東京大学大学院学際情報学府博士課程修了し、現在は筑波大准教授・学長補佐でありメディアアーティスト等様々な肩書きを持つ落合陽一さん。デジタルネイチャーという世界観を提唱し、数々の研究を発表されています。
今回、そんな落合陽一さんとキッズライン代表経沢が対談!落合さんがご家庭での子育て方針で一番大切にされている「佇まい」とは?
個別教育は、専門性の高い人に教えてもらえるのがメリット
経沢:今日は落合さんの教育論についてお伺いしたいと思います!落合さんは、幼少期に家庭教師の方から個別教育を受けていたんですよね。
落合:そうですね。幼稚園にも行っていましたが、月曜日はピアノの先生が来て、火曜日は東大の院生が算数を教えてくれて、水曜日は公文式の先生が来て、木曜日は画家が来てくれて…という感じで、毎日特定の分野のスペシャリストが来てくれていました。
経沢:家庭教師を雇われたのはお父様ですか?お母様ですか?
落合:母ですね。
経沢:教育熱心なお母様なんですね !毎日違う先生から教育を受ける中で、どんなメリットを感じていましたか?
落合:毎回来てくれる大人が違うので、気持ちが切り替わることはメリットだと思いますね。
あとは明らかに専門性が高い人に教えてもらえること。幼稚園の先生からピアノを習うよりも本物のピアニストが教えてくれる方がいいし、普通の算数の先生よりも理系の東大院生が算数を教えてくれる方が詳しくなれるじゃないですか。
経沢:本物のピアニストが来るってすごい(笑)たしかにそうですね。
落合さんはご自身の著書で「保育園や幼稚園には必ずしも行かなくていい」と書かれていましたが、それはやはり個別教育の方が良いとお考えだからですか?
落合:もちろん集団教育も必要なのですが、集団保育だと他人と同じ価値観になりやすいと感じます。良い集団ならいいのですが、価値観の質が集団に依存してしまいがちだなと。
あとにおいや味覚、目や耳を使った感覚や身体能力は、小学校に入るまでの間にほとんど決まってしまうので、幼少期は五感をフルに使った方がいいと考えていて。
幼稚園では集団行動に特化して協調性を伸ばそうとしますが、子供が好きに自分の能力を伸ばせるように、子供に合わせた教育をした方がいいと僕は思っています。昔の貴族も個別教育だし。
今はテクノロジーでいろいろな家庭教師を安価に呼べるようになっているので、家庭教師を呼ぶハードルもどんどん低くなってきているんじゃないですかね。
経沢:そうですね。私がやっているキッズライン というスマホですぐにベビーシッターが呼べるサービスですが、いまは、ピアノや英語などのスキルを持っているシッターさんが人気です。
幼少期に習っていてよかったのは「絵」
経沢:落合さんが小さい頃に受けた教育で「これやっていて良かった!」と思うものはありますか?
落合:なんだろう……絵かなぁ。ピアノや空手、理科など色々やっていましたが、その中でもやっぱり絵ですね。
絵って実は学校だとあんまり習えないんです。絵の具が乾くのに時間がかかるから、学校だとなかなか時間内で終わらないんですよね。
経沢:たしかに絵って、習う機会が少ないかもしれませんね。絵を習っていたことが今のご自分にどういった影響があると思いますか?
落合:「面で物体を捉えること」が得意になりましたね。
経沢:面で捉える……?
落合:僕、線で絵を描かないんですよ。「線で描く」とは、いわゆる漫画のイラストのように輪郭を描くやり方です。でも自然界に「直線」って存在しないじゃないですか。
その逆は油絵のように「面で描く」方法なのですが、絵を習っていたことで、面で物体を捉えられるようになりました。
美大生とかその辺にたくさんいるので、小さい頃に美大生に絵を習うのは良い経験だと思いますよ。
経沢:なるほどですね!それはすごい。 キッズラインでも、絵の先生は人気ですが、もっと美大生のシッターさんを増やそうと思いました!(笑)
「やるべきことが自分にあるはずだ」という思考で行動できるか
経沢:いま私は日本の育児課題を解決するために、育児にテクノロジーをいれるべく、スマホですぐにベビーシッターを呼べるサービスを行なっているのですが、育児関係で、落合さんが注目しているテクノロジーってありますか?
落合:スマートスピーカーには期待してますね。永遠にスマートスピーカーと話していられる子どもとかいるじゃないですか。うちの息子は、いまペットロボットのaiboと遊んでいます。
経沢:すごい!今ってロボットやスマートスピーカーで教育できたりとか、教育を家庭教師にお願いしたりとか、親が教育をすべて担う必要がなくなってきていると感じます。そんな中で、落合さんの考える「父親と母親の役割」ってどんなものですか?
落合:役割……そうですねぇ。「自分のほうが専門性の高い分野」があるのであれば、親が教えたほうがいいと思います。例えば僕であれば明らかに物理とかは普通の人より詳しいので、自分で息子に教えたほうがいいですし。
経沢:落合さんは人よりも詳しい分野が多いですもんね。これからのお父様お母様は専門性があったほうがいいんですかね!?
落合:いや、そんなことないですよ。その場合は教育を専門の人にお願いすればいいので。それよりも僕が家庭で重要だと思うのは、「佇まい」かなぁ。
経沢:佇まい……?
落合:「やるべきことが自分にあるはずだ」という思考で行動できるかどうか、ですね。僕は結構適当で半端だけど、「何かを無条件にやらなければならない」という考え方があって。
人間が作ってきたあらゆる制度って、人間が自ら作ったり壊したりできるんですが、その考えに基づいてちゃんとコミュニティのために行動できるかどうか。そういうのって意外と家庭環境の中で決まるような気がしますね。
経沢:たしかに「自分の役割を自分で見つけられる人」って少ない気がしますね。どういう教育をしたらそういう佇まいの人に育つと思いますか?
落合:例えば家族みんなでバーベキューに行ったとするじゃないですか。そのときに、周りのお父さんは何もしないで仲間と愚痴ばかり言っている中で、自分はバーベキューでやるべきことをさらっとやるとか。
日常のあらゆる場面で、「自分にはやれることがあるはずだ」と考えて行動する姿を見せるといいと思います。そういう当たり前のことを当たり前にやれる人って、意外と少ないですからね。
経沢:子どもは親を見て真似しますからね。佇まいのお考え、素敵です。
落合:経沢さんは、教育方針で大切にされていることはありますか?
経沢:私は、子どもの生きる選択肢を増やせる母親でありたいと思っています。人生を自分で決めることや、周囲や社会の役に立つことをすることはとても素晴らしいことなんだよ、と背中で見せるようにしています。生きる事に対して希望を持ってほしいし、周囲に希望を与えられるような人になったらいいな、と。
落合さんは他に、子どもと接するとき何か意識されていることってありますか?
落合:嫌がることはさせないですね。なるべく意図を汲むようにはしています。「普通はこうだから」とか「ダメ」とかも絶対言わないですね。
中国語と英語が分かれば、近代日本の成り立ちもわかるようになる
経沢:私も子どもを否定することは絶対にしないです。落合さんのお子さんって、どんな性格なんですか?
落合:息子はスケベで炭水化物が好きなオッサンですね。
経沢:!?
落合:女の人を見つけるとずっとその人ばっかり見ているし、あわよくば寄って行って話しかけるんです。「すげぇなお前!」って思います。
経沢:どっちのDNAですか?(笑)
落合:僕じゃないと思いますよ(笑)女の子見つけるとすぐに走っていくから、積極的ですよね。
経沢:素直な感じで可愛いですね。よくキッズライン のお客様からも「子供が自ら写真をみて好みのシッターさんを選んでるんです」っていうエピソードもらいます。(笑)
佇まい以外だと、「こういう習い事させたい」「こういうことを将来身につけさせたい」ってありますか?
落合:今僕は息子にロシア語を習得させようとしているのですが、そのほかの言語だったらサンスクリット語かなぁ。
経沢:サンスクリット語!
落合:響きが独特ですからね。あと、ラテン語と中国語はわかるといいかなと思います。
英語の成り立ちを考えた時に、ラテン語って役に立つんです。さらに、中国語と英語がわかっていると近代日本がなんで成立したのかが分かるようになるんですよ。
経沢:日本語も中国語からきてますもんね。
落合:そうそう。江戸時代幕末以降にできた日本語の成り立ちをたどると、西洋の概念を日本語に翻訳する時に中国語の語法や文法を参考に作られていることが多いんですよね。そういうことがわかる大人になってほしいかな。
経沢:すごすぎます。落合さんちの子供に生まれたかったです(笑)次回は、落合陽一さんと考える、「シングルマザーに光を当てるには?」というテーマでお話ししたいと思います!
後編はこちら:
結婚が男女の賃金格差を生む? 落合陽一が考える、日本の育児の問題点
(取材・執筆:あつたゆか)
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