日本でもっとも有名なサラリーマンのひとりである田端信太郎さん。リクルートで「R25」の立ち上げに携わった後、ライブドアやLINEと名だたる企業の執行役員を務め、3月にはスタートトゥデイに入社しました。

会社に縛られない「最強のサラリーマン」を体現している田端さんは、現在3児のパパでもあります。

SNS上では時折、過激な物言いで話題になることがある田端さんですが、果たして家庭の顔はいかに……!?田端さんの夫婦論、育児論に迫ります。

育児に比べたら、クライアントや上司の要求なんてぬるい

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ー田端さんはいま、8歳と3歳の息子さん、そして5歳の娘さんがいらっしゃるんですよね。お子さんは田端さんとそっくりだったりするんですか?

田端:田端家の家訓は「声の大きい意見は正しい意見、正しい意見だったら大きな声で言えるはず」というものなのですが、そのせいかみんな僕に似て声はすごく大きいですね。

一にぎやかそうですね。田端さんの著書「ブランド人になれ!」に、「結婚・子育てによって理不尽を学べ」という章がありました。今日は田端さんが受けた、家庭での理不尽エピソードをお伺いできればと思うのですが……

田端:そんなの言えませんよ(笑)この質問を事前に見たとき、困ったなあと思いましたね。

ー(田端さんが、困ってる!)そこをなんとか……

田端:理不尽なことって、公の場で語れないから理不尽なわけじゃないですか。

ーまあ、たしかにそうですね。

田端:理不尽エピソードはあまり語れないですが、単純に考えて仕事と育児だったら後者の方が圧倒的に理不尽ですよね。ビジネスは言葉の通じる大人同士がやっていることだけど、子どもはまず言葉が通じないし。

たとえ言葉が通じるようになったとしても、子どもってあらゆることを本気で要求してくるじゃないですか。それも24時間365日で。

大人には「勤務時間外」の概念がありますが、子どもはそんなの関係ないですからね。そういう意味でいうと、子どもはブラック企業のパワハラ上司のような存在です。

それに比べたら、わがままなクライアントや上司なんてぬるいもんだなと思います。

親の期待を裏切って、サバイブするのが最高の親孝行だ!

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ー理不尽エピソードは語っていただけなそうなので……教育方針で大事にしていることをお聞かせいただけますか。

田端:子どもにも妻に対してもそうですが、他人であることを忘れないようにしていますね。

ー他人、ですか。

田端:前にある人がすごい名言を言っていたんですよ。「自分の子どもがノーベル賞を取ろうが犯罪者になろうが、他人なんだから関係ないじゃないですか」って。これ、めちゃくちゃ正しいなあって思って。
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田端:僕らって無意識のうちに、「子どもなんだから」「妻なんだから」と期待してしまう。それはしょうがないことなんですけど、家族は別人格なんですよ。息子だろうが娘だろうが、どんなに可愛かろうが、やっぱり他人なんですよ。

それをわかっていない人は、「なんで俺は良かれと思ってやってるのに、息子は俺の言うことをきかないんだ」とかって言うんですけど、それはメンヘラの発想ですよね。

ーメンヘラは言いすぎじゃないですか。

田端:もちろん本人のやりたいことがあれば、精神的にも金銭的にもサポートはしますよ。でもそこで、「サポートするから口も出させろ」と言うのはおかしいと思うんです。

子どもがいいことをしたときは多少は僕も誇らしく思うかもしれないですが、基本は「私は私、あなたはあなた」というスタンスでいたいですね。
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田端:子どもたちには、とにかく彼らの人生を生きてほしくて。

僕なんかは、父親に「お前は間違っている」と言われながら、それに反発して自分の生き方を貫いて、最終的に「やっぱりお前は正しかった」と言われるのが一番ハッピーですから。

ーというと?

田端:反発するっていうと聞こえが悪いけれど、自分の信念を貫いた上で親の期待を裏切ってほしいですね。

僕は石川県出身なのですが、おそらく僕の両親が描いていた最大の成功イメージって、僕が金沢大学という地元の国立大学に行って、そのあと県庁で働くか、地銀で働くか、学校の先生になることくらいだったと思うんです。

でも僕は、親が描いたMAXの成功イメージを裏切ったというか(笑)

ー田端さんのご両親も、まさか田端さんが最強のサラリーマンと呼ばれるようになって、著書を出しているとは思わなかったでしょうね。

田端:そうそう。親の期待を裏切って、なおかつサバイブするのが最高の親孝行ですよ!

夫婦円満でいられる方が不自然で、離婚する方が自然

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一そんな田端さんの、夫婦円満の秘訣を教えてください!

田端:まず、夫婦とは何かという僕なりの解釈についてお話します。夫婦って、文化的で人工的なものだと思うんですよね。

ー夫婦は文化的で人工的なもの……?

田端:夫婦で一生を添い遂げる動物って、人間以外にあまりいないと思うんですよ。現に哺乳類で一夫一妻の形をとる動物は、約3~5%しかいないらしいです。

例えば、猿の中に夫婦って概念はないじゃないですか。彼らは一夫多妻制や乱婚型。夫婦というよりは、たまたま二匹で子どもを育てているだけというか。

一そう言われたらそんな気がしてきました。普通の動物だったら、1回子ども産んで育てたら終わりですもんね。
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田端:そうそう。よく「結婚するのは当たり前」とか「離婚する人は社会不適合者である」と言いますが、僕は逆なんじゃないかと思うんです。動物的に考えると、ずっと夫婦でいられる方が不自然だし、離婚する方が自然。

つまり結婚して円満な夫婦関係を続けていられるのって、俳句を詠んだり詩を書いたりするのと同じくらい、めちゃくちゃ文化レベルが高いことだと思うんです(笑)

変な話、「お互い不自然なことをやっている自覚」を持った方がいいなと。もっと具体的に言うと、「お前は妻なんだから、こうあるべきだ」みたいな意識は持たないことですね。

一相手の期待を押し付けない、というか。

田端:はい。夫婦でもしょせん他人なので、「何から何まで当たり前」と思わない方がいい。

例えば夫婦別姓なんかがそうです。多くの女性は男性側の姓に変えますが、それを男性側が何のコミュニケーションもせず、「当たり前」と思っているのは危険だ思います。むしろ変えてもらったら感謝すべき。結婚ってそういう小さなことの積み重ねですよね。
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田端:何が言いたいかというと、双方の努力なしに円満な夫婦関係を続けられるわけがない。どちらかが「当たり前」と思ってしまったら簡単に壊れてしまうんです。

「それくらい容易ではないことをしている」という自覚をもって、歩み寄らないと続かないと思います。

一田端さんは、結婚されてからそういうことを考えるようになったんですか?

田端:そうですね。結婚してから「夫婦とは」をいろいろ考えるようになりました。だからそういう意味で、結婚を通じて人間的成長はあったと思いますね。

「家事やってよ問題」は妻のインサイトを見極めよ

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一田端さんの奥様はどんな方ですか?

田端:僕がTwitterで炎上しても全く気にしない人なので、すごくありがたいですね。「炎上しているの、ママ友に恥ずかしいからやめて!」なんて言われたことが一切なくて。

無関心なのか鈍感力なのかよくわかんないですけど(笑)

ー「ブランド人になれ!」を出版しても何も言わないんですか?

田端:リビングに僕の本が置いてあっても、たぶん読まないと思いますね。「出版することになったよ」と伝えても、「ふーん」って反応です(笑)

好きなようにさせてもらえてありがたい反面、「あなたならもっとできるでしょ」と無言のうちに厳しく叱咤激励されているようにも感じます。

一そんな奥様と喧嘩されることはありますか?田端さんは、SNS上で論破されているイメージが強いので……

田端:喧嘩はあるに決まってるじゃないですか!(笑)でも論破はしないですね。女性を論破したって何一ついいことはないので、主張があるのであれば聞きます。

まあでも結婚して13年くらいになるので、激しい喧嘩はしなくなってきましたね。

一「もっと家事やってよ!」という喧嘩もないですか?

田端:うちではあまりないですね。

ただ、もし家事分担で悩んでいる夫婦がいるとしたら、「家事やってよ」だけだと漠然としていてわからないので、もっと具体的に「お皿洗って」とか「料理作って」と伝えた方がいいと思います。

話し合った結果、「食洗機買おう」になったらそれはそれでいいと思うし。ただ、「家事やってよ問題」の本質はまた違うところにあったりするんですよね……。

一「家事やってよ問題」の本質?
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田端:「家事をもっとやってほしい」と奥さんが言うときは、家事をもっとしてほしいのではなく、「家事の大変さを知ってもっと私に感謝してほしい」という気持ちの裏返しだったりするじゃないですか。

単に夫が家事の量を増やしたからといって解決する問題でもないんですよね。

ーそう言われてみると、たしかに!

田端:マーケティング用語で「インサイト」という言葉があります。インサイトは「隠れた欲求」という意味なのですが、それは家庭でも同じ。

奥さんの「家事をやってほしい」は、「もっといたわってほしい」とか「興味をもってほしい」という欲求が表面化したものだったりするので、額面通り言葉を受け取らないほうがいいですね。

ー家庭のインタビューでもマーケターの顔を見せてくるあたり、田端さんだ……!

家族を持つことは、他者と向き合うことだ

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一これはインタビューした方全員に聞いているのですが、忙しい男性が仕事と育児を両立させるにはどうしたらいいと思いますか?

田端:それはもう、自分の人生の優先順位の問題じゃん。

ーうお、一言で片づけられた……!

田端:仕事の優先順位が高ければ、キッズラインでベビーシッター呼べばいいわけだし。

でも、それって結局解決にはなってないんですよね。そういう問題じゃないのよって(笑)これはキッズラインにとって深いテーマですね。

旦那さんがベビーシッターを利用するのに反対している場合なら説得すればいいですが、お母さん自身がベビーシッターを呼ぶことに罪の意識を感じている場合も多い。

この意識の部分は、キッズラインの今後の課題だと思いますね。

一たしかに、まだ罪悪感がある方はまだ多いと思いますね。最後に、家族や育児のマネジメントについて言い残したことがあればお願いします!

田端:結局、育児や家庭に向き合い出すと見えてくるのが「人間にとって幸福とは何か」ってことだと思うんです。

家族って、どうなったら「成功」なのか定義できないじゃないですか。子どもがいい大学を卒業して、大企業に入るのが「成功」かと言うときっとそうではないし。

で、「子どもの幸福ってなんだろう?」「妻の幸福ってなんだろう?」と考えた時に、少なくとも彼らにとっての幸せは僕の言いなりになることではないはずです。
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田端:それはビジネスでも一緒で。さっきの話じゃないですけど、「俺は上司なんだからお前言うこと聞け」というのは良くないですよね。そんなこと言って部下が言うこと聞いたところで、その部下が本当に良いパフォーマンスを出せるわけがないんです。

「その人が自分の部下になることで、その人にとって何か良いことはあるんだろうか?」という目線でいることが大切だと思います。

結婚とは?夫婦とは?と疑問に思う人には映画「ゴーン・ガール」を見ることをオススメします。映画史に残る傑作ですよ。

ーありがとうございました!

(取材・執筆:あつたゆか

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