育休中のママパパの中には、当初は復職するつもりだったけれど、いざ育休に入ると、状況が変わって「育休明けに退職しようかな」と考えることもあるのではないでしょうか。そもそも育休明けに退職することは可能?退職した場合はどんな影響がある?といった疑問や不安について、ファイナンシャルプランナーが解説します。

育休明けに退職するのは、法的にアリ?

育休明け悩む
育休明けの退職を考える際に気になるのが、「育児休業給付金をもらっているのに退職したら法的にNGなのでは」という疑問です。まず、結論から言うと 育休明けに退職することは、法的には問題ありません。

育休明けに復帰することなく退職することは可能


ただし、育児休業は「復帰を前提にした制度」なので、職場への影響やモラルを考えて、伝え方や時期に配慮することが大切です。育休明けの退職は、家庭の事情等やむを得ない場合もあるかと思いますが、多くの場合で歓迎されることはありません。退職を伝える際は復帰を待ち、産休育休中にフォローをしてくれた上司や同僚に感謝の気持ちを持って、誠意ある態度で伝えて下さい。

育児休業給付金は返金しないといけない?


復帰するつもりで育休を取得しているのなら、育休後に退職しても育児休業給付金はもらえます。そのため、退職または転職が決まっても、育児休業給付金は基本的には返金不要です。

育休明けに退職する際のメリット・デメリット


育休明けに退職したいと思っている方は、そのメリットとデメリットを知って決断するようにしましょう。メリットとデメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。

【育休明け退職のメリット】


・子育てに専念できる
 母親として子ども中心の時間が確保できます。

・時間に余裕ができる
 家庭と仕事の時間配分に悩むことがなく、時間の確保がしやすくなります。

・失業保険を給付できる
 退職前の過去2年間で雇用保険に1年以上加入していて、再就職する意思があり求職活動を行える人は失業保険を受給できます。失業保険を受給できると、金銭的な不安を抱えずに求職活動ができます。


【育休明け退職のデメリット】


・世帯収入が減る
夫婦合算の収入で生活していた場合、生活レベルが下がってしまうこともあります。
育休明けに退職したら「失業保険」を申請できる


・育児休業給付金の返還が求められることも
育児休業給付金の財源は、雇用保険料と国庫です。これは復帰後も働き続けるための「雇用継続給付」のひとつなので、最初から退職予定だった方が故意に受給した場合は、返金を求められるケースもあります。
育休明けに退職する際の「育児休業給付金」の扱い


・保育園は退園になる可能性がある
認可保育園に通わせている子どもがいる親が仕事をしていない状況になっても、すぐには退園になりません。ただし、子どもが保育園に在園できる期間が決まっているので、それまでに仕事を探さなければ、退園になることがあります。
育休明けに退職する場合「保育園」は退園になることも


・一度退職した後の就職活動が大変
赤ちゃんは体調を崩しやすいため、出産後の転職活動はスムーズに進みません。緊急時に子どもを預かってくれる助けがないとスケジュール通りに就職活動が進まないこともあります。
育休明けの退職は可能だが、再就職にはハードルがある


さらに詳しく見ていきましょう。

育休明けに退職したら「失業保険」を申請できる


育休明けに退職したら「失業保険」はもらえるのでしょうか。
育休明けの退職でも、条件を満たせば失業保険を受給できます。失業手当があると余裕を持って焦らずに次の仕事を探すことができるのではないでしょうか。失業保険をもらえる条件について詳しくみていきましょう。

【失業保険をもらえる条件】
・すぐにでも働ける状態で、就職の意志があること
・退職した日以前の2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること


産休・育休で休業を取っていた場合は給付を延長できる


病気や怪我、出産、育児等のために継続して30日以上賃金の支払いを受けることができない場合には、失業保険の給付を最長4年間延長することが可能です。「今すぐ働くのは無理」という方は、ハローワークに足を運んで必ず延長申請をしておきましょう。

育休明けに退職する際の「育児休業給付金」の扱い


お金
育休明けに退職する場合、「育児休業給付金」はどうなるのでしょうか?返還しなければいけないパターンとそうでないパターンについてみていきましょう。シチュエーションによって育児休業給付金をもらえるかどうかが決まります。「知らなかった」と損をすることの無いように、しっかりと理解していきましょう。

育休中に退職する場合

育休の途中で退職を申し出ると、お金の面では損をすることになります。
退職を申し出た時点で「育児休業給付金」の対象から外れ、支給が打ち切りになります。なぜなら、育休中にもらえる「育児休業給付金」は育児のために一時的に休業している親が対象となる制度だからです。社会保険料の免除が受けられなくなりますので、社会保険料の支払いも発生していきます。なお、支給済みの育休手当は返還の必要はありません。


育休明けと同時に退職する場合

育休明けと同時に退職を申し出ると、満額で手当がもらえるため、お金の面での損はありません。また、育休を全て消化して、手続き上復帰という形をとれば有給休暇も取得することができます。
しかし、この方法は会社や同僚に迷惑をかけます。復帰する予定で人事や仕事を割り振りしていたのに急に退職を申し出られると、直前に予定が狂ってしまうからです。会社では代わりの人を急いで探したり、対応に追われたりすることでしょう。法的には問題ありませんが、辞め方によっては信用がなくなったり、会社に損害を与えてしまうかもしれないことを理解しておきましょう。


育休復帰した後に退職する場合

育休復帰した後に退職する場合も、お金の面で損をすることはありません。育休が明けて仕事復帰をし、少ししてから退職を申し出るという方は多いようです。
とはいえ、復職して1ヶ月未満でいきなり退職するのは歓迎されることではありません。会社に迷惑をかけてしまうだけではなく、周囲の反感も買ってしまいます。


復帰後すぐは育児と仕事の両立に悩むことも多々あることでしょう。経験することで少しずつ要領を得て慣れていくことも多いです。それでもなお厳しい場合は、部署替えなどで負担を軽くしてもらいながら、できたら半年ほどは様子を見てみるのはいかがでしょうか。

育休明けに退職する場合「保育園」は退園になることも

「復職のために申し込んだ保育園の入園許可が出ている」状態で退職を決めた場合には、保育園の入園が取り消される場合があるので注意が必要です。なかには厳しい保活を経てやっと入園が決まった方もいるでしょう。
保育園の目的をふまえつつ、退職後も利用できるケースとできないケースを解説します。

退職後、当分は専業主婦の予定の場合

保育園は辞退することになります。保育園は「就労などの理由で家庭で保育のできない保護者に代わって子どもを保育する施設」とされているので、家庭での保育が可能な場合は原則として利用できません。


転職で次の仕事が決まっている場合

予定通り保育園に入園できます。「支給認定変更認定申請書兼申請内容変更届」「勤務証明書」を提出し、勤務先が変更になる手続きをします。自治体によって必要書類や手続きの手順は異なりますので直接確認して、早めに準備しましょう。就労時間が大きく変わる場合は、保育園に預けられる時間が変わることもあります。


求職で間を空けてもよい期間はどれくらい?


働く意志があって求職活動をしている場合、求職期間は「保育を必要とする期間」ですのですぐ保育園を退園することにはなりません。しかし、一定の期間を過ぎると退園になります。その猶予期間は自治体によって異なりますが大体1〜3ヶ月 としているところが多いようです。待機児童が多い自治体はそれよりも短い場合があるので、猶予期間がどのくらいあるか、自治体に確認してから求職活動をするようにしましょう。

育休明けの退職は可能だが、再就職にはハードルがある


再就職
育休明けに退職して、再就職しようとしている方には耳の痛い話かもしれませんが、独身の頃の就職活動とは異なり、小さな子どもを抱えた状態での再就職は簡単ではありません。どのようなことが起こり得るか下記を参考にして、よりよい選択をしていきましょう。

【ハードル1】時短勤務や有給休暇がすぐに使えない


子どもが3歳になるまでは「時短勤務制度」を利用したい方は多いでしょう。しかし時短勤務には、入社後1年未満の労働者を対象から除外しているところが多いです。また、有給休暇も、勤続6ヶ月以上にならないと付与されない企業が大半なので、注意しましょう。子どもが小さなうちは急に病気になることも多いため、応募先や転職先の制度をよく確認する必要があります。

【ハードル2】保育園が先に決まらないと仕事が決定しない


転職活動をするにも子どもの預け先が決まらないことには選考に進めません。最近はオンライン面接などを取り入れている企業も多々ありますが、「保育園がまだ決まっていないのでいつから働けるか未定」の状態では、企業側も採用を見送らざるを得ません。

【ハードル3】子育てにはお金がかかる


「子どもを1人育てるためには、成人までに1,000万円以上かかる」(※参考)と言われているように子育てにはお金がかかります。次の就職先が決まらないままだと、世帯収入が減少した状態がずっと続くことになり、将来の生活設計に影響してきます。お金の不安から家庭内がギスギスしてしまうかもしれません。

【※参考】
育児・教育費用負担の重さ: 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)より
<教育費用負担>
幼稚園から高等学校まで公立で、大学のみ国立に通った場合には、約1,147万円
小学校だけ公立で、あとはすべて私立とすると、約1,817万円
小学校だけ公立で、あとはすべて私立とし、大学生の時に下宿・間借り等自宅を離れて生活をした場合には、約2,004万円


育休明けはすぐ退職せず、一度職場に戻ってみる選択も


育休明けに職場復帰しないまま退職することも可能ですが、仕事を手放すと再就職は大変です。会社には「育児短時間勤務制度」を用意しておく義務があるので、まずは「時短勤務」を申請して、一度職場に戻ってみる選択肢も考えてみましょう。
それでも、どうしてもしんどいと感じたら、一度退職してもよいし、リモートワークができる会社への転職も視野に入れてみるのがオススメです。最近は、親が仕事で子どもの面倒を見られない際に利用したベビーシッター代を補助してくれる「内閣府ベビーシッター割引券」を導入している会社も増えています。その他にもさまざまな助成制度があるので、一度調べてみてはいかがでしょうか?

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ベビーシッター・家事代行サービスのマッチングプラットフォームであるキッズラインでは、シッターとして、保育士や看護師など保育の専門資格や研修を完了した家庭保育のプロフェッショナルが多数在籍しています。
育休復帰後は責任をもって仕事をする必要があるので、業務の状況によっては保育園のお迎えに間に合わない事態が発生します。そんなとき、頼りになるベビーシッターを確保しておけば、お迎えや自宅でのお世話を頼むことができます。
初めてのシッターに保育を依頼する際には、オンラインでの顔合わせまたは対面での事前面談が必要なので、まずはよさそうな人に連絡を取ってみましょう。お迎えに間に合わないかもしれないなど子育ての不安を相談してみて、サポートしてもらえる人を探すのがオススメです。

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■監修:ファイナンシャルプランナー 小松香名美
和歌山大学 経済学部卒。旅行会社勤務の後、出産のため退職。2018年に保育士資格を取得し、保育園勤務を経験。2021年にファイナンシャル・プランニング技能検定2級を取得。ファイナンシャルプランナーとして独立し、マネー記事の監修などを行っている。

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