キッズラインで活き活きとお仕事をされているサポーターの方に、働き方の工夫ややりがいについてお伺いする連載企画。やりがいの一部として切り離せない収入面についても掘り下げます。第3回目は、サポート回数310回、キッズラインでの活動歴1年8ヶ月のベビーシッター&家事サポーター・伊澤ひかるさんにインタビュー。「#戦うベビーシッター」として空手家の一面も持つ伊澤さんの、ベビーシッターへの深い思いをお聞きしました。
児童養護施設職員、保育園教諭を経験

――保育士、社会福祉士、幼稚園教諭の資格をお持ちですが、いつ頃から目指されていたんですか?
自分が保育園児だったときにとても好きな先生がいて、「こんな大人になりたいな」と幼心に思ったのが最初です。その気持ちを持ち続けて保育士になろうと思い、短大の保育科に進学しました。
――短大をご卒業されて、最初に就職されたのは?
児童養護施設に就職しました。私自身が19年間空手を続けていて、男の子に囲まれて育ったせいか、実習で行った保育園の雰囲気に馴染めなくて。児童養護施設にも実習で行ったのですが、一つの家族のような働きぶりにその時は魅力を感じました。ただ、就職してみると仕事がハードで2年で退職しました。
――その後はどうされたんですか?
保育園で2年間、1歳児と2歳児の担任をしていました。ただ、保育園は園長先生の方針がとても強くて、保育の方向性にも疑問に思うところがありました。それで別の園に移りたいと思い、転職活動を始めました。
「これだ!」と直感した、キッズラインとの出会い
――キッズラインはいつ知りましたか?
転職活動をしている中で、広告で表示されたのか、たまたまキッズラインのサイトを目にしたんです。その時は「これだ!」と思い、まさにビビッときた感覚でした。それですぐに決意して、気が付いたらもうベビーシッターになっていました。
――キッズラインのどんなところに魅力を感じられたんですか?
元々一人で何かを組み立てて仕事をするのが好きなタイプで、保育園など集団の中で働くよりは、自分が主導して仕事をする方が向いていると思っていました。
ベビーシッターであれば「この子にはこうしてあげたい」「この子にはこれを提供したい」と、全て自分で保育方針を組み立てて仕事をしていけるというのが、魅力的でした。
――ベビーシッターは各家庭に行くところが保育園と異なりますが、その点で不安はなかったですか?
最初から緊張することはなくて、むしろ「どんなお子様かな」「どんな保護者の方かな」と新たな出会いにワクワクする気持ちの方が大きかったですね。今も毎回ワクワクしながら行っています。
保護者の方に背中を押され、時給をアップ

――ベビーシッターとして「やっていけそうだな」と思ったのはいつ頃でしたか?
デビューして2ヶ月くらいで「こんなに保護者の方が連絡くれるんだ!」と、正直ビックリしました。レビューですごくうれしい言葉もたくさんいただいて、「これならやっていけそうだな」と自信がつき始めました。
――時給に関しては、最初はどうやって決められましたか?
保育士と幼稚園教諭と社会福祉士の資格を持っている他のサポーターさんの時給をチェックしました。最初はベビーシッター未経験で、本当に依頼が来るかどうか不安もあったので、2000円未満で考えて1800円に設定することにしました。
――現在は2600円で活動されていますが、いつ頃どんなタイミングで時給アップされたんですか?
時給はデビュー後半年くらいで、1800円から2600円に上げさせていただきました。
実はうれしいことに複数の保護者の方から「伊澤さんは他の方と比べてすごく良いところがたくさんあるのに、こんなにお安くていいんですか?」と言われるようになって、それで時給を上げることにしました。ご依頼も増えてきてお断りせざるを得ない案件も増えてしまったので、そういった面も考慮して大幅にアップしました。
――時給を上げる際には保護者の方々にどんな風に伝えましたか?
「ありがたいことにたくさんのご依頼をいただき、お断りしなければいけないことが増えてしまったので、キャンセルを防ぐために料金を上げさせていただきます」というような感じでプロフィールに記載しました。
保護者の方からは「予約が取りやすくなってよかったです」といったお言葉をいただき、ネガティブな反応はありませんでした。
定期の方には直接会ったときにお話して「ご不安やご不満があればいつでもご連絡ください」と伝えましたが、今もその時の定期の方全員が継続してくださっています。
「自分がしてあげられることは何か」を考えて作ったワークフロー
――保護者の方ととてもよい関係を築いていらっしゃいますが、ご自身ではどういったところが評価されていると思われますか?
ベビーシッターは命を預かる仕事なので、“もしものこと”を考えて常に動いていることを評価してもらえていると感じています。私はシッティング前に必ず自前のヒアリングシートでそのご家庭の情報を把握するのですが、その時に「安心する」と言っていただけることが多いですね。
それから、シッティングにはいつも手作りおもちゃキットを用意していきます。保護者の方が在宅中のシッティングだと、子どもが集中している姿を見て、「いつもは全然椅子に座っていられないのに、1時間も遊んでいてびっくりしました」と言っていただくこともあります。そういった面を見ていただいているのかなと思います。
――自前のヒアリングシートというのは、どういったものでしょうか?
お子様を預かる責任を自分が果たせるように、またお子様自身の安全を守れるようにと考えて、自分で作成した質問シートです。初回は顔合わせや事前面談とは別に、シッティング開始15分前に到着して、保護者の方にヒアリングのお時間をいただくようにしています。
内容は、
・持病の有無、対応の仕方
・アレルギーの有無
・保険証や体温計の保管場所
・かかりつけ医の連絡先
・お家の中で使ってよい部屋
・触ってはいけないもの
・食事の与え方(こだわり)
・ミルクの分量、時間、タイミング
・トイレに自分で行けるかどうか
・トイレトレーニングのタイミング
・お昼寝の時間、タイミング、寝る場所
・歯磨きのタイミング(おやつ時に必要か)
・緊急連絡先
といったことで、A4の紙2枚の分量です。
他には、保護者の方がお子様に言ってほしくない言葉や、ほめてほしいことなど、子育てのポイントについても聞くようにしています。ヒアリングする中でさまざまなお話ができて、自然と保護者の方とも打ち解けられますね。
――素晴らしいですね!手作りおもちゃセットについても教えてください!
さまざまな手作りおもちゃができるキットをビニール袋に小分けにして、ストックしています。その中から毎晩、次の日に行くお子様の年齢や性別などを考えて、持っていくおもちゃをいくつか選んでいます。定期的に行くご家庭では、同じものが重ならないように気をつけたり、その子の成長に合わせてアレンジしたりしています。
一例としては……
・手袋のひも通し
・おひな様セット
・風船
・アクアビーズ
・デザイン定規
・紙皿で作るスイカ
・ストローで作るネックレス
といったものなどを用意しています。
▼手袋のひも通し

▼紙皿で作るスイカ

――これらのお仕事のフローは、いつから行っているのですか?
せっかく自分がベビーシッターをするなら、その時間は目一杯お子様に楽しんでもらいたいという思いがありました。それでまずベビーシッターを始める前に「自分が子どもにしてあげられることは何か」を考えました。その中で考えたのがヒアリングシートやおもちゃキットです。
絶対に不可欠な安全面であるとか、私の得意な手作りおもちゃであるとか、私なりの価値を提供するために、これらはデビュー当初から行っています。
――他にも何かご自身でされていることはありますか?
キッズラインで開講している「救命講習」の受講だけでなく、市が行っている救急救命講習も定期的に受けています。シッティングの最中にお子様の体調の急変など2度の救急車対応の経験があるのですが、その際も定期的に講習を受けていることで、落ち着いて対応が出来ました。
保護者の方の“子育てのペース”に合わせて、一緒に悩んで一緒に育てる
――保護者の方への接し方で、大事にしていることはありますか?
それぞれのご家庭で子育ての仕方は違うので、そのご家庭の「子育てのペースに合わせる」ことを意識しています。定期の方には時々「最近子育てでどんなことに気を付けていますか」と聞くようにしていますね。
保育士として「こうしたほうがよい」と進言するのではなく、そのご家庭やその子のペースに沿った保育を行うのがベビーシッターの役割だと思ってます。保護者の方とお子様のことを一緒に悩んで一緒に育てる存在になれるといいなと思ってます。
――子育てで、アドバイスを求められることもありますか?
そういう時は個人の意見ではなく、「最近研修を受けてこんなことを聞いたんです」という感じで、できるだけ客観性を保ったお話をするようにしています。
先日は「子どもが『他の子に比べて分かっていないことが多い』と、保育園の先生から指摘された」と保護者の方から相談をうけたので、実際に研修で教わった子どもの理解度の確認方法をお伝えしたりしました。
――保護者の方との関わり方は、保育園の時とは異なりますか?
保育園では、保護者からの問い合わせには基本的に園長や主任が答えるのがルールで、担任は個別の相談に応じないという立場でした。ベビーシッターになってからは、自分の経験をフル活用して目の前のお子様に向き合ったり、習得した知識を保護者の方にお伝えできている点で、仕事に充足感があります。
「子どもと通じ合った」と感じた時が、ベビーシッターの醍醐味

――お子様への接し方という面では、どういったことを大切にしていますか?
基本的にお子様のことを「否定しない」ことを心がけています。保育中は「楽しめるのが一番」というスタンスで、「何色にする?」「次はどうしたい?」と、子ども自身に考えてもらうことを大切にしています。制作などではその子の個性を引き出すために、自由な発想をサポートするようにしています。
――ベビーシッターとしてやりがいを感じるのはどのような時ですか?
お子様と目が合って、何かが通じ合ったなと感じた時ですね。
以前、3歳のお子様が自分でやりたかったことを私がやってしまって、大泣きしたことがあったんです。なかなか泣き止んでくれない中、「怒らなくて大丈夫だよ」「〇〇ちゃんと会うの初めてで、わからなくてごめんね」「わざとじゃないんだよ」とゆっくりと真剣に向き合って伝えました。しばらくするとその子が我に返り、ジッと私の目を見たんですね。その時に「ああ、気持ちが通じたな」という手ごたえがありました。その後、私の前では一度もかんしゃくを起こさずに過ごせています。
保育園や児童養護施設で働いていた時には、様々な性格や境遇の子どもたちを担当していたので、その時に培った対応の引き出しが、今になって役立っているのかなと感じています。
ベビーシッターという働き方は、以前と比べて「100倍楽しい!」

――個人事業主という働き方はいかがですか?
キッズラインの方で書類提出のアナウンスなどしてくださるので、働き方を変えることで困ったことはありませんでした。何かあったときには保険が使えるので、その面でも安心して働けています。
社会保険については変更手続きをして、夫の扶養には入らず独立して仕事をしています。
保育園に勤めていた頃に比べると、今は「毎日が100倍楽しい」と感じています。夫からも「笑顔が多くなって、活き活きしている」と言われました。
――収入面ではいかがですか?
保育園で正社員で働いていた時と比べると、ボーナスがない分は減りましたが、毎月の収入としては、ベビーシッターメインで働いている今の方が増えています。
――休日は取れていますか?
日曜日と月曜日は自分で決めて定休にしています。今はパートタイムで木曜と金曜の午前中だけ保育園で働いて、その他の時間はベビーシッターに当てています。
保育園に勤めていた時は疲れ果てて、帰宅したらすぐ寝るような生活だったのですが、プライベートの時間もしっかりとれるようになったことで、家の掃除や家事もできるようになりました。
ベビーシッターが当たり前になるよう、活動の幅を広げたい
――保護者の方に伝えたいことがあればぜひお願いします!
お子様がいらっしゃる方にはもっともっとベビーシッターを頼って、子育てを楽しいものにしてもらいたいです!仕事や残業のためだけでなく、リフレッシュのためでも気軽にご依頼してもらえたらと思います。
――今後はどのようなご予定ですか?
保育園のパート勤務は今年度で終了して、これからはベビーシッター一本にしようと思っています。木曜金曜にもシッティングに入ってほしいというご要望をいただいているので、より多くのご家庭のお手伝いができるよう、活動していくつもりです。
日本ではまだまだベビーシッター自体がメジャーでないので、個人のインスタグラムでは「#広まれベビーシッター文化」というハッシュタグをつけて発信しています。これからはベビーシッターを頼むことが当たり前になるように、より多くの方に知ってもらう活動にも力を入れたいと思っています。
――インタビューを終えて――
ベビーシッターとしての確固としたポリシーをもって活動されている伊澤さん。ご自身が提供できる価値について深く掘り下げ、オリジナリティーのある保育を実践されているというお話に、感銘を受けました。一緒に悩んで寄り添ってくれるベビーシッターさんの存在は、保護者の方にとって、子育ての心強い味方です。もっと「#広まれベビーシッター文化」!
伊澤さん、貴重なお話をありがとうございました!
伊澤ひかるさんのプロフィールページはこちら
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