育休中のママパパは子どもとの生活は楽しいけれど、収入が一時的に減ることで経済的な不安もあるのではないでしょうか。育休中に収入が減った場合は、年収にもよりますがパートナーの扶養に入れる可能性があります。どのような場合に該当するのか、FPが解説します。

育休中は税法上どんな立場?扶養に入れる?


ベビーカー
育休中は収入が減るため、パートナーの扶養に入ることを考えている方もいるでしょう。そもそも育休中は、税法上どのような立場なのでしょうか。詳しく説明していきます。

税制上の「扶養」とは


「扶養」とは納税者がその配偶者や子ども、親など、収入が無かったり少なかったりする家族を経済的に支えることを言います。
税制上の扶養とは、家族を扶養している納税者本人の所得税・住民税が軽減されるという制度です。社会保険上の扶養と混同されがちですが、社会保険は健康保険と厚生年金保険のことであり、税制上の扶養とは異なるものなので、注意しましょう。

出産手当金、育児休業給付金には課税されない


出産育児一時金は、出産費用として受け取れる一定額の給付のことです(2023年2月時点で子ども1人につき42万円)。この出産育児一時金は非課税となっています。
出産手当金は、産前産後休暇を取得した人で、健康保険の被保険者だけが支給対象の給付です。出産した本人が勤務先の健康保険に加入している場合に支給されます。こちらも非課税です。
そして、育休を取得している間に給付されるのが、育児休業給付金です。こちらは育休を取得した本人の所得が減った分を補ってくれる給付です。こちらも非課税です。
つまり出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金はいずれも非課税で、所得税や住民税などの税金はかかりません。額面通りの金額が支給され、後で税金を収める必要はありません。

育休中は扶養控除の対象となることがある


会社員の場合、育休中は労働の対価としての給与が支給されないことが多いため、給与所得は大幅に減るか一時的に無収入になります。
産休中は出産手当金を、育休中は育児休業給付金を受け取ることができますが、こちらは非課税です。まとまった金額を受け取っても、本人の所得として換算されないということになるので、育休中は扶養控除の対象となることがあります。

育休中にパートナーの扶養に入るメリット


育休中にパートナーの扶養に入るメリットとしては、節税ができることがあげられます。節税と聞いて何がどのようになるのか、ピンとこない方もいるでしょう。せっかくの節税のチャンスなので、制度の説明をしながらメリットを詳しく説明していきます。

配偶者控除とは


「納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを配偶者控除といいます。」(国税庁HPより引用)
この「控除」について簡単に説明しておくと「控除」=「差し引く」という意味です。「配偶者控除」は所得税を計算する際に、配偶者が配偶者控除の要件を満たしている際に納税者の所得税から一定の金額を差し引くことができます。それを所得控除といいます。差し引かれた金額分には税金がかかりません。

パートナーの扶養に入るメリット


育休中に収入が減った場合、ママパパが共に働いていても条件を満たせばパートナーの扶養に入れる可能性があります。育休中は収入が減ることが多いため、年収によってはパートナー側で今まで使えなかった「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を申請できる可能性が高くなるからです。これらの控除を受けられると、パートナーの税金を減らしたり、社会保険料の出費を抑えたりすることができます。家計全体で考えると、扶養に入ることで手元に残るお金が増えることになります。次にあげる条件を参考にして、扶養に入れるかどうかをしっかりと確認してください。

育休中に扶養に入れる条件


税金
それでは、どんな人が配偶者控除を受けられるのでしょうか? 自分は扶養に入れるのか気になるママパパのために、育休中に扶養に入れる条件について詳しく見ていきましょう。

【条件1】民法上の配偶者であり、納税者と生計を同一にしている
給料をもらっている人との同居が絶対条件ではなく、別居していても給料をもらっている人が生活費を出している配偶者も対象です。内縁関係の人は該当しません。

【条件2】配偶者の給与収入が103万円以下
配偶者が働いている場合は、年間の給与収入が103万円以下であれば「配偶者控除」に当てはまります。給与収入が103万円超〜201万円以下の場合は「配偶者特別控除」が適用されます。

【条件3】青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていない
青色申告者の事業専従者とは、青色申告をする人からもらう給料のことです。青色申告者は自営業を営んでいる人などが該当します。納税者本人が事業をしている場合で、その事業から配偶者が給料をもらっている場合は該当しません。

【条件4】納税者本人の合計所得が1,000万円以下である
これは平成30年分以降から加わった条件です。これまでは扶養する本人の収入に関しての条件はなかったのですが、年収が高い世帯は配偶者控除を受けることが出来なくなりました。そのため扶養する人の収入も必ず確認しておきましょう。納税者本人の収入が高い世帯は注意が必要です。
なお、合計所得が1000万円以下ということは所得控除や基礎控除などを差し引いた額が1000万円なので、給与収入のみの場合はだいたい年収1,195万円以下ということになります。
参考:配偶者控除|国税庁 (nta.go.jp)


所得税の扶養条件と社会保険の扶養は別の制度


「扶養に入る」というと、扶養に入るか、入らないかの2つのパターンしかないと思われがちです。しかし、扶養には「所得税上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあり、これは別の制度になります。何がどのように違うのか解説していきます。

所得税の扶養条件とは


所得税では、納税者本人の所得税の計算において、配偶者控除が適用されている状態を「扶養されている」といいます。配偶者控除以外にも、扶養している親族の人数に応じて所得の控除を受けることができます。

社会保険の扶養条件とは


社会保険では、加入者本人が入っている健康保険を家族として利用できる状態を、「扶養されている」といいます。

【社会保険の扶養対象】

〇子どもや高齢者
〇収入が年間130万円未満の配偶者
 (※被扶養者が60歳以上の場合や障害がある場合は180万円未満まで引き上げ)
※被扶養者=扶養されている者


社会保険の被扶養者は自身で社会保険料を払う必要がなく、病気で入院など病院にかかった際には、加入者の健康保険の適用を受けられることになります。
扶養控除を受けられる=社会保険も免除というわけではなく、別の制度として社会保険が免除されるということを理解しておきましょう。

育休中に扶養に入る手続きの仕方とスケジュール


スケジュール
育休中にパートナーの扶養に入る=配偶者控除を受けるためにはいつ手続きをするのがよいのでしょうか。その手続きの仕方とスケジュールを説明していきます。

扶養に入る手続きのための必要書類


配偶者控除等の控除を受ける納税者が、勤務先に以下の書類を提出します。

〇給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
〇給与所得者の基礎控除申告書(兼)
 給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)
 所得金額調整控除申告書
〇給与所得者の保険料控除申告書(令和2年分から)


書類には、配偶者(=育休中の従業員)のマイナンバーや年間の合計所得金額の見積額等を記載する必要があります。国税庁のHPに記入見本がありますのでこちらを参考に、記入漏れの無いように申請する準備をしておきましょう。

申請のスケジュール


育休中の人が配偶者控除の適用対象となった場合は、年末調整時に申請をします。
年末になると会社から年末調整の案内をもらうので、控除を受ける人の申請で、配偶者控除または配偶者特別控除の欄に、配偶者の情報を書いて会社に提出します。配偶者の会社の方には、「育休中のみパートナーの扶養に入る」と伝えておくとスムーズかもしれません。

年末調整に間に合わなければ、確定申告で還付可能


実は該当する年の年末調整までに手続きが間に合わなくても、扶養控除は育休から遡って5年以内であれば、確定申告で申請することも可能です。「扶養控除」を利用することで納める税金額を引き下げることができるので、該当する方はしっかりと申請してください。

確定申告をする場合


会社で年末調整を行う場合、扶養控除対象者を書類に記入して提出すれば、所得控除を受けられます。しかし確定申告で扶養控除を利用する場合は、自身での手続きが必要となります。
手続きとしては確定申告書に扶養している人(納税者=パートナー)の収入、養っている家族の氏名、生年月日などの情報を記載して税務署に提出する必要があります。
詳しくは扶養控除|国税庁 (nta.go.jp)で確認しましょう。

確定申告はオンラインでも可


確定申告書は手書きでも、PC・スマホを使ってオンラインでも作成できます。オンラインで作成する場合は、国税庁HPの「確定申告書作成コーナー」にアクセスし、扶養控除については「所得控除の入力」の画面で扶養する家族についての情報を入力します。その他は画面上に表示される質問に答えていくと完成しますので、初めての人でもさほど難しくはないでしょう。

確定申告の期限


確定申告を行う日程は、毎年2月16日~ 3月15日という場合が多くなっています。感染症の影響などで延長されたこともありますが、基本的にはこの時期になりますので、年末調整で扶養控除を申請していなかった場合は、確定申告の期限日までに申請するようにしましょう。

育休中は扶養に入る手続きを忘れずに


家族
育休中は給与所得が減ってしまうものの、さまざまな制度を活用すれば、経済的な負担を軽減することができます。一時的に扶養に入れる場合は、確定申告をすると納めた税金の一部が戻ってきます。この手続きは自分たちで行わなければ、還付されることはないため、税制面に賢くなって自主的に進めることが大事です。
また、育休を取得するのはママだけではありません。パパが育休を取得する場合は一時的にママの扶養に入ることも忘れないようにしましょう。

育休復帰後の生活は、保育園の送り迎えなどで慌ただしくなります。必要な手続きは育休中にしておくのがオススメです。また、育休中は扶養に入る手続きだけでなく、育休明けの育児を助けてくれるサポーターを探すことも大切です。相性の良いベビーシッターを探すことも併せてやっておきたいですね。

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初めてお子様を預ける前には、必ず顔合わせか事前面談を行うルールとなっているため、まずは育休中に、シッターとお子様の相性を確かめるために一度お試しで依頼してみると安心です。
育休明けに仕事と育児をうまく両立させていくために、民間のサービスを含めた様々な対策を取っておきましょう。

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■監修:ファイナンシャルプランナー 小松香名美
和歌山大学 経済学部卒。旅行会社勤務の後、出産のため退職。2018年に保育士資格を取得し、保育園勤務を経験。2021年にファイナンシャル・プランニング技能検定2級を取得。ファイナンシャルプランナーとして独立し、マネー記事の監修などを行っている。



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