子どもが誕生後、夫婦で育休を取って子育てをスタートしたいと考える方もいらっしゃると思います。夫婦で育休を取得すれば、育児を二人で協力できるメリットはありますが、一方で世帯収入が育休前の水準より下がるなどの注意点もあります。この記事では、育休中の経済的なリスクや、収入減への備えについて、ファイナンシャルプランナーが詳しく解説します。

夫婦で育休を取れる「育児休業制度」の基礎知識


夫婦と子ども
育児休業制度とは、子どもを育てるために親が一定期間、仕事を休める法的な制度です。子が1歳になるまでの期間を対象としており、条件によっては最長で2歳まで延長 できます。育児休業中は育児休業給付金が支給され、収入面でのサポートも行われます。

育児休業給付金は非課税であり、育休中の社会保険料も免除されるため、手取り額は通常の給与の約8割となります。育休取得を促進するため、2025年4月1日からは親の双方がそれぞれ14日以上育休を取得した場合、最大28日間まで現行の手取り額の8割相当から最大10割相当に引き上げられます。

夫婦で育休が取りやすく!育休制度はどう変わった?


パパと子ども
育休制度は整いつつあるものの、直近の育児休業取得率は男性が30.1%、女性が84.1%(2023年度時点)と、依然として大きな差があることがわかります。こうした状況で、男性の取得率向上のため、近年では男性が育休を取りやすいように制度が充実してきました。そこで育休制度がどのように変わったのか、まずは2022年10月に行われた3つの改正点から詳しくご紹介します。

【改正点1】産後パパ育休(出生時育児休業)の新設

産後パパ育休とは、父親が子の誕生直後(出産後8週間以内)に取得できる育児休業制度です。この制度は以前「パパ休暇」として知られていましたが、より利用しやすくするために2022年10月に「産後パパ育休」として改正されました。主な違いを以下に示します。
産後パパ育休
産後パパ育休では、 パパは育休を分割して取得できるほか、勤め先との取り決めによって一部の就業が可能なケースもあります。また、産後パパ育休中も出生時育児休業給付金として育児休業給付金が給付されます。

【改正点2】育休の分割取得が可能に

従来、育児休業は連続して取得するのが原則でした。しかし、制度の改正により、2回まで分割して取得でき、より柔軟に育休を取れるようになりました。これにより、育児や仕事の状況に合わせて、計画的に育児休業を利用することができます。
男性の場合、産後パパ育休も2回に分割して取得できますが、それとは別に通常の育児休業も2回まで分割して取得可能です。つまり、基本的には子どもが1歳になるまでに最大で4回の育休を分割して取ることができます。ただし、育児休業を取得する際は、それぞれの取得時前に申し出が必要である点に注意が必要です。

【改正点3】1歳以降の育休の拡充

子どもの出生時期によっては、保育園の定員状況により1歳や1歳6ヶ月時点で入園できないことがあります。この問題を解消するため、満1歳や1歳6ヶ月以降の育休が拡充されました。これにより、育休の開始日を調整し、夫婦で交代して取得できるなど、育休がより柔軟に取得可能になりました。

これとは別に「パパ・ママ育休プラス」制度も利用できるため、夫婦が交代で育休を取得することで、育休期間を最大で子どもが1歳2ヶ月まで延長できます。「パパ・ママ育休プラス」については、厚生労働省が作成している下記の図をご確認ください。
パパママ育休プラス
(資料:厚生労働省改正育児・介護休業法についてより引用)

2025年度から育休制度が拡充。新たな給付も

2025年4月1日からはさらに育休制度の支援内容が充実します。主な改正点を以下にまとめました。

●育児休業給付の給付率引上げ
子どもが生まれた後、男性は8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、それぞれ14日以上の育児休業を取得する場合、最大で28日間、手取り額の10割相当が給付されます。配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合には、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率が引き上げられます。

●育児時短就業給付の創設
新たに「育児時短就業給付」が創設されます。これは、2歳未満の子どもを育てるために短時間勤務をしている場合に支給される給付のことです。給付率は、短時間勤務中の賃金額の10%です。


ベビーシッターを探してみる

夫婦で育休を取得するメリットとは?


パパと抱っこ紐
夫婦で育休を取ると、夫婦が協力して育児をスタートできます。たとえば、母親が授乳、パートナーがオムツ替えを担当するなど役割分担ができ、母親の負担が軽減されます。こうした協力により、一人で育児を抱え込むことがなくなり、家族全体が穏やかに育児に向き合えます。共働きを続けるには家事や育児のシェアが必要で、早く生活リズムに慣れるためにも、夫婦での育休取得は望ましいことです。

夫婦で育休を取得する場合のおすすめパターン


子育て中の夫婦
夫婦で育休を取得する際、休む期間の組み合わせによって、育児や仕事のバランスが大きく変わります。ここでは、仕事への影響を最小限に抑えながら、夫婦で育休を取得する場合のおすすめパターンをご紹介します。

【夫婦での育休パターン1】産後パパ育休で産後すぐの妻をサポート

産後パパ育休を活用すれば、出産直後の妻をサポートできます。夫が4週間連続で育休を取得することで、妻と赤ちゃんのケアに専念できます。育休は分割取得も可能で、妻の出産のタイミングに合わせて1回目を取得し、仕事に一度復帰してから2回目を取るなど柔軟な使い方ができます。
産後パパ育休取得パターン
(資料:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内より引用)

【夫婦での育休パターン2】パパ・ママ育休プラスでパートナーの仕事復帰をサポート

パパ・ママ育休プラス制度を活用すれば、最大で子どもが1歳2ヶ月まで育休を延長できます。1歳は保育園入園の時期で、慌ただしくママの育休が終了してしまうことが多くなりがちです。この時期にパパが交代で育休を取ることで、ママの仕事復帰をサポートできます。この時期に育休を取ることで、短時間の慣らし保育や子どもの突然の体調不良にも柔軟に対応できるメリットがあります。

育休中にシッターを探しておく

夫婦で育休、デメリットは?知っておきたい注意点


家計を見直す夫婦
夫婦で育休を取ることの大きなメリットは、夫婦が育児を一緒に進められる点です。しかし、一時的な収入の減少やキャリアへの影響といったデメリットもあります。そこで、夫婦で育休を取る際の注意ポイントについて詳しく見ていきましょう。

【夫婦で育休の注意点1】6ヶ月以上の取得で給付金が減る

育休期間が6ヶ月を超えると、給付金の支給割合が67%から50%に減少し、家計に影響が出る可能性があります。夫婦で育休をずらして取得したり、減額を見越して家計の見直しをしたりして備えましょう。ただし、育休取得開始後通算180日までは、条件を満たせば給付率が最大28日間を上限に、現行の8割から最大10割に引き上げられます。これは、実質手取りの10割に相当します。

【夫婦で育休の注意点2】世帯収入が減少する

夫婦が同時に育休を取得すると、収入が育児休業給付金のみとなるため、生活費が家計に負担をかける可能性があります。特に、住宅ローンや保険料といった固定費がある場合、収入減少の影響はさらに大きくなります。そのため、夫婦がずらして育休を取得し、どちらかの収入が確保される状態を作ることで、家計への負担を軽減するのが良いでしょう。

【夫婦で育休の注意点3】キャリア形成に影響を与える可能性

育休取得だけを理由として、合理的な理由なく職務変更や賃金減額をすることは、育児・介護休業法で禁止されています。ただし、長期の育休を取得することで昇進試験のタイミングを逃すなど一部ではキャリアに影響が出ることもあり、夫婦で働き方のバランスを考えることも重要です。

育児休業給付金とは?支給額と計算方法


育休をいつどのくらいとるかを考えるとき、育児休業給付金がどれくらいもらえるかが気になるところです。育休中の生活を支えるお金なので、支給額や計算方法を理解しておくことが大切です。そこで、育児休業給付金の具体的な支給額や計算方法についてわかりやすく解説します。

育児休業給付金とは?どれくらい支給される?

育児休業給付金とは、育児休業中に支給される手当で、賃金日額に基づき計算されます。6ヶ月までは休業開始時賃金日額の67%、その後は50%が支給され、2024年時点での上限は67%で約31万5000円、50%で約23万5000円です。
育児休業給付金
育児休業給付金を受け取るには、過去2年間に「賃金支払い日が11日以上ある月が12ヶ月以上」が必要です。フルタイム勤務者には比較的満たしやすいですが、パートタイムや契約社員は注意が必要です。また、育休中の就業は「月10日以下または80時間以下」であることも条件です。

育児休業期間中は社会保険料が免除になる

育休中は社会保険料が免除されます。以前は取得期間が月末にかかっていることが条件でしたが、2022年の改正で育休が同一月内で14日以上あれば、月をまたがなくても免除が適用されるようになりました。賞与に対する保険料免除は連続1ヶ月以上の育休が必要なので注意しましょう。

2025年度からは要注意!受給期間延長手続きが厳格化

2025年度からは、育児休業給付金の受給期間延長手続きがより厳しくなります。これまでは、保育園などの利用申し込みが通らなかった際に市区町村が発行する「入所保留通知書」などで延長が認められていました。しかし、2025年4月以降は、保育所の利用申し込みが「速やかな職場復帰」を目的とするものであることを証明する必要が生じます。そのため、新たに「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」と「保育所の申込書の写し」の提出が求められます。

育休中にシッターを依頼してみる

育児休業給付金の試算


育休を取った場合、手取り額はどのようになるのでしょうか?個人の月の給与を30万円(額面)として試算してみました。

◼︎育児休業給付金の支給額(1ヶ月あたり)
給付金月額
育休中でも住民税は1年遅れで納税するため、給付金から住民税1万2741円を支払った後の金額が実質の手取り額となります。(※1:徴収方法は産休育休開始月によって異なる)
育児休業給付金は、育休に入る前の収入を基に計算されるため、収入が多い方が給付金の手取り額も多くなります
ただし、経済的なメリットだけで育休の取り方を決めるのは難しい場合もあります。ママの身体の回復具合や赤ちゃんの発達状況、保育園の空き状況など、さまざまな要因を考慮して決めることをおすすめします。
※1:育休中も住民税だけは支払いが発生?!賢い節税方法も紹介【FP監修】

夫婦で育休を取る場合の家計の備え方


お金
夫婦で育休を取ると、収入が減るのではないかと不安に感じる方も多いのではないでしょうか。通常の給与が育児休業給付金に置き換わるため、手取り額は確かに減りますが、事前にしっかりと準備しておけば安心です。夫婦で育休を取る際の収入減少に備える具体的な方法をわかりやすく解説します。

育休中、収入はどれくらい減少する?モデルケースを紹介

育休中は育児休業給付金が支給されますが、通常の収入よりも少なくなります。具体的にどれくらい減るのでしょうか?育休開始前の個人の給与が月30万円の場合を例に、以下に示してみました。
(※あくまで一例です。実際の金額は個人の収入や控除額によって異なります)

◼︎通常通り勤務した場合の手取り額
モデルケース

◼︎給付金と手取り額との比較
手取り額の比較
育休休業給付金は非課税であり、社会保険料が免除になる点も忘れてはなりません。上の表にある「育児休業給付金」と「通常の給与の手取り額」を比べると、給付金は通常給与の手取り額の実質約80%になることがおわかりいただけるでしょう。
このように、税金や社会保険料が軽減されることを考慮すると、育休中の収入が途絶えるわけではありません。これなら夫婦で育休を取っても大丈夫かなと思われるかもしれませんね。
2025年4月1日からは、夫婦がそれぞれ14日以上育休を取得した場合、最大28日を上限に給付額が現行の手取り額の8割相当から最大10割相当に引き上げられることも念頭に置いておきましょう。

育休取得前にできる対策と家計管理のポイント

育休を取得する前、できれば子どもが生まれる前の時間に余裕があるうちに、家計管理の見直しをおすすめします。育児休業給付金の初回給付までには時間がかかることがあり、その後も2ヶ月ごとの支給となるため、家計のリズムが乱れやすいからです。
また、育休中でも住民税の支払いが必要です。所得税と違い、住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、育休中でも納税義務が生じる(※1)のです。そのため、あらかじめまとまった貯金を準備しておくことが重要です。
なお、住民税は育児休業給付金には課税されないため、来年の住民税の支払いは減額又は免除されることも覚えておきましょう。
出産後は子どもにかかる費用も増えるため、現在夫婦で別々に家計管理をしている場合は、育児や生活費の分担について早めに話し合っておくのがよいでしょう。
※1:育休中も住民税だけは支払いが発生?!賢い節税方法も紹介【FP監修】

共働きを持続させるため、夫婦で育休制度を活用しよう


公立、私立の組み合わせによっては1000万円を超える教育資金を準備するためには、共働きを維持できるかが重要です。しかし、育児が始まると、仕事と育児の両立に悩む方も多くなります。そこで、育休制度を最大限に活用することが大切になってきます。制度改正により、産後パパ育休やパパ・ママ育休プラス、育休の分割取得が可能となり、育児と仕事を両立しやすい環境が整ってきたので、賢く制度を活用しましょう。
長期的に見て、夫婦で育休を取ることはお互いのキャリアを維持し、家族の成長にもつながります。

夫婦だけで難しいときはベビーシッターの手も借りよう


ベビーシッター
育休中や育休復帰後、夫婦だけで育児を続けるのは想像以上に大変です。保育園に預けられるのが理想ですが、お迎えの時間に間に合わなかったり、病児保育の予約が取れなかったりと、予期せぬ状況で仕事に支障が出ることもあります。
そんなとき、頼りになるのがベビーシッターです。急な仕事やお子様の体調不良など、予測できない緊急事態にも柔軟に対応してくれるため、安心感があります。

また、職場復帰時や育休後の就労時間内には企業型ベビーシッター割引券(※2)を利用することで、対象のお子様1人に対し1回当たり4400円(2200円×2枚)の割引券が使用でき、費用面での負担を軽減できます。家族のセーフティーネットとして、ベビーシッターの利用も一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
※2:企業型ベビーシッター割引券とは|キッズライン

「キッズライン」ならスマホでシッターを探せる

ベビーシッター・家事代行サービスを運営する「キッズライン」なら、パソコンやお手元のスマホでベビーシッターを見つけることが可能です。
「キッズライン」は、保育士などの資格を保有するシッターが多く在籍しているのが特徴です。育休中の夫婦にとって、「育児の悩みを共有できる相手がほしい」「夫婦で時間を分担して休みたい」といった場面も少なくありません。また、育休明けでも子育てをサポートしてくれる人の存在は心強いものです。そんなときには専門知識を持つシッターに頼ってみてください。
初めてシッターに依頼する際は、オンラインでの顔合わせや対面での事前面談を活用しましょう。まずは気になるシッターに連絡を取り、お互いの相性を確認することが大切です。

ベビーシッターを依頼してみる

■監修:ファイナンシャルプランナー 坂口 恭子
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。webライターとしてマネー記事や子育てに関する記事を執筆するかたわら、ブログやSNSを通じて難しいお金の話をできるだけわかりやすく発信しています。

▼あわせて読みたい
慣らし保育は育休中でもOK?育児休業給付金はもらえる?【FP監修】
2歳児が物を投げるのはなぜ?子どもの心理と対処法【保育士監修】
「上の子可愛くない症候群」かも…と思った時の向き合い方とNGワード【保育士監修】

▼記事一覧に戻る
KIDSLINE編集記事一覧
▼TOPページに戻る
KIDSLINE TOPページ


フルタイムでサポートを頼む