「保育園を退職したいけれど、言いづらい」と感じていませんか?この記事では、保育士が退職を考える理由や、園長・同僚への上手な伝え方、退職する適切なタイミングなどについて解説します。

記事のポイント

⚫︎保育士の退職理由は「人間関係」が多い
⚫︎円満退職につながる退職理由の伝え方とは
⚫︎保育士からベビーシッターへ転身する道も


保育士が退職を考える理由


頭を変える保育士
過去に保育士として働いていた人は、どのような理由で退職を選んだのでしょうか。厚生労働省が2020年に発表した「保育士の現状と主な取組」によると、保育士としての勤務経験がある人の退職理由で最も多かったのは「職場の人間関係」(33.5%)で、「給料が安い」(29.2%)、「仕事量が多い」(27.7%)が続いています。

⚫︎職場の人間関係

園内では人間関係が固定化しやすく、価値観が合わなかったり、自分の意見が言えなかったりすることで、ストレスが溜まりやすい傾向にあるようです。

⚫︎給与が安い

「保育士の現状と主な取組」では、保育士の平均年収は約364万円で、全職種の平均約500万円と比べて約140万円低くなっています。特に家賃や物価が高い都市部では、保育士が経済的な不安を抱えやすい実情があります。

⚫︎仕事量が多い

保育士には保育以外の業務も多く、勤務時間内に仕事が終わらないという声も聞かれます。こうした労働環境から、保育士資格を持ちながらも保育士として働かない「潜在保育士」が増加傾向にあります。

厚生労働省の職業紹介統計によれば、2025年1月時点における保育士の有効求人倍率は3.78倍と、全職種平均の1.34倍を大きく上回っています​。保育士の需要は非常に高いものの、応募者が圧倒的に少なく、人が集まらない状態に陥っていることを示しています。結果として、現場で働く保育士の負担は一向に軽くならず、さらなる離職や「潜在保育士」の増加につながっていると考えられます。

参考:厚生労働省「保育士の現状と主な取組​​」(令和2年9月17日)
参考:こども家庭庁 「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」

保育園を退職する適切なタイミング


真剣な表情な保育士
保育士が退職を考える際には、できるだけ職場に負担をかけず、スムーズに進めることが重要です。ここでは、退職の適切なタイミングと注意点を解説します。

【タイミング1】年度末

年度末は引き継ぎがしやすく、他の時期と比べて園や保護者への負担が少なくて済みます。年度途中の退職は人手不足を招き、職場の人たちの負担が増す可能性があります。どうしても年度途中で退職する場合は、引き継ぎを計画的に進めるように配慮しましょう。

【タイミング2】運動会や発表会前などの繁忙期以外の時期

運動会や発表会前の繁忙期は、職場の負担が大きくなるため、退職を避けるのが無難です。業務の引き継ぎが不十分になりやすく、後任者の確保が難しくなるかもしれません。できるだけ行事の後に申し出るのが望ましいでしょう。

退職する旨を伝えるのに最適な時期


文章を書く保育士
退職の意向を伝えるタイミングは、職場への影響をできる限り抑えるためにも極めて重要です。適切な時期を見極め、スムーズな退職を目指しましょう。

園の就業規則を確認する

まずは園の就業規則を確認し、退職の申し出期限を把握しましょう。一般的には「◯ヶ月前までに申し出ること」と規定されていますが、園ごとに異なるため事前に確認が必要です。また、退職届の提出方法や退職後の手続きについても把握しておくと安心です。規則が手元にない場合は、園長や総務に相談しましょう。

退職を申し出るタイミングの目安

労働基準法によると2週間前に申し出れば退職できることになっています。しかし、保育士の退職の申し出は、一般的に3ヶ月前が理想的です。ただし、園の規模によって事情が異なる場合もあります。たとえば、小規模な園では4〜6ヶ月前に伝えておくとより安心です。一方、大規模な園では2〜3ヶ月前でも比較的対応しやすい傾向があります。特に年度末(3月)に退職したい場合は、求人募集や後任者の確保に時間がかかることを考慮して、12月〜1月のうちに退職の意向を伝えるのが望ましいでしょう。

サポーターとして働く

園長や上司への退職の伝え方


緊張する女性
保育士が退職を決意した際に最も悩むのが、園長や上司への伝え方です。言いづらさを感じる人が多いですが、伝え方次第で円満退職が実現できます。ここでは、退職理由の伝え方、園側への配慮、避けるべきNG行動について詳しく解説します。

退職理由の好ましい伝え方

退職理由を伝える際は、前向きな表現を意識しましょう。「新しい環境でスキルアップを目指したい」「異なる保育方針のもとで学びたい」「家庭の事情でやむを得ず決断した」など、園に対する不満ではなく、自分自身の成長や事情を理由に挙げることで、退職が受け入れられやすくなります。ネガティブな理由であっても、できる限りポジティブに言い換えることで、円滑な退職につながります。

園側への配慮を忘れない

退職を決めたら、自分だけでなく園や後任者のことを考え、スムーズに業務を引き継ぐことが重要です。自分が担当している業務の流れを整理し、後任者が困らないように情報をまとめておくと、職場への負担を最小限に抑えられます。特に、子どもたちの特徴や保護者対応のポイント、行事の準備状況なども記録し、必要な情報を伝えることで、退職後もスムーズに業務が回るよう配慮しましょう。また、退職を申し出た後も、最後まで誠実に業務に取り組む姿勢を見せることで、園側の印象も良くなり、円満な退職がしやすくなります。

退職理由を聞かれたとき、どう答えるか


保護者と保育士
園長や同僚から「どうして辞めるの?」と聞かれたとき、どう答えればいいのか迷う方は多いでしょう。ここでは、退職理由の伝え方に関するよくある悩みと、その答え方のヒントを紹介します。

退職理由は、正直に伝えるべき?

信頼できる上司や同僚には、ある程度率直に話しても問題ないこともあります。ただし、職場への不満やトラブルの詳細など、相手が気分を害するような言い方は避けたほうが賢明です。「新しい環境で挑戦したい」「自分のスキルを広げたい」など、前向きな表現に言い換えることで、相手にも受け止められやすくなります。正直さと配慮のバランスを意識することが、円滑なやり取りにつながります。

ネガティブな退職理由は、表現を変える

たとえば、「人間関係に悩んでいた」という理由であっても、そのまま伝えるのではなく、「新しい職場で自分の力を試してみたい」など、前向きな価値観や目標に置き換えることを意識しましょう。給与に不満がある場合も、「もっと待遇のよい職場でスキルを活かしたい」などと言い換えることで、相手に悪い印象を与えず、落ち着いた雰囲気で話を進めることができます。

円満退職をするために気をつけることは?

退職後も良好な関係を保ちたい場合は、感謝の気持ちをきちんと伝えることが何より大切です。「これまでたくさんの経験をさせてもらって感謝しています」「この園で学んだことを次の職場でも活かしたい」といった言葉を添えることで、相手に誠意が伝わりやすくなります。保育業界は狭いため、転職先で元同僚や園長と再会する可能性もあります。円満な退職のためにも、最後まで丁寧な対応を心がけましょう。

保護者や子どもに聞かれたときは、どう答える?

特に慣れ親しんだ保育士が退職する場合、保護者も子どもも少なからず動揺します。小さな子どもは、「先生がいなくなるのは、自分を嫌いになったからかもしれない」と感じてしまうこともあります。そのため、子どもには「みんなのことが大好きだけど、次は別の場所でお友だちと遊ぶお仕事をするんだよ」など、肯定的で安心できる言葉を選んで伝えるとよいでしょう。

保護者に対しては、「新しい環境で学びを深めたいと思いまして」など、前向きな理由を簡潔に伝えるのがよいでしょう。また、「これまでたくさん支えていただき、感謝しています」など一言添えることで、関係を円満に保つことができます。退職の理由よりも、「今までありがとう」の気持ちを丁寧に伝える姿勢が、保護者や子どもにとっても心の整理につながります。

退職したいと言いづらい際の心構え


スマホを操作する女性
「退職したいけれど、なかなか言い出せない」と感じるのは、とても自然なことです。「迷惑をかけるのでは」「引き止められたらどうしよう」「子どもたちになんて言おう」と不安になり、心の中で葛藤を抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、退職は労働者の正当な権利であり、自分の働き方を見直すための選択です。「自分が辞めたらすべてが回らなくなる」と気負いすぎる必要はありません。退職を切り出しづらい場合の考え方と心構えについて解説します。

「罪悪感」を抱いてしまうときは

保育士は子どもや保護者、同僚への思いやりが強い職業である分、「辞めることは無責任ではないか」と自分を責めてしまいがちです。とくに、子どもとの関係が深くなっていると、「見捨てることになるのでは」「寂しい思いをさせてしまうのでは」といった気持ちが芽生え、罪悪感を抱くこともあります。
また、保護者への伝え方にも悩む人は少なくありません。「何かあったのか」「子どもに原因があるのか」と誤解されるのではないかと不安になることもあるでしょう。しかし、働き方を変えることは逃げではなく、自分の人生をよりよくするための前向きな選択です。自分の感情を受け止め、整理する時間を持つことが大切です。

退職を切り出すための準備

退職の話を切り出すとき、緊張するのは当たり前です。事前に伝えたいことをメモにまとめておいたり、信頼できる人に相談したりすることで、心の負担を軽減できます。また、「〇月末で退職したいと考えています。引き継ぎもきちんと行います」といった具体的な伝え方をすることで、冷静に話しやすくなります。

サポーターとして働く

保育士の退職後の手続きと注意点


自治体で会話をする女性
退職の意向を伝えて受理された後は、保険や年金、失業給付などの各種手続きを行います。準備を早めに進めることで、安心して新たなスタートを切ることができます。
退職後は健康保険と年金の手続きが必要です。すぐに再就職しない場合は、国民健康保険や国民年金への加入、または扶養に入る手続きを、住民票のある市区町村役場で行います。
雇用保険に加入していた場合には、一定の条件を満たせば失業給付を受け取れる可能性があります。退職後に園から離職票を受け取り、ハローワークで手続きを進めましょう。必要書類や申請の流れは、市区町村やハローワークの公式サイトでも確認できるため、早めのチェックをおすすめします。

次のキャリアを考える!保育士の転職先


保育士
保育園を退職しても、子どもと関わる仕事を続けたいと考える人は多く、経験を活かせる職場はさまざまあります。環境を変えて保育の仕事を続ける選択肢や、異業種に挑戦する道へ進むのもよいでしょう。保育士の転職先のバリエーションを紹介します。

他の保育園に転職する

現在の職場に不満がある場合は、保育士の仕事自体を辞めるのではなく、より良い環境を求めて転職する方法があります。新しい園では人間関係や労働環境が改善される可能性があり、昇給や待遇の向上が期待できるかもしれません。たとえば、小規模保育園でじっくりと子どもに向き合ったり、事業所内保育施設で企業で働く保護者を支える保育に携わるといったキャリアが描けます。他にも、病児保育や夜間保育園など、専門性を活かせる職場もあります。転職の際には、転職サイトやエージェントを活用し、事前に口コミや評判を確認することで、自分に合った職場を選びやすくなります。面接時に労働環境について細かく質問し、入職後に後悔しないよう準備することが大切です。

児童福祉施設・幼児教育関連の仕事に就く

保育園以外でも、子どもと関わる仕事は多くあります。学童保育では放課後の子どもたちを支援し、児童養護施設では親と暮らせない子どもたちの生活をサポートします。企業内保育や病院内保育は、従業員の子どもを預かる施設で、比較的安定した勤務時間で働けることが特徴です。インターナショナルスクールでは英語教育に特化した環境で保育を行うため、新たなスキルを身につける機会にもなります。こうした職場では、保育士としての経験を活かしながら、新たな知識や専門性を身につけることができます。

他の職種に転職する

保育の現場を離れたとしても、保育士資格や実務経験を活かせる職種はたくさんあります。たとえば、保育士向けの研修を行う教育系企業の講師や、保育園運営会社・自治体での事務職などが挙げられます。そのほかにも、教材の企画・開発、児童館スタッフ、子育て支援のカウンセラーなど、子どもに関する知識やコミュニケーションスキルが活かせる仕事は多岐にわたります。これらの職場は、体力的な負担が少なく、長く働きやすい環境が整っていることも魅力です。保育士としての経験を土台に、新たな分野にチャレンジしてみるのも、キャリアの広がりにつながります。

参考:保育士資格が活かせる仕事25選!保育園以外のおすすめな転職先とキャリアパス

保育士からベビーシッターに転身する道も


ベビーシッター
保育園の仕事は集団保育ですが、家庭で個別に保育を提供するのも選択肢のひとつです。たとえばベビーシッターは、保育園とは異なり、基本的に一対一で子どもと向き合えるため、それぞれの成長や個性にじっくり寄り添える点が特徴です。集団保育よりも個別のケアを重視したい方には、特に向いている働き方です。

ベビーシッターの仕事内容

ベビーシッターは家庭で子どもを預かり、食事やお昼寝のサポート、送迎、家庭のルールに沿った育児支援などを行います。夜間や短時間の依頼もあり、状況に応じた柔軟な対応が求められます。保育園と異なり、一対一で子どもと関われるため、それぞれの成長や個性に寄り添った保育ができる点が特徴です。

保育士経験を活かせるポイント

保育士の資格や経験は、ベビーシッターとして働く際に大きな強みになります。発達段階に応じた適切な関わり方や、食事やおむつ替えの知識、保護者との信頼関係を築くコミュニケーション能力などが役立ちます。また、保育士資格があると時給が高く設定できる傾向があり、収入面でもメリットがあります。さらに、認定ベビーシッターや幼児安全法支援員などの資格を取得することで、より専門性を高めることも可能です。

ベビーシッターなら自分のペースで働ける

ベビーシッターの魅力の一つは、働き方の自由度が高いことです。派遣会社に登録すれば、仕事の紹介を受けながら福利厚生を活用できますし、個人契約でフリーランスとして活動すれば、自分で料金設定をしながら柔軟に働けます。マッチングサービスやSNSを活用すれば集客がしやすくなり、リピーターを増やして安定した収入を得ることも可能です。保育の仕事を続けながら、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選びたい人にとって、ベビーシッターは魅力的な選択肢といえるでしょう。

ベビーシッターは需要が増加傾向

ベビーシッターの需要が拡大している背景には、共働き家庭の増加や祖父母の高齢化により育児支援のニーズの多様化があります。保育園の時間外や送迎対応、小学校受験のサポートなどへのニーズに加え、自治体の補助制度も後押ししています。

保育士資格を活かして自分らしく働こう


連絡帳を読む保育士
保育士として退職を考える際、「この先どう働いていこうか」と不安を感じる方も多いかもしれません。そんな中、保育士資格や現場での経験を活かしながら、より自由度の高い働き方を実現できる選択肢として注目されているのが、ベビーシッターという働き方です。

ベビーシッターのマッチングプラットフォームである「キッズライン」では、働く日数や時間、仕事内容、エリアなどを自分で選ぶことができるため、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。また、時給を自分で設定できる仕組みになっており、経験やスキルに見合った報酬を得られる点も魅力の一つです。さらに、登録後には研修や講座など学びの機会も用意されており、スキルアップを目指したい人にとっても安心の環境が整っています。

退職後も子どもと関わる仕事を続けたいと考えている方は、まずは無料説明会に参加し、どのような働き方ができるのか知るところから始めてみてはいかがでしょうか。

エントリーボタン

▼あわせて読みたい
保育士のキャリアパスはどう描く?広がる育児支援のニーズとベビーシッターという新たな選択肢
保育士資格が活かせる仕事25選!保育園以外のおすすめな転職先とキャリアパス
潜在保育士の復帰支援策や補助金を解説!資格を活かした新たな働き方とは?


▼記事一覧に戻る
KIDSLINE編集記事一覧
▼TOPページに戻る
KIDSLINE TOPページ
サポーターとして働く