クラウドファンディング「CAMPFIRE」代表取締役社長で連続起業家、最近新たに50億円規模のベンチャー投資ファンド「NOW」の設立も発表し、日本のスタートアップ業界の中心的存在の一人、家入一真さん。一方、極度の遅刻癖や自由すぎる素顔が話題になることも多い家入さんの「パパとしての素顔」に迫ってきました。

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家入さんと親交の深い起業家・けんすうさんのTwitterより

実際、育児にはどれくらい関わっている?

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なんと取材当日は時間ぴったりに登場した家入さん(疑っていてすみません..)。私生活では3人のお子さんのお父さんです。参考までに、家入さんのインスタグラムはこんな風になっています。
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ーー「デキる男の子育て論をきく」というシリーズです。本日はよろしくお願いします。

家入:よろしくお願いします!人間としてダメな部分が多いのに、子育てをちゃんとできるのかと思っているんですよね?(笑)

ーー(ちょ、ちょっとバレてる..)さっそくですが、家入さんはSNSでもよくお子さんの写真をアップされていて、子煩悩なイメージがあります。実際は具体的にどのくらいお子さんと関わっていらっしゃいますか?

家入:最近新会社を設立したこともあって平日は仕事が忙しく、夜は会食や飲み会のあとにスターバックスで起業家の相談にのったりしているので、帰宅は早くて午前0時、早朝4時や5時になる日もあります。なのでそうですね…平日は、娘とは朝の30分〜1時間遊んでるくらいですね。
土日も仕事やイベント、登壇がはいることもありますが、家族同伴で参加したりなど、できるだけ家族との時間に充てるように心がけてます。

ーー先日もタイコクラブ(野外フェス)にご家族でいかれていましたね。

家入:そう、そんなかんじです。仕事も兼ねていたのですが、社員数名と共に行きましたね。
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ーーもっとお子さんと触れ合いたいという思いもあるんですか?

家入:もちろん、そうですね。家族がいる経営者仲間の中には、子どもができてから会食や夜遅い時間帯の飲み会には一切参加しないと決めた人もいる。友人の某経営者なんかは、夕方に一度帰宅して、子どもたちをお風呂に入れてごはんを食べさせたあと、用事がある際には午後9時以降に出かけたりしててすごいなと思います。

あとは、鎌倉とか物理的に都心から離れたところに引っ越して、家族との時間を増やしている人もいますよね。そういう生活もあるんだな、僕もいつかやってみようかな、と思うことは多々あります。

20代で起業してから、ずっとこのライフスタイルで人と会い続けてるので、そろそろ子どものために時間を取るのもいいなと思ったりもします。

奥さんから見たら、子どもより厄介な存在かもしれない

ーー家入さんが実際にされている子育てのタスクはありますか?

家入:可能な時はですが、娘をお風呂には入れますね。あとオムツ替えはけっこう好きです。とりわけ、うんちのオムツ交換ですね。

男親の中には「うんちだけは勘弁して」という人もいますが、僕はめっちゃ好きです。逆に嬉しいくらい。匂いも大人と同じだし、おしっこに比べるとハードルが高いところが好きなのでしょうかね。たくさん出ると嬉しい。

とはいえ、お風呂とうんちオムツ交換だけで育児をしているとはとても言えないですよね。それで「子育てしてる」なんて言うと、それこそ怒られそう…。うーん、子育てって、何なのでしょうね?

ーー(それを聞きにきたんだけどなあ...)
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ーーぶっちゃけ、家入さんは少しだらしないイメージもありますが、奥さんから怒られたりはしますか?
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家入:ありがたいことに妻は寛容でいてくれるので、あまり怒られない。あ!強いて言えば、脱いだ靴下をテーブルの上に置かないでほしいと言われることでしょうか。「出したものはちゃんと片付けてよ!」と。

ーー靴下を机の上に置くってどういうことですか!?

家入:ちょっとやってみますね!
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(実際にやってくれた家入さん)

家入:僕からすれば、脱いだ靴下が床の上にある方が汚いんです。だからこうやって脱いだらキレイに机の上に並べます。
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ーー奥さんに怒られるのは当然ですよね。

家入:僕の場合妻に怒られて、「靴下はテーブルの上に置くのはダメなことなんだな!」と一つ覚えると、別の一つのことを忘れるんですよ。生きづらいなと感じます。

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ーー怒っても一つ覚えて一つ忘れていくのでは、奥様は子育てより家入さんを教育する方が大変かもしれないですね。

家入:たしかにそうですね(笑)。

ーー奥様と子育てのことではぶつからないんですか?
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家入:特にはないんですが、そういえば一度だけ。

僕は年に一度起業家仲間の自宅で家族会をやるんですが、その時にシッターさんを連れてきてる人が多くて、子どもたちをお世話してもらいながら、大人たちは食事やお酒を楽しんでいたんですね。

当時、僕の娘は1歳になるかならないかのころでしたから、シッターさんがいると妻にも自分の時間ができて美容院や食事に行くことが出来ていいなー、と単純に思ったので、ある時「シッターさんを使ってみたらどうか?」と軽く提案してみたんです。

そしたら妻に「子育てって、親がするものじゃないの?私は子どもを人に預けることを考えられない」と言われて。妻からすれば、僕が普段子育てをしていない罪悪感からそんな提案をしたのではないかと思ったんですね。僕は良かれと思って提案したので、妻の反応には驚きました。でも、言われて、たしかにな、と。

お母さんの中の一定数は親以外が子どもに接することに良心の呵責を感じて、キッズライン(オンラインベビーシッターサービス)のようなサービスを気軽に使えない人もいるんではないか、と気づかされました。
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ーーなるほど、旦那さんがシッターさんを使ってみたらというのは一見優しい提案のようにも思えますが、実際には使われなかったんですか?

家入:いえ、最終的には妻はとある用事で一度シッターさんを使ってみたら、意外な良さに気づいて喜んでいました。

自分以外の大人とふれあって「こんなことをして遊んだ」を知ることは、親として新鮮で嬉しかったようです。一度利用すればシッターさんを使うことの良さもわかるんですが、最初の一回までのハードルが高いんだなと思いました。

親が子どもに考えを押し付けるのは「呪い」のようなもの

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ーー話はかわって、家入さんはお子さんに自分のこんなところに似てほしい、こんな子どもに育ってほしいと思うことはありますか?

家入:僕は子どもたちには幸せになってほしいとは思いますけど、特段何かを望んだり、期待したりはしないですね。

ーーお子さんが起業家になりたいと言ったらどうしますか?

家入:あー、それは嬉しいかもなあ。起業じゃなくてもいいんですけど、子どもが自分の人生にオーナーシップを持つ生き方をしてくれるのはいいですね。

ただ、親が子どもに「こうあってほしい」と考えや夢を押し付けるのは、呪いをかけるのと同じような感覚があります。親が子どもに発する何気ない一言が、子どもの中に残り続け、その後の人生にネガティブな影響を与えることもありますしね。自分が実現できなかった夢を子供に託すなどは、呪いの最たる例ではないでしょうか。

だから僕には「父親はこうあるべき」という想いがないんです。家庭でも会社でも、僕は立派な人間であろうと自分を取り繕おうとしません。気負いがない分、子どもたちには弱さやダメな部分など、ありのままの姿を見せて、それはある意味ズルいことなのかもしれないんですけど、僕をどう思うかは子どもたちに任せたいなと。

家族の定義は血縁ではなく「自分たちが家族」と思うこと

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ーー家入さんにとって、「家族」って何なのでしょうか?

家入:家族って血のつながりの有無が重視されがちですが、大切なのは自分が家族だと思えるかだと思うんです。

とある社会学者さんと対談した時、リバ邸と言う僕が作ってるシェアハウスで暮らす子たちのことを「疑似家族」と表現したんです。すると彼は「家入さん、そもそも家族って言葉に定義はないんですよ。自分が家族だと思えればそれで良いんです。なので”擬似”ってつける必要はないんです。」と言ってくれたんですよ。

意識していたわけではないですが、昔から僕は先述のリバ邸の住人も社員のことも「うちの子たち」と呼んでいます。僕にとっては、社員も家族みたいな存在なんです。

会社のキッズルームには、週3で家族がくる

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ーー「うちの子」と呼ぶ社員さん達のほかに、家入さんは若い起業家の支援にも力を入れられていますが、子育てと通じる部分もあるんですか?

家入:そうですね、起業家の支援も、2012年からやっている社会に生きづらさを感じている人向けのシェアハウス(リバ邸)も、たしかに自分の子どもに向けて取り組んでいる感覚です。

リバ邸を作ろうと思ったのは、僕自身もそうでしたが、社会からドロップアウトして、生きづらさを感じて生きる人同士が集まったら何かが生まれるかもしれないという気持ちからです。実際そこから起業家も何人も生まれました。

リバ邸で、僕は新しい家族観を感じたんです。一人で頑張って暮らそうとするのではなく、同じように辛さを抱える人同士が集まって支え合っていることが、家族と呼べるのではないかと。
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ーーCAMPFIRE社は、子連れ出社される方も多いそうですね。

家入:はい、CAMPFIRE社内にはキッズルームがあって、僕の妻子も週に3日くらい来ます。

子育てをしながらでも働ける場所を作ることは若い時から考えてきたことで、今ようやく広いオフィスを借りることができて、スペースができたのでキッズルームにしようと思いました。

子どもを連れてきて働く女性や、最近はエンジニアの男性が週2で子どもを連れてきたりとか。もっともっと(子連れ出社する社員が)増えると良いなと思っています。

会社は社員のための居場所であるべきだと心から思ってますし、優しい会社でありたいと思う。
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そんな中、娘さんが取材現場に飛び入り!

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社内のキッズルームで家入さんがお子さんと遊ぶ姿はCAMPFIRE社では日常的な光景だそう。

企業としても「子育ての問題について何ができるか」を問い続ける

ーー最後に、日本の子育て環境について、家入さんが経営者として思われるところはありますか?

家入:電車にベビーカーで乗ったら周囲の乗客に嫌な顔をされるとか、保育園を作ろうとしたらうるさいと言われるとか、おかしいところだらけだと思いますよ。みんな昔は赤ちゃんだったのに、いざ自分が大人になると赤ちゃんが迷惑だなんて叩くのはおかしい。

でもみんな、それくらい今追い込まれているんでしょうね。毎日満員電車に揺られる生活をして、その中でベビーカーが当たったら僕だってイライラしてしまうかもしれない。この国の慢性的なストレスをどうにかした方がいいのでしょうね。
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家入:お母さんの働く場所が少ないという問題など、社会で生きづらさや働きづらさを抱えた人たちが不安や不満がなくいられる場所、いわゆるセーフティネットを用意する役割は、従来は行政が担っていたはずです。

でも少子高齢化で税収が下がるなかで、国が担うのは無理になっていく。それならば、企業が子育てに関する問題に向き合い、解決に向けて取り組まないといけない。なので、そうした取り組みができない企業は、選ばれなくなってくると思います。

もちろん、企業としてはコストは上がるし、スタートアップにできること・できないことはあると思います。でも、経営者は常に「今できることは何だろう」を考え続けないといけない。スタートアップにもできることはあるはずです。

CAMPFIREのみんなは他の社員の子どもを可愛がってくれます。でも今後はキッズラインさんなどにお願いして、シッターさんが常駐したら便利かもなと思っています。

ーープライベートから、経営者としての子育て論までお話しいただき、ありがとうございました!
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家入さんが父として、また経営者として子育てと仕事の両立に取り組む想いは、実はとても明確で、表情では悩みながらも「こうしたい」と言い切られるのが印象的でした。

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■大人気「デキる男の育児論」シリーズ■
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幻冬舎 箕輪厚介
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新R25編集長 渡辺将基
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