家が遠方
・親が高齢
・親が現役で働いているなど時間がない
・親が離婚して別の家庭がある
・親が既に他界している
・感染症が心配で周囲に頼れない
・里帰り出産ができる産院が地元にない
・実家にきょうだいや高齢者が同居していて長期の里帰りが出来ない など
このような状況にあると、本来安静に過ごすべき産褥期であっても、退院後に自宅に帰って自分で育児をしなければなりません。しかし、無理をすると後になって自身の体調や育児にも影響があるため、休むことをおろそかにしないことが重要です。
そのような産後のママをサポートするため、最近では公的な制度や民間のサービスが多く存在します。
公的な支援としては、各市区町村が主体となって行う「産後ケア事業」があります。産後ケア事業の目的は、助産師や看護師が、産後のママの心身的な回復と新生児(乳児)のケアを行うこと。つまり、母子が安定した暮らしの中で健やかに過ごせるようサポートする事業なのです。
今回はその中でも、産褥期に活用したい2つの事業をご紹介します。
産後ケア事業の「訪問ケア(アウトリーチ型)」では、産後に家族のサポートが受けられない、もしくはケアが必要な状態にある母子を「自宅」でケア、サポートする事業です。
自宅に訪問してケアをしてくれるのは、子育てや身体ケアの専門知識を持つ次のような専門家です。母子の状況によって、訪問する専門家は異なってくるようです。
<訪問してくれる専門家の例>
・助産師
・保育士
・管理栄養士
・心理に知見のある人 など
産後ケア事業の「宿泊ケア」は、市区町村指定の病院や民間の産後ケア施設で助産師や看護師のいる体制で受けられる宿泊型の看護ケア事業です。必要な場合には、子ども(赤ちゃんにとっての兄弟)やパパの同伴もできるケースもあります。
<利用対象者 例>
・産後、家族が十分にサポートできる体制にない
・育児に不安があり、サポートが必要 など
このように日本では、市区町村が主体となって産後のママと赤ちゃんをケアする体制が整っています。ただし、公的サービスとはいえ、無料ではありません。その費用は市区町村、そして市民税の課税・非課税などによっても異なります。
また基本的には産後まもない母子が対象となるサービスのため、子どもの月齢が細かく設定されている場合もあります。
例)港区の場合:産後4ヶ月未満の母子
さらに住んでいる地域によっても利用できる施設や制度に特色があるので、詳しくはお住まいの市区町村窓口に問い合わせてみてくださいね。
近年では、産後のママと赤ちゃんのケアやサポート、育児について学べる民間の産後ケア施設もサービスも増えてきています。とはいえ、日本ではまだその存在が「当たり前」にはなっていませんよね。
厚生労働省が発表する「産後ケア事業の利用者の実態に関する調査研究事業 報告書(令和2年9月)」によると、令和元年度の宿泊型産後ケアサービスの利用率は、出生数のわずか0.88%。この数値から見ても、日本ではまだ産後ケア施設を利用することが一般的にはなっていないようです。
一方、韓国や台湾では、産後を過ごす場所として「産後養生院」が強い人気を誇っているといいます。隣国の情報が伝わっている背景もあってか、日本でも産後ケアを充実させる民間施設が続々と誕生しています。
低価格で利用できる市区町村の産後ケア事業に対して、民間の産後ケアサービスは施設によってその費用が異なります。いずれにしても、公的サービスよりは高価に感じるかもしれませんね。
最近では、病院だけでなく、ホテルで産後ケアサービスを受けられる施設も出てきました。ただし、その料金は比較的高めになっています。その価格の差の大きなポイントは、民間ならではの充実したサポート内容にあります。
<民間の産後ケア施設でのサポート例>
・24時間赤ちゃんを預かってくれる体制
・産後の回復を促す食事療法
・助産師による母乳指導
・沐浴レッスン
・岩盤浴
・足湯
・産後ヨガ
・アロママッサージ
・エステ
・ベビーマッサージ
・新生児の写真撮影会 など
民間施設は手頃な価格ではありませんが、大事なライフイベントだからこそ、ママも赤ちゃんも安心して過ごせる場所としては理想的と言えそうです。産後に使える予算に合わせて、検討してみてはいかがでしょうか?
ここまでは「家族に頼れない」場合に利用するサービスを紹介しましたが、次は「家族で産褥期を乗り越える」選択肢について考えてみましょう。
育児・介護休業法の改正に伴い、2022年からは「産後パパ育休制度」が段階的に進められることになっています。心身共にダメージがあるママと生まれたばかりの我が子をサポートするため、パパが育休期間を過ごすという選択肢も可能になります。
「産後パパ育休制度」は、通常の育休とは別に取得ができます。通常の育休よりも期間は短いため、産褥期に集中してサポートするケースにもおすすめです。
「家族には頼れないけど、上の子や家庭のことが心配だから自宅で産後を過ごしたい」という希望のあるママもいらっしゃると思います。
とはいえ、パパに育休を取ってもらうことが難しい家庭もまだあることも事実。このような方にオススメなのが、産後ドゥーラを依頼することです。
育児サポートといえば、「ベビーシッター」を連想する方も多いのではないでしょうか。産後ドゥーラという言葉はまだ耳なじみがあまりないかもしれません。
産後ドゥーラとベビーシッターは似た存在ではありますが、役割や資格(認定)、専門とする子どもの年齢などが異なります。
つまり産後ドゥーラとは、産後のママが無理なく新生児育児を行えるよう「産後のママ」をサポートする専門家のこと。具体的には、次のようなサポートをお願いできます。
<産後ドゥーラによるサポートの例>
キッズラインにも、産後ドゥーラ認定を受けたサポーターが在籍しています。まずはお住まいの近くで活躍している産後ドゥーラを探してみてはいかがでしょうか。
キッズラインでは、産後ドゥーラ認定を受けたサポーターに直接依頼ができます。金額は、産後ドゥーラ側から提示している金額になるため、1人ずつ異なります。予算に見合う人を自分で探すことができるのがメリットです。
またお住まいの自治体によっては、産後ドゥーラを依頼した料金の一部を助成したり、利用券を発行していたりする場合もあります。リーズナブルに依頼する方法がないか、まずはお住まいの自治体で確認してみてください。
産後の体調や状況は、産前に思っていた以上にハードだったという声も多く聞きます。急な帝王切開で回復期間が必要になったり、産後に貧血になったりと、出産でのダメージの大きさは予測がつきません。
また身体だけでなく、心のケアも大切です。出産が初めてでなくても、上の子を抱えながらの新生児育児に悩むなど、心身を病む方も少なくはありません。
だからこそ、どんな人でも出産後の無理は禁物。妊娠期間中から、産褥期の過ごし方の選択肢を知って、頼れるサポート先を増やしておきましょう。
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